Infinite Days~獅子の姫達とその勇者~   作:のんびり日和

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27話

~IS学園・医務室~

 

「…ん。……こ、此処は…」

 

思い瞼を開け、目の前に広がる光景にしばし呆然となるラウラ。寝起きの為上手く頭が働かなかったが、其処は軍人。物の数秒で意識をはっきりとさせあたりを見渡そうと首を動かす。

部屋は暗いが、部屋の中を充満するように消毒液や薬品など、治療する部屋独特の匂いでラウラは自身は今医務室にいるんだとすぐに理解した。

すると扉の開く音が鳴り響き廊下からスタスタと部屋へと入ってくる人物がいた。その人物はラウラの寝るベッド近くまで来るとラウラに顔を向ける。

 

「起きたか、ボーデヴィッヒ」

 

「織斑、先生」

 

部屋にやって来たのは千冬だった。

千冬はラウラのベッド近くまで来るとホッとした様な安堵の笑みを浮かべる。

 

「何処か不調とか吐き気とかは無いか?」

 

「体の節々に痛みは感じますが、大丈夫です」

 

「そうか。それならよかった」

 

そう言いながら千冬は傍にあったパイプ椅子に腰を下ろし、そして真剣な表情を浮かべる。

 

「さて、それじゃあアリーナで起きた出来事だが何処まで憶えている?」

 

「……はっきりと憶えているのは、試合中に突然空間ディスプレイが現れ、私のISのファイヤーウォールを突破し、VTシステムが何者かにインストールされてすぐに土方達に逃げるように叫んだ所までです」

 

「そうか。それじゃあその後の事を説明する」

 

そう言い千冬はラウラがVTシステムに呑み込まれた後に起きたことを説明し始めた。

 

「――という事だ。その後お前は救助されて此処にいるというわけだ」

 

「そうですか。私のISは今どこに?」

 

「この学園の整備室にある。今お前の父親が派遣した技術者が修理とVTシステムの除去を行ってる」

 

そうですか。と言いラウラはホッと一息を吐く。そしてしばしの沈黙の後、ラウラが突如口を開く。

 

「…実はVTシステムに取り込まれた後、夢か分かりませんが、あるモノ見たんです」

 

「あるモノ? それは一体なんだ?」

 

「はっきりと憶えている訳ではないのですが」

 

そう言いラウラは語り始めた。

 

それはラウラがVTシステムに呑み込まれた後の事だった。

ラウラは突如真っ暗な空間にスポットライトを浴びせられながら立っていた。何故此処にいるのか、そしてここは一体どこなんだと疑問だけが頭を占める。すると突如真っ暗な空間が変わりとある場所に変わる。其処は何処かのグランドだった。だが、ラウラはそのグランドに見覚えがあった。

 

「此処は、新兵訓練施設のグランドか?」

 

そう呟き、自身の訓練兵時代に所属していた施設のグランドにどうして自分が?と思っていると、遠くから何人もの走ってくる足音に気付き、ラウラは音がしたほうに顔を向ける。其処には

 

「何ちんたら走ってるんだ! もっとペース上げろ!」

 

『Jawohl!』

 

と訓練兵達とそれを指導する教官が走ってきていた。

 

「あれは、アルベルト教官か?」

 

そう呟きながら見つめるラウラ。自身の訓練兵時代に面倒を見てもらった恩師がいることに驚きと若干の懐かしさを浮かべる。そしてその傍を走っている者達にも驚きの顔を浮かべる。

 

「あれは、ローズやクリスティー、それにクラリッサか?」

 

訓練兵たちの中に自身の部下であり、仲間の顔を見つけたのだ。なぜあの訓練兵たちの中に混ざっているんだと思っていると、ある事に気付く。それは

 

「よく見たら、あれは全員私と同じ同期の者達か?」

 

そう言いよく見つめるラウラ。訓練兵たちの顔をよく見てそれは核心となった。其処を走っているのは自分と同じ同期メンバーだったと。そのことからラウラはある仮説を立てる。

 

「……まさか、此処は私の過去の景色か?」

 

何故こんな過去を?と思いながら訓練を見ていると、集団から遅れている人物を見つける。それを見つけたラウラは驚いた表情を浮かべる。

 

「あ、あれは、私か?」

 

そう呟き見つめるラウラ。ラウラと同じ銀髪で小柄な体系、そして片方の目を医療用の眼帯をつけた人物。それはまさしく過去の自分だったと気づいたのだ。

集団から離され息を絶え絶えになりながら必死に走り続ける過去のラウラ。すると

 

「おい、ボーデヴィッヒ! ペースを落としていいとは言っていないぞ!」

 

「や、Jawohl!」

 

アルベルト教官からの叱責を受けながらラウラはふらつく脚を何とか動かし続けていた。そして何とか集団に追いつくラウラ。

全員が息が絶え絶えとなっており、激しく肩で呼吸をしていた。

 

「…お前等、俺が言った目標時間よりも5分も遅れているぞ。言った筈だ、軍に所属した以上、時間は重要だと。5分でも3分でも遅れれば、国を守れないと!」

「よってお前らの国防に対する気持ちが緩んでいるとみて、腕立て伏せを行え! すぐに行動しろ!」

 

そう怒鳴られ全員その場で腕立て伏せの準備に入る。アルベルト教官の掛け声のもと訓練兵たちは疲れた体に鞭をうちながら必死に行った。

そしてそれから数十分後、訓練終了を告げられ訓練兵たちはアルベルトに挨拶後その場を後にする。

その様子を離れた位置で見ていたラウラはこんなこと確かにあったなと懐かしそうに見ていた。すると

 

「―――本当止めてほしいよね」

 

「ん?」

 

突如建物内に入ろうとしている訓練兵の言葉に耳を傾けるラウラ。

 

「ボーデヴィッヒさん、手術後以降物凄く実力落してない?」

 

「そうだね。おかけで私達がとばっちりを受けるから本当に勘弁してほしいわよ」

 

「本当よね」

 

そう言いながら建物内へと入っていく訓練兵。ラウラはその言葉に若干顔をうつ向かせる。

 

「確か、この時の私はまだ織斑先生に会う前だったか。あの頃はがむしゃらにやるしか知らなくて、何時もペース配分などを間違えていたんだよな」

 

暗い気分になりながら歩くと、建物の陰にしゃがみ込むようにうずくまる人物がいることに気付く。その後姿だけで誰なのか気づくラウラ。

 

「あれは、私だな。何をしているんだ?」

 

こんなところでしゃがんでいたか?と疑問を浮かべながら過去の自分に近づくラウラ。

 

「―――クソ」

 

「ん?」

 

「わ、私だって、私だって頑張っているんだ! それなのに、くそぉ!」

 

悔し涙を流しながら言葉を吐き出す過去のラウラ。その光景にラウラは何とも言えない表情を浮かべる。

過去のラウラが零す言葉にラウラは実際に思ったことはあるが、口には出さなかった。

その訳はその時はまだラウラは自分の力が弱いと思っていたからだ。しかし千冬と出会ってからは力だけがこの世のすべてと言う価値観を無くし、力のみならず精神も鍛えたおかげでよい結果が出るようになったのだ。

だが、今自分の目の前に自分(ラウラ)はそれをまだ知らないときの自分だ。

すると

 

「力が、誰にも負けない絶対の力さえあれば、好きかっていう奴らを黙らせられるんだ。そうだ、力さえあれば良いんだ。力だけが」

 

そう呟きだす過去ラウラ。すると突如辺りの様子が変わり始める。明るかった筈の空が突如不気味な赤黒い空に変わり、あたりの明るさも一気に暗くなる。

突然の事に慌てるラウラ。そんな中、うずくまっていた過去のラウラが突如立ち上がり首をグリンとラウラの方へと向ける。

 

「そうだろ、私。絶対の力があったら、私達を馬鹿にした奴らをねじ伏せることが出来る。お前だってあいつらに馬鹿にされたことに悔しかったんだろ?」

 

そう言いながらラウラに近寄る過去のラウラ。

 

「私の手を取れ。私と一緒になったら、絶対の力が手に入る。そしたら私達の目標の織斑先生を超えることなんてすぐにできるぞ」

 

過去のラウラは笑みを浮かべながら手を上げて近づく。ラウラはじりじりと後ろに下がる。

 

「何故後ろに行くんだ。お前だって望んでいただろ? 馬鹿にしてきたあいつらを黙らせられる力が欲しいって」

 

「……」

 

過去のラウラが言う言葉にラウラ自身否定はできない。確かにそんなことは思ったことはあると。だが、もうそんな力など、いらない。そう言いたいがラウラはなぜかその言葉が出てこない。

何故でないんだ。と焦るラウラ。

そんな様子を笑みを浮かべながらゆっくりと近づく過去のラウラ。

 

「今でも心の片隅で望んでいたるんだろ? 今はあの男を倒したい。と思っている。だから絶対の力が欲しいって。ほら、この手を取れ。そうすればだれにも負けない力が手に入るぞ」

 

過去のラウラからの誘惑にラウラは逆らいたい。しかし。と葛藤が続く。すると突如空の一部に大きなひび割れが起き、そして割れた。

突然の事にラウラはその音のしたほうに顔を向ける。空に出来上がった割れた跡。其処には先ほど自身と戦っていた一夏が映っていた。刀を振るったりしている様子から、戦っていることが分かった。そして

 

『まったくふざけたもんだな』

 

そう言いながら刀を振るう一夏。

 

『おい、ボーデヴィッヒ! 聞こえているかどうか分らんが、お前はそのままでいいのか?』

『お前の目的は、姉貴を超える事だろ? こんなふざけた物に呑み込まれっぱなしでいいと思ってるのか? お前は意思はそんなに弱かったのか?』

 

 

『どうなんだ、ラウラ・ボーデヴィッヒ!』

 

真剣な表情で問う一夏の姿。すると割れた空が突如閉じた。

 

「言葉になんか何の意味もない。ほら、この手を取れ。そしたらお前は誰にも負けない絶対の力が「――れ」え?」

 

「黙れと言っている」

 

過去のラウラの言葉を遮るようにラウラは口を開く。

 

「全く、私もまだまだだな。…だが、土方のおかげで目が覚めた気分だ」

 

そう言い過去のラウラを睨みつけるラウラ。

 

「下らんことで私を惑わせるとは、つくづくVTシステムと言うのは恐ろしいものだな。だがな、もはや貴様の言葉なんぞに惑わされん」

 

「な、なにを言っている? 良いのか? お前は誰にも負けない力を欲していたんだろ?」

 

「確かに願っていた。だが、それはもはや過去の事だ」

 

そう言いながらラウラは右腕を上げながら何もない背中に向ける。

 

「今、私の望んでいることは、貴様と言う存在を叩き斬るという事だぁ!」

 

そう叫びながらラウラは背中に向けていた右腕の手を握る。すると其処にはなかった筈の自身の愛刀である大太刀が握られており、そのままラウラは目の前にいる過去のラウラ、いや、過去のラウラに扮したVTシステムを叩き斬った。

叩き斬られたVTシステムは何が起きたのか分からず、視線を四方八方に向けながら仰向けに倒れる。

ラウラは倒れたVTシステムにゆっくりと近づく。

 

「な、なんで? なんで? ち、力を欲していたはず? なんで?」

 

「確かに過去の私だったら、迷うことなく手を取っていただろう。だがな、力だけで最強にはなれん。故に貴様の提案なんぞ受け入れん」

 

そう言いながらラウラはとどめを刺そうと構える。VTシステムは殺されると思ったのか逃げようとする。しかし最初の斬撃で上手く立てず、地を這いずりながら逃げることしか出来なかった。

そして

 

「さぁ、私の大事なISから消え失せろ!」

 

そう叫びながらラウラはVTシステムに向かって有らん限りの力で大太刀を振り下ろす。どうすることもできないVTシステムは「やめてぇえぇえええ!!!」と叫ぶも、振り下ろされた刃は止まることなく叩き斬られた。

VTシステムが叩き斬られたと同時に、暗かった周囲がサァーと明るくなり、ラウラの視界は真っ白に包まれた。

そして気付けば医務室だったのだ。

 

 

「――――と言う訳です」

 

「そうだったのか」

 

ラウラの話を聞いていた千冬は短くそう返す。

 

「……すいません、織斑先生。また少し眠くなってきたようです」

 

「む、そうか。ならゆっくり休め」

 

「……はい」

 

そう言うとラウラはすぅ、すぅと寝息を立てながら眠りつく。千冬はそっと椅子から立ち上がり医務室から出ていった。

廊下に出た千冬。すると其処に一人の軍服を着た女性士官が現れた。

 

「失礼、Ms.織斑」

 

「ん? あぁ、派遣された者か。なにか?」

 

「ボーデヴィッヒ少佐は目を覚ましましたか?」

 

「あぁ、先ほど目を覚ましましたがまだ疲労が残っていたのか、また眠りについた。……ISの事か?」

 

「はい。少佐のISに外部インストールされたVTシステムは取り除けました。と言ってもほとんど破損状態でしたが」

 

「ん? 破損していた?」

 

女性士官の言葉に千冬は首をかしげる。女性士官も若干困惑した表情を浮かべながらも口を開く。

 

「はい。VTシステムのソフトウェアやハードウェアとか色々とクラッシュしている状態でした。私も結構違法システムは色々見たことがありますが、こんなクラッシュしている状態初めて見ました。一体何があったんでしょう…」

 

そう言い首をかしげる女性士官。そんな中千冬は士官の説明に、まさか。と言う思いが浮かぶ。それは先ほどラウラが言っていた朧げな記憶だ。その中で過去のラウラに扮したVTシステムを叩き斬ったと言っていた為、千冬はまさか本当に斬ったのか?と言う考えが浮かんだ。そしてもし本当に斬っていたならと思うと千冬は笑みを浮かべる。

 

「あの、どうかしたんですか?」

 

「ん? いや、何でもない」

 

「?そうですか。では我々は撤収します」

 

「ご苦労だった」

 

では。と言い女性士官は軽く会釈したのち後ろの方に待機してた他の士官たちと共にその場を去っていった。

 

一人残った千冬もスタスタと士官たちはとは逆の方へと歩いていく。そして人の気が無い場所に来ると窓辺に近寄り窓をおもむろに開け、窓辺に手をつきながら口を開く。

 

「それで、例のVTシステムを送った奴らを特定できたのか、束?」

 

そう千冬が言うと、窓の下の縁に腰を下ろす束が笑みを浮かべながらもち!と肯定する。

 

「あの屑どもの集まり(女性権利団体)と手を組んでた一部の女尊男卑派の軍人共みたいだよ。ちなみに証拠やらなんやらは彼女の父親に匿名で送っておいたよ」

 

「そうか、すまんな」

 

「いやいや別にいいよ。それより、うちの愚妹見張っておいてくれない?」

 

束の言葉に千冬は怪訝そうな顔を浮かべる。

 

「どうした急に?」

 

「あの愚妹、束さんにISを要求してきたんだよ」

 

「…あの馬鹿何を考えてるんだ」

 

「さぁ? 大方いっくんの周りにいる奴らを排除して自分だけいっくんの隣にいようとしてるんじゃない? 相変わらず馬鹿だねぇ、あれは」

 

「はぁ。わかった、出来るだけ監視しておくが、完全に見張っておくことは出来んぞ」

 

「うん、別にいいよ。ある程度はいっくんたちも適当にあしらうと思うからね」

 

「だったらいいがな」

 

そう言い千冬は窓辺から離れる。

 

「それじゃあお休み束」

 

「うん、ちーちゃんお休みぃ!」

 

そう言いながら束もその縁から飛び降りて、姿を消した。束の気配が消えた後、千冬も自身の部屋へと帰っていった。




次回予告
一夏だ。ボーデヴィッヒの怪我もよくなって復帰してきたみたいだ。それと同じころに姉貴たちから臨海学校の事を説明された。
海なんて久しぶりだなぁ。水着買いに行かねぇとな。

次回
臨海学校準備編!

次回投稿してほしい小説(詳細は活動報告の「次回作一覧」を見てください)

  • ①IS×ウォーシップガンナー2
  • ②IS×メタルギア
  • ③IS×オリジナルストーリー①
  • ④IS×オリジナルストーリー②
  • ⑤IS×クロスアンジュ
  • ⑥IS×タイムクライシス
  • ⑦IS×オリジナルストーリー③
  • ⑧IS×人狼 JIN-ROH
  • ⑨IS×東方project
  • ⑩IS×オリストーリー④
  • ⑪IS×R-type
  • ⑫俺ガイル×IS
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