Infinite Days~獅子の姫達とその勇者~   作:のんびり日和

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4話

白騎士事件から数ヵ月が経ったある日、一夏はカバンに教科書やノートを仕舞い席から立ち上がる。

 

「お~い、一夏! 今日一緒にサッカーやらねぇ?」

 

「あ~、わりぃ。今日姉ちゃんに早く帰って来いって言われてるんだ」

 

友人の五反田弾の誘いに一夏はそう返すと、弾は首を傾げながらその訳を聞く。

 

「なんで早く帰って来いって言われたんだ?」

 

「さぁ? ただ先週俺が通っている道場の館長から電話が掛って来てそれから暫く考え込んだ表情を浮かべてたな」

 

そう言われ弾はそうか。と返す。

 

「分かった。また明日、遊べたら遊ぼうぜ」

 

「おう。明日だったら大丈夫だと思うしな。じゃあな」

 

そう言い一夏はカバンを背負い教室から出て行こうとすると一人の少女が話しかけてきた。

 

「おい、一夏」

 

「ん? え~と篠ノ之だっけ? なんか用?」

 

一夏は其処まで接点が無かった篠ノ之箒に話しかけられ、曖昧な記憶の中から名前を引っ張り出し口にする。

 

「だっけ?とは何だ! お前自分の幼馴染の名前を憶えていないとはどいうつもりだ!」

 

そう怒鳴るも、一夏は怪訝そうな顔で首を傾げる。

 

「悪いんだけどさ、お前と俺って幼馴染だったのか?」

 

そう一夏が口にすると箒ははぁ?と口を開き茫然とした表情を浮かべる。

 

「あ、悪いけど俺、姉ちゃんと約束があるから」

 

そう言い箒の横を通り過ぎていく。箒は一夏の口から出たお前とは幼馴染だったのか?という言葉に茫然と立ち尽くし、一夏が帰って行ったことに気付いたのはほぼクラスから生徒が帰った後だった。

 

 

 

学校から走りながら家へと帰ってきた一夏。扉を開け中へと入りリビングへと行くと出掛ける準備を終えた千冬がソファーに座りながらテレビを見ていた。

 

「ん? あぁ、帰って来たか。それじゃあ行こうか」

 

「行くって、もしかして道場?」

 

「そうだ。先週土方道場の政宗さんから電話があっただろ?」

 

千冬の問いに一夏は首を縦に振る。

 

「ちょっと、お前の今後の事で話があるそうなんでな」

 

そう言われ一夏は首を傾げながらも千冬と共に家を出て道場へと向かった。

 

 

道場へと到着した2人は道場隣に建てられている一軒家へと向かいインターホーンを押す。

 

『はい、どちら様でしょうか?』

 

「織斑です。先週のお電話の件で伺いました」

 

そう言うと少々お待ちくださいと声がインターホン越しから聞こえ、暫くすると玄関が開かれ一人の女性が現れた。

 

「こんにちは、今日はごめんなさいね」

 

「いえ。政宗さんはおられますか?」

 

「えぇ、奥で待ってるわ」

 

そう言い女性は2人を家へと上げ、奥の部屋へと案内する。

 

「おぉ~、わざわざ来てもらって済まない」

 

奥の部屋では政宗が静かに座っており2人に気付くと、明るく声を掛けた。

一夏と千冬は挨拶を交わした後政宗の向かいに座る。

 

「さて、先週は突然あんな電話をしてしまって申し訳ない」

 

「いえ。あの、実は先週お電話を頂いた後、まだ一夏に先の件の事を話してないんです……」

 

千冬は申し訳なさそうな表情でそう言うと、政宗はそうか。と返す。

 

「話してない? 一体何の話?」

 

一夏は怪訝そうな顔で千冬へと顔を向ける。千冬は一夏に訳を話そうとするが、辛いのか口が開こうとしなかった。

 

「千冬さん、私が言おう」

 

政宗はそう言い一夏に顔を向けた。一夏は真剣そうな表情でこちらを見てきた政宗に対し、同じく真剣な表情で見据えた。

 

「一夏君、君が良ければウチの子にならないかね?」

 

「なんで俺が館長の子に?」

 

一夏は突然政宗からウチの子にならないかと誘ってくることに首を傾げる。

 

「……うむ、実は君がこの道場に入って日に日に強くなっていく姿が、亡くした息子の様に見えて来てしまったんだ。…先日妻の詠美が君の事を悠作と呼んだのは憶えておるか?」

 

そう聞かれ、一夏は首を縦に振った。それは数日前、一夏が何時もと変わらず道場に来て練習を行い、休憩時間の事だった。

政宗の妻、詠美が道場の門下生たちに冷たいジュースなどを運んできて、一夏に手渡す際に

 

「はい、悠作」

 

と言って手渡してきたのだ。直ぐに間違えた事に気付いた詠美は、ごめんなさいと慌てた様子で言い直した。

それが何度か有ったことを一夏はよぉく憶えていた。

 

「確かに何度か俺の事を悠作と呼んだことは憶えています。それほど俺とその悠作君とは似ているんですか?」

 

一夏がそう聞くと政宗は懐から一枚の写真を取り出し机の上に置いた。

 

「これが生きていたころの悠作だ」

 

そう言い一夏と千冬は写真を見ると、少しはねた黒髪にぱっちりとした目つきをした少年が写っていた。

 

「確かに、一夏に似ていると言われれば似ていると思えますが……」

 

千冬は一夏に似ている少年の写真を見せられ、少し心が揺れた。千冬は今の生活は満足とは行かないが何とかやって来れていた。だが、一夏には色々な苦労をさせてきた。日々の生活の為にバイトをしている為、夜遅くに帰って来る自分に文句を言わない一夏に千冬はいつも感謝していた。そう思うと一夏を政宗達の養子にするのは悪くない話だと思っていた。

その一方もう家に帰っても一夏が居ない生活が来る。今までの日々が無くなってしまうと言う恐怖が沸き起こり、手放したくないと言う思いもあった。

 

「なぁ姉ちゃん」

 

突然隣にいた一夏から声を掛けられ、千冬は顔を一夏の方へと向ける。

 

「俺、土方さんの養子になる」

 

「ッ!? ど、どうして養子になると言うんだ?」

 

千冬は突然養子になると宣言した一夏に驚きと困惑の表情で聞く。

 

「だって姉ちゃん、高校卒業したら教員免許を取りに大学に行くんだろ?」

 

そう言われ千冬は先程よりもさらに驚いた表情を浮かべた。

 

「な、なんで知っているんだ?」

 

「束姉ちゃんが言ってたよ。人に勉学を教えるのが得意だから教員になろうかなって呟いていたって」

 

そう言われ千冬は「あのお喋り兎がぁ!」と口から洩らす。

 

「大学に行くとなると、お金が結構かかる。そうなると今の生活がもっと苦しくなる。だったら少しでも軽くするには、俺が養子になればいい」

 

そう言われ千冬はうぅ~ん。と悩んだ表情を浮かべた。

そして一夏は止めと言わんばかりに口を開く。

 

「それに何時までも弟に頼って生活するより、自分一人で生活できるようになりなよ。何時までも俺、姉ちゃんの世話する気なんて無いよ」

 

そう言われ千冬はグゥッ!と胸を抑える。

 

「お、おま、お前、お姉ちゃんに一人で自活しろと言うのか!」

 

「そう言ってるんだよ、姉ちゃん。料理も出来ない、洗濯も出来ない、掃除も出来ない。そんな女性じゃあ何時まで経っても彼氏なんかできないよ」

 

そう言われガハッ!?と言って倒れ込む千冬。

 

「なんか言い返すなら聞くよ。けど俺の意思は変わらないからね」

 

そう言いながら一夏は詠美が出したお茶を飲む。

 

「うぅぅぅうぅぅう! ……はぁ。…政宗さん。…詠美さん」

 

座り直した千冬は若干涙目を浮かべながらも覚悟を決めたような表情を浮かべ政宗達の方に顔を向ける。

 

「ウチの弟を…一夏をどうかよろしくお願いします」

 

そう言い千冬は頭を下げた。

 

「ありがとう……!」

 

政宗と詠美も涙を零し、辛い決断をさせた千冬に謝罪と感謝の意を込め深々と頭を下げた。こうして一夏は、織斑一夏から土方一夏へとなった。




次回予告
一夏が土方家の子になってはや数年。色んな出来事がありながらも、剣術を磨く一夏。ある日、千冬に昨年優勝経験があるモンドグロッソにまた出場することが決まったと知らされる。昨年行けなかった一夏はその大会に行くことにした。

次回
モンドグロッソ

次回投稿してほしい小説(詳細は活動報告の「次回作一覧」を見てください)

  • ①IS×ウォーシップガンナー2
  • ②IS×メタルギア
  • ③IS×オリジナルストーリー①
  • ④IS×オリジナルストーリー②
  • ⑤IS×クロスアンジュ
  • ⑥IS×タイムクライシス
  • ⑦IS×オリジナルストーリー③
  • ⑧IS×人狼 JIN-ROH
  • ⑨IS×東方project
  • ⑩IS×オリストーリー④
  • ⑪IS×R-type
  • ⑫俺ガイル×IS
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