リジーの心に残る過去のトラウマ

「守るために強く」そう言い力を欲す彼女の冒険者として旅立つ少し前のお話

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苦痛に歪む表情と鮮やかすぎる赤



守るはずだった


守らなくてはいけなかった




私は守れなかった





どうしてあの時生かされたのか




数年経った今でも私の心はあの時の傷が痛み続けている


癒えぬ傷跡は何時までも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日は簡単な試験だった。

私達は冒険者として出る前に学校の最後の試験で4人1組になり実践形式の連携を取って指定された敵を倒して戻ってこれたら合格という試験をこなす為森へ入り順調にこなしていた。

 

 

「ねぇ、リジー、この4人だとあっという間に終わりそうね?」

 

「そうね!これならバッチリ!あとは最後の敵だけよ!」

 

今回の班のリーダーは私で

事前に皆の特徴と得手不得手を考え組んだ作戦が上手くいってるお陰か自然と隣に並んで走るあの子から明るい声が掛かる。

 

他の二人も表情は明るく私も自然と口元に笑みが浮かぶ。

 

最後のステージと指定された場所へ到着する、が異変を感じた。

 

先に口を開いたのはあの子だった

 

「ねぇ、おかしいわ…確か最後の敵って…アレよね…?」

 

指を指した先にいたのは既に倒された試験の相手の筈だった敵の姿で。

 

「どういう事…?」

思わず口から疑問が漏れる

それに微かに感じるこの異様な気配は…?

 

 

この時の私達はまさかこの森に普段は出ない強い敵が出現している事等想像すらしておらず。

 

「とりあえず、敵の状態を調べましょうか」

そう班のメンバーに言い倒れた敵の近くへ行く。

 

膝を付き倒れた敵の傷口を見る。

心臓を一突き、明らかにこの敵より強いなと感じつつも拭えぬ嫌な予感に心臓がどくどくと嫌な音を立てる。

 

「リーダー!」

メンバーの一人が叫ぶ。

ハッとして顔を上げると…

 

「…ファルネウス…?嘘でしょう?」

そこには死神の様な敵がいた。

授業で見た…確かAモブだった筈…

つい判断が遅れる

 

────ザシュッ

 

「!?」

刃の当たる音に目を向けるとあの子が突っ込んでいた。

「駄目!!下がって!!その敵は…!!」

言葉を言い終わるより早く吹き飛ばされるあの子。

班の幻術師の子が素早くヒールを飛ばす

とりあえずは助かった

が、

 

不味い。

攻撃を当てたという事は既に闘うか逃げねばこの場を切り抜けられはしない。

 

「逃げなさい!!今!!スグに!!」

 

咄嗟に班のメンバーに叫び敵の近くまで走りフラッシュをする

敵が一瞬怯んだ隙にメンバーを振り返りもう一度逃げろと叫んだ。

守らねば、その時それだけが私の胸を占めていた。

 

「リジーは!?」

 

「良いから急ぎなさい!!死にたいの!?私はあなた達が逃げたのが分かったらすぐ離脱するから!早く!!先生達のいる拠点に戻りつつリンクシェルでこの事を伝えて!いいわね!?」

 

口早に叫ぶと敵に向き直し武器を構える。

後ろで皆が走っていくのを感知すると一息つく。

これで安心とは言えないが一先ずメンバーの安全はどうにか守られた。

 

 

 

さてどう動いて逃げたものか…と相手を観察していた所で敵が先に動き真上に獲物を持った手が振り下ろされる。

剣で受け止めるも、

 

「ぐ…重い…!!」

片手だけなのに受け流す事も出来ず膝を付きひたすら耐える。力の差が明確なのだから当たり前だろう。

多分敵もそれを見越していたのだろう、

空いたもう片方の手を振り回し思いっきり吹き飛ばされ

、その先にあった大木に叩き付けられる。

 

「かはっ…」

 

地面に崩れ落ち、早く離脱せねば…そう思うのに思っていた以上のダメージに痛みで地面に蹲ったまま動けない。

敵はその間ゆっくり近付くとトドメを刺そうと武器を振り上げ…

 

これは死ぬな、と何処か他人事の様に感じた。

武器を振り上げる敵の動きがすごくスローモーションで

振り下ろされていくのをぼんやりと眺めていたが

 

 

────ザクッ────

 

私の視界に移ったのは自分に刺さった刃と敵。

 

ではなく、

逃がした筈のあの子が目の前で刺されている光景だった。

 

 

「え……」

 

 

思考が働かず意味の無い声が漏れる。

 

 

 

「ど…して…」

 

 

 

今必要なのは言葉じゃないのに。

 

 

「良かった…リジー…生きてる…」

 

 

嘘だ。

そう思いたいのに。

座り込んだ私の戦化粧の施された顔や胸に散ったあの子の血が、苦しげな声が、現実だと思い知らせる。

 

 

 

敵はトドメをさせたからなのか、何故か私達に興味を失くすと武器を引き抜き踵を返し去っていく。

 

 

武器を引き抜かれたあの子の体が支えを失って倒れ込む。

慌てて支えるも傷の状態からしてこれは助からないと悟ってしまう。

 

「ど…して!!あの時逃げろって!!私言ったじゃない!!

何故戻ってきたの!!」

 

悲鳴の様な声になる

私の頭はパニックだった

止血をしても止まらない血、段々と失われていく温もりに嫌々と駄々っ子のように頭を振る

 

「だって…私が…守りたかったから…あなたの命を…こんな所で散らす…訳に…は…」

 

「馬鹿!なんで自分の命もそこに含めてくれなかったの!一緒に生きなきゃ…!貴女これからなのに…!」

 

力無く笑うあの子の生気が少しずつ失われていく

お願い、誰か…

 

「ね、リジー…?

貴女は守るべきものが守りたい人達がいる…わよね?

私は弱い。でも一緒に学ぶ内に私も私が守りたいと思えるものを見つけたの。心が強くなれたの。それは貴女が身を持って沢山教えてくれたからなのよ?だからその守りたいものの為に私は…げほっ…動いたの…その結果がこれよ」

 

 

笑って話すあの子に傷を癒すことも運んであげることも出来ない自分がとても悔しくて不甲斐なくて…

 

「守れてないじゃない…私…目の前の貴女を今失いそうになってるじゃない!!」

 

「…違うわリジー。私は貴女にちゃんと守られていた。私は貴女の言葉を無視してここにいるの。そして…このまま死ぬの。でもそれで良い。だから……自分を、責めないで…生きて…沢山笑って生きなさいな…」

 

温もりの消えかけた指先で私の頬を一撫でするとするりと滑り落ちていく。

その手を握り締めた後私の目には優しく笑った後に目を閉じていくあの子の顔が映る。

開く事はない、と何処かで思った

 

 

恐る恐る心臓のある左胸に手を当てる。

力強く脈打っていた筈の音は、しない。

 

それを理解した時初めて私の頬に幾筋もの雫が伝った

 

声にならない声を空に叫ぶ

 

 

 

守る筈だった命を

守らなくてはいけなかった命を

守られて生かされて

 

 

自分を何度も恨んだ

初めて自分に施された血に染まる覚悟を示す化粧の意味を思い知らされた

 

 

誰も私を責めるものはいなかった。

 

 

 

 

数週間後

墓石の前にいた。

 

あの子が最後に散った場所に建てられた墓石の前で私は誓いを立てた。

「守る為に強くなる」と

この時私は能力を授かっていた

閉じこもっていた数週間の間に。

 

その間に自覚した

立ち止まってはいけない事。

前を向き続けなくてはいけない事。

弱音は吐けなくなると。

 

 

ならば強くなろうと思った。

守るために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2度と目の前で命を散らせない為に。

 

 

 

 

 

 

誓いの言葉と共に涙を。

 

 

 

 

終。

 

 

 

 

 




今回はうちの子リジーの過去の出来事についてでした

守る為に力をという彼女の原点でもあります


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