偽本使いの悪夢(ナイトメア) 作:燃え尽きた灰
オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル
タグ:バットエンド 手記 人類滅亡 文明崩壊 魔法 魔法陣 魔導書 魔王 勇者なんていなかった バッドエンド 魔法書 魔法使い チートなんて無かった
文明の終焉を見、新しい技術体系を得た人類。
これは新しい技術体系である魔法を得て、それでもなお滅びの運命を変えることは出来なかった人類の絶望の物語。
10年前、唐突に人々は魔法と出会った。それまでは、想像に過ぎなかった技術体系。
しかしそれを得た代償は、あまりにも大きかった。当時、地球上の総人口は100億人に達しようかと言うところまで膨れ上がっていた。それをあの「文明の終焉」の日を境に10億人弱までに減らしたのは、ひとえに「魔獣」と呼ばれる生き物が現れたためだろう。
「魔獣」、それは一見普通の動物と変わらない。しかし高い物理耐性―物理攻撃に対する耐性―を持ち、また後に魔法と呼ばれることになる不可思議な―科学的に説明できない―現象を起こせる点で普通の動物ではあり得なかった。
「文明の終焉」の日、それは丁度昼になろうか、と言う時間だった。突然、全世界の都市部、住宅街などの人が多く集まる場所に空間の裂け目としか言い様の無い大きな黒い、いや、黒くはなかっただろう。見えなかったのだ。そこにまるで何もないかのようになにも見えなかったのだ。透明と言う意味ではない。そう、それは言うなれば「空虚」がある、としか言い様の無い感覚だった。
そしてその空虚は少しずつ大きくなると、やがて中から大きな黒い球体を吐き出した。その球体は空中に留まり、やがて大きくなると表面から多数の小さな雫を滴らせながら身震いするように震えた。すると多数の滴は動物を形取り、その動物のようなものは人々を襲い始めたのだった。
この日だけで地球上の人類のおよそ7割が犠牲になったと言う。
その日から約2ヶ月が経った頃だろうか。突然全世界の電源とネットワークが復旧した。復旧させたと語る張本人の男は魔獣を解析し、魔法を見つけたと言ったのだ。人々は男が言う魔法を見て、微かな希望を覚えた。そして残った人々は少なくない犠牲を出しつつも旧アメリカ合衆国の西海岸に集まった。
そして魔獣に対抗すべく、「
男が発表した魔法は、紙に図案を書いて魔力を流す、と言うものであった。当時魔力などと言うものは認知されていなかった。そのせいか、魔法を使える人を増やすことは非常に難航した。
そうして対抗手段を得た人々は次第に魔獣を押し返して行く。最前線で魔獣と戦う魔法使いを、何時しか人々は「
とある少年は、魔導書使いに憧れていた。しかし、才能がなかったのだろう。夢破れ、青年へと成長した彼は妄執から、とんでもないものを作り出してしまった。偽本。そう呼ばれたそれは一見才能がなくても使える、優れた物に見える。しかしそれは、本に才能をスキルとして体系化した物を埋め込むことで実現していたのだ。魂の一部である才能を埋め込むには器がいる。
しかし、才能だけ埋め込まれた本と言う人工の器に魂が宿るはずがなかった。魂の無い器は言うなれば、霊的ブラックホールだ。そうなった器は、付近のありとあらゆる霊的存在を吸い込み、擬似的な魂を形成することで器を満たそうとする。ここで問題になるのは、擬似的な魂の性質は、構成する霊的存在に依存する、と言うことだ。当時の人類にはそんな事知る由もなかった。悪いことに、人間の社会に於いて霊的存在の大多数を占めるのは、不安、嫉妬、憎悪などの負の感情で形成されたものが大多数だ。何故なら人は、プラスの感情よりもマイナスの感情をより強く出すからだ。正確に言えば、
強力な自己暗示によって封印された記憶がやがて霊的存在―地縛霊などと言われる存在―へと昇華する。器を得た負の霊的存在は、やがて倒した魔獣の存在すら喰らい、青年が気づいたときには最早手の着けようが無い、強力な妖霊―怨念などの負の感情が形を得たもの―になっていた。
そして偽本は恐ろしいことに世界の魔獣達を統制していったのだ。
今もなお
人類に希望の明日はない。人類もまた、地球の歴史の中では
十年前の人類に言いたいことがある。我々の営みなぞほんのちっぽけなものだ。驕り昂る事無く暮らして行けばもう少し希望もあったのだろうか。今はもう何を言えども詮無き事である。
―O・M・ウィンガー著 『斜陽の人類』より抜粋―
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