成り代わりチチさんの離婚計画   作:ミカヅキ

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たいへん長らくお待たせしました…(汗)

ようやく過去編終了です…。


“衝撃”

「は――――――――っ!!!」

 ドドドドドドドドドッ!!!!!

「うをっ?!」

 先程よりも、威力・スピード共に段違いに上がった攻撃が悟空を襲う。

『これは匿名希望選手、もの凄い猛攻です――――――――!!!もはや、私の目には何が何だか分からない―――――!!!』

 その全てを(かわ)し、(さば)き切る悟空だったが、一撃一撃の“重さ”に思わず目を(みは)る。

「っ!オメェ、スゲェなぁ!!」

 思いがけない強者(チチ)の猛攻に、ワクワクと顔を輝かせる悟空とは対照的に、チチの眼差しはより鋭さを増していった。

(これだけ打ち込んでも、一発もまともに入らねぇなんて………!)

 分かってはいたが、やはり未来において何度となく地球を救う事になる男。その実力は生中(なまなか)なものでは無かった。

「っだったら、これならどうだべ?!」

 “(けん)”を解き、瞬時に拳にオーラを集中させる。

 流れるような“オーラ”移動、(すなわ)ち“(りゅう)”を駆使しての“(ぎょう)”。他の箇所の防御力は薄くはなるが、その分集中させたオーラによって攻撃力は格段に上がる。

 そして何よりも、渾身の攻撃を当てる事が出来るだけの(たい)(さば)き。

「っぐ…!」

 より鋭さを増した顔面への一撃は、本能で身構えた悟空により、クロスさせた両腕で防がれる。

 しかし、より一層強くなった打撃は、ミシリ、とその頑強な腕を微かに軋ませるだけの威力があった。

 そして、それによって一瞬出来た隙を見逃す程、チチも甘くは無い。

「せぁっ!!!」

 コンマ何秒、まさに“刹那(せつな)”動きを止めた悟空の、がら空きとなったボディーにチチの掌底(しょうてい)が綺麗に入った。

 ドッオォン…!

「ぐぇっ………!!!」

 打撃の瞬間に、“衝撃波”として叩き込まれた“オーラ”は、人体に入ったとは思えない程の鈍い音を立て、その鍛え抜かれた腹筋の更に奥、内臓を痛烈に揺さぶった。

『突きから間髪入れずの掌底――――――っ!!!これは綺麗に入った―――――――っ!!!』

 これこそがチチの“(はつ)”。対人、特に1対1の戦いにおいてこそ、その神髄を発揮する不可避の攻撃。

 名を“烈衝拳(れっしょうけん)”。

 攻撃の、まさにその瞬間に叩き込まれる、超振動と化した“オーラ”はどんな鉄壁の守りも通過し、()()に衝撃を伝える。今はまだ衝撃に留まっているが、極めればその瞬間にでも相手を内部から破壊させる事が出来るまでになるだろう。

 未だチチはその域には達せていないものの、直接内臓を揺さぶられた衝撃は想像するに余りある。

 一瞬にも満たない、わずかな隙を()かれた悟空は防御すら出来ずにまともに()()を喰らった。

 その衝撃は凄まじく、鍛え抜かれた悟空の体躯をくの字に歪ませて3m程斜めに吹っ飛ばし、反吐を吐かせた程の威力である。

 常人ならば、この一撃で昏倒し、2~3日は意識を飛ばしたままだっただろう。

 だが、相手は数年前に世界を救った程の武闘家‐孫悟空である。

 吹っ飛ばされながらも巧みに体勢を立て直し、武舞台のギリギリ端、場外を回避出来る位置に着地した。

『おっと、孫選手すかさず体勢を立て直して着地―――!!!しかし、ダメージは大きいか――――?!』

「ゲッホゲホゲホッ…!うぇっ………!!!お、おめぇ今の攻撃何だ?」

 盛大に咳き込み、口元を拭いながら涙目で尋ねる悟空に、チチもまた驚愕を露わにする。

「い、今のをまともに喰らっても倒れねぇだか…?!」

 昏倒は無理でも、ダウンくらいなら取れるだろうと想定していたのに、想像を軽く上回る頑丈さだった。

 そして、相手の力量を見誤っていたのは悟空もまた同じ事。

「へへっ、ヤベェな…。思ってたよりも全然(つえ)ぇ…!」

 ピッコロ大魔王を相手にするまでの準備体操と思っていたのに、自分の予想を遙かに超えて相手(チチ)は強敵だった。

 おまけに、防御し損なったからとは言え、先程の攻撃はこれまでに喰らった事の無い類のものである。

 想像もしない強敵、という嬉しい誤算に、口元に笑みが浮かぶのが分かる。出来る事ならば、このまま戦い続けたいが、今優先させなくてはならない相手は他にいた。

 先程の()()攻撃を立て続けに喰らっては、いくら自分でも身が()たない。

 残念だが、手っ取り早く終わらせる他無かった。

 相手の()()も気になるところではあるし。

(ワリ)ィな、おめぇとはもっと戦いたかったんだけどよ、そうも言ってられねぇんだ。」

「!」

 受身一択だった先程までとは異なり、構えを取った悟空に対し、チチもまた身構える。

 しかし、()()攻撃は、チチの予想の範疇を遙かに超えていた。

 ボッ!!!

「!!!?」

 ダァンッ……!!!

 ドサッ!

 一瞬だった。

 悟空が、チチに向かって無造作に突きを繰り出した、と思った瞬間、3m以上あった筈の距離をものともせず、その衝撃は彼女の華奢(きゃしゃ)な体躯を軽く吹っ飛ばし、観客席と武舞台を隔てる壁へと叩き付けていた。

 直後に地面へと倒れ込んだチチだったが、時間にして1秒も無い間に立て続けに体に走った衝撃に、咄嗟に状況を把握出来ず。

『っあ、こ、これは場外!!!匿名希望選手、場外です!!孫選手決勝戦進出決定―――――っ!!!』

 ッワアァアアアア―――――――!!!

 審判の宣言と、一拍置いて響き渡った歓声に自身の敗北を悟った。

『し、しかし今のは一体…。孫選手の攻撃は匿名希望選手に届いていないにも関わらず、孫選手の攻撃の瞬間、匿名希望選手はなす(すべ)も無く吹っ飛ばされてしまいました―――――!!』

「うむ…。悟空が繰り出した拳は、確かにあの娘には届かなかった…。しかし、その時に生じた衝撃波によって避ける間も無くあの娘を襲ったんじゃろう。それにより、あの娘は強制的に場外へと吹っ飛ばされてしまったのじゃ…!」

『な、なるほど…。』

 審判の疑問に、亀仙人が答え、同時にチチもまた自分の敗因を知った。

 まさか、“オーラ”ですらも無く衝撃波、つまりは“拳圧”によるものだったとは…。

 

「お、おい!大丈夫(でぇじょうぶ)か?」

(いつ)つつ…!さ、流石(さすが)だべ……!」

 駆け寄ってきた悟空が差し出した手を掴み、引き起こされながら強打した頭部を軽く擦る。

 生身だったら頭が割れていたかもしれない程の衝撃が走ったものの、“(てん)”が解けていなかったのが幸いだった。言わば“(てん)”は目には見えない、“オーラ”による不可視の鎧。

 そのお陰で、痛みはあったものの出血どころかたんこぶ1つ出来ていない。

流石(さすが)悟空さだべ…。オラが旦那様にと見込んだだけあるだよ。強くなってるとは思ってたけども予想以上だっただ。」

 一介の武闘家として負けたのは悔しいが、同時に自分の惚れた男が自分などものともしない強さを身に付けた事に嬉しさもあった。

 思わず、賛辞する顔にも笑みが浮かぶ。

「なぁ、オラ勝ったんだし教えてくれよ。おめぇ何者(ナニモン)なんだ?」

「……まだ思い出してくれてなかったのけ…。仕方ねぇだな、約束は約束だべさ。………オラ、牛魔王の娘のチチだよ。」

「チチ!!!!!?」

「あっ!!!」

「そ、そうかっ!!」

 チチの告白に、悟空が目を剥き、幼少期の彼女と面識のあったヤムチャ、観客席にいた亀仙人やプーアル、ブルマらも驚愕を露わにした。

「チ、チチって、あの、フライパン山の、オラと一緒に亀仙人のじっちゃんのトコに行った……?」

「んだ。」

 記憶を辿るようにおそるおそる本人確認をする悟空に、チチが頷く。

「………。…嫁に……。」

 確かに昔会った事のある相手だ、と思い出した悟空が更に記憶を辿る。

 そして、数瞬の(のち)

「あ――――――っ!!!思い出したぞっ!!!」

 会場中に響き渡るような声を上げた悟空に、仲間たちはもちろん、審判や観客たちの視線が集中する。

「言った!オラ、確かに嫁にもらいに来るって言った!!!」

「思い出してくれただか…!?」

 目を見開いてチチを凝視する悟空に、チチが期待の目を向けた。

「いやぁ、(ワリ)ィ…。オラ、“嫁にもらう”の意味を知らなくってよ~…。」

 気まずそうに頭を掻く悟空に、チチはすれ違いがあった事を悟った。

「んだら、悟空さ…。あの約束は……。」

 無かった事になるのか、と思わずチチの黒曜石のような瞳が潤む。

 目に見えて気落ちするチチの姿に、悟空も戸惑った。

 元はと言えば、自分が意味も分からずに承諾してしまった事に原因がある。

 約束は約束なのだし、1度口にした事を破るのは良くない事だ、と幼き頃から祖父にも言い聞かされて育った。

 ここは約束を守るべきだろうか、と悟空が口を開こうとした瞬間、チチが意を決したように叫ぶ。

「――――んだら!んだら、今考えてみてけれ…!」

「へっ…?」

 その勢いに、思わず口にしようとした言葉が引っ込んだ。

「オラ、悟空さとの約束の為にいっぱい修行してきただ!!絶対(ぜってぇ)良い嫁になるだよ!!!料理だって、掃除だって、裁縫だって……!()っせぇ頃から、悟空さの為に頑張ってきただ……!!そ、それにオラだって武闘家の端くれだもの、悟空さの修行だって手伝えるべ……!!!だから…!!―――――だから、考えてみてけろ……?」

 ギリギリ零れてはいないものの、涙を(たた)えた1対の美しい漆黒に思わず悟空が見惚れる。

 そして、考えるより先に口を開いていた。

「…んじゃ、結婚すっか!!!」

「っ!」

 その言葉に、弾かれるように顔を上げたチチの顔が、満面の笑みを浮かべる。

「悟空さっ………!!!」

「っうぉ!」

 飛び付くように抱き着いて来たチチを危なげなく受け止めながら、悟空はトクリ、と()()を感じ取っていた。

『お―――――っと!!孫選手、結婚してしまいました――――――っ!!!』

 ワアァアアアアアア―――――!!!

 ピーピー!!!

 思わぬ展開に審判が叫び、観客席からも祝いの歓声と、若い2人を(はや)し立てる口笛が飛び交う。

 仲間たちが唖然として自分たちを見ているのを感じながら、悟空は何となく腕の中の新妻を抱え直した。

(…ま、良いか……。)

 

 




原作のあっさりした感じを残しつつ、成り代わりチチさんの情熱を表現するのに1年以上かかりました……(汗)
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