清楚系ド淫乱アイドル『逢坂冬香』   作: junk

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第14話 ご褒美(激痛足つぼマッサージ)

 最近仕事をがんばっていたからと、プロデューサーからご褒美をもらえることになりました。

 内容はオーソドックスに『激痛足つぼマッサージ』です。

 いつの頃からかアイドルの汚れ仕事としてすっかり定着してしまったこれ、実はやりたがる人はそう多くありません。というのも、定着し過ぎてしまった結果『激痛足つぼマッサージをやるアイドル=落ち目のアイドル』なんてレッテルが貼られるようになってしまったんですよね。

 イメージを売るアイドルでそんなイメージがついてしまうのは致命傷です。

 少し前まで本格歌手派アイドルだったのに一度の激痛足つぼマッサージのせいでバラエティ路線に、気がつけばお馬鹿アイドル――なんて例もあるのだとか。

 そもそも大体の方が痛いことは嫌でしょうし、その姿が地上波に乗るのはもっと嫌でしょう。

 

 私ですか?

 大好きです。

 

 なんならこの機にバラエティ路線に変更したいです。

 プロデューサーは私の『清楚系アイドル』としてのイメージを大切にしているので、体を張る系の仕事がほとんどありません。

 今回も『えっ! あの逢坂冬香がこんな仕事を!?』的な宣伝をして、イメージをほとんど崩さない方向で行くそうです。

 ですがそうは問屋がおろしません。

 どんな仕事が来ても全力でやり切る女。どうも、逢坂冬香でございます。

 

 

 

 バスローブ姿に着替えて、準備万端です。

 施術用のベッドの脇には、頑固そうな初老の殿方が控えていました。あの方が本日の私のプレイ相手でしょうか。

 元気はなさそうですが、ねちっこい技を持っていそうで、期待が高まりますね。

 

「本日はよろしくお願いします」

「おう」

 

 私の挨拶に対してこの塩反応、ますます期待が高まります。

 ベッドに横たわって、いざ!

 私は初老の殿方に向けて足を差し出しました。

 

「……お嬢ちゃん、ただ者じゃあねえな」

 

 私の足に触れた瞬間、男性の目つきが一層鋭くなりました。

 

「俺ぁ普段はプロスポーツ選手を相手にしてる。アイドルも何人かやってやったことはあるが……星井美希や天ヶ瀬冬馬って知ってるか?」

「先輩です」

「なら話は早ぇ。お嬢ちゃんの筋肉はそこいらのスポーツ選手なんかよりよっぽど鍛え込まれてる。天賦の才ってやつだな。それでいて柔らけぇ。俺が世話したどんなアイドルよりお嬢ちゃんは洗練されてやがる。この業界も長ぇ、ちょっとは一人前になったつもりだったが……まいった。お嬢ちゃんみてえなのもいるとこにはいるもんだな」

「お褒めにあずかり光栄です。なんだか恥ずかしいですね。自分のことを褒められるのは」

「お嬢ちゃんはアイドルだろ。褒められ慣れてるんじゃあねえのかい」

「見慣れた朝日が、山の頂上から見るとまた別の感動を覚えるように、言葉というのも語り手によって別の意味がある、と私は思いますよ」

「口までうめえと来たか。神様ってのはたまに、とんでもねえ気まぐれを起こすもんだ。お嬢ちゃんは大成するよ。俺が保証してやる」

「ありがとうございます。期待に応えられるよう、非才の身ではありますが精進いたします」

「ん。……で、だ。お嬢ちゃん、本題だ」

「はい、なんでございましょう」

 

 彼は目を瞑り、残念そうに告げました。

 

「――痛えぞ」

 

 ひゃっほう。

 願ったり叶ったりです。

 

「お嬢ちゃんの筋肉は完璧すぎる。凝り、なんてものが何処にも見当たらねえ。となると、だ。凝りをほぐすマッサージは出来ねえ。そんでも俺はこの仕事を受けちまった。一度受けたからにゃ、男は突き通さなきゃならねえ生き物だ。だからお嬢ちゃんには“痛いだけのマッサージ”をしなきゃならねえ。すまんがな」

「お気になさらず。これも仕事ですから。全力で痛めつけて下さい」

「お嬢ちゃん……そんな蝶よ花よの見た目しといて、肝が据わってんなあ。いやいや、アイドルの性ってやつかね」

 

 哀れみやら悲しさやら、色々と入り混じった顔をした彼はゆっくりと私の足の裏に手をかざしました。

 そして、握る。

 最初は手のひらで包むように優しく……次はさするように動かして、そして遂に。

 

「――あっ」

 

 吐息が溢れる。

 これは、来るな。

 そういう予感がありました。

 

「あ〜っ。ん、んぅ、んっっッ! うわぁ、こんな……ううううう゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛」

 

 吐息は少しずつ、嬌声へ。

 指の動きが変化しました。これが、ツボ押し。わずかな動きなのに、まるでハンマーで殴られてるみたいに「ドス!ドス!」と私の弱点を突いてきます。痛みは神経を伝って頭に。殴られた脳はバカになってドバドバ快楽物質を垂れ流してます。あひゃまバカになるぅ! というやつです。

 

「は、はひぃ! ふううううっ! そ、そこは!? ――あっあっあっ!」

 

 私にはある種のスイッチがあります。

 オフになっている時はただの一般的なマゾヒストなのですが、一度オンになると超の付くマゾヒストになってしまいます。そうなるともう、何をされても快楽を感じるようになってしまうんですよね。

 今、私のがばがばドMスイッチを連打されてます。

 瞬く間にアイドルが知っちゃダメなものを覚えさせられて、真の快楽というものを強制的に身体に叩きつけられました。その証拠に足裏が「ほ〜ら弱点はここですよ」と言わんばかりに、私の意思とは関係なくピクピク動いて、はしたなくおねだりしてしまってます。

 

「ふぎゃっ! ひゅぐっ! あっン、んぅぅぅぅ!」

 

 しかし、流石に熟練の腕を持ってますね。私が痛がるスポットを的確に見抜いて攻めてきてます。いや、これほんとに凄いですよ。目にチカチカ花火が上がって、頭が茹だっちゃいそう。

 気がつけば私は泣き叫びながら、腰をよじらせていました。

 男の人は指を動かしてるだけなのにこの始末、徹底的に敗北の味を味合わされてます。こんなの女の子が知ってしまったら、アイドルは廃業ですね。

 

「はあ゛ぁあ! ほんとにすっごい、ですぅう゛! おごっ!」

 

 初対面の人、それも男性には聞かせてはイケナイ声。それが地上波に乗ってしまうとは……恥ずかしくて興奮しますね。

 最初に予想していた通りのねちっこい攻めは、私の足裏を開発しきっていました。もうとっくに屈服して「ごめんなさい!」と足裏土下座をしているのに、御構い無しにしつこく苦しめて来ます。

 

「ぐうううううううぅぅ゛っ゛!」

 

 あまりにも強い快楽を耐えるように、右手の指を噛みました。

 空いた左手はせめてもの抵抗として、目元を隠すように覆います。「見ないでっ!」というアピールをするため、そしてそれ以上に「恥辱で感じる私を見て下さい」というどすけべアピールのために。

 

「ぐぎゃあっ! はひぃ、〜〜〜〜〜〜ッ!」

 

 ひときわ強いツボ押しが来ました。

 か弱い雌である私の華奢な身体を蹂躙する、自分本位の雄の一撃。

 私の身体は飛び跳ねて、下っ腹が餌を欲して浅ましく痙攣、最後には潰れたカエルのような無様な姿を晒しました。

 

「はあ、はあ、はあ――ひひひ。ぅあ……終わり? うそ、まだ、ひゃるんですよねぇ?」

 

 指が止まってしまいました。

 ですが、これで終わりだとは思ってません。

 

 気がつけば私の肌には汗が滲み、髪が頬に張り付いています。時折口の中に入ったりして、我ながらとても艶やか。

 呼吸も早くて浅ましくて熱くて、まるで雌犬のようです。

 腹筋もすっかり癖がこびり付いてしまい、大きく波打っていました。

 

 後もう一押しで、私の身体に取り返しのつかない疵が刻まれる。

 確信にも似た予感がありました。

 それは相手も分かっているはず。

 ここで終わりのはずがありません。

 

「お嬢ちゃん、あんたすごすぎだ。指がもう持たねえよ」

「……えっ?」

「筋肉がすぐ対応しちまうんだ。一度押したツボがもう効きやしねえ。それどころか触ってもねえツボが勝手に先読みして閉じてやがる。負けたよ」

 

 もう一度、足つぼを押されました。

 そんな……さっきまでの痛みが嘘のように何も感じません。後ちょっとで完全に達せたというのに! これじゃあ生殺しです! 後生ですから、もう一度お願いします!

 

「無理だ。世界は広いな。まさかこんな身体を持ったお嬢ちゃんがいるなんてよ」

 

 何を一人で悟った顔を……!

 わ、私の気持ちを知りもしないで!

 

「冬香、残念だけどここまでだ」

「プロデューサー! でも!」

「冬香。仕方ないんだ。僕もこんなことになって残念だよ」

「悪ぃなお嬢ちゃん。もっと腕を磨いて出直すよ」

 

 二人して頭を下げられました。

 そんな風にされると何も言えません。

 こうして、私のご褒美ロケは終わってしまいました。

 

 

   ◇

 

 

「というわけで、欲求不満です」

「その報告をあたしにしてどうしろって言うんだよ!」

「とりあえず殴って下さい」

「嫌だよ!」

 

 次の日、事務所で暇そうにしていた奈緒に不満をぶつけました。

 ですが奈緒はピュアピュアなので、あんまり分かってくれません。

 

「とゆーかあれ、よく放送出来たよな」

「まあ、出演料先払いでしたから。番組の尺もありますし。流石に一部の音声を後で吹き替えしましたが……元の喘ぎ声から上品に「んっ、あっ」と堪えるような喘ぎ声に変えてオンエアしたみたいですね」

「あれで!? スタジオに戻ったときみんな唖然としてたぞ」

「私が可愛すぎたせいですね」

「下品過ぎたせいだ」

「それでもいいです」

「いいのかよっ!」

「やっぱりよくないです。私は清楚系美少女、そういうテーマで行くんでした。でもバラエティで身体は張りたいです」

「両立は無理だろ。……さっきから何してるんだ」

「これですか? 私の激痛足つぼマッサージの動画を切り抜いて、えっちな動画投稿サイトに投稿してます」

「なにしてるんだっ!? やめろ!」

「奈緒。私はアイドルとしての心構えが他の方に比べて出来てない方ですが、それでも、アイドルとしてやらなきゃいけないことってあると思うんです」

「冬香……ってなるか! それっぽいこと言っても、もう騙されないからな!」

「むう」

 

 止められてしまいました。

 まあ家に帰ってからやればいいだけの話なんですが。

 

「あ〜あ。ご褒美ロケが終わってしまったので、明日からまた普通の仕事ですよ」

「なんの仕事なんだ?」

「ドラマです。親に捨てられた三人姉妹が力を合わせて、貧乏ながら生きていくとか。そんな内容だったと思いますよ」

 

 ちなみに私は次女です。

 長女役は三船さん、三女は白坂さんですね。

 

「はあ〜。流石だなあ」

「何がですか?」

「そんなに仕事があってだよ。あたしなんかずっとレッスンと営業だけなんだ。ま、デビューしたてのEランクアイドルだから仕方ないけどさ。実際、冬香はすごいよなあ。この業界に入って、Sランクアイドルの凄さがよくわかったよ」

「私はMですけどね」

「そういうことじゃねーよ! こっちは真剣な話してんだぞ、これでも」

「はあ。でもまあ、そんなに気にしなくても大丈夫だと思いますよ。プロデューサーが担当したアイドルは、みんなBランクにはなっていますから」

「あの人けっこうやり手だよなー」

「ヤリ◯ン?」

「お、おま、ままま、何言ってんだー!」

 

 冗談はさておき、確かにプロデューサーは有能な方かもしれませんねえ。

 私の仕事は途切れませんし、ご褒美も絶妙なタイミングでいただけます。担当アイドルみなさんへのケアも欠かさず、ロケに行くときはスタッフ全員にお土産を買っていくとか。

 マメな一面もあるんですね。

 ますますタイプじゃありません。

 もっと雑に扱ってくれる人がいいんですよね。シンデレラ・プロジェクトのプロデューサーさんとか不器用そうで強面で、かなり好みなのですが。担当変えてくれませんかね。

 

「冬香、ひとつ聞きたいことがあるんだ」

「スリーサイズなら公式HPをご覧になってください。ブラジャーとショーツの色なら、今日は紫ですよ」

「わー! わー! あたしは何も聞かなかったからな!」

「奈緒は耳が遠いんですね」

「あたしをこんなに怒らせて何が望みだ?」

「殴って下さい」

「くぅ! 怒りたいけど怒ると喜ばせちゃうこの矛盾がぁ! ってそうじゃなくて、先輩アイドルの冬香に聞きたいことがあるんだよ!」

「はあ。なんでございましょう」

「あたし、その、もうすぐ初めてのフェスなんだよ」

「つまりヴァージンですか。奈緒もとうとう“初めて”を捨てて、その豊満な肢体を世に晒すのですね」

「言い方悪いな! 一応これでも不安なんだ! あたし大して可愛くもないし、歌も上手くないし……」

「太眉ですしね」

「眉毛はいいだろもう、眉毛はぁ! 個性なんだよ、個性ー!」

 

 ……むぅ。

 いつものツッコミにややキレがないですね。

 普通の人では分からないかもしれませんが、私には声色で分かります。

 少し真面目にアドバイスしましょうか。奈緒のツッコミがないと私の被虐趣味が満たされないから――ではなく、奈緒を安心させるために。

 私達は親友ですから。

 奈緒が困っていたら助けてあげたいですよ、やっぱり。

 

「気負わなくていいと思いますよ。たとえ負けても勝っても関係ありませんから」

「関係ない?」

「ええ。フェスはトーナメントではありません。一応勝った負けたはありますが、目的はファンを増やすこと。フェスに出場すれば――別に負けると言っているわけではありませんが――負けてもファンは増えるでしょう」

「そう、かな」

「はい。でなければ私がフェスをハシゴしている時に、辞退する方がもっといたはずです。負けても旨味があるから、みなさん勝負を受けたんですよ。もちろん勝った方がファンは増えるので、勝つに越したことはありませんが」

「た、たしかに。うん、そっか。なんか気が楽になった。……ありがと、な」

「いいんですよ。親友じゃないですか」

 

 奈緒はそっぽを向いてしまいました。

 でも、ふふ。頬が赤いですよ。その頬を掻く照れ隠しの仕草も変わりませんね。

 奈緒……。

 まったくあなたは可愛らしい。

 

 そういえばこの後ユニットでの練習ですね。

 もし奈緒がユニットを組むことになったら……私はメンバーに入れるでしょうか。

 万が一入れなかったとしたら、奈緒は他所の女と組むことになるというわけで。それは、我慢ならないかもしれませんねえ。

 

 そうなってみないとわかりませんが、ね。






ご褒美パートのところ「流石にこの描写はやりすぎた」って思った部分を消したら、文字数が半分くらいになってました。

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