Fate/eternal rising[girl or king]   作:Gヘッド

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はい!Gヘッドです!

今回はアーチャー登場?という回です(まぁ、知ってる人は知ってると思いますが)。はい、それだけです。




2話 アーチャー

 今夜は下弦の月。その光は明るく幻想的だが、どこか暗く寂しいものである。

 12時30分、俺は居間で寝そべりながらテレビを見ていた。夜更かしと言える時間、爺ちゃんは寝床につく前に早く寝ろと言ったが、その爺ちゃんが寝てしまえば怖いもんはない。なんでもし放題な自由なわずかな夜の時間を優雅に過ごしていた。

 

「さぁ、では○○さんのお宅の蔵の中の、200年前の豪商の○○家の金庫を開けてみましょう!」

 

 テレビからはどうでもいい話題が流れてくる。どうやら以前に豪商であった家の蔵にある立派な開かずの金庫を開ける内容らしい。鍵師の人が頑張って開けるらしいのだが、別にそれに対した興味はなかった。

 ただ、その金庫の中身には興味があった。金庫の中身、それはやはり大事なもの、特に金目のものだろうと俺は予測する。そこそこ名のある豪商であるのならそれこそ金庫に大判小判なぞ入っていてもおかしくなさそうだ。もしかしたら、一攫千金なんてことも。

 ああ、お金がほしい。この家には稼ぎ頭となる人がいないので、お金の工面するのが大変である。一応父母の貯金がそこそこあったらしいし、爺ちゃんの道場での稼ぎなどで賄えてはいるものの、やはり赤字であることに変わりはない。

 こういう状況だから、俺は金に対してうるさい人間に成り下がってしまったのだろう。ああ、俺が正しい人間性を手に入れられるためにも、ここでガッツリと何か当てて金が入ってくればいいのに。

 ああ、そういえば俺の家にも蔵があるな。庭の端っこにちょこんと建っている小さな蔵。もしかしたら、その蔵の中に大きい古びた金庫とかあったりしたら、金が入ってくるかもしれん。

 う〜ん、でも、俺、あの蔵の中に入ったことないんだよな。爺ちゃんからは近づくなと俺がガキの頃から言われていたから。まぁ、それがなんでだかは分からないけど。理由を尋ねても、爺ちゃんはまだ早いの一言で俺を一蹴するんだよね。

 まぁ、となると、やはり怪しいな。きっと蔵の中には金目のものがあるに違いない。そういや、爺ちゃんは俺に気づかれないように夜な夜な骨董品を持ち込んでるっぽいしな。よし、いつかその蔵の中の売れそうなものを一つくらい売ってやろう。

 

 そうして、俺が悪巧みを企んでいた時だった。事件が起こった。

 いきなりバンッと何かが爆発し、ガラガラと何か建物が倒壊するような音が聞こえたのだ。その音は多分結構近いところから聞こえたような気がした。きっと庭であろう。庭で何か建物が倒れたのだ。

 大きな音だった。真夏の花火のように心臓にドンッと張り手を食らわせるような振動。それが俺の幻聴であろうかと一瞬疑ったが、いや、それはないなという結論に至る。

 俺は現場に行こうかと考えた。一人で。爺ちゃんを起こそうかとも思ったのだが、爺ちゃんが今の音で起きていない可能性もあり得る。その場合、ぐっすりと寝ている爺ちゃんを起こすことになるので、それは何かと都合が悪い。だって爺ちゃんを叩き起こしたら怒られそうだし。

 ちなみに見に行かないという選択肢はもちろんなかった。だって、肩を叩かれたら振り向いてしまうように、興味本位とかそういう気になるという感情が湧き出る前にそれを目で捉えようとしてしまうのだから。

 

 —————だが、それはいけないことなのだと後々後悔することになるのだ。しかし、人間であるゆえに、どうしてもかわせない運命があるのである。

 

 俺は庭に出た。その庭はもう一軒家を建てられるのではないかというくらい広い俺の数少ないこの家の自慢の庭。

 最近市は中心部がやたらと都市化しているため、相対的に町の外れに住む人が少なくなっている。だから、地価がめちゃめちゃ下がっているのでこんなにも広くてもお金はそこまで取られない。町外れに住んでいる人の特権の一つだ。

 そんな大きな俺の自慢の庭に一人の男が立っていた。そして、その男の前には木の瓦礫が散乱している。そこは蔵が元々あった場所のはず。どうやら、蔵が崩れてしまったようである。その崩れた蔵はもう原形を留めておらず、もう、木材とコンクリートの破片になってしまっていた。

 男は倒壊した蔵を見ていた。家の中の光に男は照らされ、白い髪が晩秋の風に吹かれて揺れた。

 男はそんな瓦礫の山の中をいきなり(あさ)りだした。邪魔な木材を蹴り、大きな瓦礫を腕一本で楽々と投げ飛ばす。

 

「まったく、使い魔(サーヴァント)にも優しくしてほしいのだが。面倒だな」

 

 俺はその光景を目撃し、家の縁側で呆然としていた。その時の俺の頭の中は真っ白だった。家の蔵が見るも無惨に崩れていて、勝手に不法進入した男がその瓦礫の中を漁っている。何をしているのか分からないが、その男がヤバいやつだったのは即座に理解した。

 そう、理解したのだ。今自分の目の前で起きていることはヤバいことなのだと。だから、俺はそっと気配を消してその場から立ち去り、何も知らないままでいればいいということも。

 だが、そうはできなかった。なんてったって、俺の家だからだ。家のものが壊された。しかも、不法進入されて。それでちょっとわけがわからないけど、怒りのような感情が湧き出てきたのだ。

 頭では理解できても、身体は理解できなかった。だから、つい口がこう動いてしまった。

 

「誰だ、お前?」

 

 バカだ、と自分で自分のことを卑下する。なんでこんな時に俺はこんなことをしてしまったのか。言ってすぐに後悔した。

 男はその声を聞くと、ギョロリと瞳を俺に向けた。その瞳は蒼く美しいものだったが、男の眼光は鋭い針のようで俺の肝を突き刺した。その彼から発せられる殺意は俺の身の毛をよだたせ、そのあまりの恐怖に自分は腰をぬかしてしまった。

 俺はそいつと目を合わせた瞬間、人生で一番ヤバいって本能的に理解した。何だろう、怖いって感じた。それは何かされるから怖いとか、誰だから怖いとかそういう生易しいものじゃなくて、もっと直接的にただ怖いって、単純無垢な汚れのない恐怖がのしかかってきたのだ。

 分かりやすく言えば、死が間近に感じてしまったのである。

 男は俺を目にすると、「やれやれ」と言いながら俺の方に近づいてきた。ため息を吐き、小言を呟きながら俺との距離を詰めてくる。

 一歩、一歩と男が近づくごとに、俺の頭の中はこんがらがってくる。

 何なの?誰なの?何をしに来たの?何をするの?蔵は何で破壊されたの?破壊したのは誰なの?何で蔵を漁りだしたの?何で近づいているの?何でこんなにも怖いの?何で俺は怖気付(おじけづ)いているの?

 俺の頭の中には疑問がたくさん浮かんでいた。恐怖と動揺で狼狽し、それらの疑問を処理するのに時間がかかり、その間にまた新たなる疑問が呈される。

 足が動かなかった。動けと思っても怖くて動きやしない。頭だけが唯一俺の中で混乱しながらも動いている状態だった。

 男は近づきながら俺にこう語りかけた。

 

「お前は不運だな。俺はお前を殺さなきゃいけなくなった。すまないな」

 

 俺はその言葉を聞いていたが、理解などできなかった。いきなり殺すなんて言われて、理解など出来るはずもない。ただ、鵜呑みに出来ない今の目の前の現状をゆっくりと細く噛み砕きながら飲み込んでいく。噛み砕けなくても飲み込まねばならない。それは単に殺されるということは真っ先に理解していたからだと思う。

 

「お前は見てはいけないものを見てしまったんだ。まぁ、人生不幸がつきものだ。それは俺も経験をしている。だから、お前の気持ちはよくわかる。だから、お前のさっきの問いに答えてやるぐらいのことはしてやろう。我が名はアーチャー。聖杯戦争の被害を縮小するために探し物をしている。まぁ、今答えられるのはそれだけだ。あとは、あっちの世でお前にあったら色々教えてやる、だから死ね」

 

 俺が彼の言葉を理解する暇をも与えず、自身の名と聖杯戦争という聞き覚えのある言葉を口にした。が、その言葉も今の俺にはまた難解な言葉だらけで理解なんてしようがなかった。

 彼は腰につけていた(クロスボウ)を手に取ると、その矢の鏃を俺に向けた。銀色の鈍い光が俺の心臓を狙っていた。

 男は俺を殺そうとしている。しかし、その行為が逆に俺を一瞬で冷静にさせた。

 さっきまで何がなんだかわからなかった。どうしてこの男が庭にいて、どうして殺されないといけないのかなど分からないことだらけだった。頭の中が疑問符で埋め尽くされていたのだ。だが、弩を向けられて、自分が死ぬと悟ったのか、頭の中に浮かんでいた疑問符は掃除機に吸われたように全て消え去った。

 殺される。それは何もかもが終わりになると捉えていいだろう。なら、考えていても意味がない。『なぜ?』よりも『どうすれば?』を考えて、実行しなければならない。そうしなければ、きっと今ここで俺は死ぬ。そう感じた。

 男がクロスボウの引き金に指をかけた。俺は床に手をついて、膝を曲げる。そして、男が引き金を軽く引いたその時、俺はクロスボウを全力で(はた)いて向きを変えた。

 クロスボウの矢は俺に当たらずに地面へと突き刺さる。俺は男のクロスボウを叩いたらすぐに立ち、全力で横に回り込んだ。そして、今までの人生の中で一番といえるほど、右足に力を込めた。

 回路を開く。それは胸の心臓から全身に血を送るのと同じように、しかし意識してするものだ。俺の身体のどこかにある力の源から命を吹き込むように、血潮を流すように《魔力》を右足に目一杯、左足に少し注ぎ込んだ。

 

「—————我・身体強化(パワーエフェクト)‼︎吹っ飛べッ‼︎」

 

 溜めた力を一気に解き放つ。俺は全力で男の(おとがい)を蹴った。渾身(こんしん)の一撃—————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 —————のはずだった。完璧な立ち回り、絶妙なタイミング、一切のミスはなかったのだが。

 だがどうしてか、蹴った感触がないのだ。いや、蹴ってはいるのだが、相手が吹っ飛ぶとかそういう俺が期待していた状況にはならなかった。

 俺の足からつま先までが一つの鞭のようにした蹴りは男に止められたのだ。クロスボウを手にしていた腕で俺の蹴りを易々とガードしたのだ。

 それは俺に動揺を与えた。『強化』の魔術を施した蹴りを男に喰らわせたのに、男は生身、しかも片腕のみで防いだ。あまりにも予想外だったのだ。

 アーチャーは攻撃を防ぐと、俺の右足首を掴み、そして、そのまま俺を投げ飛ばした。俺は崩れた蔵の瓦礫の山と衝突した。

 

「痛っ、おい、マジかよ……」

 

 俺はふとそう呟いてしまった。身体の節々が痛かった。ただでさえろくに使用しない魔術なんてものを使って、それが身体に過度な負荷をかけているというのに、その上瓦礫に当たった衝撃は結構痛い。

 だが、その痛みよりもはるかに凌駕したのが、目の前の男の強さへの驚きであった。男は片腕で軽々と俺を投げ飛ばしたのである。凄まじい力である。さっきのガードといい、膂力といい、この男は並みの人間ではない、何か特殊な者であると悟る。

 

「ほう、お前、魔術師か?そうさな、まぁこの家には魔術師の一人や二人はいるであろうな。だが、『強化』の魔術で肉対戦とは、余程馬鹿な魔術師か、経験が浅いか」

 

「んだよ、悪いかよ」

 

「いいや、それはそれでいい。仕事が捗る」

 

 彼は右手にクロスボウを持ち、左手をその弩に置いた。すると、左手が青く光る。眩い光を放つ、炎のような揺らめきを持つ魔術にて精製した矢を装填した。そして、そのまま俺に向けた。

 流石にこれは殺される、とそう思わざるを得ない。だから、俺はなんとか助かろうと苦し紛れに手の届くところにあった木片を投げてはみた。だが、俺の投げた木片を男は軽く払い、役に立たずにした。

 

「抗うな。別に苦しめるつもりはない。すまんな」

 

 その言葉とは裏腹の、尖った鏃を見せつけられて、はい分かりました死にますなんてなるわけもない。かと言ってどうすることもできそうにないのも確かなのだ。

 だが、どうしたことか、ギラリと光るその先端が俺の心臓を突き刺すのだろうに、恐怖、いやそれとは少し違う興奮のような、腹の腎臓のあたりの奥底から湧き上がってくる何かに囚われてしまうような気がした。

 今この状況下において、絶対的な俺の死があと数秒後に訪れる。それは変わらない、変えることのできない確定事項であろう。

 だが、だが、しかしだ。俺はどうしてかその恐怖より、怯えよりも、喜びを密かに噛み締めたのだ。様々な感情に襲われたが、しかし一番に強かったのは可笑しなことに歓喜のような感覚だった。とち狂ったのか、と内心で考えるほどに。

 死の間際に考えることではないのだろうが、本能的に起こった。身体にそうなるように機能が搭載されていたのだろう。

 

 ニタリと俺は笑みを浮かべた。

 どうして俺はこの時笑ったのかわからなかった。ただ、何となくだが、この絶体絶命の場面で、おかしなことに何かを確信したのだ。

 

「まだ、まだだ。

 まだ、俺はこんな所で死ねねぇよ!」

 

 男は俺を変な奴だと言った。気が狂ってしまったのだろうと思ったのか、申し訳なさそうな顔をしながら、引き金を引いた。

 眩く青白い光を発する矢は彼の持つクロスボウから放たれた。自分への死の宣告、それが即座に俺の胸を穿つのだと知っていた。だから、クロスボウの弦のしなる音を聞いた時、本気で死にたくないと願った。

 

 いや、死ねないのだ、こんな所で。

 

 まだ、俺にはするべきことがあるだろう。

 

 それは、きっと—————

 

 

 

 その刹那の中でふと全身に痛みが走った。ドンッと何者かに突き落とされたかのような衝撃だった。

 だが、しかし、それは決して矢で胸を穿たれたものなどではない。なぜなら、まだ矢は届いていないのだから。

 ならば、この痛みは何なのだろうか。じわりと身体が焼けたように熱かった。とくに片方の手の甲が異様に熱く感じた

 そう思ったその時だ。俺の目の前の、矢との間の空間に緑色に光る粉のような、粒のような、俺が今まで見たこともないものが突然発生した。その光る粒子の中から鈍い鉄色の鋭利な金属が飛び出てきて、矢を弾いたのだ。

 俺はそれを見ていた。何が何だか分からないが、その刹那の中での運命を間近で目にしたのだった。

 だが、それで終わりではない。その粒子はまた大きく広がり、人の姿のように形作られたのだ。そして、その粒子の塊は人へと変貌したのである。それはきっと魔術によるものなのだと多少の魔術を使える俺はすぐに理解した。

 粒子が変貌した者は少女だった。墨のように深い真黒の髪、サファイアが埋め込まれた青い瞳、緑を基調とした服装をした、俺と同世代か一つ上か下かというくらいの女の子だ。

 しかし、可愛らしいその姿には似つかわしくない、金色の指輪を身につけた手先の爪の中が青黒く色付いていて少しだけ荒れた手に、剣を一振り持っていた。若干剣身の短い剣。黒灰を被せたかのように黒い剣で、彼女はアーチャーの放った矢を弾き飛ばしたのだ。

 

 突然現れた少女は辺りをキョロキョロと見回す。そして、彼女以外の当事者が俺と男の二人であると知ると、何か理解したのか、男の方を向いた。

 

「えっと、あなたが私のマスターですか?」

 

 そう尋ねられた男は一瞬呆気にとられたように目を丸くし、それから呆れるように笑い、ため息を吐いた。

 

「俺か?俺ではない。俺はお前と同じような類の者だ」

 

「えっ?あ、じゃぁ……」

 

 今度はこちらを向いた。

 

「私のマスターはあなたですか?」

 

 俺はその彼女の質問に答えられなかった。いや、答えようがなかったのだ。そもそも今自分がこうして壊れた蔵の瓦礫の所で絶体絶命のピンチというまずそこの時点で訳がわからないのに、その上急に女の子が目の前に現れて俺がマスターというものなのかと問いかけてくる。いや、訊きたいのはこっちだってんだ。

 とりあえずよく分からないので、俺は首を横に振った。すると、少女は不機嫌そうに「えぇっ」と呟くと、また辺りを見回した。

 

「えぇっ、いないんですか?私のマスター。じゃあ、私はどうしてここにいるの?」

 

 彼女にとっても思わぬ事態なのだろう。戸惑いながらどうしようかと彼女は迷いを顔に出した。そしたら、アーチャーはそれを見かねてか、少女に事の真相を話す。

 

「おい、お前のマスターはあれだ」

 

 とかなんとかいって、彼は確かに俺のことを指差した。まさかのご指名に一切状況理解のできていない俺は自分のことを人差し指で示すと、男は首を縦に二回振った。

 

「えっ、あっ、え?あっあ、俺がマスター?みたいです。ハイ」

 

 もう何が何だかさっぱりだが、とりあえず白玉のように綺麗な肌をした彼女の顔を曇らせたくないと思った俺は自分がそのマスターとかなんとかであるらしいことを報告する。彼女は困惑しながらも俺がマスターであると分かると、深々と頭を下げた。

 初対面の人にいきなりそのようなことをされては一応これでも礼儀を重んじる日本人である以上こちらも頭を下げねばなるまい。

 

「あっ、どうも」

 

 その間に流れる空気はなんとも絶妙な空気であることか。互いに口数を減らすような気まずい空気はその場にいる三人に共通の感覚を抱かせた。

 

 

 

 

 

 

 ……え、何これ?

 

 

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