Fate/eternal rising[girl or king] 作:Gヘッド
え〜、今、読まなきゃいけない漫画が30冊、やらなきゃいけないゲームが3作、見なきゃいけないアニメが2作も溜まっている状況です。
いや、大変すぎて全然進みませんね。日々の生活に、漫画やらゲームやらを消化し、さらに小説作りをやらねばなので。まぁ、楽しいですけど。
うん、ということで、今回の前書きは終わり!はい!
ということで、是非お話の方も楽しんでいただければなと思います。
茜色の夕空が頭上に広がっている。途切れ途切れの薄い雲が浮かんでいて、下を黒い鳥が飛んでいる。段々と茂っていた草が消え始めており、冬がもう来るのだなと感じてしまう。
学校からの帰り道、ちょいと寄り道をする。あそこに寄ってみるのは久しぶりである。最近あんまり行ってないので、ちょっとだけ行きづらいけど、まぁしょうがない。セイバーのご要望に応えるためである。それに何より俺の身の安全のため。
俺たちは神零山に立ち寄った。
「……あれ?山ですか?人に会うんじゃなかったんですか?」
「そうそう、この山の中で。あ、あと、人じゃなくて幽霊だから」
「あ〜、はい、ええ、分かってます。分かってますとも、はい」
そう言いながら落胆する彼女は印象的だった。幽霊が幽霊の存在を嫌がっているのだから。彼女にとって自分と自分以外の幽霊は違うのだろうが、俺にとっては彼女もそうでない幽霊もただの幽霊だ。
つまり、そもそもなんでこいつが幽霊に対して怖がっているのか、そこが理解できない。
肩を竦め身を縮こませている彼女の姿はなんと小さいものか。俺を救ってくれたあの瞬間の彼女はどこへ行ったのやら。
晩秋初冬の山の中。冷たい秋風に洗われて禿げた木の間を二人で歩いて行く。サクサクと地に落ちた赤茶色の葉を足で割る。幾層にも紙が張り付けられたような木の幹に触れるとパラパラと乾燥した皮が剥がれ落ちる。
「うぅ……」
俺の後ろには身を縮こませ辺りをきょろきょろと警戒するセイバーがいた。彼女はしっかりと俺の背中を掴んでいるのでスゴく歩きづらい。
「あのさ、背中離して」
「えっ⁉︎あ、はい、すいません」
彼女は気づかぬ間に俺の背中を掴んでいたようで、それに気づくと大げさに腕を振って後ろは仰け反りながら手を離した。しかし、掴むものがなくなると怖くなってしまうのか、辺りを見回してからまたそーっと寄って来た。
「いや、何なの、ビビりやがって。お前、幽霊だろ」
「しょうがないじゃないですか、幽霊怖いんですから。あと、私は幽霊じゃありません。英霊です」
「いや、幽霊だろ」
「違いますよ。そういう怖いのじゃありません」
「銃刀法違反のくせによく言えるな。っていうか、お前、霊体化できるだろ、霊体化しろよ」
「え?霊体化ですか?いやいや、意味ないですよ霊体化しても。幽霊も霊体なので、霊体化した所で幽霊に気づかれますから……」
「あっそ、ドンマイ」
「ええ!なんと投げやりな!もう少し心配とかしてくれないのですか⁉︎」
「俺が?」
「はぁ〜、本当、つくづく酷い人です。どうして私のマスターがこんな人なのか」
彼女はぶつぶつと愚痴を言う。しかししっかりと俺の後を付いてくる。
これは何だ?ツンデレという奴か?そう思ったので振り返って彼女を見た。
「……え?何ですか?急に振り返って」
「……いや、んな可愛いわけねぇか」
「はぇ?ええ?何です?何で今私ディスられたのですか?」
いちいち彼女に反応するのはダルイので、彼女をとりあえず無視した。彼女は無視されたと分かると、頰を膨らまし不満の表情を浮かべた。
だがしかし、それでも付いてくる。それを見て彼女は本当に聖杯戦争という殺し合いをしたいのだろうと思えた。
俺と同じくらいの歳の女の子が、殺し合いを。そう思うと不思議なものだ。俺は男で、彼女は女。通常こういう時、男が戦に目を輝かせ、女が頭を抱えうずくまる。今の俺たちはその真逆だ。現実は奇なりなどとはよく言ったものだ。だが、今の俺たちはその奇によく当てはまっているのだろう。
それから少し歩いて目的の場所に着いた。そこは山の中にしては平らな地面が続いた少し広い場所。夕焼けの赤い炎のような光が大きな大樹の切り株や細く大人の人なら手折ることができそうな木を照らすように差し込んでいる。
「ここが目的地だ」
俺が彼女にそう言うと彼女は「ん?」としっかりとクエスチョンマークを返した。キョロキョロと辺りを見回し俺に再度確認をする。
「いや、ヨウ、誰もいないんですが……。えっ、ここです?」
「うん、ここ」
「いや、誰も—————」
「そりゃそうだろ。幽霊なんだから」
幽霊、その言葉を聞くと彼女は気味悪そうに辺りに気を配りながら退いて俺の服の肩の部分を掴んだ。
「ええぇー、ちょっと待ってくださいよ、え、本当に?やっぱり本当に?マジもんの幽霊ですかっ⁉︎」
「どうしたんだよ、急に小声になって。あと、マジもんの幽霊かどうかは知らんわ。あいつが自分で幽霊だって言ってたからな。まぁ、自称だわ、あっ」
「いやー、でも、なんか、嫌な予感がしますよ。そう、嫌な予感。なんか、誰かから見られている感じが……」
「ああ、そうだなそれは私も分かる。幽霊って後ろからドンッてくるからな」
「はい、いや、本当そういうのは嫌ですよね」
「でも、ヨウなんか小さい頃「うわぁ!」って豪勢に驚いていたからな」
「ええー、何ですか。それ、今と違って可愛い……です、ね—————」
彼女は段々と青ざめてゆき、死んだ表情に変わってゆく。そして、ゆっくりと後ろを振り返った。
「ワァッ‼︎」
「わぁぁぁぁぁぁぁっ!」
セイバーは振り返って後ろでスタンバッてた女を見るや否やすぐに驚き飛び跳ねて、俺の背中に回り込んで隠れた。
「うわぁぁぁぁぁっ!おばけぇッ‼︎」
「いや、お前もだろ。何ビビってんだ、こいつ」
背中越しにガクブルと恐怖で身を震わせているのが伝わる。その震えは尋常じゃないほどで、今俺は振り子みたいに左右に揺らされている。
「はぁ〜、まったく、おい、鈴鹿。やめてやれよ、こいつクソビビリだから、驚かすなって」
「む?ああ、すまない。久しぶりの来訪だからな、つい張り切ってしまった」
彼女はそう言い訳して微笑んだ。
「いや、ここは何にもないからな。剣技を磨くことぐらいしかできない。だから、こう誰かが訪れると遊びたくなるのだ」
「いや、そのお前の行為のせいでここ心霊スポットだからな。マジ、そろそろやめないとバレるぞ」
「まぁ、別に撮られたりしたところで、そいつらを斬り殺せば—————」
「待て待て平和に平和に。どうして死生観というか、そういう人の殺しについて緩いんだ。やめろやめろ」
はぁ〜、本当こいつと話してると疲れるわ。だるいからなぁ〜、こいつ。だから、ここに来るの面倒いんだよ。
俺が目の前の女侍と話していたら、俺の後ろで怯えているセイバーがこっそりと彼女の顔を盗み見る。しかし、ちらりと見て、すぐに彼女は固まった。
「……い」
「ん?何だ、どうした、セイバー」
「いや、その、綺麗な人だな、と思いまして」
『綺麗な人』、固唾を飲んだ彼女のその言葉に俺と目の前の女侍は目を合わせた。そして、笑いが腹の底からフッと殴られたかのように湧き上がってきた。
「あははは、お前、綺麗だってよ。ウケる」
「ははは、そうだな、綺麗だなんて言われたのは久しいな」
「……え?な、何で笑うのですか?いや、私は思ったことを言っただけでして……」
「いや、別に馬鹿にしてるわけじゃねぇよ。ただ、やっぱみんな同じだなって思ってな。こいつ、美人だなって感想、やっぱみんな抱くもんだな」
そう言ってまた笑いがぶり返してきた。しかし、笑いの真相が分からない彼女は首を傾げている。
「いや、こいつ、そんな綺麗だなんて言われるほどいい女じゃねぇから」
「え?そういうことですか?いや、でも、お綺麗ですよ?」
「うん、俺も初めてこいつを見たときはそう思ったよ。うん、でも断言するわ。こいつはそんな言葉、一切似合わないやつだって」
「そうだな、私はそういう言葉は似合わない。寧ろ質実剛健な女剣士だな」
「ええ、ご自分で綺麗じゃないって認めるんですか……?それに、自分で質実剛健って、それはそれでなんかおかしいような……」
「まぁ、こいつ、こういう奴だから。まぁ、適当にパパッと流しとけばいいから」
「ヨウは人をゴミかなんかだと思って接してませんか?」
「いや、お前もこいつも人じゃねーし。っていうかゴミとか思ってねぇから。いや、石ころぐらいか?」
「それ、全然変わってませんよ?グレードそんなに大差ありませんから」
「何だ、夫婦漫才か?」
「ちげーよ」
「違います!」
俺とセイバーが全力で否定すると、彼女はまた愉快そうに笑い、そしてちらりと俺のことを見てから体の向きを反対にして俺たちに背を向けた。
「……まぁ、こんなところで話をしていてもなんだ。とりあえず、こっちに来い。腰をかけて話そう」
彼女は小さな幹の切り株に腰をかけた。俺たちも大きな幹の切り株に腰をかけた。
「あ、じゃあ、まず、こいつを紹介しないとな。こいつは鈴鹿。俺が言ってた幽霊のことだ」
「え?この方が幽霊ですか?幽霊っぽくは見えないですが……」
「まぁ、見た目はな。でも、ほら、足元、透けてる」
「あ、本当だ。幽霊だ。……でも、そんな怖くはないですね」
「まぁ、初対面だしな。最初はそんなもんだろ。ちなみに、俺もそう思ってた」
そう、俺も初対面の時は、すごく綺麗で優しそうだなと思ってたとも。そりゃ、認めるのは悔しいけど、実際見た目は良い。雪のように美しい肌、流れるようにたなびく艶のある髪、くっきりとした目鼻立ちに、スラリとした容姿。その上、上品なオーラを出している彼女はまさに大和撫子とでも言えるだろう。うん、そこは認める。
だが、こいつはそんな美人の化けの皮を剥がしたら鬼である。鬼、いや、そんな生易しいものではない。悪鬼羅刹の大妖怪並み。サタンだな、うん、サタン。
彼女の宝石のように美しい瞳は針のように鋭い眼光に変わるし、その細い腕からは信じられんようなパワーが出る。いや、マジ、大魔王だよ、ホント。
「おい、ヨウ、どうした、人のことをじっと見つめて。惚れたか?」
「お前に惚れたら全世界の人に惚れてまうわボケ。んなこと、できるか」
「なら、その子……、セイバーと言ったか?その子はどうだ?いけるか?」
彼女にそう聞かれたので俺はセイバーの顔をじっと見た。見つめられた彼女は少し照れながら顔を隠す。その態度なども含めて査定した結果は
「あ〜、ムリだな」
堂々のお断りである。その発言にセイバーは驚きを隠せない。
「えええ?本人の目の前で堂々と言いますかね、それ?というか、ムリ?嘘ですよね?私、割と綺麗な方だと思っていたのですが」
「いや、それは自惚れすぎだ。そんなでもない。それと、なんか態度がウザいな。目障り」
「め、目障りって酷くないですか?それに、そもそも出会ってまだ1日も経っていないのに、よく言えますね、失礼極まりないですよ⁉︎」
俺の発言にセイバーが腹を立てていると、それをなだめるかのように鈴鹿が割って入る。
「まぁまぁ、確かにウザいかもしれないが、それはそれで味ではないか?」
「え?鈴鹿さん、ウザいについては何にも否定してくれないんですか?」
「ああ、まぁ、実際ウザそうだからな」
何かが割れる音がした。初対面の鈴鹿にも言われてしまった彼女は心が壊されてしまったのか、急に泣きべそをかきうずくまりながら地面に落ちている茶色い木の葉をビリビリと破きはじめた。
「いいですよ、どうせ、私なんて、ウザい女ですよ……」
「あ、おい、ヨウ、なに女の子を泣かせているんだ」
「いや、お前も共犯だろ」
とりあえず彼女を泣き止ませないと話が進まないので彼女を適当にあやす。
「ううぅっ……、扱いがぞんざいぃ……」
と彼女が言うので、もう少し丁寧にあやしてやる。中々にセイバーは肝の座ったクソ女だと理解した。
「で、お前たちは何をしに来たんだ?最近ヨウはめったにここに来なかったのに、今日来たということは何かあって来たんだろう?」
「おお、そういやそうだった。本題を忘れてセイバーの虐めに興じてしまうところだった」
「いや、何で私の虐めに興じるんですか。ホント、ひどいですね、ヨウは。ああ、でもはい。私たちは鈴鹿さんに訊きたいことがあって来たんです。そうですよね、ヨウ?」
「うんそう。訊きたいことがあったんだよ」
彼女は面白そうなことだと思ったのか身を乗り出した。
「ほう、尋ねたいこと。それは、何だ?」
「ん?ああ、まぁ、簡単に話すとだな……」
それから彼女に俺たちが今抱えている問題について話した。セイバーが現れたこと。俺とセイバーの奇妙な関係のこと。もちろん、聖杯戦争のことは話すなってセイバーに言われていたからその単語は話の中では出さずに遠回しに説明した。
「ああなるほどな、聖杯戦争か」
「うんそう、聖杯戦争……って、あれ?聖杯戦争?俺、聖杯戦争なんて言ってないけど」
「なんだ、違うのか?」
「いや、違くないけど、え?なに?知ってるの?」
「ん、まぁ、少しな。聖杯戦争は昔から行われている行事だからな」
「え?聖杯戦争って行事だったんですか?サーヴァントである私も初めて知りました」
「いやいや、私が生きていた頃は陰陽師の奴らが妖怪を使役して戦うものだったが、まぁ、時は流れれば形式も変わるものだな」
彼女はそう言うと担いでいた二振りの刀から一刀選び、セイバーにその刀の
「まぁ、とりあえず立て、剣士の使い魔よ。そして剣をとれ。まずは手合わせを願いたい」
彼女の持つ刀がギラリとした強い金属の輝きを放っている。セイバーはその威圧に少し尻込みをしたが、すぐに立ち上がり剣を手にした。
「おいおい、お前らちょっと待て。なんでチャンバラする流れになってんだ。まずは今の問題についての話し合いが先じゃね?」
「ああ、そうだな、それは確かに重要だ。だが、正直、私はお前ら二人が少なくともすぐさま望んだように別れる
彼女は刀を構えた。右手を柄の腹に、左手を柄の尻に当ててすっと背筋を伸ばして歩幅を半歩開ける。いつでもセイバーからの攻撃に対して受け答えるという姿だった。
「なるほど、そうですか。私はてっきりただの興味本位で私の力量を知りたかったのかと思ったのですが……。意外とヨウを想っているのですね」
「ああそうだな。割と俺も興味本位で刃を交えたいだけかと思ってたわ」
「いや、私はそんな女ではないぞ。私をなんだと思っていた?」
「綺麗な女武士ですかね」
「ガチムチ鬼武者だろ」
俺がそう言うと、彼女は手に持つ刀よりも鋭い眼光で俺を突き刺した。そのあまりの怖さに自分の言ったことは誤りではなかったと思いながら口を閉じた。
「でも、そういう理由でしたら、はい、是非受けさせていただきます。あ、まぁ、力量の差は歴然と違ったりはするかもしれないですけど……、はい、その時はすいません」
セイバーのその言葉に鈴鹿はにやりと笑みを浮かべる。
「何だ?それはつまり私がお前に大差をつけられて負けるということか?随分と堂々とした勝利宣言だな。ハッ、それは面白い」
「え?いや、別にそういうことではなくてですね……、ええ、まぁ、その、言葉通りの意味です。はい、もしかしたら、私が思っていたよりも弱いかも……、なんていうことが起こるかもですね、はい、そういうことです」
俺を守ってくれたあの時のセイバーとは違う弱気な姿勢に鈴鹿は疑問を抱いた。
「ん?お前は剣士の使い魔だな?」
「え?あ、はい」
「ああ、そうか……。それなら、いいが……」
とりあえず鈴鹿はその疑問をどこかに置いておく。その疑問はすぐに分からずともよい。それよりもまず、どれほどの者なのか見分けることが先決であった。
両者は互いに自分の剣を持ち構えて、10寸ほど離れた。二人の間に幾許かの静寂が流れる。晩秋の風が囁いて、地の茶色い木の葉が蠢くのが聞こえた。
「……いつでも来ていいぞ」
鈴鹿の言葉にセイバーはこくりと頷く。彼女は深く目を閉じた。また風が吹いた。彼女は目を見開き、そして高らかに叫んだ。
「参ります!」