登場人物:デスとハイエロファント、ジャスティス、ヤング(リトル)・フォーチュン、ワールド、タワー、エンペラー
注:台本形式読み物です。流血シーンあり。
pixivにも、同一内容を投稿しております。
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デスとハイエロファントの物語:REBOOT
【 目覚めよと、呼ぶ声が聞こえ 】
★ マジカルランド中央・フォーチュンの居城
低い黒雲が常に掛かる、フォーチュンの居城。その上層階。
橙色のランプが等間隔で並ぶ薄暗い廊下を、歩いている人物。赤髪の長髪、ツインテールの髪型。
ヤング(リトル)・フォーチュン、気分の優れない表情を貼り付けている。
時折立ち止まり、頭を軽く押さえる仕草。
フォーチュン《おかしいのう・・・今日は、眩暈までしておる・・・》
ふと、窓から外に目をやるフォーチュン。
眼下には、緑の芝が広がる庭がある。ハッ、と立ち止まってガラス越しに見下ろす。
フォーチュン《タワー・・・おらんのか? そんな筈は・・・》
突然。
ガツン!と、背中に強い衝撃。水平に、棒のような物で殴られた感覚。
フォーチュン「ぐあっ!」
一瞬身体が浮くが、すぐに体勢を立て直し、両脚に力を込めるフォーチュン。
ザッ、とブーツを床に擦り、くるり、と身を翻して、周囲に鋭い眼光を飛ばす。
フォーチュン「(大声で)何者じゃ!?」
カツン、カツン・・・と、廊下の奥から、近付いてくる足音。
目視出来る範囲まで接近し、両手を腰に当てて胸を張る人物。
フォーチュン、驚きの顔で相手を凝視する。
フォーチュン「(息を飲み)エンペラー! 何しに来よった!?」
エンペラー「(ニヤリ、と嗤い)あーら、ご挨拶ねぇ。久々に顔出してあげたってのに」
フォーチュン「そなたが殴りおったのか! 不意打ちとはまた、せこい手を使いおって・・・その度胸は褒めてやるが、そなたごときがわらわに勝てるとでも思うたか!」
エンペラー「何とでもおっしゃい。これを見ても・・・まだエラソーなコトが言えるかしらん?」
懐から、カードケースを取り出すエンペラー。
印籠を見せ付けるように、フォーチュンに向けて提示する。
フォーチュン「(愕然として)な! 馬鹿な! 何故そなたが『小アルカナ』を持っておる!? 宝物庫から盗みおったか! だがそなたでは使えない筈・・・無用の長物じゃ! 返せ!」
エンペラー「使えない?・・・さっきあンたに使ったばっかじゃない?」
フォーチュン「(ハッ、と気付き)・・・『ワンド』か! そんな筈は!」
一度、バッ、と両腕を左右に広げ、即座に頭上に挙げるフォーチュン。
フォーチュン「(キッ、と睨み)・・・ダークホイール!」
フォーチュン、勢いよく両手を振り下ろし、掌をエンペラーに向ける。
沈黙。
沈黙。
何も、起こらず。
フォーチュン「何故じゃ! 何故魔術が使えん!?」
エンペラー「(ニヤァ、と口角を上げ)おバカさんねぇ! アタシが何持ってるか理解してないのぉ? 『カップ』のカード、14枚中12枚も使っちゃったわ。あンたの魔力は残りゼロよ」
フォーチュン「(怒りに震え)ふざけおって・・・何が目的じゃ!」
エンペラー「タワーを動かす原動力は、あンたの魔力だけ・・・だから貰っちゃったのよん」
サーッ、と蒼褪めるフォーチュン。
窓の外と、向かい合ったエンペラーと顔を、交互に見る。
フォーチュン「タワー・・・タワーをどうする気じゃ!?」
エンペラー「(ムッ、と気分を害した顔で)・・・おしゃべりはオシマイ。あンたはオネムの時間よ、フォーチュンちゃん。(1枚のカードを取り出し)『ワンド』の6!」
エンペラー、1枚のカードをフォーチュンに投げる。
途端、そのカードが小さな空気の渦を放ち、出現する6本の棍棒。
それらが回転しながら、凄まじい勢いでフォーチュンに襲い掛かる。
躱そうとするも、四方から容赦なく叩き付けられる。
ガン! ゴン! ボゴッ!と、フォーチュンの全身を殴打する棍棒。
フォーチュン「(激痛を覚え)がはっ!」
打撃を与えるごとに消滅していく棍棒。
最後の1本が、フォーチュンの頭頂部に、ゴゥン!と衝撃を与え、霧のように消える。
余りの痛みに両眼を固く閉じ、膝を着いて、前のめりに倒れるフォーチュン。
パタッ・・・とうつ伏せになり、静かになる。
エンペラー「(ニヤア、と歪に嗤い)さあて・・・今迎えに行くわ、エロファントちゃぁん・・・」
★ (数時間後)森の道
薄日すら射さない、曇り空の午後。
森の道を、大鎌を右肩に掛けて歩くデス。神殿へ向かう途中。
ふと立ち止まり、道から外れた場所に目線を投げる。
デス《・・・森の様子がおかしい・・・》
ぐるり、と周囲を見渡す。
慎重に、確かめるように、樹々が鬱蒼としている方向まで視界に映す。
デス《逃げ惑っている命の気配が残る・・・何処だ?・・・》
デス、土が固められた道を外れ、横に向かって踏み込んでいく。
足元の草をあまり揺らさず、音を殺して進む。
暫くすると、急に目の前が開ける。
樹々が薙ぎ倒され、無残にも裂けた幹を曝け出している空間。
それが、右手の方向から左手の方向へ、延々と続いている。
デス《(驚いて)何だ! 何があった?》
近くに、足元の地面が大きく抉れている場所を発見するデス。
一辺が2メートル以上に及ぶ、四角い凹み。
デス、その窪みの底の地面に屈み込んで、そっ、と右手を触れ、目を閉じる。
デス《何か巨大な生き物の足跡・・・いや、命の気配がしない・・・だがこの大きさ・・・まさか、タワーか?》
両目を開け、もう一度右方向に目をやり、左に向けてみるデス。
凹みが延長線上にずっと連なっている。左方向のずっと先に、神殿のある街の端が見える。
瞬間、ゾクッ、と血の気が引くのを感じるデス。
デス《・・・嫌な予感がする!》
バッ、と勢いよく立ち上がり、倒された樹々の間を縫うに、街に向かって走り出すデス。
★ 神殿
神殿前の広場を突っ切り、幅広い石段の中央を、真っ直ぐに駆け上がっていくデス。
建屋正面入り口から突入し、拝殿横の回廊を、けたたましく走り抜ける。
そのままの速度で、一気に廊下の角を曲がる。
デス「(大声で)ハイエロファント!」
正面、ハイエロファントの居室が見える。
扉が、開け放たれたまま。
ざわ、と悪寒を覚えるデス。
駆け込み、目の前の書斎机を目に映す。ややずれている椅子。室内には誰もいない。
続き部屋になっている小さな部屋、更にその奥の寝室、一度戻って小部屋から廊下に出る。
廊下の先に隣接する部屋、突き当りにある湯殿、裏の通用口から表に出てみる。
何処にも、ハイエロファントの姿は、ない。
デス「(更に大声で)ハイエロファント! 返事をしてくれ!」
返ってくる声は、なし。
静寂。
静寂。
ギッ、と奥歯を強く噛み、踵を返して居室に向かうデス。
小部屋から居室内に入ると、窓際に、何かが落ちているのを発見する。
デス、慌てて駆け寄り、息を飲む。
ハイエロファントのミトラ(司教冠)が落ちている。
片膝を着いて、震える右手でそれを取り、ギュッ、と握り締めて胸に当てる。
両眼が丸く見開かれ、焦点の合わない視線を宙に投げる。
直後。
ダッダッダッ・・・と、誰かが走って、廊下をこちらに向かってくる音。
間もなく、居室に駆け込んでくるジャスティス。
ジャスティス「エロファント! いる!?」
ハッ、と窓際に屈み込んでいるデスに気付き、視界を移す。
ジャスティス「デス! エロファントは何処?」
デス「(茫然として)・・・いない。何処にも・・・いない・・・」
ジャスティス「まさか! もう・・・」
途端。
バッ!と立ち上がって、ジャスティスに向き直り、顔を接近させるデス。
デス「(切羽詰まった声で)ハイエロファントに何があった!?」
ジャスティス「落ち着いて、デス!」
デス「これが落ち着いていられるか!」
ジャスティス「気持ちは解るケド、ボクの話をまず聞いて!」
デス「(スッ、と身体を躱し、数歩進んで)話にならん! あたしは行くぞ!」
ジャスティス「何処へ行くんだい!?」
デス「(振り向いて、ジャスティスを睨み)ハイエロファントを捜すに決まってる! もたもたしてられん!」
クルッ、サッ、と素早くデスの正面に周り込み、彼女の両肩を掴むジャスティス。
ジャスティス「待ってよ! 何処をどう捜すの!?」
デス「(憤怒の表情で)いいから退け! 時間の無駄だ!」
ジャスティス「マジカルランドは広いんだ! 闇雲に捜しても見付からないよ!」
デス「(重く、低い声で)離せ・・・二度は言わない・・・」
ジャスティス「(腹の底からの声で)ボクの話を聞けっ! エロファントを救ける気があるのかっ!」
ビクゥッ!と、全身を反応させるデス。
瞳をこれ以上ないほど開き、少しの間、動きを凍結させる。
やがて、両目を伏せ、今にも泣きそうな表情となるデス。
俯いて、キュッ、と唇を強く噛む。
ジャスティス「(切なげな声で)とにかく、ボクの話を聞いてよ・・・ワールドから知らせがあったんだ・・・それが、現実になっちゃったみたいなんだよ・・・」
沈黙。
沈黙。
沈黙。
瞼を閉じ、左手に持った大鎌を下げて持ち、右手に握ったハイエロファントのミトラを見詰めるデス。
デス「(ギュッ、と奥歯を噛み)・・・話してくれ・・・」
ふうう、と長い溜め息を漏らし、安堵した顔となるジャスティス。
デスの両肩に置いた手を戻し、落ち着いてから、真剣な表情を向ける。
ジャスティス「フォーチュンが、襲われた。犯人は、タワーを強奪して操って、この街まで来たらしい」
デス「(顔を上げ)馬鹿な・・・タワーはフォーチュンの魔力で“命”を与えられてる筈だ」
ジャスティス「犯人はフォーチュンの魔力を全部奪って、どうやら何かの魔術道具に入れて、それでタワーを操ってるみたいなんだ・・・キミは『小アルカナのカード』って知ってる?」
デス「(頷いて)ああ・・・マジックアイテムの中でも、古代魔術の部類に入る。フォーチュンなら使えるだろう」
ジャスティス「うん、フォーチュンの宝物庫にあったんだって。その『小アルカナ』が盗まれて、今回使われたらしいよ。どうやって封印を解いたかは、まだ判らないケド・・・『小アルカナ』の中で『カップ』のカードは、相手の魔力を水を汲むように奪って、何かアイテムとか、自分に移せるって、ワールドが言ってた。多分、そうやってフォーチュンの魔力を奪ったんだろう、って・・・だからタワーは今、そいつの配下、ってワケ」
デス「(焦れたように)犯人は誰だ! 目的は?」
ジャスティス「(一呼吸置き)犯人は・・・エンペラー。目的は・・・エロファントの誘拐・・・」
途端。
両目を見開き、顔の上部に陰を宿すデス。
全身が、わな・・・わな・・・と震え始め、凄まじい怒りの波動を表面化させている。
ゴクリ、と一度唾を飲み込むジャスティス。
ジャスティス「フォーチュンが気を失う直前に、聞こえたんだって。エンペラーは彼の名前を言ったらしいよ。ワールドが『第三の目』を使ってた時に、タワーがエンペラーを乗せて移動してるのが見えて、おかしいと思ってフォーチュンのトコに行ったら・・・」
デス「(切れるような目線となり)判った。タワーを追う。そしてハイエロファントを救出する!」
バッ、とマントを翻して、ジャスティスの横から扉の外へ出ようとするデス。
歩きながら、ハイエロファントのミトラを、懐に丁寧に仕舞う。
ジャスティス「待ってよデス!」
デス「(振り向いて)情報には礼を言う。後は、あたしが向かう」
ジャスティス「ボクも行くよ! いや、ボクが連れてくから!」
デス「世話にはならん。あたしひとりで行く(クル、と背を向ける)」
ジャスティス「タワーはずっと移動中なんだ。それをワールドが、今も『第三の目』で追跡してる。おおよその移動ルートと、もし目的地まで判ったら、ボクのトコに知らせに来てくれる手筈になってるんだ。だから、デス・・・(はっきりとした声で)ボクと一緒に行こう! エロファントを救けるんだ!」
立ち止まったまま、扉から廊下の向こうを見ているデス。
暫くの、間。
更に、間。
デス、突如、振り返ってジャスティスに視線を送る。
デス「(ギンッ、と鋭い眼光で)まず、何処に向かう?」
ジャスティス「(口元に笑みを浮かべ)森を抜ける! 岩山の方向!」
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