デスとハイエロファントの物語:REBOOT   作:桁石スミオ

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「マジカルドロップⅢ」「マジカルドロップポケット」「マジカルドロップV」デスとハイエロファント主役。前作・外伝『ダンデライオン』より後日の物語。タイトルは、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲、教会カンタータBWV140より。ゲーム中に登場しないマジックアイテムが登場し、主軸となっております。
 登場人物:デスとハイエロファント、ジャスティス、ヤング(リトル)・フォーチュン、ワールド、タワー、エンペラー
 注:台本形式読み物です。流血シーンあり。

 pixivにも、同一内容を投稿しております。
 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8543078


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目覚めよと、呼ぶ声が聞こえ 【第1話】

デスとハイエロファントの物語:REBOOT

【 目覚めよと、呼ぶ声が聞こえ 】

 

★ マジカルランド中央・フォーチュンの居城

 

 低い黒雲が常に掛かる、フォーチュンの居城。その上層階。

 橙色のランプが等間隔で並ぶ薄暗い廊下を、歩いている人物。赤髪の長髪、ツインテールの髪型。

 ヤング(リトル)・フォーチュン、気分の優れない表情を貼り付けている。

 時折立ち止まり、頭を軽く押さえる仕草。

 

フォーチュン《おかしいのう・・・今日は、眩暈までしておる・・・》

 

 ふと、窓から外に目をやるフォーチュン。

 眼下には、緑の芝が広がる庭がある。ハッ、と立ち止まってガラス越しに見下ろす。

 

フォーチュン《タワー・・・おらんのか? そんな筈は・・・》

 

 突然。

 ガツン!と、背中に強い衝撃。水平に、棒のような物で殴られた感覚。

 

フォーチュン「ぐあっ!」

 

 一瞬身体が浮くが、すぐに体勢を立て直し、両脚に力を込めるフォーチュン。

 ザッ、とブーツを床に擦り、くるり、と身を翻して、周囲に鋭い眼光を飛ばす。

 

フォーチュン「(大声で)何者じゃ!?」

 

 カツン、カツン・・・と、廊下の奥から、近付いてくる足音。

 目視出来る範囲まで接近し、両手を腰に当てて胸を張る人物。

 フォーチュン、驚きの顔で相手を凝視する。

 

フォーチュン「(息を飲み)エンペラー! 何しに来よった!?」

エンペラー「(ニヤリ、と嗤い)あーら、ご挨拶ねぇ。久々に顔出してあげたってのに」

フォーチュン「そなたが殴りおったのか! 不意打ちとはまた、せこい手を使いおって・・・その度胸は褒めてやるが、そなたごときがわらわに勝てるとでも思うたか!」

エンペラー「何とでもおっしゃい。これを見ても・・・まだエラソーなコトが言えるかしらん?」

 

 懐から、カードケースを取り出すエンペラー。

 印籠を見せ付けるように、フォーチュンに向けて提示する。

 

フォーチュン「(愕然として)な! 馬鹿な! 何故そなたが『小アルカナ』を持っておる!? 宝物庫から盗みおったか! だがそなたでは使えない筈・・・無用の長物じゃ! 返せ!」

エンペラー「使えない?・・・さっきあンたに使ったばっかじゃない?」

フォーチュン「(ハッ、と気付き)・・・『ワンド』か! そんな筈は!」

 

 一度、バッ、と両腕を左右に広げ、即座に頭上に挙げるフォーチュン。

 

フォーチュン「(キッ、と睨み)・・・ダークホイール!」

 

 フォーチュン、勢いよく両手を振り下ろし、掌をエンペラーに向ける。

 沈黙。

 沈黙。

 何も、起こらず。

 

フォーチュン「何故じゃ! 何故魔術が使えん!?」

エンペラー「(ニヤァ、と口角を上げ)おバカさんねぇ! アタシが何持ってるか理解してないのぉ? 『カップ』のカード、14枚中12枚も使っちゃったわ。あンたの魔力は残りゼロよ」

フォーチュン「(怒りに震え)ふざけおって・・・何が目的じゃ!」

エンペラー「タワーを動かす原動力は、あンたの魔力だけ・・・だから貰っちゃったのよん」

 

 サーッ、と蒼褪めるフォーチュン。

 窓の外と、向かい合ったエンペラーと顔を、交互に見る。

 

フォーチュン「タワー・・・タワーをどうする気じゃ!?」

エンペラー「(ムッ、と気分を害した顔で)・・・おしゃべりはオシマイ。あンたはオネムの時間よ、フォーチュンちゃん。(1枚のカードを取り出し)『ワンド』の6!」

 

 エンペラー、1枚のカードをフォーチュンに投げる。

 途端、そのカードが小さな空気の渦を放ち、出現する6本の棍棒。

 それらが回転しながら、凄まじい勢いでフォーチュンに襲い掛かる。

 躱そうとするも、四方から容赦なく叩き付けられる。

 ガン! ゴン! ボゴッ!と、フォーチュンの全身を殴打する棍棒。

 

フォーチュン「(激痛を覚え)がはっ!」

 

 打撃を与えるごとに消滅していく棍棒。

 最後の1本が、フォーチュンの頭頂部に、ゴゥン!と衝撃を与え、霧のように消える。

 余りの痛みに両眼を固く閉じ、膝を着いて、前のめりに倒れるフォーチュン。

 パタッ・・・とうつ伏せになり、静かになる。

 

エンペラー「(ニヤア、と歪に嗤い)さあて・・・今迎えに行くわ、エロファントちゃぁん・・・」

 

 

★ (数時間後)森の道

 

 薄日すら射さない、曇り空の午後。

 森の道を、大鎌を右肩に掛けて歩くデス。神殿へ向かう途中。

 ふと立ち止まり、道から外れた場所に目線を投げる。

 

デス《・・・森の様子がおかしい・・・》

 

 ぐるり、と周囲を見渡す。

 慎重に、確かめるように、樹々が鬱蒼としている方向まで視界に映す。

 

デス《逃げ惑っている命の気配が残る・・・何処だ?・・・》

 

 デス、土が固められた道を外れ、横に向かって踏み込んでいく。

 足元の草をあまり揺らさず、音を殺して進む。

 暫くすると、急に目の前が開ける。

 樹々が薙ぎ倒され、無残にも裂けた幹を曝け出している空間。

 それが、右手の方向から左手の方向へ、延々と続いている。

 

デス《(驚いて)何だ! 何があった?》

 

 近くに、足元の地面が大きく抉れている場所を発見するデス。

 一辺が2メートル以上に及ぶ、四角い凹み。

 デス、その窪みの底の地面に屈み込んで、そっ、と右手を触れ、目を閉じる。

 

デス《何か巨大な生き物の足跡・・・いや、命の気配がしない・・・だがこの大きさ・・・まさか、タワーか?》

 

 両目を開け、もう一度右方向に目をやり、左に向けてみるデス。

 凹みが延長線上にずっと連なっている。左方向のずっと先に、神殿のある街の端が見える。

 瞬間、ゾクッ、と血の気が引くのを感じるデス。

 

デス《・・・嫌な予感がする!》

 

 バッ、と勢いよく立ち上がり、倒された樹々の間を縫うに、街に向かって走り出すデス。

 

 

★ 神殿

 

 神殿前の広場を突っ切り、幅広い石段の中央を、真っ直ぐに駆け上がっていくデス。

 建屋正面入り口から突入し、拝殿横の回廊を、けたたましく走り抜ける。

 そのままの速度で、一気に廊下の角を曲がる。

 

デス「(大声で)ハイエロファント!」

 

 正面、ハイエロファントの居室が見える。

 扉が、開け放たれたまま。

 ざわ、と悪寒を覚えるデス。

 駆け込み、目の前の書斎机を目に映す。ややずれている椅子。室内には誰もいない。

 続き部屋になっている小さな部屋、更にその奥の寝室、一度戻って小部屋から廊下に出る。

 廊下の先に隣接する部屋、突き当りにある湯殿、裏の通用口から表に出てみる。

 何処にも、ハイエロファントの姿は、ない。

 

デス「(更に大声で)ハイエロファント! 返事をしてくれ!」

 

 返ってくる声は、なし。

 静寂。

 静寂。

 ギッ、と奥歯を強く噛み、踵を返して居室に向かうデス。

 小部屋から居室内に入ると、窓際に、何かが落ちているのを発見する。

 デス、慌てて駆け寄り、息を飲む。

 ハイエロファントのミトラ(司教冠)が落ちている。

 片膝を着いて、震える右手でそれを取り、ギュッ、と握り締めて胸に当てる。

 両眼が丸く見開かれ、焦点の合わない視線を宙に投げる。

 直後。

 ダッダッダッ・・・と、誰かが走って、廊下をこちらに向かってくる音。

 間もなく、居室に駆け込んでくるジャスティス。

 

ジャスティス「エロファント! いる!?」

 

 ハッ、と窓際に屈み込んでいるデスに気付き、視界を移す。

 

ジャスティス「デス! エロファントは何処?」

デス「(茫然として)・・・いない。何処にも・・・いない・・・」

ジャスティス「まさか! もう・・・」

 

 途端。

 バッ!と立ち上がって、ジャスティスに向き直り、顔を接近させるデス。

 

デス「(切羽詰まった声で)ハイエロファントに何があった!?」

ジャスティス「落ち着いて、デス!」

デス「これが落ち着いていられるか!」

ジャスティス「気持ちは解るケド、ボクの話をまず聞いて!」

デス「(スッ、と身体を躱し、数歩進んで)話にならん! あたしは行くぞ!」

ジャスティス「何処へ行くんだい!?」

デス「(振り向いて、ジャスティスを睨み)ハイエロファントを捜すに決まってる! もたもたしてられん!」

 

 クルッ、サッ、と素早くデスの正面に周り込み、彼女の両肩を掴むジャスティス。

 

ジャスティス「待ってよ! 何処をどう捜すの!?」

デス「(憤怒の表情で)いいから退け! 時間の無駄だ!」

ジャスティス「マジカルランドは広いんだ! 闇雲に捜しても見付からないよ!」

デス「(重く、低い声で)離せ・・・二度は言わない・・・」

ジャスティス「(腹の底からの声で)ボクの話を聞けっ! エロファントを救ける気があるのかっ!」

 

 ビクゥッ!と、全身を反応させるデス。

 瞳をこれ以上ないほど開き、少しの間、動きを凍結させる。

 やがて、両目を伏せ、今にも泣きそうな表情となるデス。

 俯いて、キュッ、と唇を強く噛む。

 

ジャスティス「(切なげな声で)とにかく、ボクの話を聞いてよ・・・ワールドから知らせがあったんだ・・・それが、現実になっちゃったみたいなんだよ・・・」

 

 沈黙。

 沈黙。

 沈黙。

 瞼を閉じ、左手に持った大鎌を下げて持ち、右手に握ったハイエロファントのミトラを見詰めるデス。

 

デス「(ギュッ、と奥歯を噛み)・・・話してくれ・・・」

 

 ふうう、と長い溜め息を漏らし、安堵した顔となるジャスティス。

 デスの両肩に置いた手を戻し、落ち着いてから、真剣な表情を向ける。

 

ジャスティス「フォーチュンが、襲われた。犯人は、タワーを強奪して操って、この街まで来たらしい」

デス「(顔を上げ)馬鹿な・・・タワーはフォーチュンの魔力で“命”を与えられてる筈だ」

ジャスティス「犯人はフォーチュンの魔力を全部奪って、どうやら何かの魔術道具に入れて、それでタワーを操ってるみたいなんだ・・・キミは『小アルカナのカード』って知ってる?」

デス「(頷いて)ああ・・・マジックアイテムの中でも、古代魔術の部類に入る。フォーチュンなら使えるだろう」

ジャスティス「うん、フォーチュンの宝物庫にあったんだって。その『小アルカナ』が盗まれて、今回使われたらしいよ。どうやって封印を解いたかは、まだ判らないケド・・・『小アルカナ』の中で『カップ』のカードは、相手の魔力を水を汲むように奪って、何かアイテムとか、自分に移せるって、ワールドが言ってた。多分、そうやってフォーチュンの魔力を奪ったんだろう、って・・・だからタワーは今、そいつの配下、ってワケ」

デス「(焦れたように)犯人は誰だ! 目的は?」

ジャスティス「(一呼吸置き)犯人は・・・エンペラー。目的は・・・エロファントの誘拐・・・」

 

 途端。

 両目を見開き、顔の上部に陰を宿すデス。

 全身が、わな・・・わな・・・と震え始め、凄まじい怒りの波動を表面化させている。

 ゴクリ、と一度唾を飲み込むジャスティス。

 

ジャスティス「フォーチュンが気を失う直前に、聞こえたんだって。エンペラーは彼の名前を言ったらしいよ。ワールドが『第三の目』を使ってた時に、タワーがエンペラーを乗せて移動してるのが見えて、おかしいと思ってフォーチュンのトコに行ったら・・・」

デス「(切れるような目線となり)判った。タワーを追う。そしてハイエロファントを救出する!」

 

 バッ、とマントを翻して、ジャスティスの横から扉の外へ出ようとするデス。

 歩きながら、ハイエロファントのミトラを、懐に丁寧に仕舞う。

 

ジャスティス「待ってよデス!」

デス「(振り向いて)情報には礼を言う。後は、あたしが向かう」

ジャスティス「ボクも行くよ! いや、ボクが連れてくから!」

デス「世話にはならん。あたしひとりで行く(クル、と背を向ける)」

ジャスティス「タワーはずっと移動中なんだ。それをワールドが、今も『第三の目』で追跡してる。おおよその移動ルートと、もし目的地まで判ったら、ボクのトコに知らせに来てくれる手筈になってるんだ。だから、デス・・・(はっきりとした声で)ボクと一緒に行こう! エロファントを救けるんだ!」

 

 立ち止まったまま、扉から廊下の向こうを見ているデス。

 暫くの、間。

 更に、間。

 デス、突如、振り返ってジャスティスに視線を送る。

 

デス「(ギンッ、と鋭い眼光で)まず、何処に向かう?」

ジャスティス「(口元に笑みを浮かべ)森を抜ける! 岩山の方向!」

 

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