登場人物:デスとハイエロファント、ストレングス(親子)とガオガオ、ジャスティス、ヤング(リトル)・フォーチュン、ワールド、エンプレス、マジシャンとハイプリエステス、タワー、エンペラー、他、台詞はなくても全キャラ登場している設定です。
注:台本形式読み物です。
pixivにも、同一内容を投稿しております。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8625149
【挿絵表示】
デスとハイエロファントの物語:REBOOT
【 しりぞけ、もの悲しき影 】
★ 神殿
天高く薄い雲が広がる、午後。
ヴェールを通したような、柔らかな陽射しの中、神殿前庭の垣根近くを歩くデス。
大鎌を右肩に掛け、表情は普段のまま。
正面の石段を右手側に見て、そのまま神殿の拝殿横を奥へと進む。
更に、建屋後方、拝殿と渡り廊下で繋がった居住殿の横を通り抜ける。
デス、裏庭に面している通用口から建屋内に入る。
そのまま廊下を進み、ハイエロファントの居室横の小部屋まで来る。
扉の取っ手を掴もうとした直後、デスの耳に話し声が聞こえる。手を止める。
男性の老人らしき声。それに応対しているハイエロファントの声。
少し目を伏せ、手を戻し、足音を立てずに踵を返す。
慎重に寝室の扉を開け、静かに室内に入る。
無音で扉を閉め、大鎌を壁際の木枠に立て、首元の金具を外してマントを脱ぐ。
ツリー型コートハンガーに、ふわり、とマントを掛け、ベッドに腰を下ろす。
ベッド脇のサイドテーブルに、手袋を外して置くデス。
それから、斜め下前方の床に視線を投げ始める。
長い、間。
デス、両瞼を閉じ、そのまま少し頭を下げる。
そのまま、沈黙。
★ (半時後)神殿・ハイエロファントとデスの寝室
カチャリ、と扉が開いて、ハイエロファントが現れる。左手に一通の封筒。
音に、即座に顔を上げ、緩やかに微笑みを浮かべるデス。
デスを見詰めて、柔らかい笑顔を浮かべるハイエロファント。
ハイエロファント「おかえり、デス」
デス「ただいま、ハイエロファント・・・さっき戻ったところだ」
デスのすぐ前に立ち、上半身を屈めるハイエロファント。
顎を少し上げ、目を閉じるデス。
顔を近付け、唇を重ねるふたり。
あまり間を置かず、顔を戻して身体を起こすハイエロファント。
ミトラ(司教冠)を外して、封筒と共に、サイドテーブルのデスの手袋の横に置き、彼女の左隣に座る。
それから優しい笑みを湛えて、じっ、とデスに目線を固定する。
彼と眼差しを絡め始めるデス。少し、口元を引き締めている。
その状態で、暫く。
更に、間。
デス、視線を前方の床に移し、ふう、と短く息を継ぐ。
デス「(口籠って)すまん・・・暫く前に戻ってた・・・」
ハイエロファント「(微笑んで)謝らなくても大丈夫だよ」
デス「(ハイエロファントを見詰め)・・・判ってたのか? 帰ってたのが」
ハイエロファント「(頷いて)居室の扉まで来てたよね」
デス「そこまで判ったか・・・」
ハイエロファント「判るよ。君のことだもの」
顔を正面に向け、瞼を半分閉じ、申し訳なさそうに俯くデス。
ハイエロファント「正面から入ってきても、いいんだよ。君はここに住んでいるんだから」
デス「(首を左右に振り)いや・・・来客中に死神が入っていってみろ、そいつは、二度とここには来ないぞ」
僅かに首を傾げ、微かに憂いを帯びた瞳になるハイエロファント。
ハイエロファント「君が嫌だと感じたり、懸念していることをするつもりはないけど・・・」
デス「(再度俯いて)重ね重ね、すまない・・・お前に気を遣わせる気はないんだが・・・どうしても、他の連中が受け入れるとは思えないんだ。(グッ、と右拳を握って膝に置き)死神は『死』以外の何者でもない。『死』は、それ以上の時間がない、最後、ということだ。だから・・・むしろ、受け入れないのが普通だろう・・・」
デスの横顔を見詰め続けるハイエロファント。
そして、穏やかな微笑みを見せ、右掌をデスの左手に重ねて、ぎゅっ、と握る。
ハイエロファント「(大きく頷いて)判ったよ。無理しなくてもいい。君が思うようにしてくれて大丈夫だよ。仮に、もし、誰かが何か言ってくるようなことがあったら・・・(凛とした声で)僕が話す。君は、何も言わなくていい。黙って僕の隣にいてくれればいい。一切の負担は掛けないつもりだから・・・解った?」
思わず顔を上げ、ハイエロファントを瞳いっぱいに映すデス。
潤いが、両目に輝く。
デス「(柔らかく微笑み)本当に・・・お前で良かった、ハイエロファント・・・何もかも全部・・・」
ハイエロファント「(微笑みを返し)ありがとう・・・僕も、何もかも全部、君で良かったよ、デス」
暫くの間、見詰め合うふたり。
ハッ、と思い出して、サイドテーブルに置いた封筒を手に取るハイエロファント。
ハイエロファント「あ、そうだ。実は今日、手紙を預かってたんだ。君と、僕宛ての」
デス「(首を傾げ)手紙?」
ハイエロファント「話が遅くなって、ごめんね。(手紙を渡し)これ、ストレングスちゃんから」
デス「(封筒を受け取り)ストレングス?」
ハイエロファント「お昼前に来たんだよ。読んでみて」
封筒から中の手紙を取り出し、カサ、と広げるデス。
文面を目で追い、一通り読み終える。さほど長くない文章。
すぐ傍らで、同じ手紙を再読しているハイエロファント。
デス、彼に顔を向ける。若干、迷いのある表情。
デス「明日、か・・・」
ハイエロファント「折角のご招待だし、行ってみようよ」
デス「(手紙を折り畳み、封筒に戻して)お前がいいのなら、あたしも異存はない」
微笑みを浮かべて頷き合う、ふたり。
★ (翌日)森と草原の境・ストレングスの家
抜けるような青空。快晴の、正午頃。
ストレングスの家の食卓。上には、料理を食べ終わった空き皿が並んでいる。
食卓横の床には、ガオガオが寝そべって、前足を顎の下に置いて目を閉じている。
壁際の棚に、身体を向けて立っているハイエロファント。
生活雑貨が無造作に詰められている棚。高さは肩の辺り。
ハイエロファント、棚の上に整然と並んで鎮座している、変わった石や樹の枝を見ている。
傍の台所に、梨とボウルを持った屈強の大男、ストレングス(父)の姿。
ストレングス(父)「おかわりはどうダァ?」
ハイエロファント「(振り向いて)ありがとうございます。頂きます」
梨をボウルの上で、ブシャッ! ギュウウ・・・と右手だけで握り潰すストレングス(父)。
果汁が下に落ち、ボウルに溜まる。それを茶漉しのような物を介して、グラスに注ぐ。
ストレングス(父)、一度手を水で濯いで、グラスを持って食卓に移動する。
それを、コト、と、ハイエロファントが座っていた席の前に置く。
ハイエロファント「これが、キングが持ってきてくれたお土産ですね?」
ストレングス(父)「おう! 珍しいモンばっかだルォ? オレも見たコトないモンばっかダァ!」
ニコニコ、と満面の笑みでハイエロファントの横に歩み寄るストレングス(父)。
ストレングス(父)「コレが『めのう』! コレが『らぴすらずり』・・・だったかァ? コレは『こはく』! コレは『びゃくだん』って樹の枝!」
ハイエロファント「『びゃくだん』・・・ですか?」
ストレングス(父)が指差した樹の枝を、じっ、と見詰めるハイエロファント。
枝に顔を近付ける。鼻腔をくすぐる、仄かに甘さを含む香り。
ハイエロファントの脳裏に鮮やかに浮かび上がる、デスの笑顔。
ハイエロファント《(目を丸くして)デスと・・・同じ香り・・・》
少し屈んで白檀を凝視するハイエロファントに、ニッ、と口角を上げるストレングス(父)。
ストレングス(父)「気に入ったかァ、それ! えらく見てるからヌァ!」
ハイエロファント「(少し頬を染め)あ! いえ! 気に入ったというか・・・素敵な香りだな、と思いまして」
ストレングス(父)「(悪戯っぽい笑顔で)でも! やらんズォ!」
ハイエロファント「(微笑んで)大丈夫です。キングの持ってきた大切なお土産ですから、持ち帰りませんよ」
大きく二度頷いて、身体を返すストレングス(父)。
そして、ドカッ、と自分の椅子に腰を下ろし、ふう、と息を継ぐ。
ハイエロファント、続けて、先ほどまで座っていた椅子に座り直す。ストレングス(父)と向かい合う。
ストレングス(父)「(少し重い声で)キングのコトでは・・・ムスメが世話んなった。(頭を下げ)礼が遅くなった。ホントに、ありがとうヌァ・・・」
ハイエロファント「(慌てて)頭を上げて下さい。僕は何も出来ませんでした。むしろ、デスが・・・」
ストレングス(父)「解っとる! ムスメから聞いてる! 後で、デスにも礼を言うズォ!」
ストレングス(父)、頭を元に戻して、テーブルの上に物憂げな目線を送る。
落ち着いて真剣な表情となるハイエロファント。
ストレングス(父)「あの日・・・帰ってくるなりムスメは、すぐに部屋ァ入って、夕飯ん時も出て来んかった。あんなコト初めてだった。オロオロしてるオレに、ガオガオが全部話してくれたんダァ。キングが死んじまったコト、オマエとデスに世話んなったコト・・・ガオガオも悲しかったろうに、我慢して話してくれたんだヌァ・・・」
ハイエロファント「(ガオガオを見て)そうだったんだ・・・頑張ったね、ガオガオ」
ガオガオ「(頬を前足で掻き)ガァォ・・・」
照れ臭そうに、はにかんだ笑顔をハイエロファントに向けるガオガオ。
ガオガオを見て、一度頷き、再びハイエロファントに視線を固定するストレングス(父)。
ストレングス(父)「結局、ムスメはその日、朝まで寝ちまったらしい。でも朝飯ん時は、ケロッ、と、いつも通りのムスメだったズォ。キングのコト聞いても、落ち着いて話してくれた・・・(しみじみと)エロファント、オマエに酷いコト言っちまったとか、すぐにデスに叱られたとか、その後キングの墓ァ造ってデスに褒めてもらえたとか、ヌァ・・・」
ハイエロファント「そうでしたか・・・強い子ですね、ストレングスちゃんは」
ストレングス(父)「ああ、力も強いが、気もしっかりしとる。大した子ダァ!」
ハイエロファント「ストレングスさんの養育の賜物ですね」
ストレングス(父)「(少し俯き)イヤァ・・・ムスメが一番しんどい時に、なーんも出来んかった。こういう時、親父ではダメだヌァ。母親でもいれば、ちっとは話が出来るんだがヌァ」
ハイエロファント「(微笑んで)今からでも遅くはありませんよ」
ストレングス(父)「(ニカッ、と笑い)希望相手はいるズォ! ただ、うん、と言ってくれないだけだズォ!」
腕組みをして、何度も頷いて胸を張るストレングス(父)。
彼に目線を向けて、穏やかで温かい笑みを浮かべるハイエロファント。
ハイエロファント《ストレングスさんの希望の相手、か・・・》
開け放たれたままの、部屋の窓。
そこから外に、視界を移すハイエロファント。
窓越しに見える大樹の木陰に、デスとストレングス(娘)が並んで、こちらを背にして立っている。
ハイエロファント《僕だったら・・・》
デスの背中に、じっ、と熱い眼差しを注ぐ。
そのまま、暫く。
ハイエロファントの様子を眺めているストレングス(父)。
腕組みを解いて、右肘をテーブルに乗せ、ズイ、と身体を乗り出させる。
呼応したように、視線を彼に戻すハイエロファント。
ストレングス(父)「家族はいいズォ、エロファント」
ハイエロファント「(目を細めて、頷いて)ええ、そう思います」
ニイッ、と満足そうに笑顔を見せるストレングス(父)。
もう一度、ちら、と表のふたりに目線を送ってから、食卓横のガオガオを見るハイエロファント。
ハイエロファント「ガオガオは、行かなくていいの?」
ガオガオ「(首を左右に振り)ガオゥ・・・ガウ、ガアォゥ・・・」
ストレングス(父)「『ふたりで話させてやりたい』そうだ、ズォ」
★ (同時刻)森と草原の境・ストレングスの家・庭の樹の木陰
さわ、と涼しい風が大樹の枝葉を揺らす。
眼前に広がる草原の、遥か遠くを瞳に映しているデス。
すぐ傍らに、和んでいる表情のストレングス。
ストレングス「キングのお墓参り、毎月行ってるんだ。お花摘んで、お墓にお供えしてる」
デス「そうか・・・良い心掛けだ」
懐かし気に目を細めるデス。
左手に下げた大鎌を一旦見て、一度短く息を継ぎ、視線を前方に向け直す。
デス「生ある者は、二回『死ぬ』んだ」
ストレングス「(驚いて)え? デスが“送る”以外に、あるの?」
デス「一度目は、あたしが首を刈った時。二度目は・・・誰からも忘れ去られた時、だ」
意外さを押し出したような顔で、デスを見詰めるストレングス。
デス「亡くなった者を、誰かが思い出して忘れない限り、二度目の『死』は来ない。キングは既に転生しているが、常に咲き誇っている訳ではない。春が過ぎれば種子を残し、来たる次の春を待つ。その間、キングを忘れないでいるならば・・・あいつが二度『死ぬ』ことはないんだ」
ふっ、と口元を緩ませるストレングス。納得したような表情。
ストレングス「だったら・・・(柔らかい微笑みで)キングはずっと『生き続ける』ね・・・」
デス「(頷いて)ああ。だから忘れるな。そして、時折でいい、思い出してやることだ」
デスとストレングス、草原に視線を向ける。
暫く、そのまま。
目を細めて、彼方を眺めるような瞳になるストレングス。
ストレングス「デスってさ、ホントに大変な“仕事”なんだね」
デス「(訝し気に)・・・何の話だ?」
ストレングス「こんなコト言うと怒られるかも知れないケドさ・・・あん時から、ううん、もっと前から、死神の役目って大変だなぁ、って思ってた。アタイには逆立ちしたって出来ない。(デスを見上げ)ひとりでずっと続けてたんだよね? 代わりもいなくて、休むことだってない。もしかしたら、誰かに代わってほしい時も、辞めたくなった時もあったかも知れない・・・アタイだったら、休みたいなぁ、代わってほしいなぁ、って思うよ」
デス「(目を伏せて)・・・お前がそこまで考える必要は、ない」
ストレングス「それでも考えたよ、アタイなりに、ね。でね、すっごく感じたんだ。『デスは凄い』ってさ」
ふう、と息を吐き、眉間に皺を寄せるデス。
デス「・・・そんなことを言う為に、あたしをここに連れ出したのか?」
ストレングス「あと、もう一個あるよ」
デス「(一層眉を寄せ)・・・今度は何だ?」
ストレングス「(微笑んで)アタイ、デスのコト、嫌いじゃないよ。(更に、ニカッ、と満面の笑みで)ううん、はっきり言って、好きだよ!」
目を少し開き気味にして、ストレングスを視界に映すデス。
沈黙。
沈黙。
デス、ここぞとばかりに、訝し気な雰囲気を表情に出す。
デス「・・・お前は何を言ってるんだ」
ストレングス「(口を尖らせて)ちぇーっ、折角の告白だったのに、つまんなーい。ま、エロファント兄ちゃん時みたいにテレテレになるなんて思ってなかったケドね?」
デス、頬を薄く紅色に染め、ぐっ、と口元を引き締める。
デス「(口籠って)あまり大人をからかうんじゃない・・・」
ストレングス「ねぇ、デス」
デス「何だ?」
ストレングス「エロファント兄ちゃんとは、いつ結婚するの?」
途端。
ボワッ!と、瞬間的に茹ったように真っ赤になるデス。
両目を正円に近い程に見開き、唇を、あわあわ、と覚束なくさせる。
デス「(上擦って裏返った声で)け! けっこ!?・・・な! 何をいきなりっ!」
ストレングス「(嬉しそうな笑顔で)そう! その顔が見たかったんだっ!」
デス「だからっ! からかうなと言ってる! (恥ずかしそうに)け、結婚だなんて・・・ハイエロファントが何て言うか・・・認めてくれるか、どうか・・・いやその・・・(少し落ち着こうとして)だ、第一、何故急にそんなことを言い出すんだ?」
ストレングス「(さも当たり前な口調で)だーって、もう一緒に住んでんでしょ?」
直後。
あっけに取られた顔で、口を半開きにしたまま停止するデス。
茫然と、ストレングスを見詰めて、立ち竦む。
暫くの、後。
デス、屈んで顔を近付け、瞼を少し閉じ、これ以上ないほど怪訝そうな表情を向ける。
デス「・・・誰かから聞いたのか? それとも、見たのか?」
次の、瞬間。
ニイッ、と会心の笑みを浮かべるストレングス。
それを目の当たりにして、ハッ!と思わず身体を起こして、口元に右手を持ってくるデス。
ストレングス「(明るい声で)やーっぱそーだったんだーっ!」
デス「(見る見る驚きの表情となり)・・・お前っ! 鎌をかけたのかっ!?」
ストレングス「死神だけに?」
デス「上手いこと言ってる場合かっ!」
ストレングス、物凄く嬉しそうに、ニッコォ、と太陽のような笑顔になる。
対して、デス、してやられた、という雰囲気を表に出し、諦めたような顔になる。
デス「(ふうう、と長い溜め息を吐き)・・・何故判った?」
ストレングス「んーとね、ふたりの雰囲気、かな。エロファント兄ちゃんと一緒にいる時のデスってさ、全然違うでしょ、対応とか、喋り方とか・・・恋人同士なんだろーなー、付き合ってんだろーなー、とは思ってたケド、最近のデスとエロファント兄ちゃんって、こう、何てんだろ・・・(少し考えて)家族みたいな感じ、だなぁって」
デス「(意外そうな口調で)家族・・・」
ストレングス「一緒に住んでて、もう離れる気がないんだったら・・・結婚して夫婦になって、本当に家族になっちゃえばいいのに」
デス「(視線を落として)・・・あたしは死神だぞ・・・死神が家族を持てると思うか? この血塗られた運命のあたしが、家族を持つなんぞ許されると思うか?」
ストレングス「他の誰に許されなくても、いいんじゃない? エロファント兄ちゃんが許してくれるんなら」
思わずストレングスに目線を向け、驚いたような表情を見せるデス。
ストレングス「アタイは、いいと思うよ。意見はいらないかも知れないケド、さ」
両腕を挙げ、頭の後ろで手を組むストレングス。
それから、草原の遥か向こうに視線を投げ、僅かに目を伏せる。
微かな憂いを帯びた横顔。それを瞳に映すデス。
ストレングス「知ってると思うケド、アタイは赤ちゃんの時にガオガオとジャングルに捨てられてて・・・とーちゃんが拾ってくれて、ここまで生きてこれたんだ。とーちゃんと、ガオガオと、家族になって、つらい時も悲しい時も、嬉しい時も楽しい時も、一緒に過ごしてきた・・・(感慨深げに)とーちゃんが拾ってくれなかったら、どうなってたかなぁ・・・家族の温かさなんて知らなかった、と思うよ」
デス「(自嘲気味に)家族の温もり、か・・・やはり、あたしには縁のないものだろう・・・」
ストレングス「これから感じればいいんじゃないの? 今からでも全然遅くないよ」
くる、と身体をデスの方向に回し、しっかりとした真摯な目線を送るストレングス。
ストレングス「(ニッ、と笑顔で)家族はすっごくいいよ、デス」
デス「・・・お前が言うと、説得力があるな」
ストレングス「でしょ?」
フッ、と微笑んで、感心を惜しみなく溢れさせた顔となるデス。
デス「強いな、お前は。過去を嘆かず、前を見ている」
途端。
ストレングス、頭の後ろで組んでた両手を離し、下に戻す。
かなり驚いた表情。
やがて、緩やかに融解していくように、柔らかな表情を浮かべ始める。
両頬を朱色に染め上げ、両の瞳が、キラ、キラ、と潤いの煌きを放つ。
ストレングス「(感嘆に震えた声で)また褒めてくれた・・・嬉しい・・・」
真っ直ぐにデスを見詰め、歓喜を余すことなく顔に出すストレングス。
デス、目を細め、身体を返してストレングスと正面で向き合う。
ストレングス「ねぇねぇ! 褒めてくれたついでに、お願いがあるんだ!」
デス「何だ?」
ストレングス「(恥ずかし気に)・・・頭、撫でてくれる?」
ストレングス、両掌を身体の前で組み、もじ・・・もじ・・・とした動作を見せる。
デス、穏やかで優しい微笑みとなり、右手を、スッ、と挙げる。
ふわ、と柔らかい調子で乗り、さら・・・さら・・・と二度、ストレングスの髪を撫でるデスの右掌。
デス「こう、か?」
ストレングス「(はにかんだ微笑みで)・・・うん・・・」
両瞼を閉じ、感激を噛み締めている顔のストレングス。
その姿を瞳の奥に焼き付けるように、目線を彼女に結び付けているデス。
【 第2話へ 】