登場人物:デスとハイエロファント
注:台本形式読み物です。一部血の表現アリ。
pixivにも、同一内容を投稿しております。
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【挿絵表示】
デスとハイエロファントの物語:REBOOT
【 主よ、人の望みの喜びよ 】
★ 神殿・ハイエロファントの寝室
小振りな窓が高いところにあり、陽が差し込み、光の直線を描いている室内。
ベッドの縁に、座っているハイエロファント。
穏やかで柔らかい微笑みを、自分の膝を枕にしているデスの横顔に向け、ただ、じっと眼差しを注ぐ。
デスの両目は閉じられ、安らかな息を立てている。
猫のように身体を丸め、白いシーツにマントの裾を広げ、何もかも許しているような雰囲気。
ハイエロファント、僅かに紅を帯びるデスの頬に、そっ、と左手を当ててみる。
確かな温もりが、指先に伝わってくる。
ゆっくりと目線をデスの足元まで移し、またゆっくりと戻していく。
ブーツから腰の辺りにかけてに見える脚、露わになっている腹部の細やかな肌が眩しく映る。
ハイエロファント《(蕩けそうな感覚で)綺麗だ・・・》
鼓動が高鳴り始めるハイエロファント。
改めて彼女の横顔に視線を固定し、見詰め続ける。
ハイエロファント《このまま・・・見ていたい・・・》
その直後。
もぞ、と身体を動かすデス。ハイエロファントの身体に向けて、寝返りを打つ。
仰向けになった格好。
デス「ん・・・」
デスは、瞼を半開きにして、甘えたような声を出す。
瞳の奥に瞬時に投影される、ハイエロファントの顔。
ハイエロファント「(柔らかく微笑み)目が覚めた?」
沈黙。
沈黙。
沈黙。
突然、くわっ、と目を丸く見開き、声を上げようとするデス。
すぐ上のハイエロファントの眼差しと、絡まる自分の視線。
途端、ボワッ!と、デスの全身の肌が真っ赤に火照る。
何か言おうとするが、あわあわ、と口を開け閉めするだけで、硬直している。
ハイエロファント「(優しい声で)気分は、どう?」
びょん!とバネ仕掛けのように、上半身を起こすデス。
彼女の後頭部に、目線を移すハイエロファント。
デス、赤面のまま、振り向けずに少し俯く。
デス「(掠れた声で)だ、だ、大丈夫だ!」
ハイエロファント、安心した笑顔をデスの背中に向ける。
両目を閉じ、覚られないように奥歯を噛むデス。
デス《・・・やっちまった! 何たる醜態!・・・》
暫くの、間。
段々と赤みが沈静化していき、落ち着いてくるデス。
ふううう、と、とても長い溜め息を吐く。
それから、緩慢な動作でベッドの縁に腰掛け直し、ハイエロファントと並んで座る。
拳三つ分くらいの距離。
ちら、と彼を横目で見て、ずっとこちらを見詰めている眼差しと合う。
ドキッ、と跳ねる、デスの心臓。
慌てたように、自分の足元、寝室の床に目線を投げる。
デス「(恥ずかしそうな声で)・・・みっともないとこを、見せちまったな」
ハイエロファント「(首を振り)ううん、そんなことないよ。気にしないで」
デス「・・・どれくらい、寝てた?」
ハイエロファント「そうだね・・・二時間くらい、かな」
デス「(驚いて、ハイエロファントを見て)そんなにか!」
ハイエロファント「(笑顔で)でも、あっという間だったよ」
はあああ、と溜め息を吐き、項垂れて右手で顔を半分覆うデス。
デス「・・・醜態にも程がある・・・すまなかった。いきなりジャスティスが、その・・・(口籠って)よ、予想だにしてなかったことを言って、つまり、あれだ、まあ・・・(呟くように)迷惑掛けたな・・・」
ハイエロファント「迷惑だなんて、思う訳ないよ。本音を言うと・・・(頬を染め)君をこれだけ間近に見られて、ちょっと嬉しかったかな」
途端、顔を上げて、目を丸くして、思わず見詰め返すデス。再び朱に染まる。
絡み合う、ふたりの眼差し。
デス、ハイエロファントの瞳から、実直な雰囲気を感じる。
自然な流れで、すぅ、と落ち着いて、普段の表情となるデス。
デス「(感心したように)・・・ハイエロファント、お前・・・結構、言うなぁ」
ハイエロファント「そう見えないと思うけど、ね。(ふう、と息を継ぎ)僕って、やっぱり、そういう台詞、言わないように見える?」
デス「(少し考えて)・・・まあ・・・確かに。静かだとか、大人しいとか、そんな話は耳にしたことがある。あたしも最初、そう思ってた」
ハイエロファント「だろうね」
それから、視線を外し、自分の前方の床を見るハイエロファント。
ハイエロファント「でもね・・・(重めの声質で)僕にも、欲はあるよ」
思わず、何かを問いた気な目線を彼の横顔に向けるデス。
ハイエロファント「僕は聖人でもなければ、神様でもない。法王という聖職者の役目にはいるけど、決して威厳がある訳でもない。ましてや、無欲でいられるほど立派でもないよ」
デス「(少し微笑み)あたしから見れば、充分な高みにいる。それこそ、手の届くことはない、と思ってた」
ハイエロファント「でも、こうして君の隣にいるよ」
再度、デスを両眼に映すハイエロファント。
デス「だから・・・今も少し、信じられない。夢かと思うこともある」
潤いの光を帯びる、デスの瞳。
再び見詰め合う、ふたり。
暫くの、間。
ハイエロファント、自分の左手の甲を上にして、すっ、とデスに向ける。
途端、右手で、翳した左の甲を、ぎゅうぅっ!とつねる。
ハイエロファント「痛っ!」
あっけに取られた顔で、口を開いたまま、茫然とそれを見るデス。
赤くなった手の甲を確認し、残る痛みに眉を寄せ、それでも笑みを浮かべるハイエロファント。
ハイエロファント「ほら、ちゃんと痛みがあるよ。夢じゃない」
デス「(高めの声で)お前な! そういう時は言った奴の頬をつねるもんだろ!」
ハイエロファント「そうかな?」
デス「そうだ! あたしが夢かと言ったんだ! こうして、こう!」
ハイエロファントの右手を取り、迷わず自分の左頬に当てるデス。
逆に、驚いたような表情になるハイエロファント。目を何度も瞬かせる。
突然。
ハッ!と現状を認識し、彼の掌の温もりを感じ取るデス。
そのまま、動けなくなる。
デス「(僅かに震える声で)あたしの頬・・・を・・・」
デス、自分の手を下ろす。
しかし、ハイエロファントは右掌を彼女の頬に添えた状態。
互いの瞳に視線を固定している、ふたり。
沈黙。
沈黙。
一瞬、ハイエロファントの瞳が煌き、艶やかさを醸し出す。
デスの眼差しが、呼応するように揺らぐ。
途端。
急に顔を寄せ、両目を閉じるハイエロファント。
自分の唇を、デスの唇に、重ねる。
大きく丸く見開かれた、デスの両目。
停止。
停止。
ゆっくりと、惜しむように唇を離すハイエロファント。
ハイエロファント「・・・どう?・・・感覚、ある?」
目を正円に近い程にして、見る見る頬を真っ赤に染めていくデス。
何かを言おうとしているが、口を、パクパク、とさせ、凝固している。
スッ、と彼女の頬に当てていた右掌を戻すハイエロファント。
顔を少し伏せ、申し訳なさそうな表情。
ハイエロファント「ごめんね・・・ちょっと・・・抑えられなかった・・・」
デス「(ハッ、と我に返り)あ! そんな! いや! いいんだ! だから・・・(恥ずかしそうに)気に・・・するな・・・」
膝を突き合わせるような体勢で、上半身を互いの方に向けて、ベッドに座っているふたり。
頬をに薄い紅色を帯び、僅かに俯くデス。
やや上目遣いにデスを見ているハイエロファント。
暫くの、間。
更に、間。
デス、彼と同じような上目遣いで視線を送る。
デス「(言葉を選ぶように)・・・血の臭い、しなかったか?」
ハイエロファント「(顔を上げ)しなかったよ。何かの樹木か、何かの花のような香りは、したよ」
デス「自分では判らんな・・・」
直後。
すっ、と、両掌をデスの両肩に乗せるハイエロファント。
ドキン!と大きく脈が打たれ、顔を上げて彼を見詰めるデス。
ハイエロファント「もう一回、確かめて、いい?」
真剣な表情で、彼女を見詰め返すハイエロファント。
一度、鮮やかな輝きを放つ、デスの瞳。
少しの、間。
デス、両方の瞼を閉じ、口を結んで少し顎を上げる。
緊張気味に腕を伸ばし、両手を膝の上で、ギュッ、と握る。
それを確認して、両目を閉じながら顔を近付けていくハイエロファント。
自然な動作で、再度重ねられる、ふたりの唇。
停止。
停止。
停止。
緩やかに、離れる互いの唇。
かなりの至近距離で、眼差しを絡め合うデスとハイエロファント。
デス「(感慨深げに)・・・夢じゃないんだな」
ハイエロファント「(優しい声で)夢じゃないよ。だから、覚めないよ」
座り直し、ゆっくりと、更に身体を寄せるハイエロファント。
自分の右半身に、彼の体重が掛かってくるのを感じ取るデス。
それから、慎重な動きで、ハイエロファントに半身を委ね、頭を彼の左肩に軽く乗せる。
ハイエロファント、彼女に穏やかで暖かい微笑みを向ける。
デス、目を閉じて、口元に柔らかな笑みを浮かべている。
暫く、そのまま。
ハイエロファント「・・・君は、いつから僕のこと、思っててくれたの?」
瞼を開き、ハイエロファントに視線を戻すデス。
少しだけ考え、僅かに目線を外し、遥か彼方を見るような眼差しになる。
デス「最初の頃は、相容れない奴だと思ってた。多くの連中を救い、世の平和を願い、もたらす・・・あたしみたいな死神とは、真逆の存在だ、と・・・」
一呼吸置き、再びハイエロファントを両眼に映すデス。
デス「(懐かしむように)お前を知って、どれくらい経った頃か・・・いつしか、あたしは自分の運命と向き合ってるつもりで、受け入れてるつもりで・・・実のところは、背を向けてた。逃げたくなってたんだ。自覚はなかったが、な。その頃だ、お前と初めて逢ったのは」
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