彼は忠実で傲慢だった。

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ガウェイン+エスカノール

六章の悪夢再び的なノリ


傲慢なる太陽

聖都前の難民キャンプに、聖都から一人の男が現れた途端、今まで夜だったはずの難民キャンプが急に昼になったのだ。

 

「……た、太陽が…!」

 

「な、何なの!?」

 

この異常な事態に戸惑い騒ぎ出す難民たち。彼らに対し、男はにっこりと微笑みながら安心させるように言葉を紡ぐ。

 

「落ち着きなさい。これは獅子王が齎す奇跡──すなわち、"常に太陽の祝福あれ"と獅子王が私に与えた祝福の効果です。故に、貴方方に害をもたらすものではありません」

 

「おお、太陽の騎士ガウェイン卿だ! 聖抜が始まるぞ!」

 

その男の声を聞き、姿を見た難民たちは歓喜の声をあげた。何故なら、彼は聖都に入るための手続きを行う監督のような役割を果たしているからだ。聖抜という名の手続きの。

 

「皆さん。聖都に集まっていただき、感謝します。今や、人間の時代は滅び、この小さな世界も当たり前のように滅びようとしています。その滅びの所為で今や地上の何処にも人が住むに値する土地は存在しません。無論、この聖都──キャメロットを除いて、ですが。我らが聖都は完全完璧なる純白の千年王国。この正門を抜けた先は貴方方の望む理想世界が待っています。滅びに瀕することのない、理想の世界が」

 

「おお、噂が本当だったとは……!」

 

「偉大なる太陽の騎士、獅子王様……!」

 

「例え異教の騎士であったとしても何て神々しい……これが円卓の騎士……」

 

ガウェインの理想世界という言葉に対し、今まで半信半疑だった難民たちも喜色を浮かべガウェインを崇めるように見つめる。そんな様子の難民たちにガウェインは困ったように笑いながらも、話を続ける。

 

「ありがとうございます。貴方方はここに辿り着くまできっと辛く、長い旅路があったのでしょう。我が王──獅子王は例え異教徒であっても。異民族であっても。受け入れ、あらゆる民を守ります。残念ながら、あらゆる民といっても……我が王の許しを得られた者だけですがね」

 

その言葉を最後にガウェインは数歩下がり、ガウェインの背後の正門から兜をかぶった白銀の鎧騎士が現れた。

 

「──最果てに導かれるべき(モノ)は限られている。(モノ)の根は腐り落ちるものだ。世界が滅びゆく今、私は故に穢れなき魂を選定する。選び取る」

 

白銀の鎧騎士の神々しさと異様さを感じ取った難民たちはその言葉に戸惑いながらも耳を傾ける。

 

「決して穢れない魂。ありとあらゆる悪にも染まらず、乱れぬ魂。──生まれながらにして不変の、永劫無垢なる人間(モノ)を」

 

その言葉を語り合えた白銀の鎧騎士は手を掲げる。すると、難民たちの中で三名の者達の身体から煌びやかで暖かな光が溢れ出した。

 

「な、何の光ィ!?」

 

「輝かしく力強い光なのに……眩しくない……?」

 

それはルシュドと呼ばれる少年の母の身からも発せられていた。ルシュドは疑問に思い問いかけるも、ルシュドの母にもわかるわけがなく。聖抜は終了する。

 

「聖抜はなされた。その三名の人間(モノ)を回収せよ、ガウェイン卿」

 

「……御意に」

 

白銀の鎧騎士は正門の向こうへと戻っていく。聖抜は終えたと言い残して。だが、難民たちには何が何だかわかってはいない。取り敢えず聖抜も終えたのだ、聖都に入ることができる─! そう、思っていた。ガウェインが心底残念そうな表情で語るまでは。

 

「皆さん、まことに残念です。ですが、これも我が王の命。王は貴方方の粛清を望まれました。では──これより、聖罰を開始します」

 

ガウェインが命に応え、難民たちを警護していた筈の騎士達が剣を構え。

 

「──え?」

 

難民達を斬り殺す。

 

「な、なんで……!」

 

「お母さ……」

 

老人も、女子供も容赦なく殺す。

 

「な、なんてことを……!」

 

マシュ・キリエライトは、藤丸立夏は怒りに震える。余りにも残虐な悪逆に対して、怒りを覚える。ならば、怒りを覚えるほどその行為を認められないならば──争うしかない。

 

「マスター、魔力を回してください!彼らを助けないと!」

 

マシュの要請に藤丸は魔力をまわすことで応える。そして、自分についてきてくれているサーヴァント達に指示を出した。クーフーリンにはガウェインの足止めを。ジャンヌ、ヘラクレス、ダヴィンチには騎士の一部をマシュと共に撃破し、突破口を作ることを。

 

マシュは盾を振るい、騎士を何人も撃破する。その少し隣ではヘラクレスがマスターの指示に従い、その力を持ってして暴れる。そしてダヴィンチが残っていた騎士を撃破すると騎士の包囲網が瓦解し、突破口ができた。

 

「……逃げ道ができたぞ! 」

 

「助かった、これで逃げられる!」

 

難民たちは続々と、我先にとその穴から逃げ出していく。彼らが逃げることのできるように、マシュたちはわらわらと突破口を埋めようと集まって襲いかかってくる騎士たちを倒していく。ここまでは順調に思えた。しかし──、唐突にクーフーリンがボロボロの姿で藤丸達の目の前に受け身も取れずに吹っ飛んできたのだ。クーフーリン、光の御子。ケルト神話の大英雄。彼はそうそう簡単にやられる強さではない。寧ろ、余りにも強大すぎる実力を持つ半神の英雄なのだ。だが、そのクーフーリンがボロボロの状態で藤丸達の目の前に吹っ飛んで来た。その事実に呆然としていると、彼らの前にガウェインがゆっくりと歩いて来た。

 

「まだ異教徒にも"戦う者"がいるのですね。驚きでした。ですが、そろそろ死んでもらうとしましょう。聖都の門を乱した罪は万死に値します。円卓の騎士ガウェイン、この聖罰を任された身として貴方方を排除させてもらいま……!?」

 

「ヘッ、口上が長いぜ、太陽の騎士さんよ!」

 

気づくと、ガウェインの胸をクーフーリンのあの有名な槍が貫いていた。刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)。それは影の国の神殺し、スカサハから授かった魔槍ゲイ・ボルグ。因果を逆転させ、心臓に槍を命中したという結果を作ってから槍を放つ対人技。それは最早権能に近いと言われる絶技。

 

だが──太陽の光には及ばない。

 

「……素晴らしいですね。流石光の御子だ」

 

少しばかり倒れそうに揺らぐも、ガウェインは直ぐに体制を立て直し、クーフーリンを一撃の元に殺す。

 

「なッ……! 心臓を貫かれてまだ生きているのか!」

 

「クーフーリンさん!」

 

マシュやマスター、ダヴィンチの驚愕を他所にガウェインは笑う。

 

「ああ──流石は星見台です。これまでの特異点を解決してきただけのことはありますね。私も慢心してました。まさか心臓を貫かれるとは。因果を燃やし尽くして(・・・・・・・・・・)いなければこの私でも即死でしたね」

 

『因果を燃やして尽くすだって……!? クーフーリンの魔槍は権能レベルなんだぞ!? そんなことができるのか…!?』

 

何処からか聞こえるロマニの驚愕の声にガウェインは驚きながらも応える。

 

「できるに決まってるでしょう。私を誰だと思っているのです?太陽の騎士ガウェインですよ? そのガウェインの心臓を貫いたこと誉に思っても良いです……この我を祝福をある程度稼働して本気を少しばかり出すくらいの気にさせたのですから」

 

ガウェインの周りが彼から発せられる熱で歪み始める。──そしてガウェインがガラディーンを一振りした瞬間、ジャンヌが消滅していた。

 

「な……!」

 

誰もが驚愕の声を上げる。何故なら、誰もその剣閃に反応できなかったからだ。

 

「■■■■■■■■──!」

 

ヘラクレスが唸り声を上げ、ガウェインに襲いかかる。マスターをこの場から逃がすために。このままでは全滅の憂き目に会うと悟ったがために。

 

ダヴィンチがヘラクレスの意図を察して藤丸とマシュを連れて逃げるのを傍目に見ながら、ヘラクレスは一度殺される。

 

「ギリシャの大英雄が狂化されているとは悲しいですね。狂化さえされていなければまだ我に抗える可能性があったというのに──」

 

「⬛️⬛️■■■■■◼️■■■◼️■◼️■◼️■◼️──ッ!!」

 

ギリシャの大英雄は蘇る。たかが一度の死如きで大英雄は殺せぬと知れ。そう言わんばかりの威圧。それを見たガウェインは笑みを──にっこりとした笑みを浮かべながら、言う。

 

「蘇生ですか。ならば蘇生できなくなるまで、完膚なきまでに殺してあげましょう」

 

 

 

 

無慈悲な太陽(クルーエル・サン)

 

──大英雄は、蘇ることがなかった。




ガウェイン
クラス:セイバー

筋力:B+〜EX
耐久:B+〜EX
敏捷:B+〜A
魔力:A〜EX
幸運:A
宝具:A

○クラス別スキル
対魔力:B
騎乗:B

○スキル
太陽の数字(サンシャイン):EX
*日の出と共に力が増加し、人格も傲慢となっていく。正午が最も最大となる。なお、本作では三倍ガヴェインが通常モード。日の出と共に三倍ガヴェインから強くなっていき、正午には天上天下唯我独尊(ザ・ワン)と呼ばれる最強状態になり、そこから弱まって三倍ガヴェインに戻る。

カリスマ:E

ベルシラックの帯:EX

○宝具
転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラディーン)
*ランクA

神斧リッタ
*ランクB
*ガヴェインの発する膨大な熱量を蓄え放出する巨大な片手斧。

なお、第六特異点ではギフト不夜により、いつでも最強状態になれる上、本作の不夜は時間帯を選べるため出す力を変えられる。


こんな強くても殲滅できないピクト人とかいう怪物がいるらしい


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