怯えてばかりだった。
街に避難警報が出てから家族と避難区域まで逃げる事になっている最中、少女は兄とはぐれてしまった
人の波に流され、気が付けば全く知らない場所にいた自分。
泣きながら街を歩くが誰も居ない。
少女は泣き続けていたら気が付けば辺りは暗く夜になっていた。
その時だった。
地鳴りに顔を上げてみれば其処には黒い巨大生物『第三の使徒サキエル』が佇んでいた。
彼方は此方に気付いていないが幼い少女はソレに怯えて泣きそうになったが恐怖が優ったのか少女は声を出せずにいた。
少女が怯えていると巨大生物とは別の場所から紫色の巨大ロボットが現れた。
まさか味方?
これで助かる。
等と思ったのも束の間。
紫色のロボット『エヴァンゲリオン初号機』は少女に気付かずに歩き、サキエルに殴られた。
初号機が倒れた位置と少女は離れていたが初号機が倒れた衝撃で少女の近くのビルは一部が倒壊し、少女に降り注いだ。少女は逃げようとしたが転んでしまう。
少女は空から降ってくる瓦礫に恐怖し、動けなかった。少女は身をこわばらせ、目を瞑った。
しかし少女には何時まで経っても瓦礫の雨は降り注がれ無かった。
少女はソッと目を開くと驚愕した。
「なんなんだよったく。警報鳴ったと思ったら、なんかデカいの暴れてるし」
少女の前で謎の男が立っていた。彼は降り注ぐ瓦礫の雨を拳や蹴りで弾いていた。
少女に降り注がれる筈だった瓦礫の雨を全て叩き落とした男は少女の前まで歩み寄ると膝を折り、少女に視線を合わせた。
その時、少女は男の姿を改めて見る事になる。
アニメで見た様なヒーローが着るスーツ。ヒーローが風に靡かせる様なマント。そして一番、目立つのは男の頭だ。
男の頭はこれでもかと言うくらいに、毛の一本も無い、つるっぱげだったのだ。
「大丈夫だったか怪我は?」
「う、あ……ううん」
男の問いに少女は首を横に振った。転んで擦り傷は出来たが少なくとも今降ってきた瓦礫では怪我はしていない。
「そうか……なら安全な場所まで行くか」
「きゃっ!?」
男は少女を抱き上げる肩車をする。突然の事に驚きの悲鳴をあげた少女だが男が自分を助けてくれたのだから危害を加える気はないと感じて男の頭に手を着いて自身を支えた。
「おじさん、ありがとう」
「おじさんじゃねーよ」
礼を言った少女だが呼び方が気に入らない男は抗議の声を上げる。
「ハゲお兄さん、お名前は?私、鈴原サクラ」
「なんで急にハゲが付いたのか不思議なんだけど。俺の名はサイタマだ」
少女とハゲ頭の男は互いに自己紹介をした。そしてサイタマが歩いていた先には先程、サキエルに叩きのめされた初号機が倒れている地点だった。
「おい、ロボット。無事か?」
『え、あ……はいっ!?』
サイタマがコンコンと初号機の足を叩く。それに気付いた初号機のパイロット『碇シンジ』はすっとんきょうな声を上げた。まさか、こんな場所に人が居るとは思わなかったのとサイタマがサクラを肩車していた事に驚いていた。
「目覚めたなら起きろ。的になるぞ」
『え、あ、はい!』
サイタマの言葉にシンジはエヴァ初号機は立ち上がらせた。
そして立ち上がったエヴァ初号機の掌に飛び乗るとサイタマは肩車していたサクラを抱き抱えた。
「その子を頼む」
サイタマはサクラをエヴァ初号機の預けると掌から飛び降りサキエルの方へと走り出す。
『え、ちょっと!?』
「ハゲお兄さん!?」
反射的にサクラを受け取ったシンジは慌て、サクラはサイタマへと手を伸ばすが既にサイタマはサキエルの足元に来ていた。
「心配すんなって」
サイタマが足を止めて振り返る。その時だった。足元に現れた邪魔物を踏みつけようとサキエルが足を上げて今まさにサイタマに振り下ろされようとしていた。
「ハゲお兄さん!!」
ズズンと次重のある音が鳴り響き街を揺るがせる。それ程の震動が起きたのだ。その中心地に居る者は一溜まりもないだろう。そう……それが普通なのだから。
「おー……中々やるな。結構重かった」
『…………え?』
サキエルの足から声が聞こえた。正確にはサキエルの足の下の地面からだが。その事を一瞬理解できなかったシンジは間抜けな声を上げる。次の瞬間だった。
「よっ……と」
なんとサイタマはサキエルの足を気だるげな声と共に押し返した。突然の事にバランスを崩したサキエルはそのまま倒れてしまう。
『あ、あの……アナタは何者なんですか?』
シンジは有り得なさすぎる光景に思わずサイタマに聞いていた。あれほど巨大生物に踏みつけられて何故無事なのか?
その事を純粋に知りたくなったからだ。
「俺か?俺は趣味でヒーローをしている者だ」
シンジの問いにサイタマは振り返り、マントを靡かせながら答えた。
これが後に『ワンパンマン』と呼ばれる男の伝説の始まりだった。