取り残された軍人と潜水艦   作:菜音

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かなりお久しぶりです♪

sidestorをまとめてたらいつまで経ってもまとまらないのでなら止めなさいと言われました‥‥

sidestoryはまた機会があれば短編として投稿させていただきます♪

さてと、そろそろですね。


これまでとこれからを 19日目

 

 

 

この生活が始まって既に数年の時が経ちました。

 

海猫荘の自分の私室として使っている部屋で私は今これまでに撮ったカナ達との写真を眺めています。

 

彼女達の観察と成長の記録の一環として始めたこの撮影も今では枚数が重なりアルバムになり、そのアルバムも今や数冊に及びます。今ではただの観察記録としての物ではなく彼女達とのこの数年の生活を記憶する大切な宝物となっています。

 

元々観察日記や写真はいずれ日本に帰れた時の軍への手土産のつもりでしたがこの宝を渡すのはしのびないので渡す用とは別に彼女らとの思い出用を作る始末です。(こっちの方がもはやメインで量が圧倒的)

 

 

昨日撮った写真をまとめ終え、日記を書くとふと昔のアルバムに手をかける。

 

「懐かしいな‥‥」

 

『この島の最暖月の日にカナ達とやったスイカ割り』

カナが棒ではなく魚雷でやろうとしてみんなで慌てて止めた。

 

『日焼けしたマシロ』

日差しが強い日が続いていた時期、カナ達はいつも白いままなので深海棲艦は日焼けしないと思っていたらマシロが顔を真っ赤にして痛がっていた。

 

『みんなと月見』

ある夜、月がとても綺麗だったのでみんなとその日は外でご飯を食べた。

 

 

 

他にもさまざまな楽しい事、大変な事があったがひとまずそこまでにして私はアルバムを閉まった。

 

 

次に私は通信機を操作します。

 

これは既に数年間続けている日課のようなものです。

 

 

軍の施設跡から持ってきていた通信機器だがこの生活がスタートしてすぐに直したが結局使わずにいた。なんせこの島のある海域は敵の侵攻を受けここは敵の攻撃に晒されたのだ。おそらく敵にかんぜんに落ちているはずである。そんな中で救援を求めても来れる筈もなく、もしかすると敵を呼びかねない。そう思って止めていた。

 

しかしその後、一か八かやろうと決めた。

もし見方と繋がればそれでよし、もし敵が来てもカナ達を返す事ができる、自分が助かるか殺されるかはその時次第だと。だけど、結局何処とも繋がらなかった。

 

それでも諦めず今もSOSを発信し続けています。

 

「今日も反応なしか‥‥」

 

私は受話器を置いた。アンテナはしっかり機能してる。受信ができる事は確認済み、受話器も問題なし。後は受けとり手が見つけてくれるだけなのだが‥‥

 

「今戦争はどうなってるんだろう‥‥」

 

まさか日本は既に深海棲艦によって滅んでいたり‥‥

 

 

トントン

 

私がそんなネガティブな事を考えていると部屋の扉がノックされた。

 

 

「マスター入るよ~」

 

入って来たのはお盆にカップを2つのせている成長したカナだった。

 

「コーヒー淹れたから持ってきた」

 

「ありがとうカナ、でも何で2つ?」

 

「えへへ、一緒に飲もうと思って♪」

 

自然に笑うカナはやっぱりかわいいなぁ。

こんな事を素で言ってくるからねぇこの子等は‥‥

 

私は作業机から部屋の窓辺に置いたソファーに移った。

この位置にソファーを置いたのはここから見える海の眺めが気に入っているからだ。

 

私が座るとカナは私の隣にちょこんと座る。

 

カナからもらったコーヒーを飲みながらふとカナを見る。

 

(この数年で大きくなったね‥‥)

 

実は私の生活に最大の変化があった。それはカナ達が急成長したのだ。出会った時はまだ言葉も話せない幼女だったがある時、

 

「マ」

 

「うん?」

 

「マ、マ」

 

「うんん?」

 

「マ、ス、ター」

 

カナが私の事をマスターと呼んだのだった。それ以来片言ではあったけど徐々に言葉を扱えるようになり今ではほとんど人と変わらないほど流暢に話せるようになっていた。なぜマスターになったのかは知らない。

 

 

 

言葉だけでなく、片言を言おうとし始めてから彼女達の背が伸び始めた。今ではカナで例えるとあのカ級が成人女性なら中学生位にまで成長している。

 

ただカ級やソ級とはやはり違い彼女達は凄く可愛のである。別にこれはノロケとかではなく本当にあのお化けみたいな顔をしているカ級達に比べると、いや!比べ物にならないほど美少女なのである。

 

 

ここまで来ると私が昔立てた仮説がいよいよ現実味を帯びてきました。

 

「マスター?私の顔に何か付いてるの?」

 

じっとカナを見て考え事をしていたのでずっと見られていたカナが不思議になっていた。

 

「いや、何でもない。今日もカナは可愛なと思って」

 

「いやだそんな可愛なんて♪」

 

カナもそうだけどこの子達は誉めるととても喜ぶのでこっちも誉め概があると思う。だけど‥‥

 

「はふぅ♪」なでなで

 

やっぱりなでなでが一番好きのは変わらないな。

 

私はカナの頭を撫でる。昔に比べると背が伸びて頭の位置が高くなり少し撫でづらくなったが、苦はまったくない。

 

 

「マスター♪」

今度はお返しとカナが頭をすりすりしてくる。

かわいい事をしてくれますねまったく。もし結婚して娘がいたらこんな感じなのだろうか?

 

 

深海棲艦との奇妙な共生は始めこそ違和感があったが今ではまったくない。むしろ一緒にいて楽しいし落ち着く。一緒にいるのが当たり前な気さえする。こんなのを家族とでも言うのかな‥‥

 

そんな事を思っているとふとある考えが私の頭によぎる。しかし、それは決して口にしてはいけない事だ。だけど、それでも私は‥‥

 

「恐い顔してるよ?何かあるの?」

 

カナが心配そうにこちらの顔を覗き込む。

 

私は誘惑に負けてこの考えを口にした。

 

「なぁカナ‥‥。もしだよ。もしこのまま私もあなた達も居場所に帰れないとした場合だけど、もし、良かったらこのまま私と家族としてこの島で一緒に生活しない?」

 

 

これはこの数年悩んでいた事だ。

私はこれまでいつかは日本に帰りたい。この子達が深海棲艦の艦隊に戻りたいのなら帰してあげたいと思っていた。だからその為にいつか軍に出す報告書を作った。通信機器を直し電波を出し続けている。それまで生き延びる為に拠点を作り食料を確保できるようにした。

 

しかし、もう大分待った。何も動きがない。

 

そこで生まれた疑惑は、日本はもう既に無いのかもしれない。深海棲艦はたかだか潜水艦に気にも止めていなのかもしれない。私も彼女達も、もう帰る場所が無いのかもしれない。ならば‥‥

 

このまま一緒に一生ここで暮らすのもアリかもしれない。ここ数年で海猫荘も私達が住むのみ都合の良い改装を施した。食料も備蓄はたっぷりで自給自足の体制もだいぶ整ってきた。暮らそうと思えば何時までも暮らす事は可能だ。

 

だけど、もし彼女達が海に、艦隊に帰る事を望んでいるのであれば私は止める事は出来ないし止めるつもりもない。

 

「どうかな?」

 

私の問にカナしばらく黙った。

 

やはりダメなのだろうか?

 

 

「マスター!」

 

カナは立ち上がると私の前に向き直る。

 

「私、ううん。私達は初めからここが自分達の居場所だと思っているよ」

 

カナは少し微笑むと話を続けた。

 

「私達はね。マスターに助けれて育てられて愛されてきたの。だからね、きっとマスターはこの前本で見た本当の親よりも固い絆で結ばれた親子っのだと思ってるの。」

 

カナは少し下を見て悲しそうな顔をする。

 

「実はね。マスターがニホンに帰りたいと思っているの私達は知ってるの。だから私達はね。もしマスターが帰りたいと望むならその足枷になりたくないって思ったの。」

 

今度は悲しそうな顔から一変、今度は満開の笑顔だ。

 

「だからね。マスターがそう言ってくれるの、私はとってもとっても嬉しいの♪」

 

 

「カナ‥‥」

 

「だからねマスター。私達の親であり続けて?」

 

「ああ!もちろん!」

 

「やったー!マスター!」

 

「ちょ!カナ!」

 

カナはよほど嬉しいのか大ジャンプして私に飛び込んできた。私は支えきれずそのままソファーに倒れる。

 

「ふふふマスター♪ごめんなさい」

 

「絶対反省してないだろカナ‥‥」

 

私はそっとまたカナの頭を優しく撫でる。

やっぱりこの子達は尊いな。この子達と生活できるなら私はそれでだけで良い。

 

「今晩の晩御飯の時にでも、二人にも相談しようか‥‥」

 

「う~ん。多分その必要はないと思うけどね。」

 

 

ドンドンドンドン

 

ん?誰かが廊下を走っているようだ。

 

 

ばたん!

その音の主はノックもしないで扉を開けると急いで入って来た。

 

「マスター!大変なの!」

 

「こらソラ!ノックしないとダメでしょ!」

 

「ご、ごめんなさいカナお姉」しゅん

 

入って来たのはソラだ。

のんびり屋な所は昔と変わらず今もスローな生活を送っている子だ。たまに抜けている所があってみんなのお姉さん役のカナにいつも叱られているのだ。

 

だけど、のんびりさんのソラがここまで慌てるのは珍しい。

 

「ソラ急ぎのようだけどどうしたの?」

 

「そう!実はね。マシロちゃんと海岸で遊んでいたら人が、多分深海棲艦じゃあないのってマシロちゃん言ってだけど打ち上げられているの!」

 

なんだって?!

 

「分かったすぐに行く!」

 

私はソラに案内されてカナも連れて急ぎ現場に向かう。

 

 

 

 

丁度私が部屋を出た後だった。

 

 

『こちらガザザザ日本国ボヴヴヴ軍第ガザザザ応答せよ!繰り返すこちらガザザザ‥‥』

 

これまで無音を貫いていた通信機器に音声が鳴り響いたのであった。

 

 

 

 

 




いよいよこの物語もエンディングが迫ってきました。
止まっていた時が動く時、軍人達に待ち受ける運命の時とは。

次回を‥‥お楽しみ♪

感想などを切望しております!

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