「別れ」の物語   作:葉城 雅樹

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※10月4日にサブタイトルを変更しました。

※11月11日に話の内容や今後増えるサーヴァントのことも考慮して精算期間を一年間に変更しました。

この「別れ」の物語はこのアルトリア・ペンドラゴン(セイバー)編の第1節の冒頭設定さえ把握していただければ、どのエピソードからも読めるようになってます。どうぞ気になるサーヴァントの話からお楽しみください。


アルトリア・ペンドラゴン(セイバー)編
第1節 「騎士王」との語らい


「お待ちしてました、マスター」

 

 自動扉が開くとともにこちらに向けて透き通った声が聞こえてくる。わたしはその声の主である金髪碧眼の女性に笑顔を向け、言葉をかける。

 

「待たせてごめんね、アルトリア。 じゃあ、最後に少し話をしようよ」

 

「ええ、私も最後に貴方と話がしたいと思っていました」

 

 そう言って、騎士王と呼ばれた彼女はやんわりと微笑んだ。

 

 

 

 ――すべての目的は達成された。魔術王による人理焼却も、その後の人理再編も沢山の困難の果てに乗り越えることが出来たのだ。

 そして、カルデアはその役目を終えることになった。全ての問題が解決し、カルデアの解体が決定された以上、召喚されていたサーヴァント達との契約も終了することになる。しかし、サーヴァントは意思を持っている為に、契約を一方的に断つのは危険だ。

 そういった事情と諸々の手続きや起動している設備の停止にかかる時間を踏まえて、マスターと全てのサーヴァントの関係を清算する期間として一年間の猶予が与えられたのだった。

 

 

 

 

「じゃあ、何から話そうか」

 

 そう言ってわたしはアルトリアとの思い出を振り返る、共に特異点での戦いを乗り越えたこと、マシュと3人で聖剣の力の更なる解放のための試練に挑んだこと、時々起こるお祭り騒ぎの時に暴走するサーヴァントたちを諌めていたこと、思い出せばキリがない。

 

「そうですね、では召喚された時のことから話を始めましょう。 確か私がここに召喚されたのは第二特異点の修復後、しばらくしてからだったと記憶しています」

 

 わたしは思い出す、アルトリアが召喚に応じてくれた時のことを。

 

 

『――問おう、貴方が私のマスターか?』

 

 第一声は確かこの言葉だった。それに対して未熟だったわたしは特異点Fで戦った、オルタの方のアルトリアを思い出してしまって、うまく答えられなかった。

 

 

「そうだった、確かあの時、わたしは怯んじゃってアルトリアを困らせちゃったんだよね」

 

 昔のことを思い出して苦笑いしてしまう。今でこそ笑い話だが、当時のわたしにとって特異点Fで対峙したアルトリアのオルタは恐怖の象徴とも言うべきものだったのだ。

 

「ええ、あの時貴方が怯えてるのがはっきりと分かりましたから。 私には心当たりがなかったので少々困ってしまったのをよく覚えています。 ですが事情を知った今では仕方の無かった事だと思いますよ。 それに、貴方はとても強くなった」

 

「そんなに力がついたとは思えないんだけど……」

 

「ふふっ、貴方はたまにおかしなことを言いますね。 私が言いたかったのは肉体的な強さではありませんよ、精神的な強さの話です」

 

 そう言いながらクスッと笑っているアルトリアを見て的外れな受け答えをしてしまったことに気づいてしまった。そして、恥ずかしさで思わず顔が赤くなってしまったのが自分でも分かった。

 

「貴方は覚えているでしょうか、誰もいない荒野で私とマシュとリツカ、3人で聖剣のさらなる力を解放するために戦ったことを」

 

「もちろん、あの時はびっくりしたよ。いきなり悪魔や竜種と戦うことになったから」

 

「いいですかマスター。 貴方は人理焼却、そして人理再編と言う大きな困難に立ち向かった。 そのことはほとんどの人が知らないかも知れません。 力を奮ったのは我々英霊だったかも知れません。 カルデアのスタッフや特異点の住人サポートなしで乗り越えられなかったかも知れません。 しかし、それでも貴方はマスターとして私たち英霊を率い、困難にも音をあげること無く立ち向かい続け、そしてすべての事態を乗り越えたのです。 そう、あの時も言いましたが貴方達は限界のないことを自ら証明したのです。リツカ、貴方の意志の強さは決して我ら英霊にも劣りません。 」

 

 そう言われて気づく、これはアルトリアからわたしへの激励(エール)なんだ。だからわたしは満面の笑みで答える。

 

「アルトリアにそう言われると私も少しは自信が持てるかな、これからも頑張っていけそうな気がする」

 

「それは良かった。 それにしても貴方の笑顔は良い。見ているこちらまで明るい気分になります」

 

 唐突に褒められるとやっぱり恥ずかしい。わたしは彼女の方を見てられなくなって思わず目を逸らしてしまった。

 恥ずかしいと顔が赤くなるとはよく言うけれど今のわたしは正にその状態なんだろう。そんな顔を見られたくなくて間髪開けずに口を開く。

 

「あ、そうだ。 最後だから聞いておきたいんだけど、カルデアでの暮らしはどうだった?」

 

「とても良いものでした。 貴方というマスターに出会えたこと、誇りある戦いができたこと、沢山の英霊と肩を並べて戦えたこと、他にもありますが良い経験を多くすることが出来ました」

 

 あ、ダメだこれ。恥ずかしさから話題を変えようとしたのに結局褒められたことに照れてしまって、思わず顔を伏せてしまう。

 

「マスター、大丈夫ですか? どうも先程から顔が赤いようですし、熱でもあるのではないでしょうか?」

 

 そんなことをしたせいか彼女を心配させてしまった。大丈夫だよと手と表情でアピールをして会話に戻る。

 

「この際だから聞いちゃうけど、不満は無かったの?」

 

 質問をしたわたしは何個かの答えを想像していた。アルトリア多すぎ問題を筆頭として時折男子高校生のようなノリで暴走を始める円卓の騎士、やたらと突っかかりにいったりプリドゥエンを無許可で持ち出すモードレッドに、熱い視線を向けてくるメディアさんやギルガメッシュ王、人違いで追いかけてくるキャスターの方のジル・ド・レェなどなど上げればキリがない。

 

「そうですね、特に思いつかないです。少し厄介なことはあったりもしましたが、不満という程のことはないですね」

 

「えぇ!? 本当に? 自分の別の側面が多すぎることとか円卓の騎士の暴走とか他にもいろいろあるでしょ!?」

 

「む……リツカ、貴方は色々と誤解しているようだ。せっかくの機会です、最後に貴方が考えていた私の持っている不満とやらを洗いざらい話してもらいましょう」

 

 帰ってきた想定外の反応に思わず口を滑らせてしまった。でも自分の想像とアルトリアの思っていたことが違ったのも事実だしこの際全部確認させてもらおう。

 

「そうだね、最後だし全部聞かせてよ。まずは自分の別側面の多さについてはどう思っているの? 人理修復前に冬木に行った時にはセイバーのクラスのオルタくらいしか居なかったけど今となってはかなりの数がいるよね? それに男の方のアーサーも今ではいるし」

 

「その事ですか、フユキでも言ったと思いますが彼女たちは私にとっては別人なのです。まず、男性のアーサー王に対しては境遇や性格が似ているのもあって個人的には話しやすい相手ですよ。そして、私の別側面についてですね。確かにオルタの私の考え方は私とは噛み合わないものでしょうし、私には有り得なかった別の可能性を辿っている幼い私は見てて気恥しいものがあります。挙句の果てには約束された勝利の剣(エクスカリバー)を二本持ってたり訳の分からないサーヴァントユニバースなる世界から来たといい全てのセイバーを殺すなどと言って度々私を付け狙ってくる私までいる始末です」

 

 そこまで神妙な顔で言ったあとアルトリアは表情を和らげて、ですが、と続ける。

 

「以前にも話しましたが、今の私は自分の人生に未練はあっても後悔はないのです。他の可能性を歩んだ彼女たちに興味がないかと言われると嘘になりますが、別に特別な感情を抱くことはありません。それこそ英雄王に比べると大した問題ではないですね」

 

 アルトリアの言葉は衝撃的であると共に至極納得のいくものでもあった。わたしはアルトリアのあまりの達観っぷりに一瞬言葉を発しかけたが、彼女自身は全く不満もない様なのでそのことについては何も言わずに話を続ける。

 

「あぁ……やっぱりギルガメッシュ王が一番苦手?」

 

「そうですね……やはりそうだと思います、かの英雄王は非常に強力な英霊ですし、偉大な王でもあるのでしょう。しかし私とはあまりにも相性が悪いのです。これはここに召喚される前の話なのですが……」

 

 そう言ってアルトリアは自身とギルガメッシュ王の過去の話を聞かせてくれた。その話はあんまりなものであったが同時にあのギルガメッシュ王なら有りうるとも思えるものだった。

 

「私と彼の因縁は理解してもらえたでしょうか?」

 

「うん、それにしてもなかなか災難だったんだね……」

 

「今はあの時英雄王がキャスターで召喚されていればこのような事もなかっただろうにということも考えてしまいますね。キャスターの彼は比較的話のわかる人物のようですし。その点貴方は上手くやっていますよ、英雄王とうまく付き合えているのですから」

 

「いやいや、そんなことないよ。今だってたまにハラハラするもん」

 

「実際ここまで上手くやれているのだから貴方はもっと自分を誇ってもいいと思いますよ。それで、まだ貴方の考える私の不満はありますか?」

 

「じゃあ、自分の部下だった円卓の騎士がその……たまにやらかしてしまう事についてはどう思ってるの? 2016年のハロウィンの時とか」

 

 空飛ぶ居眠り豚呼ばわりされるトリスタンや、タラシのランスロット、トラブルメーカーのモードレッドに、天然ボケを多発するガウェインなど円卓の騎士はなかなかに癖の人物が多い。そんな彼らをアルトリアがどう思っているのかについては以前から気になっていたことであった。

 

「まず、再び彼らとともに肩を並べて戦えることは非常に嬉しく思います。それに彼らの素行についてですが、私は特になんとも思っていませんよ。寧ろ懐かしさすら感じるくらいです」

 

「え……円卓の皆は昔からあんな感じだったの?」

 

 円卓の騎士とマーリンを見てるといつも思うことがある。――いったいどんな国だったんだ、ブリテン。

 

「ええ、ですが彼らが変わっているだけではないのはマスターもよく知るところでしょう。彼らは確かに栄えある円卓の騎士の一員なのです。確かに変わっている部分もありますが、重要な局面では必ずその力を発揮してくれる。本当に頼もしい騎士達です」

 

「うん、皆とても頼りになる仲間だよ。円卓の皆の協力なしじゃこの旅は成り立たなかったかもしれない。ところで――」

 

 そう言いかけてわたしは口を噤む。この話しはとてもデリケートな問題だ。わたしが立ち入っていい問題ではない気もする。気づいたのはだいぶ前のことだけど、それでも今まで直接聞くことが出来なかった。

 だからこそ今聞くべきではないか、未練を残すべきではないと言う思いとあまりにデリケートな問題なのでたとえ最後であっても聞いていい話ではないだろうという二つの考えで葛藤し、思考の海に沈んでいく。

 

「リツカ」

 

 そう私を呼ぶアルトリアの声でわたしの意識は一気に思考の海から引き上げられる。その時見たアルトリアの表情は――微笑んでいるのにとても悲しみを覚えるものだった。

 

「貴方が言いかけて押し黙ってしまった話の内容はおおよそ検討がつきます。恐らく……モードレッド卿の事ですね」

 

「それは――」

 

 これも直感スキルの能力だろうか。わたしの考えていたことは完璧に見抜かれていた。その事実とアルトリアから話題を切り出された事で答えに詰まってしまう。

 

「貴方の顔を見ればおよそ察しがつきます。契約している全てのサーヴァントとのコミュニケーションを大事にする貴方のことだ、きっと私とモードレッド卿との間にある隔たりの原因やその内容についても大体は分かっているのでしょう。ですから私から先にお答えしましょう。私がモードレッド卿について思っていることを。彼女はかつて円卓の騎士の一員であり、反乱を起こし私に敵対した、そして今は貴方のサーヴァントとして共に戦う者である。その実力はもちろん認めています。ですが、元上司として円卓の騎士という肩書きを持つ以上、もう少し騎士らしい振る舞いをして欲しいと言ったところでしょうか。ただそれだけです」

 

「アルトリアはモードレッドを憎んでないの? 聞いた話によるとモードレッドが起こした反乱のせいでブリテンは滅びたんだよね?」

 

「私は生前彼女に憎しみを抱きませんでした。そしてそれは今も変わりません。しかしそれと同様に彼女を自身の子だと思う事はありませんし、おそらく今後もないでしょう。確かに、彼女が私の血を引いている(子である)のは紛れもない事実です。しかし、それは私が認知しない時にモルガンの奸計によってなされた事です。だから私はモードレッド卿を自身の子と認めることは出来ません。そして、過去の話ではありますが王位継承を認めなかったのは、彼女を私の子と認めなかったこととは全く関係ないのです」

 

「そうなの? 聞いてた話からそういうことかと思ってたよ」

 

「仮に私よりモードレッド卿の方がブリテンをより良く治めることが出来ると私が判断していたのであれば王位継承を認めることもあったでしょう。しかし私は彼女が王になることでブリテンが良くなるとは思えませんでしたので、王位継承を認めなかったのです。マスター、貴方が私と彼女の関係について苦々しく思っていることは薄々気づいていました。そしてそれを言い出せなかったのも。そして、これが私の答えなのです」

 

 アルトリアはとても真摯に答えてくれた。でもその答えはとても悲しいものだった。――だって、モードレッドとアルトリア、少なくともセイバーのアルトリアの関係は平行線をたどることしか無いのだから。

 それでも、わたしはきちんと話をしてくれたアルトリアに答えなければならない。

 

「聞かせてくれてありがとう、アルトリア」

 

「こちらの方こそ、今まで悩ませてしまって申し訳ありません、もっと早く貴方に話しておくべきだった」

 

「じゃあ話を戻そうよ、まだまだ聞きたいことがあるんだ」

 

「ええ、先程も言ったように洗いざらい聞かせてもらうとしましょう!」

 

 わたしは重くなった空気を払拭するかのように明るめの声で話題を切り替える。そしてアルトリアもそれに応えてくれる。

 

 二人だけの時間は、まだもう少しだけ続く……




はじめまして。防要塞唯我と申します。物語を綴るのは5年ぶりくらいなので見苦しい点もあったとは思いますがよろしくお願いします。
この小説を書こうと思ったきっかけはFGOのコンテンツが拡大しすぎたことに不安を抱いてしまったからです。大きくなりすぎたFGOは完結を迎えることが出来るのかという危惧からこの話を書き始めました。
Fateとは出会いの物語であると同時に別れの物語であるとよく言われています。その別れが果たしてくるのかどうかが分からなくなってしまったためにまずはこのハーメルンでそのような内容の作品があるかを調べてみました。私の検索が甘ければ申し訳ないのですが、ハーメルンには現在内容がかぶる作品はなさそうでしたので自分で書いてしまえという結論に至ったわけです。私の稚拙な文でも読んで楽しんでくれる人がいるなら幸いです。

後編(もしかしたら中編)についてですが出来れば1週間以内にあげたいと思っています。話の内容はある程度出来ていますのでおそらくは大丈夫だと思います。

ここまで読んでくれてありがとうございました。

今後優先して欲しいことはどれですか?

  • 更新速度
  • 1話辺りの密度
  • 色んなサーヴァントの出番
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