短いですがちょうど1年になるので投稿させて頂きたいと思います。
こちらの投稿もちょくちょく再開していきたいですね。
それでは、本編をどうぞ
「さて、そろそろ飯にしようぜ。立香」
「あれ、もうそんな時間?」
言われてみれば少し空腹感がある。最初は少し不安だった釣りであったが、はじめて見ると時間が経つのは早いものだなと、わたしは思う。
「ま、それこそ戦士の勘ってやつだ。今どきの奴らに比べたら体内時計が正確でね。時間的には昼飯時のちょっと前ってところか」
「お二人共お疲れ様です。有意義な時間は過ごせましたか?」
そんな話をしていると、後ろからベディヴィエールがやって来て声をかけてくる。なるほど、クー・フーリンが言っていた時間になったら知らせてくれる人って言うのは彼のことだったらしい。
「お、丁度いいタイミングだな、ベディヴィエール。頼んだもんは持ってきてくれたか?」
「はい、ここに。あ、そう言えばエミヤ殿から野菜についてはカッティングも済ませてあると言伝を預かってあります」
どうやら、ベディヴィエールは昼食の素材を持ってきてくれたらしい。昨日の夜にクー・フーリンがベディヴィエールに頼んでいたのはこのシュミレーションの設定と、昼食に関する事だろう。
「あの野郎……相変わらずイヤミなことしてくれるぜ。全く、今頃憎たらしい顔で笑ってるんだろうさ」
「さっきは言わなかったたけどさ、エミヤって時折ほんとに子供だよね……」
わたしは思わずため息を吐く。二人の仲が良くないのは知っているが、あまりにもやることが子供っぽい。まあ、それこそ大々的にバトルを始めるどこぞやのインドの兄弟に比べたら全然マシなんだけど。
「ハッハッハッハッ! 子供か、そりゃ傑作だ! まあ全然可愛げはないんだけどな」
クー・フーリン、大爆笑である。それで大爆笑してるあなたも子供っぽいですよと一瞬言いかけたが、さすがに当の本人の前で言う気にはなれなかった。口は災いの元、それこそ何人かの英雄が身をもってそれを示しくれたので、わたしの中ではかなり肝に銘じている言葉になっている。
「今のやり取りはエミヤ殿には黙っておきますね……」
ベディヴィエールか微妙に口を淀ませながら言う。まあ、彼からしても少し分かってしまったんだろう。よく見ると少し口が緩みかけている。どうやら、この場の全員の共通認識として、エミヤには子供っぽいところがあるというのは確定的だった。
「オホン。ベディヴィエール、とりあえず調理用具のセッティングも頼むぜ。多分出来ないこと無いんだろうが、こういうのは詳しいやつに任せた方が良さそうだしな」
「分かりました。では二人は食材の用意をお願いしますね」
「任せな!」
「うん、と言いたいところだけど……そもそも何作るのかわたし聞いてないよ」
サーヴァントの退去時に多いことではあるが、結局何をするかがわかっていないことが多い。サプライズをしたいという気持ちはよく分かるし、実際わたしも、もしお別れの時の最後の一日を自由に決めれるとしたら、なるべく当日まで詳細を伏せたいと思う。
「まあ、そろそろ教えても良い頃か。いいか、マスター。釣りの最中に食う飯って言ったら焼き魚、これに限るだろ!」
「そ、そういう物かな……?」
「ま、今日はちょっと違うんだがな。前にとあるところで覚えた料理だ。魚料理には変わりねぇがな。メインが違うってだけで焼き魚も作るつもりだがな」
そう言って、クー・フーリンは先程釣りあげた魚の中からリリースせずに取り置いていた鮭を取り出す。取り出した時に快活な笑みを浮かべるその姿は、気のいいあんちゃんそのものだった。
「で、結局わたしは何をするの?」
「おっと、そうだったな。ほかの魚もクーラーボックスとやらに入れてある。そいつらを串焼きにするから、下拵えしてくれや」
「そう言われても、やった事ないんだけど……」
小学生の時に野外でバーベキューをしたことはある。その時に、お父さんが自分で釣った魚を焼いていたりもしたが、その時にやり方を教えて貰ったりはしていない。なのでもちろん、やり方は分からないのである。
「マジか……これが今どきの若者ってやつかね。しゃーねぇなあ、オレが一回手本見せてやるからその通りやってみな」
クー・フーリンは一瞬頭を抱えるような素振りを見せたが、その後すぐに気を取り直した様子でクーラーボックスより1匹の小魚と、割り箸を手に取った。
「よく見とけよ」
彼からの言葉に頷き、わたしは彼の手元に注目する。彼は手に取った割り箸一膳――つまるところ二本――を魚のエラに突っ込んで、奥まで刺した後にグルグルと二回内部で回した後引っこ抜いた。その風景を見て、特に怖いとか、グロテスクだと感じない自分に気づいて、すっかり耐性ついちゃったなぁと思ってしまう。多分ゴキブリとかを見てもビクビクしなくなっちゃってるだろうし、いわゆる可愛げのない女の子になっちゃった気がする。
「っし、内蔵は取れたから後は竹串で刺して上から塩振るだけだな。分かったか?」
そんな思考を止めるかのようにクー・フーリンの言葉が耳に入ってくる。わたしは、今考えていたことを悟られないようにいつも通りな感じで話す。相談するほどの悩みでもないし、これから去りゆく彼らに余計な心配を与えたくはなかった。
「うん、大丈夫。あとは任せて。何匹くらい下拵えしようか?」
「……。そうだな、とりあえずあるだけやっといてくれ! 食いきれなくても夜に回しちまえば良いだろ」
「それもそっか、了解。やっとくね」
分担も終了したところで、ベディヴィエール、クー・フーリン、わたしの三人は黙々と各々に与えられた作業に入る。
魚の内蔵を抜き取り串を刺す。自分でやって見て思うが、なかなかにワイルドな作業だ。おそらく、ここに来る前――普通の女子学生をしていた頃のわたし――には出来なかった事だろう。ほんとにこの数年で随分成長してしまったものだ。まあ、無人島でサバイバルしたりもしたし当然といえば当然なんだけど。そう言えばあの時はなんでこの作業してなかったんだっけ……と考えてフィンの存在に思い至る。採集メインだったころは、フィンがノリノリで魚の仕込みをしてくれていたのだった。
黙々と考え事をしながら作業をしていると、あっという間に全ての下拵えが終わってしまった。とりあえずクー・フーリンに完了した旨を伝える。
「とりあえずあるだけ終わったよー」
「おっ、さすがに早いな。オレももう終わりだ。あとは……ベディヴィエール、そっちはどうだ?」
「お待たせして申し訳ありません。こちらの用意も終わりましたよ」
ベディヴィエールの方を見ると、そこにはバーベキューコンロがセットされていた。その上に展開されたのはアルミホイル、そしてアルミホイルの上には玉ねぎと人参、しめじ。
「おっし、ならこの上に鮭を乗せてっと……あとは、パセリとバターだな」
軽快に仕込みをしていくクー・フーリン。彼に料理のイメージはあまり無かったので少し驚く。
「なんだ、オレの料理がそんなに珍しいか?」
「あ、顔に出てた? ごめん。そんなつもりはなかったんだけど」
「いや、確かにオレもここではあんまり料理なんてもんはしてないからな。それこそあの
話しながらも手を止めることなく、ちゃくちゃくと仕込みを済ませていくクー・フーリン。誇張ではなくほんとに料理ができるんだろうなと感じた。わたしは結構な期間長くいるのに、そのことに気づいてなかった。それこそ、既に去ったサーヴァント達にも、まだわたしの知らない側面があったんだろうとは思うけど、少しだけ寂しくなる。
「おし、これで仕込みは完了。あとは待つだけだな」
「それでは、私はこれで。後片付けなども私の方でやっておきますので、是非時間ギリギリまでお過ごしください」
「おう、ありがとよ、ベディヴィエール」
「ありがと、ベディヴィエール。また後でね」
「いえ、お二人の役に立てたなら幸いです。それでは」
そうしてベディヴィエールは再び空間から去っていった。クー・フーリンとベディヴィエールはおそらくこれでお別れだと思うのだが、あまりにもあっさりした別れ方だな、と私は思う。まあ、彼らのスタイルもあると思うし、あまり口出しをするべきではないかなと思って口を出さなかった。
この穏やかな時間もあとわずか……
ここまで読んでくださってありがとうございます。かなり間が空いてしまって申し訳ありません。
色々なことに手をつけている最近ですが、こちらのことも忘れず続けていきたいなと思います。(今日に間に合わせるために短くなったのは申し訳ないなという気持ちです。)
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次回でちゃんと終わらせられるようにしたいと思います。今度こそ今年の六月中に完結させられるようにしたいのでお待ち頂けると幸いです。
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。
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