未来からの手紙   作:スターゲイザー

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これにて最終回です。




最終話 サイヤ人よ、永遠に

 

 暗がりの中でただ一人、悟空は顔を伏せて座っていた。

 

『どれだけ強くなっても、あの子はまだ子供なんだ。せめて大人になるまでは悟空さが守ってやってけれ』

 

 岩の上に座り、見るともなしに地面を眺めていた。だが目は虚ろで、そこには何も映ってはない。

 

『…………ぼ、ボクは本当は戦いたくない。例え、どんなに酷い奴でも殺したくもない。お父さんみたいに闘ったりするの好きじゃないんだ』

 

 魂でも抜け落ちたかのように、心は驚くほどに空虚だ。

 

『なんとも不甲斐ない。これが天下の孫悟空か。またクリリンが目の前で殺されれば貴様の心も完全に――』

 

 悟空は何も考えられなくなっていた。

 

『お父さんは、僕に後は任せたと言った!!』

 

 遥か頭上で、一際強い閃光を放つ流星が空を引き裂いていく。次いで大地が鳴動した。

 

『ああ、18号さんと一緒にな』

『神よ、俺が何をしたというんだ……』

 

 揺れは立っているのが困難なほどの激しさで、岩に座っている悟空も揺り動かした。それでもなお、悟空の心には波一つ立っていない。

 

『自分はちゃっかり三位取っといてよ』

『俺の場合は、ただくじ運が良かっただけですよ』

『どうせ俺はくじ運ないですようだ』

『警察官のクリリン君と無職のヤムチャなんだし、日頃の行いの違いじゃないの』

 

 赤黒く染まる空を見つめるように顔を上げて、夢見るような表情を浮かべるだけだ。

 

「みんな………」

 

 悟空の口から、抑揚のない淡々とした声が零れ落ちた。彼の瞳は中空を彷徨う。

 

『悟飯君や悟空さんは地球人じゃないんですか?』

 

 戦闘民族サイヤ人。血塗られた闘争を追い求める性が悟空にもある。

 

『私は界王神です。孫悟空さん、あなたにお願いしたいことがあります』

 

 分かっている。立ち上がって行動するべきだ。

 

『試してやろう。早々に壊れてくれるなよ!』

 

 老界王神に与えられた命があるのだから、まだ何も終わったわけではない。だけど、立ち上がれない。

 

『さて、孫悟空。良くも僕を殺そうとしてくれたね。でも、君のお蔭でもっと強い手下を手に入れることが出来たから感謝もしてるよ』

 

 何時もそうだ。

 悟空が敵を倒しても、また新たな強い敵が出て来る。

 

『殺してやるぞ、カカロット!!』

 

 勝ち目の薄い戦いなど何時ものことだった。その度に強く成り、敵を倒して来た。

 

『地球を、ブルマとトランクスを頼んだぞ』

 

 でも、何時までそんなことを繰り返せばいいのか。どこで終わるのか。

 

『他の奴よりは破壊し甲斐がありそうだ。少しは俺を楽しませろ』

 

 何も出来ないのか、また失ってしまうのか。怖い、嫌だ、耐えられない。自責と鼓舞が、今だけ自分の心を打撃する。急かされ、焦らされ、それは自己嫌悪につながって吐き気までする。

 

『その桁外れの超サイヤ人の生命エネルギーを全て貰う。敗者は全てを喪い、勝者は全て得る。単純な理論であろう』

 

 いま顔を上げたら、光の眩しさで目がつぶれる。馬鹿馬鹿しくて、情けなくて自分が日陰を這いずってようやく生を繋ぐ虫けら以下だと思い知らされた気分だ。

 

『サイヤ人やフリーザ軍だって孫君がいなくても何時かは地球に侵略に来たかもしれないし、ドクター・ゲロはあの様子ならレッドリボン軍が存在しようとしなかろうと人造人間は造っていたはず。魔人ブウだって地球に封印されていたんだから、誰かの責任ってレベルじゃないわよ』

 

 それでも悟空が起点となって生まれた戦いもある。

 歴史にIFはなくとも、想像上では幾らでも思い描くことが出来てしまう。

 

『僕は破壊神ビルス。君達を破壊しに来たよ』

 

 その間にも大地は裂け、空は粉塵と火花で塗り潰されていく。吹き荒ぶ風は熱を孕み、草木が焼ける臭いが鼻をついた。

 

『分かるか、孫悟空、トランクス。お前達によって正しい歴史は狂わされ、歪んでしまった』

 

 気がつけば辺りは火の海だ。野焼きでもしているかのように、四方から迫る炎で退路は断たれ、じわじわと範囲は狭まっている。行動を起こさなければ、やがて火は悟空にまで到達して全身を焼き尽くすであろう。

 

(もう終わりにしよう…………)

 

 そんな覚悟と共に、悟空はそっと目を伏せた。後は最期の時を静かに待つだけだ。

 

『目の前で息子の顔を踏み潰してやったら何故どうしてと五月蠅く泣き喚くものだから、その胸をこの腕で貫いてやった時のあの絶望に満ちた表情といったら、嘗て違う世界線の孫悟空に敗れた借りを返すことが出来てついイッてしまったぞ。不便だな、人間の体という物は。わざわざ着替えなければならなかった』

 

 唸り声にも似た業火の音が徐々に迫ってくる。

 

『人造人間の破壊を生き延びた孫悟空の妻の前に現れたら、バカなほどに喜んでいたよ』

 

 悟空と同じ声で、しかし全く違う内面を持った男の声が何時までも耳から離れない。

 

『しかし、泣きながら近づいてきたが途中で俺が孫悟空でないことに気付いたらしくてな。逃げようとするものだから背中からこれを突き刺してやった』

 

 想像する。連想する。考えてしまう。

 未来の世界のチチは悟空の体を持つ者に気の剣を背後から突き刺されて何を思ったのか。

 

『死の直前、俺に向けて何者だと聞かれたからこう答えてやったぞ、『孫悟空』だとな。それを聞いたお前の妻は絶望の表情を浮かべて事切れたぞ』

 

 神、界王神、破壊神…………。

 神とはなんだ。人とはなんだ。その答えすらも悟空は見失っていた。

 

『ここに至るまでの全て、これから起こる全てはお前がいるからこそ起こった神罰だ』

 

 ゴクウブラックには然るべき罰が与えられただろう。だが、悟空にはどうなのだ。

 

「こんな所でなにやってるだよ、悟空さ」

 

 不意に闇の底にいた悟空に聞き覚えのある声がかけられた。

 

「らしくねぇだよ。オラの知る悟空さならどんな敵にだって負けねぇだ」

 

 だけど、悟空は顔を上げられない。

 この声の主は悟空ではない悟空の行動の果てに死んだから。

 

「…………チチ」

「この時代の悟空さの嫁の方じゃなくて、未来の世界の悟空さの嫁だけどな」

 

 ゴクウブラックに殺されたチチの顔を見ることは出来ない。

 

「すまねぇ」

 

 悟空には謝ることしか出来ない。

 

「ブラックの元のザマスと関わったのは別の悟空さだろ。それに悟空さが謝ることじゃねぇだ。悪いのはあのブラックちゅう奴だべ」

 

 チチが苦笑したのを感じていると、伏せた頬に指先が触れる。

 

「ちゃんと仇は取ってくれたんだ。感謝こそすれ、謝られる理由はないだよ」

 

 都合の良い言葉に幻かとも思う。

 

「例え負けたって、こんな所で蹲っているなんて悟空さらしくないだ。次は勝ってやるって修行するもんだべ」

 

 悟空のチチと何も変わらない温もりがもう随分と昔に感じられるほど懐かしい。

 温かなその感触が夢ではないと実感させる。けれど、立ち上がる力を失くして無力感に支配された悟空は、そんな幸せを直視できない。疑ってしまう。目を開くのが怖い。ここで目を開けて、都合の良い夢だったら悟空は壊れてしまう。

 

「オラ、疲れちまった。チチもオラのことを憎んでるんだろ?」

 

 はぁ、とチチが溜息を吐くのが聞こえた。

 

「憎みなんてしないだ」

「嘘だ」

 

 悟空であって悟空ではない別次元の自分と関わったザマスが引き起こした凶行の所為で死んでしまったというのに、柔らかくて軽快な口調で声も変わらない。

 悟空と結婚しなければ死ぬことも無かったはずだと恨んでいるはずだ。何で死ななければいけないのだと憎んでいるはずだ。

 

「嘘なんてつかねぇだよ」

 

 なのに、声は変わらず優しい。

 

「あの世界では悟飯も死んじまって、本当に大切な時にいてやれなかった」

 

 チチの優しさを信じれなくて首を横に振った。悟空が目を開けない限り、この全ては幻なのだから。

 

「オラじゃないオラだったとしても、オラの体がチチを殺したんだ。恨んでいるに決まっている」

 

 ずっと当たり前だったから、どれだけ愛おしくて大切だったかに気付かなかった。

 

「こんなに強く成っても何も守れない」

 

 馬鹿みたいだ。なんて弱い愚かな生き物。力を手に入れて強くなったはずなのに、傷を自分で穿り返して当り散らす馬鹿な男。

 心を強くする方法を知りたかった。痛みも苦しみも何もかも捨て去って、強い生き物になりたかった。けれど、自分は弱いまま。守れるように強くなると誓ったのに、心はずっとあの時から進むことを止めていた。

 

「悟空さは十分に強いだよ」

 

 チチは、ぽつりと独白した。 

 

「もしかしたら、ずっとここにいるのが悟空さにとって良いことなのかもしれねぇけど」

 

 ここには何もない。強者も弱者も、勝者も敗者もいない、悟空にとって優しい世界。現実は苦しくて残酷で地獄のような世界だ。

 

「悟空さには行かなきゃいけない場所があるだろ。待っていてくれる人達が、家族がいるでぇねか。何時までもこんな所で蹲っているわけにはいかねぇだ」

 

 言いたいことは分かる。だが、悟空は立ち上がれない。

 戦うのが怖いのではない。力を持つこと自体が恐ろしいのだ。

 

「そうやって何時までも戦い続ければいい?」

 

 戦って、戦って、戦って、立ち上がろうとも同じことになると、悟空は確信を込めた言葉を吐いた。

 

「必要なら」

 

 でも、チチはそうすることが必要ならばと答える。

 

「戦うこと、好きだろ?」

 

 チチの断定する言葉には痛いほどの力が籠っていた。

 戦いを忌避しながらも惹きつけられてしまう。悟空に戦闘民族サイヤ人としての血が脈々と流れている以上、否応はない。

 

「勝つ為に戦うんじゃない」

 

 それは迷っていた悟空の心を大きく動かす力だった。

 

「どんなに絶望的な相手であっても、護る為に戦うのが悟空さだろ」

 

 その声には、悟空に対する信頼が籠っている。悟空の中で何が大きく揺すぶられ、動き始めていた。

 言葉が一つ一つ染み込んできて癒されていく。

 

「絶対に負けない為に限界を極め続けて戦う。だから、相手の命を絶つことに拘りはしない」

 

 悟空の気持ちを引き上げるように、チチは心からの笑みを浮かべる。

 

「闘いが大好きで、優しいサイヤ人。それがオラの知っている孫悟空という男だ」

 

 不思議とその言葉は、悟空の心の隅々まで染み渡った。

 真っ直ぐな言葉というのは、スッと胸を突く。理屈はなくても、理由はなくても、心の底に染み渡る。

 

「チチはオラを恨んでいるんじゃねぇのか?」

 

 聞かなければならなかった。聞かなければ、悟空はどこへもいけない。

 

「オラの大好きな旦那様を恨んだりしねぇだ。ちゃんとあの世で仲良くしてるだよ」

 

 悟空は、今は素直に相手の言葉に耳を傾けていた。チチは優しい笑みを浮かべて言う。

 

「あの年寄りの界王神様から悟空さを元気づけてやってくれて頼まれて、わざわざ来ただ。いい加減、オラをオラの悟空さと悟飯の下に帰らしてけれ」

「なんだ、それ」

 

 最後はふざけ気味に言ったチチに悟空は苦笑する。

 悟空は悔やんだ。悔やんだが、生きていると思えば、まだやれる気がした。まだ心は完全には折れていなかった。

 

「立つだ、悟空さ」

 

 不思議だった。悟空は自分でも不思議なほど落ち着き払っていた。何を思い悩む必要があろう。すべきことは一つではないか。

 一つ一つ確かめていこう。一つ一つ迎え入れよう。弱くて馬鹿な自分をこれまで支えてくれた、みんなの気持ちを。

 大切なものを見失いそうになっていた。随分と遠回りをしてしまった。

 もう怖がらない。前へ進む。

 

「ありがとう、チチ」

 

 止まるわけにはいかない。時には振り返っても、足を止めて蹲っていては何も変わらない。ただそれだけの想いで立ち上がる。

 

「それでいいだ」

 

 無様でいい。誰にも褒められなくても、馬鹿なことをしていると罵られても行動する。蹲って目を逸らせば傷つかないかもしれないけど、何も変わらないのだから。

 進み続けることが出来るのは生者の特権。既に死した者に出来ることは、その背を押すことだけだとチチは悲し気に理解していた。

 

「あ……」

 

 立ち上がった悟空の世界は一変していた。

 周りはどこまでも続く草原が広がり、空の果てに光がある。無限にも近い世界の果てに、針穴ほどの小さな光がポツンと浮かんでいた。光にしては儚く、しかしながらそれは確実に存在している。

 その光に暖かさはない。しかしその光には切なくなるほどの眩しさで無数の命の灯が確認できる。

 求めて止まなかった一筋の煌めきの道に向かって歩みだすと、世界が光のベールに包まれ始める。幾筋もの光の帯が悟空の体に絡みつき、その中心へと誘っていく。

 

「辛いことが一杯あるとしても、悟空さならきっと乗り越えられるだよ」

 

 光を見つめる悟空が顔を上げると、チチは目だけで微笑んでいた。

 この道を進んで行けば、ありとあらゆる艱難辛苦が悟空を襲うだろう。それでも悟空は敢然と顔を上げた。恐怖を感じぬ者は戦士ではない。恐怖を感じて、それを克服する者が戦士足りうる。

 

「戦いばかりの人生だったけど、アイツラを幸せにしてやりてぇ、一緒にいてぇって思ったんだ。その為ならどんなことがあっても乗り越えて見せる」

 

 悟空の心の在り様の変化に従い、闇に包まれた世界が音を立てて崩れてゆく。

 

「最後に言っておきたいことがあるだ」

 

 地は深緑の草原、空は紺碧の海。清々しい風が頬を撫でた。夜空を照らす星の光が逆光になってチチの姿が判別できない。

 

「愛してるだよ、悟空さ」

 

 それでもきっとチチが微笑んで送り出してくれていることだけは間違えようもなかった。 

 

「オラも愛してるぞ、チチ」

 

 身体を突き抜けていく穏やかな光に身を委ねる。世界は白一色に染まり始め、やがて悟空は白き世界に身を溶かしていった。

 死者は止まり、生者は進む。ただその理に従って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベジータ達を置き去りにして、フリーザと破壊神ビルス・天使ウイスの戦いは始まらなかった。

 

「あ、あれ? え? はれ?」

 

 誰もが襲い掛かった衝撃で動けない中で、驚きで目を丸くした悟天が自分の手元とフリーザ・ビルスの間に何度も視線を行き来させる。

 

「お、お前は孫悟空!? フリーザに殺されたはずじゃ」

 

 二人の間で拳を受け止めても平然と立つ悟空にビルスが目を剥いた。

 

「孫、悟空……っ!」

 

 目の前の立つ男が手を抜いたとはいえ、最終形態よりも遥かに上の自分の拳を受け止めている事実にゴールデンフリーザは歯を剥いて笑いながら距離を取る。

 

「これはこれは、どうやったか知りませんが生き返ったようですね。しかも強く成って来たようで」

「ああ、ちょっくらあの世で鍛え直して来たぜ」

 

 超サイヤ人にならずに破壊神とそれを遥かに超えた戦士の攻撃を受け切った悟空は生えた尻尾を揺らし、確かな自信と共にフリーザに向き直る。

 

「そう、それでこそです」

 

 力を開放せずとも全身から奔る悟空の威圧に恐れるどころか、寧ろ歓喜が全面に出て来るフリーザは確信と共に呟いた。

 

「たった、あの程度で終わってしまっては何のために強く成ったか分からない!」

 

 戦う気になっている二人に対して、すっかり除け者にされたビルスも黙ってはいない。 

 

「おい、僕のことを忘れてるんじゃ」

「お帰り下さい、破壊神。この場において、あなたは邪魔者でしかありません」

「なんだとっ!?」

「すまねぇが、聞き分けてくんねぇかなビルス様。アンタがいると邪魔なんだ」

 

 ハッキリと二人から邪魔者扱いされたビルスは破壊の力を手の平の先に出しながら歯を剥き出しにして吠える。

 

「良い度胸だ貴様ら! 破壊神の恐ろしさを魂の髄にまで刻み込んで」

「ビルス様、ここは彼らの言うことを聞いた方が良さそうですよ」

 

 この第七宇宙の頂点であるべき破壊神をないがしろにする二人を誅せんとしたビルスだったが、ウイスに言われて一抹の冷静さを取り戻す。

 

「ぬぐぅ……」

 

 納得していない様子のビルスの肩にウイスが手を乗せる。

 

「では、皆さまお元気で」

 

 この場から消えた二人を見送ることなく、悟空とフリーザは再び対峙する。

 

「見せてみなさい、新しい力を」

「行くぜ」

 

 悟空は腰だめに構えた両腕の拳を強く握る。

 

「はぁあああああああああああ――――――――っ!!」

 

 悟空から爆発的な、いや、それすらも生ぬるい光の本流が迸り、空を覆う。

 放たれる光が世界全てを染め、視界が光に染まっていく。圧縮と膨張を繰り返しながら、今や今やと破裂しかねない空間の絶叫。空間が捻じ曲がり、それはまるで世界の終わりに歌う引き金の祝詞。

 破滅的な力の渦に、空間が戦慄き、大気が咆吼する。

 

「ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」

 

 光が凝縮する。

 直後、野放図に垂れ流されるのではなく光が爆裂した。

 

『――――!!』

 

 この世のものとは思えない澄んだ音が響いた。

 太陽が生まれた。そうとしか思えぬ巨大な閃光によって世界が光に埋め尽くされ、全ての人の目を焼いたのだ。

 ごおっと烈風が巻いた。

 

「一瞬垣間見えたイメージは赤い大猿。成程、そちらに進んだわけですか」

 

 悟空の進化を正確に見抜いたフリーザは恐怖ではなく歓喜で身震いした。

 

「今のオラは超サイヤ人ゴッドの力を持った大猿の力を完璧にコントロールしている。さしずめ、そうだな超サイヤ人4ってやつかな」

 

 光が晴れた時、そこにいた悟空は悟空であって悟空ではなかった。

 超サイヤ人3ほどではないが長い黒髪、全身は超サイヤ人ゴッドのオーラと同じ色の赤い体毛、赤い隈取、そして赤い尻尾。

 

「大分、私に近づいたようですね。それでこそ、です」

 

 悟空の変化は、超サイヤ人ゴッドともブルーとも、超サイヤ人3とも違う。

 どちらとも違う系統の変化をした今の悟空を称するならば、超サイヤ人4としか考えられない。

 

「さあ、戦うとしましょう。今度は素晴らしい戦いとなるでしょう」

「かもな」

 

 ニヤリと笑った二人は次の瞬間に、ベジータの目にも映らない超速度でぶつかった。

 

「「――っ!!」」

 

 二人の拳がぶつかりあった接点で、現実の物理法則が砕けて悲鳴を上げる。

 撓んだ空間の歪みが二人の間から広がり、地球を超えて第七宇宙全体に広がり、そして十二ある全ての宇宙を揺るがした。

 

「何?」

 

 遠く離れた全王の宮殿にまで影響を及ぼし、玉座に座っていた全王すらも何が起こったのかと目を見開いた。

 

『――――――』

 

 刹那を万に切り刻み、億に切り刻み、意識だけが引き延ばされるのを二人は感じた。

 瞬きさえ許されない、走馬灯にも等しいコンマの時間に力が膨れ上がり続ける。

 

「ここまで、ですね」

 

 高まり続ける力を無理に押し留め、フリーザが引いたのに合わせて悟空も距離を取る。

 

「いいのか? 今ならオラを殺せるかもしれねぇぞ」

 

 今の衝突で彼我の力量差を正確に読み取った悟空は、まだ強さの面ではフリーザが一枚上回っていることを自覚して言った。

 

「続ければ勝つのは私ですが、このまま戦えば先に地球が壊れる」

 

 もう二人の力に対して地球は脆過ぎた。

 

「そうなれば、アナタはまた怒り、限界を超えて来る」

 

 力の差と言っても、仲間を家族を地球を守れなかった悟空は限界を超えて強く成なれば、敗れるのはフリーザの方であると悟った。

 

「ここは引いた方が無難ですね」

 

 フリーザは勝つ為に戦うのだ。負けると分かっている戦いをする理由はない。

 

「壮健でありなさい。怠けていたら、また殺しますよ」

「オラも、もっと強くなって見せるさ」

「私はそれを更に超えて見せましょう。では、ごきげんよう」

 

 ニヤリと相変わらず邪悪に笑ったフリーザが浮かび上がり、瞬く間に空の果てへと消えて行く。

 

「終わったか」

 

 フリーザが宇宙へと飛んで行ったのを見届けた悟空は超サイヤ人4の変身を解く。

 

「お父さぁん!!」

 

 向かって来る悟天と悟飯、その後ろでそっぽを向いているベジータの服を引っ張っているトランクスを見ながら悟空は笑った。

 

「へへっ、もっともっと強く成るぞ」

 

 結末は誰にも見えない新たな未来の始まり。この先、どれほどの困難が待ち受けていようとも悟空は決して足を止めることはない。

 

 

 




皆様、拙作をお読み頂き誠にありがとうございました。

一度は完結しておきながら、また続き、当初の予定であったゴールデンフリーザ編も更新出来、これにて『未来からの手紙』は終了です。

では、恒例のゴールデンフリーザ編の戦闘力を。

フリーザ 最終形態 2500万
ゴールデンフリーザ 1億5千万

悟空 基礎戦闘力 75、ブルーは基礎戦闘力に3800倍
 ブルー 75×3800=285000(28万5千) 
 ブルー・界王拳 57万、10倍 285万、20倍 570万、30倍 855万
皆からパワーを受けた後(基礎戦闘力が100に上昇)
 ブルー 100×3800=38万
 界王拳10倍 380万、20倍 760万、30倍 1140万

ベジータ達のパワーを受け取って力にし、基礎戦闘力が80に上昇
ゴッドの力を持った大猿(紅蓮の大猿)はゴッドの掛け率3600倍を採用。
大猿時、80*3600=28万8千に10倍で288万、そこで更に超サイヤ人の50倍で最終戦闘力『1億4千400万』

悟空『1億4千400万』 フリーザ『一億5千万』
戦闘力数値分だけ見ればフリーザが上ですが、地球が破壊されたら悟空が強化されて勝つ。その未来を見たフリーザは撤退ということになります。

ドラゴンボール超も続いていますし、新作映画も出るらしいので、もっともっと二次創作が増えることを祈って本作は終了です。

ご愛顧、ありがとうございました。

次回作については、放置中の『幸せなネギ』を続けるか、新しくネギまで『ポップ系主人公』を始めるか。

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