レオナルドに憑依したので好き勝手やろうと思う 作:nyasu
夜の銀座は様変わりした。
特定の地域は封鎖され、警備の軍人が行き交うのだ。
面白いのは、そこに米軍兵士がいないことか。
その姿から、アレを資源と日本国が見ていることがよく分かる。
「おい、どうしてゲートが開いてる!」
「どういうことだ、状況を説明しろ!」
「責任者は何をしている!」
鼻歌交じりに慌てる軍人の間を俺達は抜けていく。
トールの魔法で姿が見えないのだから、無理はない。
そして、無理矢理に開けられているのだからゲートの責任者がどうのこうのと操作している訳ではない。
「これはアレだね、まるで試しの門みたいだ」
「試されてる感ないですけどね~」
とんでもない化物がこの先にいるとか。
いや、まぁ異世界だしあながち間違いではないのか。
ゲートか……なんかアニメで見た記憶がある。
ドラゴンにロケット撃って、現地住民をぶっ殺して、日本で特殊部隊と戦って、地震に見舞われて、ドラゴン倒して……ドラゴン倒してから地震に合うんだっけ?あれ、あれれ、わかんねー。
特地と呼ばれる場所に降り立った。
なんかこうヌッとする感じに違和感とかあるんかなと思えば普通にトンネル抜けたらそこはみたいな普通だった。
普通に通り過ぎたら別世界である、ジブリで見た。
これ、アレだな神隠し的なアレだ。
「おぉ、おぉぉ、ドンパチやってるな」
「どうやら原住民達がこの場所に向かって夜襲を掛けているようです」
「前回の経験を活かして積極的に関わるために、まずは原住民に紛れ込もうと思うんだ」
俺の記憶が確かならこの後にドラゴンが……あれ、ドラゴンの後に原住民が殺されるんだっけ。
まぁいいや、何とかなるだろ。
「その異世界産のドラゴンとやらがどこから来るのか分からないですけど私の相手ではありませんね」
「ふんすーふんすー、トールはやる気満々なのよ」
そういえば、ドラゴンがエルフの集落を燃やすんだっけなぁ……。
集落って何処だろうか、トールの背中に乗って探すか。
「よし、敵はいつかやってくる場所がエルフの村だ。どうせなら、エルフの女の子を抱くとしよう」
「あらあら、ゲスの極みというのは貴方の事なんじゃないかしら死ねばいいのに」
「うるせぇ!エルフだぞ、ヤルしか無いだろ!エロ同人みたいに、みたいに!」
食事にセックス、眠りに戦。何事についても存分に愉しみ抜く。それが人生の秘訣であろう。
エロい人は昔に言いました、征服王が言ってるんだから間違いない。
トールの背中に乗って空の旅、見渡す限りの森と森。
正直、どこがエルフ村か分からなかった。
その代わりと言っては何だが、村を見つけた。
小さな村だ、現地民の村だろう。
ただ様子が可笑しいのは、何やら山積みの死体とかがあることだ。
「えー、なにあれ」
「もしかしたら、あの丘に向かう途中に物資調達の名目で何かされたのかもしれませんね」
何かっていうか殺されてるんですけど。
俺達は姿を消した状態で村に降り立つ。
その際に、俺は食べていいぞとアーガードに指示を出した。
死体の山が影に包まれ、一気に消えた事で現地民が騒ぎ出す。
もち、もちつけ!まだ慌てる時間じゃない!
俺が何をしたかというと端的に言って知識の収集である。
吸血鬼は血液を啜ると同時に魂の情報も啜るのだ。
でもってそこから現地語を得たアーカード経由で知識を習得、俺の神器の中に一度取り込んで再構成。
これで全員が言葉が分かるようになった。
「やぁやぁ、こんにちは皆さん。私は決して怪しいものじゃありませんよ、はっはっは!」
「怪しさの塊でしか無いのだけれども、理解できていないのね。可哀想だわ」
「刺々しいなぁ、いや切れ味鋭いって感じか。流石、虚刀流だよ」
試しに話しかけてみれば、何だコイツと怯えられる。
そう、怯えられたのだ。
コイツ、俺の話が通じてやがる。
「な、何者だ」
「俺か、俺の名前を言ってみろ!」
「えっ、知らない……」
困る村長、困らせる俺、やっべぇ超楽しいわ。
いや、まぁ、本題に入ろう。
「そう言えばなんだが、ここで何が起きたんだ」
「何がそう言えばなのか分からんのじゃが」
「おい、爺がのじゃとか使うなよな。忍ちゃんと被るだろ」
「えぇー……」
村長を困らせつつ、俺はエルフの集落を教えてもらった。
と言っても彼らは場所は知らず、深い森にもしかしたらいるのかもしれないと言ったくらいだ。
まぁ、森の大体の位置が分かれば虫を放てばいいだけだ。
俺の手の中から虫が生み出されて飛んでいく。
手から出るとか、俺ってば忍者みたいだよな。
アイエー、忍者なんでぇぇぇ!みたいな。
「おっ、見つけた」
「流石、小林さん。さすこば!」
「俺の名前はレオナルドだ」
「失礼、間違えました」
「違……わない!この野郎、それじゃあ俺のやりたい流れじゃないじゃないか!」
「噛みました!」
「噛んでない、噛んでないよぉ、もー」
せっかく原作を盗んできたのに。
このメイド、ポンコツである。
「ちょっと待て、なんで儂こんなに登場しないの!喋れよ、喋らなきゃ出れないじゃん。カップルのイチャコラなんか見たくないんじゃが」
「あっ、忍さんそこまで読んだんですね。面白いですよね、まさかガハラさんの後輩が殺しに来るとか予想外で、まぁ人間は欲深いっていうか、女性を好きになる気持ちは分からなくないんですけどね」
「ちょ、おま、ネタバレ!ネタバレェェェ!新キャラだから怪しいと思ったけど、えっ殺しに来るの!?」
「ネタバレは悪い文明なのよ」
まったくである、アリスの言うとおりだ。
因みに、原作は面白いけど殆どストーリーとは関係なさげな雑談が主だよ、閑話休題とかよく出るしな。
さて、仲間の登場する小説を読んでる彼らを切り上げさせてエルフである。
あのエルフが物語を盛り上げる為だけに死ぬのは勿体無いからな。
「召喚、シヴァ!」
昔、何かのゲームを見て覚えていたモンスターを召喚した。
まぁ、モンスターと呼べるかは分からないが、ウンディーネのような二体のモンスターだ。
彼女達は俺の回りをクルクル回って、でもってバイクになるのだ。
どうやってなってるか分からんけど、細かいことは考えてはいけない。
「森の中をバイクで移動するのだよ」
「アリスも、アリスも乗るの!」
「悪いなアリス、コイツは一人乗りなんだ」
「レオナルドは意地悪なのよ!」
免許を手に入れて出直してきな。
まぁ、俺のお腹の上に載せる事で解決した訳だがな。
冗談だ、ちゃんと乗せたげるさ。
「索敵はおまかせ下さい」
「お先に」
「あー、待って下さい皆さん」
「…………」
「徒歩の方が早いのよ」
やめろ、それは俺に効く。
人外にはバイクは勝てなかったよ。
「止まれ、何者だ!」
「ちょ、急には止まれない」
何やら声が聞こえたと思ったら矢が飛んできた。
まぁ、オートガードの如く俺の影からヌルっと成人男性が現れて矢をその身で受ける。
「油断大敵だぞ、レオナルド」
「旦那、超COOLだぜ」
再生した肉によって、ボロっと矢が落ちる。
その状態を驚きの目で見るエルフ。
「まさか、亜神なのか」
「不死身な存在に対しての驚きが少ないな。他にもいるのかもしれない」
「旦那、旦那。そんなんいいからさ、アレ捕まえてよ。人質にしようじゃないか」
「了解、マイマスター」
影のような身体がエルフを掴む、あっさりしているがこんなもんだ。
レベルが違いすぎるからな。
「くっ、殺せ!」
「殺すわけないだろ、お前を人質にお母さんか妹さんか奥さんと寝るんだ」
「つくづく思考がクズであるな、マイマスター」
見た目は若いんだから問題ないのである。