レオナルドに憑依したので好き勝手やろうと思う 作:nyasu
砂塵が舞う森の中、ひしゃげた木々を見ながら満足気にコカビエルが笑っていた。
あの一撃を食らって死なぬものなどいないという確信の姿だ。
少しばかり、出来るものだと思ったが残念だという態度を隠しきれていないが、それでも一定の結果には満足はしているようだ。
「ハッ、思い違いだったか」
「さっきから、何をしているのか。ひょっとしてギャグでやってるんでしょうか」
「ッ!?」
コカビエルは慌てて方向転換を空中で行う。
振り返れば、体育座りで此方を見ている女がいた。
馬鹿な、あの一瞬で動いたというのか。
「中々やるようだな、女」
「スゴイですね、体の中にある微妙な力を非効率に集めて、無駄に固めた物を作り出すなんて。私にはとても出来ないことですもの、羨ましい。努力する余地があるんですもの」
「ほぉ、言うだけの自信があると見た。貴様、拳法家か何かだな。身体を強化して戦う者の気配だ」
「まぁ、面白い特技ですね」
コカビエルが構えを取り、その腕に光の槍を生み出す。
もう片方には光の盾、その姿は翼以外は天使のようだった。
「どうした、構えろ。それくらいの時間は待ってやろう」
「どうして態々構える必要があるのかしら。構えるという事は、それだけ選択肢が狭まるということじゃないですか。貴方のそれは、右手で攻撃し左手で防ぐ、素人目にだって分かる、分かりやすい構えだという自覚はありますか?それって無駄ですよね」
「減らず口を、そうか貴様はスピードが自慢なのだな。俺が動いてからでも動けると……甘いわ!」
コカビエルの身体が発光すると同時に、槍が地面に突き刺さる。
超高速移動による突撃、それが炸裂したのだ。
「なっ!?」
「何を驚いているのでしょう。貴方が攻撃し、私が避けたそれだけでしょう」
「貴様、今の一撃の凄さが分からないのか」
「分かりますよ。その一撃で多くの者を屠ってきた自負があるのでしょう。その研鑽、きっとそれは堕天使の中で延々と受け継がれてきた技術、そして貴方がそれに必要とした努力がなせる技なんでしょう。私は、それが羨ましい。貴方には分からないでしょうね。努力することの出来ない者の気持ちなんて」
「抜かせ!」
光の力によるブースト、それと同時に光の槍を増産、培った槍術と併用し、速度を増した一撃で逃げ場を無くす。
リーチを攻撃中に伸ばすことで、恐らく間合いを見きった先程と同じ結果ではない状態を作り出す。
行ける、行けないはずがない、こんな人間風情に!
コカビエルが超高速で三連突きを放つ。
その残像すら残す一撃は、七実の身体を今度こそ貫いた。
「ハッ!」
「申し訳ないのですが、それは残像です」
「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」
羽根がもがれ、地へと墜落する。
一体何が、何が起きたというのか。
そこには発光して空を飛行する、女の姿があった。
「なん……だと!?」
「ずっと疑問に思っていたんです。物理学的に飛行できるほどの大きさでも重さでもないのに、どうして異形の人達は空を飛べるのかと。それはつまりは、こういう謎の力を流用して浮力を生み出したりしていたということなんですね」
「あり得ない、貴様!堕天使とのハーフだったのか!」
「何を言ってるんですか?私は正真正銘人間ですよ。貴方達、化物と一緒にしないで頂きたい。アーカードさんからだって人間認定されてますからね」
もっとも、その評価は化物らしい人間である。
人間らしい化物に、お前は生まれる種族を間違えたと言われるレベルである。
「あ、ありえん!種族特性だぞ!人間が使える訳がないだろ!」
「身体的に違いは無いのであれば、あり得なくはないのでしょう。現に使えますし、種族秘伝の技術というのなら、技術という時点で誰でも使えるというもの、見れば分かるでしょ」
「何故、何故貴様がその力を使える!」
「だから言ったではありませんか、見れば分かると。私はそうあれかしと望まれて、見ることで技術などを体得できるのです。それを称して、見稽古なんて名前がありますが別にいらない情報でしたね」
七実が腕を振るうと、もう片方の翼が消えた。
見れば切断されたことが伺える。
「うぎゃぁぁぁぁぁ!?」
「態々、槍なんて形にしないで必要な量を必要な形にすれば無駄が無いのに。濃度というのでしょうか、無駄を省けばそれは高まり強度も増します。糸ほどにすれば、ワイヤーのように使えるでしょう」
「有りえん、そんな繊細なコントロールが一朝一夕で身に付くはずが」
「有りえているでしょ、現に貴方の羽根は斬られたのだから」
現実が見えていないと、地に落ちた堕天使を見下ろしながら七実が降りてくる。
ゆっくりと直立不動で、マジックか何か用にスライド移動していた。
そして、降り立ってトドメを刺そうとした時にコカビエルがニヤリと笑う。
「隙有りぃ!」
「何を勝手に、わたしの肌に触っているのですか───この、草が」
鋭い抜手、しかしそれは七実が掴んだ事で防がれる。
七実は無表情に足を上げて、その頭を踏んづける。
「草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が」
「…………」
「嫌だわ、足元が汚れてしまった。草履ではなく、長靴ですれば良かったわ」
何度も何度も、それこそ潰れて体液が溢れ、その身体が羽根になるまでそれは続いた。
七実はいいおみやげになるかと、その黒い羽を拾って城へと帰るのだった。
城に帰ると、アリスが七実に抱きついた。
仇討ちに喜びを表現しているのだろう。
「フハハハハ、良くやった。我様の配下よ」
「あまり調子に乗らないほうが良いですよレオナルド、不愉快です」
「な、なんだよぉ……俺もギル様みたいに笑いたいよぉ……」
七実の冷たい視線に、死を実感する。
あの女、俺のことをその辺の草と同じ目で見てやがった。
どこかのマッドサイエンティストと一緒の感性してやがるぜ。
「七実様、お食事の用意がございます。それとも、お召し物を替えますか?」
「あら、せばすちゃん。新しい着物なんて、殿方から貰うのは初めてだわ。さっそく着替えるとするわ」
「はーい、それならお風呂に入ってからが良いと思います。まったく、その辺の気配りが出来てませんね」
「これから提案しようとしていた所ですよ……トカゲ風情が、殺すぞ」
「後からなら何とでも言えます……コウモリ如きが、調子に乗るなよ」
「…………」
「…………」
おーい、そこ仲良くしなさい。
パパ、喧嘩すると泣いちゃうぞ。
物理的に死にかけるから、泣いちゃうぞ。
マジで、お前ら戦うと洒落にならないからやめなさいって。
従者キャラとして、譲れない戦いが始まるのかもしれない。
「おい、トール。ワインを用意しろ、あとポン・デ・リングじゃ、早くしろ」
「セバスチャン、私にはステーキだ。オーダーはレアだ、さぁどうしたハリーハリー!」
と思ったが、王様とお姫様が我儘で防いだ。
人を使う立場のキャラだから相性がいいんだな、うんうん。
「では、お風呂に入るとしますか」
「私も行くわ!やっぱり、泡風呂が良いと思うの、たっぷりのバラを浮かべてきっと壮観だわ」
「泡に、花弁が埋もれると思うだけれど」
あぁ、アリスと七実が風呂に向かっていく。
うんうん、よし溢れた俺と黒歌で仲良くしようじゃないか。
ほら、あぶれ者どうし仲良く。
「白音、あーん」
「やめてください、自分で食べれます……あ、あーん」
「畜生!誰か俺の相手しろよ!ぼっちは、辛いだろ!」
トール 漫画メイドラゴンのキャラクター。
以降は説明、コピペ。
本来の姿はドラゴンであるが、世を忍ぶ仮の姿として金髪ツインテールのメイド姿をとっている。
訳あって山で傷ついていたところを小林さんに助けてもらい、その後紆余曲折あって彼女の家にメイドとして雇われている。とはいうものの人間界の社会常識など知る由もなく、度々想像を超えた行動を取り小林さんに迷惑をかけている。なお元の世界ではトールは死亡扱いになっているらしく、ファフニールやルコアと言った知り合いのドラゴンにしか生存を伝えていない。
しかし命の恩人である小林さんに対する愛情は本物であり、彼女の為なら努力を惜しまない。
ドラゴンであるが故に人間を劣等種として見下している節があるが(但し小林さんだけは別)、楽にやっていけるということで愛想良くしている。このため近所の商店街の人々からは人気者。
特に小林さんを寝取ろうとする又はその危険性がある者、彼女に危害を加える者に対しては容赦しない。同様の理由から小林さんの同僚である滝谷真を警戒しているがその一方でファフニールの住居探しの末に滝谷を頼ってアパートにファフニールを置いてもらうよう頼んだり、コミケの手伝いをしたりと心底嫌っているわけではない様子。滝谷がファフニールとうまく同居できていることには不思議に思うと同時に素直に凄いと思っている。
同族に対しては友好的で同居しているカンナとは姉妹のように仲が良い。その一方で調和勢に属しているエルマとは仲が悪く、犬猿の仲(トールは混沌勢に属している)。
余談だが、『空想科学読本16』にて柳田理科雄が計算した結果、彼女一人でツァーリボンバ級水爆20個分、地球上全ての核兵器の1/10に値する攻撃力を有していることが判明したらしい。
※空想科学研究所にも掲載されています
なお本編では頭の可笑しいドラゴンのメイド。
主人公を小林さんだと思いこんでる。
というか、思い込まされている。