俺は、スーパーザンクティンゼル人だぜ?   作:Par

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上限解放後の尻と脚好き


大笑いハンター

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 一 ポンコツライフル

 

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 突然であるが、騎空団の騎空艇である以上エンゼラにも武器庫がある。しまってあるのは、殆どが俺の物で、基本団員の皆は、自分で武器を管理してる。星晶戦隊は、そもそも武器要らずだし、シュヴァリエとゾーイは、自身の意思で武器を出したりしまったり出来るので関係ない。

 なんで武器庫の整理は、基本的に俺の役目となる。俺のものしかないからね。ザンクティンゼルの忌まわしき修行時代から使う平凡な武器に、ちょいいい武器。そしてばあさんがくれた箱に入っていた【ハリセン】から【クラウ・ソラス(レプリカ)】の様な、差がある武器達。依頼によって使う武器は、変えているが基本は、剣とかを使う事が多い。物理で解決、手っ取り早いです。

 そんな武器の中で、俺がその扱いに困っている物がある。【ハンターライフル】と言うライフル銃である。他の【ハリセン】だとか【割れた酒瓶】とかも扱いに困るが、この際横において、問題はこのハンターライフル。

 魔導の力が込められた結晶が埋め込まれた物で、その効果によるのか非常に視力が上がる。撃つ弾丸も闇属性でその点は悪くない。だがどうもこのライフル、肝心なところでポンコツであった。

 何度か試し撃ちをしたのだが、6割近くの確率でまともに弾丸が飛ばない。一度撃ったら、まず弾道がズレた。自身のミスと思い、もう一度撃ったがやはりズレてしまい、跳弾がおきて大変だった。調べると、前使っていた人物が独自の調整を加えたのか、ありえない調整が施されていた。まるで“最初から、上手く発射されない”事を前提にした調整であった。その癖を直してからもう一度撃つと、今度は発射前に暴発して目の前が真っ暗になった。もう一度調べると、前の調整を直したためかいつの間にか砲身にゆがみが出てその所為で発射されずに砲身内で爆発したようだ。それも直して再度撃つと、なぜか発射されず“パスッ”と乾いた音だけがした。ここら辺でもう謎のポンコツ銃であるが、再度弾丸とライフル両方を点検して撃ってみると、銃口から色とりどりのパーティーグッズの旗が飛び出してきた。

 もうわけがわからない。何処に入ってたの?何度も点検したのに、こんなの見当たらなかったしそう言う銃じゃないでしょ?謎のうえポンコツ過ぎる。しかも、点検調整すると、結局最初の仕様に戻るからたちが悪い。どうなってんの?

 そのため、この銃は魔導結晶の効果は高いものの、旅立って直ぐに武器庫の主と化したのである。

 果たして、この武器のもたらす縁と出会いとは何であろうか。俺はとても嫌な予感がしたのであった。

 

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 二 食堂の一時

 

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 あの【小麦騒動】を解決して、俺達はアウギュステへと向かいながら、小さな依頼も消化しつつの移動を続けていた。溜まった依頼は、シェロさんに頼まれたものとしては、比較的易しいものがばかりで、それに安心しながらも後が怖い俺がいた。

 

「尻に引かれた亭主みたいやな、あんた」

 

 依頼報告書を纏めつつ、まれに落ち込んだりしていると一時旅に同行しているカルテイラさんに指摘されてしまった。

 

「誰が亭主じゃい」

「亭主じゃないなら、首輪つけられた犬や」

「ワンワンワンッ!!」

「わ、犬が吼えたっ!!」

 

 まったく、失礼な人だ。と言うか、もう首輪について隠そうともしない。開き直ったな、こいつめー。

 

「見ているがいい、俺は見事この借金と言う首輪を外し、この大空の旅をより自由なものにするんだ」

「ほっほ~?できるんか~あんたに~」

「なにおうっ!」

「聞いた話やと、あんたの借金って事のなりゆきや、自分以外の所為で増えたやつばっかやろ?」

 

 あ、いや止めて言わないで。

 

「こう言うのってな、いっくら自分が気をつけとっても、何故か減らんのや。借金からあんたに近づく!増える一方、借金人生!」

「うわああああーーーっ!!」

 

 くそ、それについては自分でも、ちょっと考えて直ぐ捨てた考えなのに!!

 

「まああんたが借金返せたら、それはそれでええこっちゃ」

 

 それはそれでってなんだよ、それでいいんだよ!

 

「もし返す見込み無かったらうちに相談してや~、借金チャラにするの協力したるから」

 

 あ、一瞬心揺らいだ。

 

「優秀な商人に必要以上の借り作ると怖いんで遠慮します」

「あらら残念」

 

 少なくとも今は、シェロさん以外の商人にでかい借りは作らない。前回の騒動は、カルテイラさんのおかげで小麦粉が手に入ったが、騒動自体は俺が解決したので貸し借りなしです。たぶん。

 まあ今の話もカルテイラさんの冗談であろう。ずっとニヤニヤ笑ってたし。

 

「団長、島がみえたよ」

 

 キュルキュル回転音が聞こえたと思ったら、やはりフィラソピラか。相変わらず謎の空飛ぶコマ【クリュプトン】に乗って移動するフィラソピラ。船内でもそれで移動するから、最初コマの回転音に慣れるまで時間かかったよ。

 たまに歩いてるのを見ても、「歩行をする事で、より飛行についての考えを」云々。考えるの好きね、ほんと。

 

「報告どうも」

「君は何時も書類整理を食堂でやるね」

「俺雑音ある方が仕事進むタイプなの」

 

 しかもここだと、誰かに紅茶とか淹れて貰える時がある。最近ではコーデリアさんや、ブリジールさんがよく紅茶に菓子も添えてくれるのだ。天国かな?まあ雑音も騒音になれば無理だ。具体的にフェザー君やティアマトとか来ると駄目、拳での語り合いを強要され、御小遣をせびられる。地獄かな?

 それにもう島に着く。次の依頼は、なんかとりあえず島の村長に聞いてくれとの事。面倒な戦いは、無いはずだとシェロさんは言っていたので、直ぐにでも済ませよう。

 

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 三 怪奇、樹海に響く笑い声!!

 

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 島で依頼のあった村へ行き、そこの村長に聞いた依頼は、何時もと変わらず奇妙なものだった。近くの山の中から、奇妙な声がすると言う。しかも女性と思われる笑い声。それが数日前から聞こえてくるので、怖くてたまらないから調べてくれと言う内容。

 主に笑い声の確認、そしてもしその声の主が魔物か危険人物であればそれを倒すと言う可能性を踏まえた依頼になる。

 

「はい、では今回の選抜メンバー発表しまーす」

 

 今回の依頼選抜メンバー。普通に安定した編成で行く事にしたので、過剰戦力の星晶戦隊は、お留守番。俺とリュミエール聖騎士団コンビと、戦闘があった場合を考えてフェザー君をくわえた四人編成。B・ビィもついてくるが、こいつは基本的にマスコット気取りなので大規模戦闘や強大な敵が相手じゃない限り普段戦力外である。

 

「その声が聞こえるのは、夜に多いそうなので夜になってから入るから。あと森には、魔物はあまり多くないとは聞いてるけど、用心して進もう」

 

 そう言うわけで夜、山の深い森へと入っていく。

 実に気味が悪い。湿気が多いのか、木々の葉から雫が滴りたまに顔に当たったりするのがうっとおしい。

 

「ぴいっ!?冷たいです!!」

 

 一際怖がりだったブリジールさん。怖がりの事を何も言わなかったから気にしなかったけど、強がりだったようだ。申し訳ない気持ちと、ちょっとメンバー選び間違えたかなと思いながらも、怯える彼女がカワイイと思ってしまう。

 

「ぱっつん髪のねえちゃんは、怖がりだなあ」

「だ、大丈夫です!驚いただけです!お、おばけと言うわけでもない、ただの夜露です!怖くないです!」

 

 そう言いながら、徐々に俺との距離が縮まる。おいおい、余計にカワイイわ。

 だが確かに不気味に思うのは、俺も同じ。しかも夜道で森の中なので、ランタンもって歩いているがやはり暗い。木々の隙間から漏れる月明かりなども頼りにして進んでいき、そして足を止める。

 

「……聞こえた?」

「聞こえたね」

 

 コーデリアさんも聞こえたようだ。僅かだが、声が聞こえる。

 

「あっちかな?」

「森の更に奥になる。用心して進もう」

 

 我々探検隊は、更に森の奥へと進んでいった。

 奥に入ると更に湿気は高まり、また湧水があるのか各所にやや深い池や穏やかな小川も流れている。晴れた日の昼にでも来れば、小川を眺める事ができる絶好の登山ルートかもしれないが、今はただ不気味さが目立つ。

 泥濘に注意して進むと、件の笑い声がだんだんと大きくなってきた。だが同時に気づく。

 

「これ、移動してません?」

 

 笑い声に近づいてはいるのだが、向こうの方も少しずつ俺達から離れていっている。もしや俺達の存在に気がついたのだろうか。しかし、笑いながら?

 

「団長、魔物の気配がするぜ」

「知ってる……」

 

 フェザー君に言われるが、俺も気がついてる。しかも笑い声の方向に気配を感じる。どう言う事態になるかわからなくなってきたな。

 

「コロッサスあたりは、つれて来るべきだったか……」

「問題ないと思うぜ?どうせ相棒の事だから、騒動になったって何時もの事だぜ」

 

 それが嫌なんだよ。楽したいんだ俺は。だが、そうは言っても依頼は続けねばならない。ため息を一つ吐いて俺は、笑い声を追った。

 数十mも追うと、笑い声以外に魔物の声も聞こえてくる。しかも複数の声、群れのようだ。笑い声の主は、魔物に追われているのだろうか?状況が読めないためどうすべきか悩んでいると、突如森に銃声が鳴り響いた。

 

「近いっ!?」

「いや、これは声の方向からだ!」

 

 声の主が撃ったのか?わからないが、魔物に誰かが追われていると仮定して動いても良いかも知れない。俺達は、急ぎ銃声のあった方向へと向かう。その間も何度も銃声はなるのだが、音だけを聞いていると、やたらめったらに撃っている印象があった。 

 そしてついに魔物の姿を確認した。すぐに声の主を探そうとしたが、また銃声がなった。

 

「また銃せぃうおわああああああっ!?」

「団長っ!?」

 

 じゅ、弾丸が俺の頬を掠めて飛んでいきやがった。

 

「ふ、ふざけんなっ!?魔物狙いじゃねーのか!?」

「て、敵と言う事でしょうか?」

「わからんな、我々を敵と思っているのかもしれないが」

 

 そしてまた一発の銃声。だが発射の後に、数度跳ね返る音が聞こえた。

 

「ちょ、跳弾でぎゃああっ!?」

 

 今度は俺の眉間に飛んできた。咄嗟にかわしたけど死ぬぞこれ!!

 だが、それで終わらず銃弾はドンドン発射される。どれもこれも、跳弾を繰り返し俺に向かう。

 

「なんっで……っ!?おれ、ばっかり……ぬおおおっ!?」

 

 どこに身を潜めても、あらゆる方向から跳弾して銃弾が襲ってくる。死角が無いのか相手は!?見えてるのか俺が!?どう言う奴だ!!後なんで俺しか狙われてねえんだよ!?。そんな事考える暇を与えないかのように、再び弾が迫る。

 

「ギャヒンッ!!」

 

 こ、今度は魔物に当たったぞ!

 

「だ、誰か知らんが魔物に追われてるなら、手伝ってやる!!俺達を、と言うか俺を狙うな!!」

「ふ、ふひゅ……ひぃひいっ!!」

「うおおっ!?」

 

 だが相手からは、返事とは思えない笑い声と銃弾が返ってくる。や、やっぱり笑い声の主が撃ってるのかよ!

 

「あは、あははははっ!!ふひっ!ごめ、えほほっ!?あは、あははははっ!!!」

 

 わ、笑ってやがる!?やばいぞ!!想像以上にやばい奴を相手にしなきゃならんかもしれん!!

 

「コ、コーデリアさん達は、そこで動かないで!」

「団長はどうするんだ!!」

「隠れても無駄なら、直接やるしかねえ!!」

 

 めんどくさい事はやめだ!!もう攻めるぞ俺は!!

 

「行くぞ、ちくしょうこの野郎!!」

「久々に相棒の貧弱な暴言でたな」

 

 うるせえな!?

 

「あひゃあははははっ!!ははは……っ!!いひひっひひいいぃぃーーーっひひひっ!!」

 

 こっちもうるせええ!!

 

 

 ――――――――――――

 

 

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 一 フェイトエピソード 笑撃のファーストコンタクト

 

 ■

 

 ある島にそれなりに名の知られた山賊団がいた。

 山賊と言うと、主に盗賊の事を指すが、物を奪う対象が居ない場合普通に自給自足の生活をする。この山賊団も盗賊行為を行う事もあり、それでいて山での狩猟生活を続けていた。

 そしてこの山賊団の頭には、一人娘が居た。

 彼女は、家族と言える山賊の仲間達に囲まれ暮らしてきた。頭領の娘とあってよくされていたが、頭領である父と仲間達からは、ある点を常に心配されていた。

 

「あいつは、好奇心が旺盛すぎる」

 

 子供の頃から彼女は、とにかく好奇心が旺盛であった。興味を持ったものには、大人の警告を無視して近づく。それが危険な魔物であったりすれば、周りの大人達は、たまったものではない。彼女には、常に監視がついたがフラフラと歩いて興味を持った魔物を追いかけたり、面白い植物が崖にあればそこに行き、とにかく危なっかしい。何時も大人達は冷や冷やしていたが、それも子供の内だけと思っていた。

 実際彼女は、歳が19に成った頃には流石に落ち着きを見せていたが、実のところ本質は変わっていなかった。好奇心旺盛なのはそのままで、そして彼女の興味の殆どは、キノコへと集中する。

 彼女は、キノコが好きだった。珍しいキノコが好きだし、美味しいキノコは、大好きだ。見たことも無いようなキノコは、毒の有無を気にせず思わず取って食うほど。その事を父も仲間も知ってはいたが、“まさか、仲間に出す料理に毒キノコを知らずに出す”なんて事をするとは、思いもしなかった。だが結局それをやってしまった。

 案の定父含め仲間達を一夜にして再起不能にした彼女は、自身も【笑いキノコ】を食してしまい、四六時中笑い続ける症状に苦しめられる事となった。

 仲間の全員を再起不能にして、始終笑い続ける者を山賊として、まして仲間として置いておくわけにはいかない。父も仲間も彼女を団から追い出し、「ここに戻るにしても、せめて笑いっぱなしなのを治してから帰って来い」と言われたのは、当然だろう。

 そして彼女一人、放浪の旅が始まったのであるが、運が無い事に彼女の食したキノコは、新種のために解毒剤がなく何処に行っても有効な治療法が見つからない。同時に笑い続けの彼女を気味悪く思い、彼女の相手をする者は多くない。そのため、道中の路銭を稼ぐ事も満足に出来ずにいた。

 そして例えどこであろうと、笑い続けるためにゆっくりと眠る事は出来ない。過呼吸で苦しみながら、眠りにつくのか気絶するのかわからない睡眠をとる。そんな生活を繰り返す中、常に引きつった笑顔の裏に隠れる、彼女の肉体と精神両方の疲労は、凄まじいものであった。

 そして、ある日の夜。彼女は森の中で発作で笑いを抑えられず倒れ、笑い声に集まってきた夜行性の魔物に追われながら、まともに動く事ができないまま、そして出会ったのだ。

 四六時中笑い続けようと、彼女と同じかそれ以上に濃い面子が揃い、それをまとめながらも、その濃さに埋もれ霞む地味な少年に。

 

「じゅ、銃から手え離せコラ!!うおおっっ!?かす、かすったああっ!!」

「やべえ、相棒三発同時だっ!!」

「う、うおおおおっ!?B・ビィガーードッ!!」

「ンギャアアアッ!?」

 

 ■

 

 二 ノコノコキノコ

 

 ■

 

「はひ、ひぐうふっ!!あは、すま……あははっ!!すまなひひひっ!!」

「まるで誠意が伝わらねえ」

 

 今回の依頼は、山中での戦い、では無く、結果的に救助となった。

 エンゼラの救護室内のベッドで、笑いながらのた打ち回るハーヴィンの女性。名をルドミリアと言う。

 あの後跳弾の嵐を必死に潜り抜ける中、放たれる銃弾は魔物を狙い貫いた。俺も狙われたが、必死に避けてたまにB・ビィを盾にしたので無事だった。

 

「死ぬかと思ったぜ、ひでえや相棒」

「絆創膏一枚ですんでちゃ説得力無いぜ」

 

 おでこに一枚絆創膏を張るB・ビィ。ビィのサイズとはいえ、これでもプロバハの分身(曰く、角一本分)みたいなもんだからな、銃弾ぐらいじゃ死なねえとは思ったが、本当に問題ないからやっぱおかしいなこいつ。

 B・ビィの別に尊くは無い犠牲を出しつつも、銃を撃つ笑い続ける者、すなわちルドミリアに接近できた俺が見たものは、あらぬ方向を向きながら大笑いして片手だけでライフル銃を振り回して撃ち続けるルドミリアだった。

 危ないどころではない。まさかあんな状態で魔物を全滅させて、俺のみを跳弾で狙っているとは思わなかった。ただ正確には、偶然であって狙ったわけじゃないようだ。と言うのも、彼女は、なにかの発作か笑いが止まらず痙攣して、手がトリガーから離れない状態だった。そんな状態でも、しっかり装弾を済ませていたのかまだ弾切れを起こさない。急ぎ彼女と銃を離そうとしたが、上手く離す事ができない。その間も銃弾は放たれ俺を狙う。俺だけを狙う。なんでじゃい。

 なんども死にそうになりつつ、やっと銃を手から外す事が出来、倒れ付すルドミリアに事情を聞こうとしたが、笑いすぎて顔が真っ青になり泡吹いて、こっちが死に掛けていた。そのため急ぎエンゼラへと戻り治療をしていたのだが……。

 

「あはーははひっ!!こ、こんな、あははっ!!!状態ですまなひいひひひっ!!」

「……うん」

「す、すきで笑っている、あはははっ!!わけじゃあははっ!!ないだひひひっ!?」

 

 そらこの状況で好きで笑ってたら、完全にヤバイ人だよ。即衛兵に突き出すわ。

 

「ご、ごめごふう……っ!?す、少し……ふふぅっ!?深呼吸するから……」

 

 ルドミリアは、必死に深呼吸をして呼吸を整えてる。その間も「ほごぉっふうっ!!」「すーーふっひひっ!?」と、まともに深呼吸も出来てないが、多少落ち着いたらしい。

 

「や、やっと……ひひ、落ち着いたようだ……はは」

 

 まあ、あんまそう見えないけど。

 

「あ、改めて、んふっ!ル、ルドミリアだははっ!!」

「ほんと大丈夫なのこれ?」

「だ、大丈夫、すま、すまない……これでも、落ち着いてる方なんだ、あはっ!」

 

 これで落ち着いてるんだ……。

 

「さっきは、すまなかった。魔物に追われて……あーはーはっ!ひひ、銃を撃っていたら発作で、狙いが、さだまらなくなって……ふひっ!」

「俺ばかりに跳んで来たんだけど……」

「ね、狙ったわけじゃ、あははっ!無いんだ……ぐ、偶然だが、あんなの私も初めて、ふふっ!!」

 

 撃った弾全部跳弾して8割俺に向かってくる偶然ってある?

 

「なんでそんな状態で銃撃つのさ……と言うか、なんでそんな事に」

「じ、実はキノコを食べてから、笑いが止まらなく、くっくうふ、あははーーーっ!!」

 

 毒キノコ食って笑いが止まらなくなった……そう言う事、本当にあるんだね。

 

「これマジだと思います?」

「嘘をついている様子……それ以前の問題だが、多分本当だろう。嘘で引き付け起すほど笑う事が出来る訓練をつんでるなら別だが」

「ねえわ、そんな訓練」

「私もそう思うよ」

 

 嘘を見抜くのが上手そうなコーデリアさんに聞いてみても、一応マジで笑い続けるキノコ食っちゃった人らしいな。

 

「何で食っちゃったんだよ……」

「んふっ!は、初めてみるキノコで、たべ、食べてみたくなって、あはっ!!そしたら、このありさまあはははははっ!!」

 

 もしかして、この人笑ってなくてもヤバイ人じゃないかな?初見のキノコを毒の有無確認せずに食うとかってあるの?

 

「あんたって、聞いてた以上にトラブルと濃い人材ホイホイやな」

 

 誰から聞いたのそれ?まあ、どうせシェロさん辺りでしょ、知ってた知ってた。ちくしょう。

 ここいらで、他の団員への説明のための、話してるとこっちも気が変になりそうなルドミリアの事情要約。

 前いた山賊団を、毒キノコ料理で全員再起不能にして、自分も毒に当たって追い出されて、キノコは新種だから解毒できず、放浪していて魔物に追われて今ここ。

 

「コイツ、馬鹿ナンジャナイカ?」

 

 お前にだけは言われたくないだろうな。

 

「ユグドラシルあたり、解毒できない?キノコ詳しそうだけど」

「――――――」

 

 土系統だけど、キノコはそんな詳しくないと首を振られてしまった。他の星晶戦隊も、解毒は無理との事。

 

「俗に【笑いキノコ】とか【ワライダケ】って呼ばれとるキノコは、うちも何度か商品で扱った事あるけど、解毒薬が無いっちゅうもんは、聞いた事ないわ。せめて現物あれば、どこぞの研究所に渡せたんやけどな」

「わ、私も色々な島を探したが、ふふふっ!解毒薬は、無いしこんな状態だから、あははっ!!ろくに相手もされず、だはははははっ!げほぅぅっ!?」

 

 まーヤバイの来たと思うわそれは、ライフル銃担いで大笑いしてる人間来たら。

 しかし、治療したいのにこの発作のせいでまともに相手されず、薬も無い。ろくに一箇所で留まる事もできず、魔物に襲われれば今回の様な事になる。気の毒と思わないでもない。

 俺はふと、あのポンコツのライフルの事を思い出した。

 

「……あんたって、魔導結晶埋め込んだハンターライフル使った事ある?」

「あははっ?や、闇の魔導結晶かい?」

「そうそれ」

「うぷっ!!そ、それなら結構まえに……ふひゅっふふふっ!!使っていたな、こふっ!!い、今の奴を手に入れたから、路銭にして売ってしまったけど……はあ、あははっ!!」

 

 はいはい、そう言う奴ね。やっぱりあの銃の癖あんたの所為か。

 

「……行く当てないなら、うちの団入る?」

「ぷふうぅーーーっ!!」

 

 これって返事?馬鹿にされた?どっち?

 

「あはーあは、あははっ!と、突然なんだい……はひ、ひっ」

「いや、今までの流れで多分俺が何かしなくても、結局うちに来そうだなと思って」

「よ、よくわからないが……んっふぅっ、たす、助けてもらったうえに、これ以上迷惑をかけ、かけられなはははっ!ごほ、がほっ!?」

「いかん、気管に入ったようだ」

 

 うーん、前言撤回したくなって来たぞお。

 だが実際ここでこの人と別れても、何かしらで合流しそうなんだよなあ……。これも武器のもたらす縁なのだろうか。縁って引き合うイメージがあるけど、俺の場合良い物悪い物ひっくるめて向こうから突進して鳩尾に抉り込んでくる感じだからなあ。

 

「まあ、治療法見つかるまでぐらいはいなさいよ。どうせこの島の村とかで宿とっても追い出されるのが関の山だし」

「くふふ、痛いところを、つくなあ……だが、こんな目立つ私を連れては、くひ、君達にまで、迷惑をかけてしまう……あっはっは!」

「目立つ……」

 

 俺は周りにいる星晶戦隊を見た。

 三匹の竜を引き連れた星晶獣(笑)筆頭ティアマト。動く黒鉄鎧、癒し常識枠コロッサス。水質にうるさい敏感肌の尊大ぶったリヴァイアサン。ふわふわと浮いているユグドラシル。腕四本生やしたドM星晶獣シュヴァリエ。移動中も若干瘴気を漏らしているセレスト。存在が闇、バグ、ギャグ、非常識のB・ビィ。ゾーイは、一見ただの少女だが一度飯を食えば嫌でも目立つ。

 

「目立つとか、こいつら以上に目立ってから言ってよ」

「せ、星晶獣を比較に出すのは、ふふっ、卑怯だよ、あは、あはっはっは!」

 

 かもしれない。だが見てみよ、星晶獣以外の面子も。

 酒飲みゲロインドラフ。二言目には、拳で語り合う格闘馬鹿。謎の浮遊コマに乗る哲学者。男よりイケメン女性騎士。とことんガンバルハーヴィン。あと、一時的だが同行中の商魂逞しいエルーン。

 

「目立つとか、うち全員と比較してから言ってよ」

「うふっ君の騎空団どうなってるの……?あは、あはっ!」

 

 うるせいやい。

 だがルドミリアは、俺達面々を改めて確認してなにか一つの結論に至ったのか、顔は笑っているがハッとした表情になる。笑ってるけど。

 

「そ、そうか君達……いひひ、あ、あの噂の星晶戦隊か」

「今気が付いたんだね」

「こ、濃い面子を紹介されてから、あは、君を見たら確信に至ったよ」

「ねえ、それどう言う意味?」

「そ、それは、うぷぷっ!!ぼはっ!!うぶっふうぅーーーっ!!」

 

 なんだろう、何時も以上に馬鹿にされてる気がするぞぉ~~?

 

「くすぐり倒してもいいかな?」

「ご、ごめ、勘弁してくれ、はひひ……っ!!」

 

 足の裏くすぐったら、きっと致命傷だろうなこの人。

 

「だ、だがいいのかい……うぐっ、ほんとうに迷惑をかけてしまうが、ほふっ!」

「いいよ、いいよ……今も言ったけど、どうせここで外放り出したって、またうちに来るだろうから」

 

 ここらへん、俺は諦めの境地である。厄介な事が、不意に来られるより、目の届くところに置いておきたいんだ。

 

「な、なにか辛い事があるようだが、おふっ、お言葉に甘えていいのかい?」

「ああ、俺達星の島目指してんだ。流石にそんな所目指してりゃ道中見つかるでしょ、治療法の一つぐらい」

「イ、 イスタルシアかい?あははっ!それは、すごいひひっ!」

 

 わかってる、わかってるよー、馬鹿にされてるわけじゃないのは。

 

「んっふ……な、ならお世話になろうかな……。こ、こんな事になってるが、何かと役に立てるつもりだ、んふふっ。な、なるべく迷惑はかけないようがんばるよ……なは、んなはははっ!!ご、げほごふぅ……っ!?」

「いかん、また気管に!」

「ああ、泡吹き始めたにゃっ!?」

「引き付け起しとるでっ!!」

 

 ……早まっただろうか。いや、しかし、やはり結局彼女はうちに来る気がする。今か後かの違いになるのなら、とっととこの状況に慣れておきたい……。

 

「がほ……っ!ごほふぅ……っ!?」

「これ、いっそ気絶させた方がよくねえか?」

「かもしれないな」

「おっしゃ、フェザーやってやんな!」

「よっしゃあーっ!!」

「げぼほおおっ!?」

 

 うん、慣れたい……。

 

 ■

 

 三 スーパーザンクティンゼル人考察学会

 

 ■

 

 ―――その後、色々な依頼でルドミリアをつれて行く事もあった団長であったが、彼女の発作に巻き込まれトラブルが続出。ブレブレの狙いから放たれ、跳弾しまくる弾丸に襲われ死にかける事数百回以上。しかし、ルドミリアを退団させる事は無かった。

 なぜ一般的に足手まといと思われる者を仲間にし続けたのか?後のスーパーザンクティンゼル人を研究する者達からは、様々な憶測が出たが、発見された【星晶戦隊マグナシックスとB・ビィくんマン&均衡少女ZOY】の団員の物と思われる手記に「団長は、彼女に関しては既に諦めの境地であった。だが、同時に楽しんでいた」とあり、単純に苦労性で諦めていたのと、それを楽しめる度量の深さを併せ持っていたとされる。

 それが幸か不幸かは、本人のみが知る事である。

 

 




彼女が実装された時、衝撃をうけてガチャ回しまくった。

問題児が増えたので、次はまたオリジナルのクロスエピにでもします。二人一気に来て貰おう。

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