俺は、スーパーザンクティンゼル人だぜ?   作:Par

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ギュステでシャルロッテと観光したい人生だった


嵐の前の静かすぎる数日

 

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 一 フェイトエピソード 小さくも、高き志を胸に

 

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 空には、多くの国がある。そして国の成り立ちは、それぞれだ。

 優れた者が王として選ばれ、国とした。

 人々を力でねじ伏せ己の国とする。

 何かの目的で集まり何時しか国となる。

 しかし栄枯成衰、国生まれればまた滅びもする。それを繰り返すのが世の習いである。その中で長い歴史を持つ国こそ安寧の国なのだろうか。

 ここもまた長い歴史を持つ一国、かつて正義を掲げ集った騎士達が建国したリュミエール聖国という国がある。何時の世も正義を求める声は止まない。その声に答えるため、何時しか騎士が集まり国となった。聖王と呼ばれる者を王として、それに仕えるのは、誇りあるリュミエール聖騎士団。

 

「清く、正しく、高潔に」

 

 それを掲げた者は、誰だったのだろうか?最初の騎士団長か、初代聖王か。だが誰が言ったのかは、重要ではなかった。その言葉の重みが、聖騎士団の結束を生んでいる。その三つの言葉を胸に刻み、信じる事が出来るならば、リュミエール聖騎士団は、これからも繁栄し正義を護り続ける。

 その事を騎士団の者は、誰も疑わない。だが、ある時リュミエール聖騎士団の歴史上例の無い事態が起きた。現団長、シャルロッテ・フェニヤの出奔であった。

 シャルロッテ・フェニヤは、若きハーヴィンの騎士である。ハーヴィン族の騎士団員は、決して少なくない。だが多くが下級の見習い騎士などである。あるいは、体格の不利に悩まされ剣を置き騎士団の事務仕事を担う事になる者が多い。戦う騎士として重要な役職につく事は、ハーヴィンと言う種族の体格ゆえにまず無い事だった。その本来戦いに向かぬ小柄なハーヴィン族である彼女が誉れ高きリュミエール聖騎士団の団長となれたのは、尋常ならぬ鍛錬の成果である。

 ハーヴィンの努力を笑う者も居た。無駄だと言う者も居た。だがそれを気にする事無く直向な努力を続ける彼女の姿に何時しか騎士団の者達は、騎士としてあるべき姿を彼女に見出し、そして思った。彼女こそが、新たな団長に相応しいと。そしてシャルロッテは、リュミエール聖騎士団の新たな団長と成ったのだ。誰も考えもしなかったであろう、ハーヴィン族の騎士団長として。

 騎士団長としての任は、並大抵の物ではない。騎士としての戦いは勿論の事、騎士団の運営にも関わる。慣れぬ運営業務は、他の団員が手伝いを申し出て彼女の助けとなった。戦いの場でも、頼れる仲間が居た。皆がシャルロッテを慕い団長として尊敬していた。

 その事を誇りに思い、自分はなんと仲間に恵まれたのだろう、とシャルロッテは思っていた。だが、ある日任務で外に赴いた折人々の噂を聞いてしまう。

 

「リュミエール聖騎士団の新しい団長は、ハーヴィンだそうだ」

「小さなヤツに従うようじゃ、あの騎士団もお終いだぜ」

 

 所詮戯言である。小柄なハーヴィンが騎士団長と言う名誉を得た妬みでもあるかも知れない。だが当事者であるシャルロッテにすれば、その言葉は如何なる刃よりも鋭く胸を抉った。何より、あの信頼できる仲間達までもが嘲笑の的にされる事が悔しくてたまらなかった。

 自分がハーヴィンである所為で、この事で悩む事が以前より多くなったシャルロッテは、目に見えて落ち込む事が多くなった。そして噂を聞いた団員達は、それが原因と察し「そんな戯言気にはしない、言わしておけばいい」と話し、また彼女を気遣い励ました。その心遣いに更に仲間への感謝の念を強くしたシャルロッテだったが、一つ気がついた。

 

(あれ……?自分、マスコット扱いされてはいませんか……?)

 

 妙に甲斐甲斐しい気遣いや、着せ替え人形の如き扱いで可愛い服を団員が持ち寄ってきた時自分の扱いに気がついた。勿論団員達の騎士団長への尊敬の念は、並々ならぬものがあるが、それと同等か稀にそれ以上の熱意を込めて愛でられている様な気がしてならなかった。

 彼女はもう24の大人の女性だ。見た目が小柄だからといって子ども扱いを受けるのは耐えられない。ガールじゃないのだ、レディなのだ。これはいよいよハーヴィンの体型ではいられない。シャルロッテは、ある決意をした。

 体型に悩まされていたのは、今に始まった事ではない。だから彼女は、知っている。子供の頃から調べていたのだ。この空には、想像も付かないような神秘が散らばっている事を。そして、その神秘の力を使えば、今の自分の姿を念願のヒューマン、エルーン、ドラフ(胸部)顔負けなダイナマイトなボディに変える事も可能に違いないと。

 そして、出奔へといたる。

 勿論黙って消えたわけではない。名目上は、他国で活動する騎士団員の査察とした。だが行動が唐突過ぎたため団員達からは、突然消えたように思われており、更に「身長をおっきくしたい」と言う真の目的が目的だけに、内心申し訳なさと情けなさであまり本国と連絡を取ろうとせず、ついにリュミエール騎士団は、彼女の行く先を見失い失踪扱いでもある。

 そして一応他国での騎士団査察もしっかり、こっそり行いながら、島々をめぐり身長アップの手段を探していた。そんな中で彼女は、アウギュステへと訪れていた。理由としては、ちょっとした“願掛け”をしに来たのだが、そこで偶然老婦人に狼藉を働く悪漢達を目撃してそれを成敗する。その中で手助けに入った一人の少年と出会う事になった。

 

「いいでありますか?自分はこれでも立派な大人の女性なのでありますよ?」

「知ってます、分かってます」

「なんだかいい加減でありますなぁ……」

 

 自分の名前を知った途端、妙にテンション下がった少年なのであった。

 

 ■

 

 二 まともな休日など送らせるものか

 

 ■

 

「シャルロッテ団長に、会っただって……?」

「そっす」

 

 我ら星晶戦隊(以下略)の宿泊する宿のコーデリアさん達の部屋に俺達は集まった。勿論リュミエール聖騎士団団長について話すためだ。そのまんま今日シャルロッテに出会った事を話したら、コーデリアさんは久々にシリアス顔になった。

 

「オ前ハ、初日カラ厄介ナ事ニナッテルナ」

「うるさい」

「それで、シャルロッテ団長は?」

「引き止めても怪しまれるんで、適当に誤魔化してまた会う事にしました。勿論コーデリアさん達の事は、話してないです」

「素晴らしい、何時でも遊撃部に入れるよ」

「……次の事聞いてもそれ言えます?」

「と言うと?」

 

 シャルロッテさんと出会った後、無理に引きとめ怪しまれないように誤魔化したのは本当だ。ただその時色々と後日合う理由を考えた時、シャルロッテさんがアウギュステに慣れている雰囲気を感じて出てきた言葉が「アウギュステって初めてで、何見れば分からないから、案内してくれません?」であった。

 アウギュステは二度目だが、観光は初めてだから嘘じゃないよ?何見ればいいのか分からなくて案内が欲しいのも本当だよ?調度助太刀のお礼をしたいと言われたのでそれにのった形になる。最初めっちゃキョトンとしてたけど、結局「お任せください、アウギュステは、何度か来ております」と自信満々の彼女に観光案内を頼むことに成った。しかもその後にシャルロッテさんに予定を聞かれて失敗をする。

 

「日程はどの様になっているでありますか?」

「あ~、今日込みで一週間だけど……どっか都合がいい日で……」

「おや、それは奇遇でありますな。自分も一週間ほどアウギュステに滞在する予定なのであります」

「え?ああけど、どっか一日だけで」

「ただ今日は、少し都合が悪いので……それでは明日にでもまたお会いしましょうか」

「え、あ、いやその」

「六日もあれば、十分にアウギュステを楽しめるでしょう。楽しみにしていて下さいであります。騎空艇の係留所近くの閘門、あすそこで落ち合うといたしましょう」

「あ、はい場所は、わかりますけど、あの」

「それでは、自分は用事がある故ここで。また明日にお会いしましょう!」

「あ、あはは……た、楽しみだなぁ……さいならぁ……」

 

 てな具合である。俺は残り六日間シャルロッテさんと共にアウギュステ観光をする事になった。我ながら上手いこと話をごまかし進めるのが下手だと思った。

 

「てなわけで、俺明日からシャルロッテさんとアウギュステ巡りしないといけなくなりました」

「なるほど……遊撃部見習いからかな?」

 

 呆れた様子ながら笑みを絶やさないコーデリアさんは、流石だと思いました。

 

「君は、本当に面白いなあ」

「押シニ弱インダ、コイツハ」

「気合が足りないぞ団長!」

 

 えらい面白そうにしてるねフィラソピラさん、俺が困った顔してるとほんと嬉しそうだね。あとティアマトもフェザー君もうるさい。

 

「どうしましょうか、別に明日とっととコーデリアさんが用事済ませても良いと思いますけど」

「ふむ……」

 

 顎に手を当てて思案するコーデリアさん。申し訳ねえな、無駄な面倒起しちゃって。

 

「いや、ここは一つ様子を見てみようか」

「様子、シャルロッテさんのですか……」

「相手を問い詰め真意を問うのは、いつもの事。だが、話を聞いているとシャルロッテ団長は、君に気を許したようだ」

 

 コーデリアさんに「その点は、本当に人たらしだね」と言われてしまう。覚えがありませんなあ。

 

「自然と出てくる言葉にこそ真実はある。我々では、顔が割れているかもしれないからね。団長殿、一つ君にはシャルロッテ団長が失踪へ至った経緯をそれとなく調べてみて欲しい」

「俺がっすか……」

「事態をややこしくした責任を取るつもりで頼むよ」

 

 ああつらい、それ言われるとつらい。あとコーデリアさん、めっちゃ笑顔っすね。

 

「気が休まらない休暇になってしまった……」

「自業自得ダ」

「やかましい!」

「ふふ、まあ良いじゃないか、リュミエール聖騎士団の団長に案内されてのアウギュステ観光なんて、滅多に無い機会だ」

「うぅ……じ、自分もお供したいです。シャルロッテ団長との観光……」

 

 変われるなら変わって欲しいよブリジールさん。けど貴女だとなんか俺以上に嘘がつけなさそうだから、きっとこう言うの向いてないですよ。

 

「それと、君が【星晶戦隊マグナシックスとB・ビィくんマン&均衡少女ZOY】の団長だとバレると、そこから私達に感づかれるかもしれない」

「知ってますかね、あの人」

「団長の顔を知らなくても、名は知っているかもしれない。名前は名乗ったのかい?」

「いや、なんか急いでたみたいで、俺だけ名前言ってないです」

 

 顔どころか名前も最近覚えられてない気配があるけどね。俺ってば。いい加減団名変えるか、せめて俺の名前入れたい……。

 

「そうか、普通なら礼を欠くが今回は、かえって都合がいい。君が騎空士である事も話してはいないね?」

「身の上話する暇も無かったっす」

「よし、ならば明日から君は、ただ観光に来た一般人だ。シャルロッテ団長には、偽名を名乗りたまえ」

「偽名……何にしましょうか」

「“ジミー”トカデ良イダロ、地味ダシ」

「んっふ……」

 

 ねえ、コーデリアさん笑った?ねえ、今ティアマトの発言聞いて笑った?

 

「ああ、成る程ジミー……」

「あはは……っ!ジ、ジミー団長……っ」

「星晶戦隊(以下略)団長のジミーか」

 

 お前らジミー、ジミー煩いぞこの野郎、畜生!!

 嫌だからな!?俺そんな偽名嫌だからな絶対に!!聞いてるのかお前ら、この野郎てめーオイコラ!?オーイッ!!

 

 ■

 

 三 ジミー団長(仮名)のアウギュステ二日目

 

 ■

 

「…………」

 

 アウギュステの首都ミザレアは、商業と観光が盛んな水上都市として名を馳せている。アウギュステ列島内の移動は、主に空を飛ぶ騎空艇でなく水上を進む船で行われる。ここを訪れる人の中には、水の上を進む船を珍しがる者もおり、観光用の船もまたミザレアの観光資源である。

 張り巡らさられた水路は、主に移動のために作られたものである。中でも水位を調整し船を上下させ進ませる閘門(こうもん)と呼ばれる装置は、豊富な水量と水路を持つアウギュステぐらいでしか見られないために、観光客が見に来る名所の一つでもある。

 そんな幾つかある閘門の内でも有名な一つの傍で、やたらソワソワした挙動不審な男が一人いた。星晶戦隊(以下略)の団長である。普段の服装……は、どんな格好を好んでるかも団員からは、既に忘れられているが、多少(彼なりに)決めた服装に身を包んでいる。

 

「アノ馬鹿、モウチョット御洒落ヲ出来ナイノカ」

「あれが相棒の限界だよティアマト」

「ダカラ私ガ、コーディネートシテヤルト言ッタノニ」

 

 さらにその挙動不審な男を、建物の影から覗く幾つもの影があった。

 

「団長は、何故あんなに緊張してるんだ?」

「今朝起きて、冷静になって初めて女性とデートをすると気がついたそうだよ」

「童貞力振り切れてるな、主殿」

「け、けど……相手の人、たぶんデートとか、思ってないよね……」

「デートと言うか、デート(笑)って感じね」

「あれ?騎士団長と語り合うんじゃないのか?」

「フェザー、君はそれしかないのかい?」

 

 と言うか、ティアマトやらコーデリアやらルナールやらがワラワラと物陰にいた。この事を団長である彼は、まるで知らない。普通に休日を過ごすよう言っておいたのだが、彼らは「ジミー団長(仮名)見てたほうが面白そうだ」と言ってみんな来てしまった。

 だが、まるで潜んでいない。すっかり建物からは、はみ出ている。当然である。省エネモードに加え未だ海にいるリヴァイアサンを除くとは言え、星晶戦隊が5体にB・ビィとゾーイ、その他団員全員だ。むしろ、どうやって覗き込む姿勢を維持してるか不思議でならない。他の通行人がギョッとしているが当然の反応だ。

 

「けど、それで団長はボロ出さずにお相手できるのかい?」

 

 相変わらずクリュプトンに乗ったままで目立つフィラソピラの懸念にB・ビィが胸を張って答えた。

 

「そこは、相棒を知り尽くしたオイラがアドバイスをしておいたから平気だぜ」

「ほう、どの様なアドバイスをしたんだい?……あと、彼の事で少し色々聞かせてくれ、好きな料理とか」

「お?おう……まあ、アドバイスは簡単だぜ。“普段どおり”ってな。うちの団員と接する感じでいいのさ」

「……それって大丈夫なの?」

 

 入団して日が浅いルナールだが、普段の団長の言動を思い出しむしろ不安になった。だがB・ビィは、心配する素振りはない。

 

「どうせ緊張して畏まったって、相棒は面倒な事になるだけさ。なら何時もどおりのノリでやった方がやりやすいってもんさ」

「そんなもんかしらねぇ……」

「それに、相手がハーヴィンってなら……たぶん大丈夫だろうな」

「ハーヴィンならって……」

「んぁ?アレじゃあねぇ~のかぁ~?」

 

 ハレゼナが閘門へ来るための橋を渡ってくる一人のハーヴィンを指差した。私服ではないが、かと言って重装備でもない、この空の街中では珍しくも無い軽装の騎士が現れる。

 

「ああ、間違いないシャルロッテ団長だ……」

「わ、わ……ほ、本物のシャルロッテ団長ですッ」

 

 リュミエール組み二人が間違いないと頷く。一方シャルロッテは、待ち合わせ相手の男を捜してキョロキョロと辺りを見渡しながらトコトコ歩いていた。

 

「あーやばい、アレは相棒の琴線触れるわ、色々ストライクだわ」

 

 愛らしさ100%の姿を目にしてB・ビィは、何かを覚った。

 

「アレッテホントウニ(*´・ω・`)ダンチョウサン?」

「その通りだ。ハーヴィン種特有の体格でありながらも、並々ならぬ鍛錬を行い我らがリュミエール聖騎士団の団長と成った彼女こそが」

「あ、迷子と間違われて声かけられたにゃ」

「……彼女こそが」

「オ前ラノ団長、子供扱イサレテメッチャ怒ッテルゾ」

「……」

「コーデリアちゃん、辞めないで!?そこで言葉を詰まらせちゃだめです!」

「おや、団長が気がついたよ?」

 

 プリプリしてるシャルロッテに気がついた彼は、急いで駆け寄り何か適当にその場を誤魔化したようだった。だがいっそうシャルロッテの機嫌が悪くなったようにも見える。

 

「――――?」

「ユグドラシルに、大丈夫かって心配されてるぞ相棒……」

「何言ッタンダカ」

「B・ビィのアドバイス通り、”いつも通り”だったんだろう。主殿は基本適当だからな」

「おっと、どうやら移動するようだよ?」

 

 プリプリするシャルロッテをなだめながら、団長が移動を開始する。

 

「よし、確かにシャルロッテ団長である事は、この目で確認できた。一度散ろう、各自それとなく彼を監視しておくように」

「もうコーデリアが団長でいいんじゃねーのかな」

「ふふ、この団は彼が団長でなくてはダメさ」

「んは、じゃ、じゃなきゃ……んふふっ、私の様なヤツも仲間になれなかったからね、あはっ!」

「それもそうだな、よっしゃそれじゃあ別々にこうど、ごぉっ!?」

「トカゲェ~?お前は、ボクと一緒だよぉ~」

「お、おう……う、うで緩め、ゆるめ……」

 

 と、賑やかに彼らは解散した。それにまるで気がつかないジミー団長(仮名)とシャルロッテ騎士団長のダブル団長であった。

 

 ■

 

 四 やあ、ボクはジミー、ハハッ!

 

 ■

 

「うぅ~迷子扱いなんて……屈辱でありますぅ」

「まま、しかたないっすよ。一応善意ですよ、相手も」

「それは、勿論承知でありますが……と言うか、ジミー殿!娘とは、なんでありますか!そっちの方が酷いであります!」

「第一印象で決めてました……」

「なお酷いっ!?」

 

 迷子の迷子の、リュミエール聖騎士団現団長シャルロッテ・フェニヤ(24歳児)を保護した俺だが、誤解解こうとした時、「あ、すみません俺のツレなんです」「……娘さんですか?」「あ、はい」と勝手にシャルロッテさんを娘にしてしまった。

 

「そもそも種族が違うではありませんか……」

 

 その所為でシャルロッテさんを憤慨させてしまった。けど、ごめんなさいプリプリして怒ってるのが、その、可愛い。言わないけど。あと種族については、気付いてたんじゃないかなぁ、そうでなくても……相手の人「お若いのに……」とか妙に同情を含んだ視線をしてたけど、あれ若い義父と養子と思われてないか。

 

「すみませんって」

「まったく……」

 

 後、誠に遺憾ながら偽名がジミーになってしまった。反対意見が俺しかおらず、謎のジミー推し勢力によって、暫し俺の名はジミーです。

 ダメかなあ……偽名で“グラン”ってかっこいいと思うのに。

 

「ふふん、しかし自分の考えたアウギュステ観光ルートを堪能すれば、そのような認識は、一変するでありますよ」

「自信満々っすね」

「勿論であります。今日含め6日間でじっくり巡るルートで自分が考えた完璧な大人な観光ルートであります」

 

 あー”大人な”、とか言っちゃうんだ……。と言うか、俺年齢的に未成年なのだが。まあいいけど。

 

「これでジミー殿もアウギュステ知り尽くしの満足コースであります!」

「ほう」

 

 大人かどうかは別として、それはジッとしてられないな。ワクワクが押し寄せてくるぜ。

 

「まずは、ミザレア観光であります。一日じっくりとミザレアを見て回りましょう。ジミー殿は、そもそも水上都市が珍しいのではないのですか?」

「確かにそうですね。でかい湖すら驚くのに、海とくればもうね。しかもその上に都市建てるってんだから、昔の人は大したもんですよ」

 

 建物を縫うように巡らされた水路。そこには、廻船の船や観光用の小舟が行き来している。ザンクティンゼルでは勿論、他の島でもそうそう見れない水の島特有の光景だ。

 

「そうでありますな。自分も最初に来た時は、驚いたものです」

「何時頃来たんです?」

「まだ見習い時代に、任務の一環だったはずです。自分は生まれが一年通して雪に埋もれ囲まれた島でしたので、驚きも一入でありました」

「俺もっすよ。なんせド田舎でしたからねえ。と言うか、俺雪って言うのも見たことないなあ」

「そう面白い物でもありませんが、観た事が無い方にすれば珍しいのでありますなあ」

 

 しかし、ジータもこの島に来てはしゃいだんだろうなあ。その時の事を聞いてみたいもんだ。

 

「船を利用した店も多くあります。一定の場所で商うも良し、要望があればそのまま船で移動も出来るので、都市の特徴をよく活用した商売が確立してるであります。アウギュステの特徴の一つでありますな」

 

 通路に寄せられた船には、主に日用雑貨が積まれている。食料品も加工品や調理済みの物ではない、殆どが素材をそのまま売っている。観光客よりここの住民向けの商売のようだ。

 

「時間はありますゆえ、一つじっくりと街を見て回りましょう。入り組む水路に沿って進むのもまた面白いであります」

「確かに」

 

 ここは、ブラブラのんびりするか。B・ビィに言われてしまったが、気負いすぎると空回りしかねない。女性と二人っきりのデートみたいだと思って緊張してしまったが、幸いシャルロッテさんを目の前にして、逆に何故か緊張しなくなったからな。何故かは……まあ、考えないでおこう。決して保護者気分になったとかではないはずだ。そう信じたい、互いの名誉のために。

 

 ■

 

 五 増える騒動の種

 

 ■

 

「まいどおおきにー!またきてやー!」

 

 商品を手渡して快活な声を上げる一人のエルーン。アウギュステの名所”願いの橋”の傍で店を出すカルテイラの声。人通り多く賑わうその場所に彼女は、一時店を構えていた。

 団長達星晶戦隊(以下略)一行と別れてから直ぐに宣言通り商売を開始。既に目標とする売り上げに向かいガンガンと売上を伸ばしていっている。主にアウギュステでとれた貝類の貝殻やサンゴなどを使用したアクセサリーやお守りを商品にしている。色とりどりのアクセサリーを売りに売りまくっている。

 アウギュステでの商売は、初めてではない。こなれた様子で店を切り盛りするカルテイラの頭には、商売仲間でありライバルでもあるシェロカルテの事が浮かんでいた。少し前にアウギュステの幾つかあるビーチの中でも、特にリゾート地として知られるであるベネーラビーチに新しいよろず屋の店舗を建てたと言っていたのだ。

 新店舗開店を祝うのと同時に自分も負けてられないと俄然商売への熱意が燃えた。シェロカルテと違いカルテイラは、一定の場所に店を持たないがそれゆえの強みを持つ。自分は、自分の商売でシェロカルテをアッと言わせようと奮闘していた。

 

「カルテイラ、儲かってるなあ」

「お?おっちゃん、待っとったわ」

 

 大きな荷物を抱えたドラフの男がカルテイラの店を訪ねて来た。荷物の中身は、全てアウギュステで作られたアクセサリー、即ちカルテイラの商品であった。

 

「持ってきたぜ、希望通りの奴だ」

「おおきに!」

 

 貝にサンゴ、ヒトデなどの物が入っている。カルテイラは、それを物色するが、その最中一つのアクセサリーを手に取って動きが止まる。

 

「おっちゃん、コレはアカンわ、角が欠けとる。あ、あとコレもや」

「ありゃ?運んでる時ぶつかったか?すまん、後で別の持ってくるわ」

「ん~……珍しいなあ、アウギュステで採れたのなら、かなり丈夫やから、そうは欠けへんのに」

「ああ、たぶん前に採れたの使ったな。覚えてるだろ?帝国が悪さして海が汚れてた時」

「あー、あれなぁ」

 

 男の言う事にカルテイラは、覚えがあった。彼女だけではない、アウギュステに住む者は、誰もが覚えている。

 数か月前に、帝国がアウギュステを自らの支配下に置こうと活動した事があり、その際に島の海を汚した事件があった。更に星晶獣リヴァイアサンを暴走させたが、あの【ジータと愉快な仲間たち団】のジータが物理的に解決させて、事件は終息した。それでも事件の影響は、後々まで残った。

 海が汚された影響を受けた貝やサンゴは、脆くなっていたのだ。アクセサリーやお守りにするには、強度が足りなかった。それだけでなく、海産物全体が打撃を受けていた。徐々にその影響も落ち着きを取り戻しているが、全くなくなったわけでは無い。

 

「ほんっま帝国は、碌な事せーへんなあ……」

「ああそうそう、その帝国だけどな、なーんかまたアウギュステに来てるらしいぜ」

「またかいな……」

 

 男の言葉を聞いてカルテイラは、酷くげんなりした。それ程までに帝国の悪名は、高いと言える。

 

「具体的に何してるのかってのは知らねえけど、十数人の帝国兵が来ては帰ってを繰り返してるとか……俺ぁどうも嫌な予感がするよ」

「うちもや……態々商売し始めた時にこんでもええのに、んもー」

「全くだな。まあ、また物騒な事が起きる前に島離れた方が良いかもしれねえな。ちょっと考えときな」

「教えてくれてどーも。取り合えず入荷分は、売り切ってから考えるわ」

「はは、相変わらず商魂逞しいな、じゃあな」

「ん、ほなさいならー」

 

 去って行く男へヒラヒラと手を振って軽く挨拶をするカルテイラだが、内心は帝国の暗躍に関しての不安があった。

 

(帝国、か……団長達がいるうちに、話しとった方がええかもしれへんな)

 

 それは、呑気にバカンスで来ている少年への警告もあるが、それ以上にもし何かがあった時彼等なら割と問題なく解決してしまいそうな気がしたからだ。

 

(休み潰すようで気が引けるわぁ……)

 

 カルテイラの中では、もう少年達は休日満喫中である。帝国の事を話す事は、その休日を場合によっては失くしてしまう事になる。だからこそ後ろめたさもありつつ、話さぬわけにもいかないと思った。

 だが彼女は知らない、この時少年は、あのリュミエール聖騎士団の現団長にアウギュステ観光案内をさせながら気の休まらぬ休暇を過ごしつつ、更に彼女も彼も知らぬ帝国以上の騒動の種がアウギュステに近づいている事を。

 

「どこまで行っても苦労人、か」

 

 せめて彼の借金が増えない事ぐらいは、願ってあげようとカルテイラは空を仰ぎつつ思った。

 

 

 ―――星晶戦隊(以下略)、ギュステバカンス二日目。【ジータと愉快な仲間たち団】アウギュステ到着まで、あと三日。

 

 




多分アウギュステ&シャルロッテ篇は、長くなる。閘門の存在については、ここだけの設定で、アウギュステにあるかは不明です。その他、シャルロッテ関係の設定も原作と違う点が出てくると思いますが、なるべく違和感なく進めていきたいです。

追記12/5
団長の容姿ですが、別にグランではないです。グランと言う名前が、あの空の世界で普通(太郎的な)の名前と聞いたために出しました。本人は、かっこいいと思ってますが、別にそんな事ないです。。

ひよこ班がカワイイです。是非うちの団長に「強さの秘訣」を聞いて「星晶獣(マグナ)6体と同時に戦っても、その日ちゃんと飯食える余裕が出るまで体鍛えて、B・ビィ(マチョビィ)とジ・オーダー・グランデを連戦できるようになる」とか死んだ目で言われてドン引きするひよこ班を書きたい。強さとは……。

そして、最近カイラナの水着が、背中全部見えててかなり色っぽい事に気がついた。

はよ、【OH MYリュミエ~ル】篇書きたい。

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