俺は、スーパーザンクティンゼル人だぜ?   作:Par

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言うまでも無いですが、ギャグなので通常本編でこんなプレイは出来ないです。勿論マグナ達がこんな性格なわけないです。


光と闇が合わさり

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 一 旅立ちへの予感と必要性

 

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 ひょんな事で完成した家の拡張。居住性が抜群なのは言うまでもない。一本の大樹から変形したのにもかかわらず、扉もついてて部屋も区切られ、間取りもバッチリでいつの間にかリヴァイアサンと協力して水道までひかれていた。なにこれステキ。見た目は巨大な大樹なので村人達も騒然とした。星晶獣が我が家に現れた時より驚いている事は、この際無視しよう。

 元の住まいを飲み込むように生まれたユグドラシルハウス。木漏れ日に誘われ小型の大人しい動物と魔物まで我が家の庭に休みに来る。丈夫な枝には、何時の間にかハンモックまであり一番いい場所をティアマトが占領している。案の定このハンモックもティアマトがまた黙って購入したものだ。ふざけろ。

 大した名所も無いこの村で、大樹の家など中々に刺激的だったのか村人も来るわ来るわ、家はキャンプ場じゃねーぞと言いたくなるような事態にもなった。ああ大丈夫、ユグドラシル、怒ってないから。そんな不安そうな顔しなくていい。君は何も悪くない、いい子いい子。

 そんなもんで、村の子供もしょっちゅうこのハウスに来るのである。そしてその子供達とユグドラシルとコロッサスが遊んでいる。木を操り生み出したブランコではしゃぐ子供。コロッサスをアスレチックにして遊ぶ小僧たち。人間と星晶獣、垣根無く触れ合う素晴らしい光景だ。

 なお、ティアマトは子供の相手を嫌ったが、子供の一人が最近弛み出した腹を指摘、更に「デブマトのねーちゃん」と呼ばれた結果怒りの鬼ごっこが開始。だが大樹を縦横無尽に駆け回る子供に遊ばれていた。子供とは言えザンクティンゼル人を舐めてはいけない。リヴァイアサンも特に興味無さそうだったが、キラキラ光る子供の純粋な視線に根負けして自身の生け簀の水流を操作して流れるプールにしてかまっていた。あれで面倒見がいいので同じ(笑)でも、ティアマトよりはマシかもしれない。

 これだけだと実に穏やか(?)で平和(?)な光景だが、俺は大きな問題を抱えていた。そうだ、金がねえ。金が無いのだ。

 ひどいものだ。この一月と数週間を思い起こした時最初に思う事がこんな事とは、あまりにひどい。何時から俺は、金の亡者になったのか。しかしユグドラシルのおかげで我が家のキャパシティー問題は解決したが、根本解決には至っていないのだから仕方ない。

 ティアマトの浪費と増える居候達の生活費。どう考えても俺一人で賄えない。それを原因の一つであるばあさんに相談したが、「そうだねぇ、そうだねぇ」と怪しく笑う。意味を含んだ笑いだったがその意味は、俺には読み取れなかった。

 こうなると俺は、いよいよ最後の手段を取る必要がある。あまり乗り気ではなかったが、たとえ呑気な片田舎でも金はいるのだ。この世界、この空で金を稼ぐ手っ取り早い方法が、かなり大きな賭けでもあるが一つある。

 後々、思えばこの手段を考えた事こそがあのばあさんの狙いだったのだが、この時の俺は、それを微塵も考えていなかった。

 

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 二 出たぞ、第三巨女

 

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 5度目の威圧感を感じた時。俺は既にあきらめの境地であった。ただし、今回は少し出現場所がずれた。今までは、例の祠を中心に碧空の門付近であったが今回は、碧空の廻廊。場所の特徴としては、今までの碧空の門のように数少ない外界へと通じる場所の一つ。そこら辺からプレッシャーを感じて仕方ない。

 

「お次は何だ?」

 

 カッコつけたはいいが、正直辞めたい。

 

「光ノ気配ガアル。持ッテ行クナラ闇属性武器ニシロ」

〈たぶんあいつだからな、我の時みたいにビショップで行け〉

 

 なんだこの協力的星晶獣(笑)コンビ。一緒に来て手伝うとか言わないあたりは相変わらずであるがまあいいだろう、慣れたよあはは。

 しかしふと思う。俺はティアマトに始まり今の所ユグドラシルと戦ったが、その戦闘の余波は凄まじいものだった。今まで何にも思わなかったがいつこのザンクティンゼルが吹き飛んでもおかしくなかった。ねーねーなんでこの島無事なん?

 

 〈我等とてこの島が無くなると困る。戦う時は、可能な限り星晶の力で自身の戦いの場を展開しているからこの村等には、被害は無いはずだ〉

 

 リヴァイアサンが疑問に答えた。こいつの水召喚とかも似た物だろう。そらこいつらぐらい(一応)高等な星晶獣となれば、優位な地理を生み出したり召喚できても不思議ではない。

 さて、現実逃避もほどほどに俺はビショップ装備に着替え覚悟を決め死地へと赴きだす。

 

「などと思ったか馬鹿野郎!!」

 

 煙幕だけではティアマトに無力化される事を知り、煙幕をぶちまけた後に今度はあらかじめ用意した脱出用地下通路へと潜り込み逃走を図る。な、なんて天才的発想。奴らの目を盗み作り上げたこの地下通路をネズミの様に逃げる俺を捕えられると思うなよ。

 

「――――♪」

「Oh……」

 

 楽しそうな笑顔のユグドラシルが目の前に現れた。はっはーん、土の星晶獣がいる以上この方法まるで無駄でしたね?うん、あとこれ別に鬼ごっこでもかくれんぼでも無くてね、俺が逃げたいだけであって遊んでるわけじゃなくて。

 

「無駄口叩いてないで行きな」

 

 地表から突きこまれたばあさんの手刀が地下の俺の身体を正確につかみ取りそのまま芋でも引き抜くように俺を引っこ抜いた。同時にその衝撃で俺の意識がとぶ。

 そして次に意識が回復した時。

 

「Wooooooooooouuumuu!!」

「目がいてえ」

 

 やたら光り輝く巨大な女がそこにいた。

 

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 三 くっ殺せ!

 

 ■

 

 女騎士と言うものに勝ったら妙な高揚感と満足感を得られると聞いた事があるが、そんなものはまるで無く俺の身にあるのは、疲労感のみであった。

 巨大な4腕の女騎士、光の星晶獣シュヴァリエ。彼女は、その四つの腕に剣、斧、槍、レイピアを握り殺意が高い。彼女との闘いに関して言うなら、もうただ只管めんどくさかった。何がって固い固い。その上羽虫みたいに飛び回るビットがうっとおしい。逐一攻撃の殆ど、全属性をカットしてくるバリアみたいなのを展開するのでディスペルをかけては殴りを繰り返し、ついでにビットを叩き堕とす事を繰り返す。何度バリア張ってもディスペられるので痺れを切らしたのかシュヴァリエ怒りの天からいっぱい光の剣攻撃を食らった時は、結構ヤバかったが俺もいい加減疲れていたので振ってきた剣の何本かを闇属性の杖で叩き返してやった。むこうも意外だったらしく叩き返した四つの光の剣が彼女の得物をはじき落とした。それに焦りを見せたのでもう後は、ボコボコにするだけである。なめんな。

 例によってちょい暴走気味なシュヴァリエであったが、負けてしまえば冷静になったのかその場でへたり込む。後ろでなんかくっついてた城の残骸も消えてやっと視界にやさしい。

 すると自身の眼下にいる俺に気が付き彼女が発した最初の言葉。

 

「くっ殺せ!!」

 

 なんなんこれ?

 結局殺すも何も俺の要望としては、祠に大人しく帰って欲しいので「いいから帰れ」と言ったのだが「アルビオンでは強すぎる力を抑えるために分けたアストラル体とは言え、マグナ形態で負けては、私に何が出来ようか……くっ殺せっ!!」「おのれ、ゲスな視線を向けるとは……くっ殺せっ!!」とばかり。始めてまともに言葉を話す星晶獣と出会いましたが話す内容は、わけがわからずこれは(笑)の気配が濃厚になってきて俺は、早々に絶望し始めた。

 

「殺さねーから帰れよもう!」

「そう言って、あれだ……私が油断した隙に好きにするんだろう!!」

「しねーよサイズ差考えろ!!」

「じゃあこれでどうだっ!?」

 

 そう言うとシュヴァリエは、一気にサイズダウンし俺より少し背が高い程度の大きさになった。

 

「これでどうだ、じゃねーよ!?なんでお前から縮んでんだよ阿保かっ!?」

「はっ!?おのれ、私とした事が、ゲスの話術に騙されこの様な失態を……っ!!」

 

 確かに失態だわ、大失態だ。これ以上ない自滅だが。

 

「負けた上にこの様な姿にされ……おのれ、もう既に私に抵抗の手段は無い、くっ!殺せっ!!」

 

 帰れっ!!

 

 ■

 

 四 星晶騎士シュヴァリエ あなたって本当に最低のオリ主だわっ

 

 ■

 

 帰れと言っても帰らないシュヴァリエは、俺が家に帰るまでずっと「くっころ!くっころ!」と鳴き声みたいに騒いでいた。

 光を司り騎士の心を体現した星晶獣シュヴァリエは、城砦都市アルビオンの領主を主としてその主に仕える星晶獣。だが近年不穏な動きを見せる帝国。士官学校として有名なアルビオンからは、多くも帝国へ兵を輩出している故に現在微妙な関係であったが、案の定帝国のあんぽんたんがやらかしてしまい、アルビオンのシュヴァリエが激おこになり、そして利用された。これまた案の定アルビオンピンチな時に現れたのは、最近話題のいかした奴ら、ジータとゆかいな仲間たち団である。

 帝国の兵器アドウェルサを動かすために利用されたシュヴァリエを物理で解決。活躍を聞くにジータは相変わらず元気そうだった。

 

「必要な事は話したはずだ。早く私を解放しろっ!!」

 

 これなんなん?

 どうせまたジータ関連と思い話を聞こうとしたら「私は何も吐かんぞ!」「た、たとえ体を弄ばれようと……っ!」と訳が分からない。そういいながら自分からペラペラしゃべるから尚更訳が分からない。別に拘束もしてないのに開放も何もあるか、帰れよはやく。こいつ何時もこんななの?

 

 〈知らん、我らは常に互いを認識はしているが、基本不干渉だ。そもそもこんなに話をしたりなど本来星晶獣はせん〉

「今コノ環境ガ異常ナノダ」

「(-ω-。)ヨクシラナイ」

「―――?」

 

 リヴァティア(笑)コンビがそういうが、その異常環境を作り上げた原因の筆頭達が言ってもなあ。あと(笑)コンビが(笑)トリオになりそうであるが。コロユグ癒し組の反応も似たようなものだ。

 

「おのれ、情報だけでは飽き足らず私の体が目当てだと言うのか……」

「ねえ、なんで君鎧がだんだん剥げてんの?」

 

 さっきから気になったのだがシュヴァリエの鎧がだんだん剝がれている。確かに戦いのせいで鎧にヒビは入っていたが、ここまで簡単に剥がれる程酷い損傷じゃなかったはずだ。

 

「く……っ!やはり私の体が目当てなのか。ああ、やめろ!鎧を脱がすのをやめろっ!」

「待って待って、あんたさっきから自分で鎧剥がしてない?ねえ、いままた自分で剥がし……おい、おい!やめろぉ!!」

 

 わかった。なんとなく予想してたけどやっぱりこいつ変態だ。(笑)どころじゃない、星晶獣(変態)だ。

 良かったな(笑)コンビ、仲間は増えないようだぞ。残念だったな俺、自体はより深刻だぞ。

 

「すでにオークを数十体も用意して準備万端なんだろう、この屑めっ!!」

 

 なんでオーク?いねーよ、こんな片田舎の島に。

 

「ふんっ!さあ、好きにするがいい!だが勘違いするな、例えどれ程の責め苦を受けようとわが心は、私だけのもの。貴様になど屈する事はありえん!!」

 

 ところで俺は、こいつと激戦を繰り広げいい加減休みたいのだ。それなのにこんな疲れる話題と会話を続けられて俺も我慢の限界である。キレちまったよ、もう日常的で久々ではないが。

 

「おめーいい加減大人しくしろや。今すぐ祠に帰るか、ここにいるつもりなら即口を閉じて豚みてーに鼻で必要最低限の呼吸だけでして黙ってな」

「……ぶ、た?」

 

 ピタリと、シュヴァリエの動きが止まりとたんに息が荒くなった。

 

「この私に、栄光の騎士とまで言われた星晶獣である私に対して、雌豚などと……」

「雌とは言っとらん」

「……良い」

 

 あ、凄まじく嫌な予感しかない。

 

「本来アルビオン領主しか主と認めぬが……だが今この私は、アルビオンより離れたマグナの力を宿しアストラル体。別に、ちょっと、性癖に正直になっても……」

「おい、やめろ、何考えてるか知らんがやめろ」

「な、なあ……ちょっともう一回、私の事雌豚って呼んでみないか」

「だから言ってねえ!!」

 

 ちょっと誰か、この際ティアマトでもいいから助けて、誰かあっ!!

 

「無理ダ」

「(;ω;`)ゴメンネ」

〈諦めろ〉

「――――……」

 

 ちくしょう!!

 

「一回、もう一回だけでいいから!!頼む主様!!雌豚と呼んでくれ!!」

「悪化してるじゃねーか!」

 

 誰か男の人呼んでぇーーっ!!

 

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 五 星晶獣と

 

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 イジメなどと言う言葉も生ぬるい修行の末、最早人の身でありながらジータに追いつかんばかりの強靭になった身体。ナチュラルにジータを人間として扱わないのは仕様だ。あれを純粋な人の強さとは認めん。ばあさん、あんたもだ。

 ティアマトのトルネードディザスター、コロッサスのイグニスリリース、リヴァイアサンのグランドフォール、ユグドラシルのアクシス・ムンディ。そしてシュヴァリエの光の剣。シュヴァリエだけマグナ形態なのが非常に文句があるのだが、見た目はそのままに省エネモードなので文句言うなとの事。そしてシュヴァリエは、修行終わる度に「くっ殺せ!」を言うのをそろそろやめるべき。

 とにかくこの星晶連合に俺単体で挑み勝ち越してるのである。そろそろ星晶獣キラーを名乗っても良いのではなかろうか。

 だが一つ、非常に気になる事がある。

 ばあさんが修行をティアマト達に任せ居なくなる事が増えた。何をしているのかは、ティアマト達には話したらしいが俺には秘密のまま。のけものは酷いと思います。

 ともかくばあさん一人が動いている事態が非常に気になる上に不安だ。何しているかわかったもんじゃない。以前ならこの隙に逃げだしたものの、今ではシュヴァリエ加え星晶獣が5体。逃げ切れるわけがない。結局俺は、大きな動きがあるまで日々ティアマト達のイジメを受けるのだ。助けて。

 マイホーム改めユグユグハウス。大樹の我が家でも俺の戦いは続く。相変わらずだらけるティアマトのケツを蹴り上げ彼女に割り振られた家事当番をさせる。食うだけ食って寝る生活なんてお母さん許しませんよ。

 リヴァイアサンは、別に完全水棲じゃないが見た目蛇なので洗濯以外では、特にやる事が無いのだが、それでも十分役にたつ。ユグユグハウスは、リヴァイアサンの生け簀と一部連結したので、やつも室内に入る事が出来るので室内での水を使う掃除もある程度出来る。

 だがティアマトが勝手に買った女物の衣装が多量に溜まりだしたのでそれの洗濯をさせた時、一度水流の加減を間違えたため服の幾つかが破れティアマトが怒り狂った時があった。その後は、一応は謝罪したリヴァイアサンに対し怒り続けるティアマト、それにキレたリヴァイアサン。どっちが悪いだの子供の喧嘩の様相を呈してきてついには、風と水の星晶獣が一着の衣類を原因によりによってマグナ形態でガチ喧嘩し始めた。たぶんかつてあったと言う覇空戦争含め類を見ない最低な理由の星晶獣同士の戦いでは無いだろうか。

 コロッサスとユグドラシルは、大変すばらしい花丸優等生。ユグドラシルの手で我が家は、コロッサスすら入れる星晶獣バリアフリーハウスだ。住む以上自分にできる事はするとコロッサスは進んで掃除洗濯家事手伝いを全てこなす。これ本当にドラフの怨念と共に作り上げられたの?ユグドラシルが外で箒を掃いてる姿は、もうご近所ではおなじみだ。嫁に欲しい。

 シュヴァリエは、現在教育中である。だが戦闘時とくっ殺状態以外では、案外常識人だったので幸いにもそう手間はかからなかった。それでも腕が四つあるクセに不器用すぎて今のままでは使えん。「だって、剣や槍以外持った事ないもの」じゃない。今てめーが手に持つべきなのは、箒と塵取りと雑巾にバケツなんだよ。掃除しろおら。

 

「私のケツは蹴らないのかっ!?」

 

 やだよお前何時も鎧じゃん、痛いもん。これは、ティアマト用の蹴りです。ティアマト、煩い。

 

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 六 ゴシック巨女

 

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 まただよ。

 はいはい、星晶獣星晶獣。相変わらず修行中に急に来るんだね。出現場所は、シュヴァリエとほぼ同じとみた。今の俺は、島一つぐらいの範囲なら星晶獣の気配でその位置を誤差5~10mで当てられる自信がある。すごいだろ、別に要らなかったよ、こんな能力。

 

「と言う事は、アイツか……主様、私の力を使うとよい」

 

 シュヴァリエは、くっ殺ばかり言うくせにもう俺を主認定である。言葉にはまるで敬意は無いが、なんだこの妙なポジションは。それはともかく、シュヴァリエが一振りの剣を俺に渡す。

 

「私のコアの欠片を埋め込んだものだ。光の属性が付与されたのと私の力の一部が使えるから役に立つだろう」

 

 確かにこのシュバリエ剣(仮)からは、非常に聖なる力を感じる。感じるがこのパターンは、非常に嫌なパターンなのを俺は知っている。おう、金はどうした?いくら使った。

 

「……?なぜ金が必要なのだ?既にそれなりの武器がそろっていただろう。その内の一振りにコアを埋め込んだだけだから金など使ってないぞ」

 

 今明かされる衝撃の真実ゥ。

 おうおう、ティアマトこっち向けや。おら、逃げんなコラ!おいコラまていっ!!

 

「ダッテ、私好ミノ武器ガ無カッタンダッ!」

「だったらてめー自分で金稼いで依頼しろや、おらぁ!!」

 

 そんな理由で俺の12万ルピが溶けたのか。あんまりすぎる。

 こんな気持ちじゃ俺、……星晶獣と戦いたくなくなっちまうよ……。いや、前からそうだわ。なんで俺使命にかられだしたの?別に俺に星晶獣と戦いさらには、面倒を見るような使命も義務も無かったわ。

 そして考えてみると今ここには、あのばあさんが居ない。確かに少し前まで星晶獣達に囲まれていたせいで脱出も絶望的であったが、今までの例を考えると俺への止めはいつもばあさんだった。いけるかもしれない。いや、いける。

 やれるやれる、頑張れ俺。

 

「うおおぉぉーーー!!くらえ、無駄に鍛えられた結果身に着けた逃走用スキルコンボをぉーーーっ!!」

 

 全員にソウルピルファー、ディレイ、グラビティ、クイックダウン、ブラインドを瞬時にぶち込んでその上煙幕を放ち閃光玉も破裂させ俺は逃げた。デバフ効果の手応えはあったのでもしかしたら今日は、いけるかもしれない。

 

「私が居なければ、逃げれるなんて……それは、甘いよねぇ」

「なん……だと……」

 

 いつの間にか、俺の目の前にはばあさんがいた。いつ帰ってきたのか。いつ近づいたのか。そんな事を思った瞬間に俺の意識は刈り取られた。

 

「FoooooUumu……」

「でか……え、デカァッ!?」

 

 目を覚ますと、そこには無数の船の残骸に結ばれるようにしてそびえる今までのマグナ達以上に物理的威圧感が凄まじい女がいた。

 

 ■

 

 七 日光嫌いセレストさん

 

 ■

 

 マジふざけんなよ、この野郎。

 船の墓場に立つ巨大な闇の星晶獣セレスト。こいつ通常の攻撃はともかく、やる事がえげつない。なんか戦ってたらいきなり俺に再生効果を付与してきて困惑したら、直後俺をアンデッドにしやがった。いわゆるアンデッド状態と呼ばれるのだが名の通り死を奪われた状態、そのせいか原理は知らんが『回復すればするほど死ぬ』と言う訳が分からない状態になった。言葉が矛盾していて無茶苦茶だが、そうなので仕方ない。そのうえ俺を腐らせやがった。シャレや冗談じゃなくマジで〔腐敗〕させてきた。どう足掻いてもダメージを食らい死ぬに死ねない状態なのに弱ると言うどうしようもない状態が続くため下手すると詰んだ状態になる。

 だがセレスト、相手が悪かったな。

 日々星晶獣とばあさん達の相手をしていた俺が、そんなねちっこい手段でやられると思うなよ。別にディスペってもいいが、俺が死すら超えた死に行きつき貴様に食われる前にボコボコにすればなんの問題も無いのだ。物理万歳。体格差?殴れるならそんなものは意味をなさん。

 船の残骸も奥義で粉砕しセレスト本体をボコボコにしたらセレストの生み出したらしい辛気臭いフィールドが消え、そこには縮んだゴスロリ女がタンコブつけてぶっ倒れていた。もう慣れましたよ、このパターン。後どんだけつづくん?

 どうせ放っておいてもばあさん辺りが回収していつの間にか家にいるのは、火を見るよりも明らか。仕方ないので肩に背負って連れて行く。

 家に行くまでに気が付いたのかうめき声がやたら聞こえてきて、ああ喋れる系星晶獣かと思ったが「熱い……日差し、きつい」とか「つらい、死ぬ……死なないけど」とか聞こえてくる。なんか残念そうな気配がする。

 家ついてまず床にジュースを零しニル達の仕業にさせようとした上に、証拠を隠滅しようとしているティアマトのケツを蹴りあげ掃除させた後は、お待ちかねてもない質問タイム。ねーねー教えてセレストさん。あんたは、どういう状況でジータに殴られたん?

 

「彼女が関わってるのは……わかってる、のか……」

 

 そらもうね、確認取るまでも無いもん。絶対ジータなんかしたよ。

 

 セレストは、移動する星晶獣。どこかの島に居続けるわけでなくただ只管空を移動する。その先で出会う、相手からすれば〔出遭って〕しまっただが……とにかくセレストは、出会う者達の〔死〕を奪う。それが何故かと言われてもそれはそう言うものなのだろう。彼女は闇の星晶獣、闇と死を司る。そう言う星晶獣なのだ。そしてここ百年ちょいある島にひっついて島全域の住民をまとめてアンデッドや幽霊にしてしまったようだ。理由は「なんか、呼ばれたし……」との事。結果万年霧に包まれたその島は、より濃く暗い瘴気に包まれた。それにどうやらジータが巻き込まれたらしい。

 始めは迷い込んだ迷子の騎空団程度の認識で、そんなものは今までもいたのでまた死を奪い食うか眷属にでもしようか考えていたらまさかの反撃にあい倒されたらしい。何度か自身の死まで奪い復活したが、結局敵わず復活しても倒されるだけなので逃げたとの事。

 

「あの島は、霧が濃くて良かった……薄暗い場所が良い……」

 

 真っ黒のゴスロリ衣装に身を包むセレスト省エネ。クソ熱そうな恰好のクセに暑いのは苦手。直射日光なんて冗談じゃないとさ。適当にじめっとしてて日の少なそうな島に極力留まりなんなら動きたくないのだが、星晶獣としての本能がそれを許さず、偶然とは言え呼ばれてそれを利用して島にいる事が出来たのに追い出されたと不服そうだ。

 ただ島にいた方のセレストと、この元マグナのセレスト省エネは、同一でありかつ別個体なのであくまで意識を共有した上での意見である。

 

「ユグドラシル……ここ、地下に部屋作れる?」

「―――」

「じゃあ……お願い、キノコ生えそうな……湿り具合で」

 

 おいおい、まてまて。なに唐突に我が家へ移住する話を家主抜きに進めてるわけ?

 

「……だめですか、そうですか……」

「ウワ、コイツ星晶獣トハ言エ、女ヲ泣カセタゾ」

〈最低だな〉

「はい、黙れ(笑)コンビども」

 

 わかったよ、わかってますよ。どうせ俺が断ってもばあさんがまた勝手に話進めるもんよ。無駄無駄、所詮俺の抵抗など無駄なのだ。

 

「住むのはいいとして、掃除洗濯家事手伝いはやってもらう。それと勝手な買い物をしようものなら、てめーがいかに死を奪えようが、復活するたびボコボコにするからなてめー」

「ひぃ……この人間怖い」

 

 うるせいやい。こちとら死活問題なんだ。祠にぶち込まないだけいいと思え。

 

 ■

 

 八 (笑)と癒し

 

 ■

 

 俺は気が付いた。

 我が家に来る星晶獣達。(笑)と癒し系にかかわらず総じてゆるキャラ化しているが、それにある法則があった。

 初めに俺が戦い家に住み着いた居候星晶獣はティアマト、これは(笑)となった。そしてその次、コロッサス。こちらは、見た目に反して実に優等生で癒し枠だった。そしてその次、リヴァイアサンは、今では生け簀の主となり(笑)だ。その次のユグドラシルは、言うまでもない。シュヴァリエも普段はともかく、くっ殺モードがひど過ぎて(笑)と言うか変態だ。変態で大変だ。

 おわかりいただけただろうか?つまり(笑)と癒し枠が交互に来てるのだ。

 

「お、お茶……淹れたから……」

 

 もうね、ちょっとほんと……このセレスト、やばい。

 

「明日……シュヴァリエと私で交互の光闇属性特訓だから……準備、しとくね」

 

 ハッキリ言って体力が無いセレスト省エネが、甲斐甲斐しく家事をする姿を見た時俺は衝撃を受けた。俺から言ったとは言え、なんか申し訳ない気持ちが溢れてきて、やれる事だけでいいと言ったらなんて言ったと思う?

 

「そ、それでも……住まわせてくれたし、やるから……」

 

 ティアマト、お前はセレストの爪の垢を煎じるどころか直で食わす。

 

「き、汚いよ……」

 

 うんうん、例えだから。先人の言葉の例えだからあんしんして。

 そしてね、また別の日なんだけどもうね、もう見て……うちの癒し達見て。

 

「(*´ω`)クッキーハネ コウヤクノ」

「なるほど……」

「―――♪」

 

 コロッサスとユグドラシルが、セレストにクッキーの焼き方教えてんの。直後ソファーでヘソ出して寝てるティアマト見て直ぐに焼けていくクッキーを見ているセレスト達を見て俺は泣いた。色んな感情が押し寄せた。

 なにが闇と死の星晶獣じゃぁい!!うちの子です、もうセレストも家の子だから!!祠になんか帰すか!!

 

「今日ノ飯ハナンダ?」

 

 おま、お前はほんと……この、この野郎!!

 

「ワアッ!?ナンダ、ウワヤメ、ウワアア~~ッ!!?」

 

 

 ■

 

 九 ----

 

 ■

 

 老婆はある島にいた。

 あの孤立した孤島ザンクティンゼルをどのようにして出たのか、それは老婆だけが知る。

 

「それじゃあ、予定通り納品はこの日で頼むよ」

「はい~了解しました~」

 

 人が多く集まる食堂で、老婆は一人の少女と話をしていた。互いに書類を確認し満足そうにしている。

 

「それで~?例の方は、どのような具合ですか~」

「いい塩梅だよ。流石にジータちゃんと比べるのは気の毒かもだけどね。それでもいつ空に出てもいい。今のあの子なら、古戦場でも相当なものになるよ、ふっふっふ……」

「それはそれは~素晴らしい御弟子さんですね~」

「ただもう二つ、あの子にはやってもらう戦いがある。それが終わればもう準備は終わりさ」

「うふふ~ジータさんのように誠実で頼もしい騎空士さんが増えてくださるなら、私の方も助かるので嬉しい限りですね~」

「あの子が村を出たら、世話してやっておくれ。空の事なんてこれっぽちも知らないんだから」

「勿論ですとも~」

「それじゃあこの事、よろしく頼むよよろず屋さん」

「はい~今後とも、御贔屓に~」

 

 老婆がこの島で交わした話を、勿論彼は知らない。まして、その内容が自分の知らぬ所で進められる自分の人生にかかわる商談である事など本当に知らない。

 幼馴染の死と復活と旅立ち。星晶獣との闘いとそれによる心労。彼の人生とは、常に唐突なのだ。

 

 

 




主人公が名前を呼ばれてないですが、深い意味はないです

追伸
ジータはオリ主の強さ以上です。

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