俺は、スーパーザンクティンゼル人だぜ?   作:Par

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カリオストロとウロボロスに関して、キャラ崩壊と二次創作独自の設定や解釈があるのでご注意ください。


世界一可愛い謎の美少女 後編

 

 ■

 

 一 襲撃! キャラ名と混ざって名前ややこしい錬金術学会

 

 ■

 

 木の陰から姿を見せたのはヒューマンの男。フラスコやらの実験器具がマントに隠れてはいるが、腰にホルスターがあるのが見えた。服装から見てこいつも錬金術師だろう。

 

「突然失礼、貴方達に追いつくので必死でしたので」

「白々しい……あんた錬金術師でしょ、何か用っすかね?」

「おっしゃる通り、自分はヘルメス錬金術学会所属のしがない錬金術師。そして貴方は、あの遺跡調査を任された騎空団の者ですね?」

「だとしたら何ですかね?」

「ああやはり……いやはや、あの調査ギルドにも困ったものだ。あれほどここの調査は我々に任せれば良いと言ったのに、騎空団に依頼を出してまで成果を欲しがるとは」

 

 男はワザとらしく芝居がかった調子で話す。本当に面倒なタイプだな、話が進まないじゃないかこの野郎。

 

「それで何すかね? 要件言って欲しいんですけど」

「あっと失敬。実はあの遺跡で得た成果ですが……どうでしょう、我々に渡して下さいませんか?」

 

 案の定と言うか予想通りと言うのか……ありきたりな台詞言いだしたな。

 

「何で?」

「調査ギルドに報告したところで意味などありません。あそこは所詮歴史調査と骨董品に現を抜かす歴史マニアの集まりです。錬金術のことは我々錬金術師に任せるのが最良とは思いませんか?」

「調査ギルドの事は知らんけど、騎空団として依頼を受けた以上無理な話なんだがね」

「ええ、ええそうでしょう、ごもっともです。若いのに真面目で結構だ。ならどうでしょう、我々の方もただで渡せと言うつもりはありません。依頼料以上の謝礼は用意しています。どうですか?」

 

 どうですか? じゃねえんだよなあ……。金は欲しいがこんな話にのってまで欲しいとは思わん。

 

「そもそもあの遺跡にはなんもありゃしませんでしたよ。交渉したって無駄です、渡すもんが無いんだから」

「いいえ、ありますよ。そこにね」

 

 爬虫類の様にねっとりとした視線を向けながら男はカリオストロを指差した。

 

「なになに? 行き成り来たと思ったら幼女誘拐ですか?」

「やーんっ☆ お兄さんこわいよぉ~」

 

 カリオストロがまた少女ムーブで俺に抱きよって来た。

 

「誤魔化さなくて結構ですよ。その方の正体は既に知っています」

「……だってさ」

「ちっ!」

 

 めっちゃ舌打ちしたね今あんた。

 

「……そっちは初めからこの島に何があるのか知ってたわけね」

「そう言う事です。そして我々としてはその方に自由になられると大変困るのですよ」

「仮に引き渡したらどうなるのさ」

「勿論謝礼を」

「違うっての。引き渡した後、カリオストロをどうするかって話」

「錬金術師ではない貴方には関わりの無い事ですよ」

「誤魔化すんじゃないよ」

「……」

「で、どうなんだ?」

 

 あまり見ていたくない男の目を見ながら回答を待つ。男は目を細め俺とカリオストロを見ていた。

 

「貴方もカリオストロ殿と話をしてわかったかも知れませんが……その方は奔放すぎる。我々錬金術師としては、自由すぎるカリオストロ殿を放っておく事は出来ないのですよ」

「それで俺達に金つかませてまで手に入れたいとはねえ。どうせ口止め料込みなんだろう? 大方自由を奪うかして自分らの都合が良い様にしようってか?」

「まさかそんな……ただ眠っていてもらうだけです」

「ねむるぅ? 封印の間違いじゃねえのかあ?」

 

 不愉快な気持ちを隠さずカリオストロが吐き捨てながら言った。

 

「お前らにとって都合が悪いからと封印される身にもなりやがれ。あん時は“あいつ”の直系子孫まで担ぎ出して来たんで一度は封印されてやったがなあ……だが数百年ぶりに自由になったんだ。また封印されてたまるかよ」

「いいえ捕まってもらいますよ。開祖カリオストロ!」

 

 男が叫ぶと隠れていた男の部下と思われる者達がゾロゾロと数十名現れた。見た所錬金術師ではなく、傭兵かヘルメス錬金術学会所属の戦士かなにかだろう。

 

「ほーう? 数ばかりは揃えたみたいだな」

「万が一貴方が目覚めた事を考えての事です。当然戦力は必要、だが封印が解かれ間も無い今まだ本調子ではないでしょう、大人しくしてもらいますよ!」

「……またこれだよ、薄々面倒な事だろうと思ったけどさあ……ほんっと! めんどくさい案件だなーっ!」

 

 実に腹立たしい、何と言う状況だろうか。不平不満は尽きないが剣を取り構えるとB・ビィ達も戦闘態勢へと入った。

 

「なんだ坊主、お前オレ様につくのか?」

「あんたがマジに開祖カリオストロだとして、どういう人間かしらんが少なくともヘル……なんちゃら錬金術学会には義理も何も無いの!」

「ヘルメス錬金術学会だ。間違いないでいただきたい」

「そりゃ悪うございました」

 

 所属学会を間違えられプライドが傷ついたのか男は少し怒気を含む声を上げた。

 

「貴方達、剣を収めなさい。貴方達に我々と開祖の事は関係ないでしょう。それともこの数に勝てるとでも?」

「そうとも言えんよ、一応騎空団として依頼はきっちり完遂したいんだ」

「やれやれ……物分りの悪い」

「あとな錬金術師さんよ、おたく俺達を知らないで来たの?」

「はい? 何を言ってるのですか?」

 

 俺の言う言葉の意味を男は理解できていない。それはつまり俺達、この騎空団を知らなかったと言う事だろう。

 

「いやもういいっす。その反応でわかったから。さして下調べもせんで来たわけね」

「道理で妙に余裕そうなわけだぜ。相棒は地味だからしゃーねーけど、オイラ達見ても余裕そうだから用心したが憂いだったな」

「地味言うんじゃねいB・ビィ」

「……これって任せていいの? あたし対人戦闘は苦手よ」

「安心しろマリー、我々がついているよ」

「ダイジョウブ(☆・ω・)ノ ボクタチニマカセテ!」

「ど、どんな騎空団に依頼が出たか……調べればよかったのにね……」

 

 慢心ゆえの無用心、楽勝ムードが漂い出した俺達を見て男はこめかみに血管が浮き出していた。

 

「……小僧共が舐めやがってっ! お前達! 最優先は開祖カリオストロ、他の奴等は殺してもかまわん!」

 

 男の号令と共に武装した男達が一斉に俺達へと襲い掛かってきた。

 

「本性現しやがったな、腐れ錬金術師!」

 

 性格が変わり果てた錬金術師。だが相手がいかにも悪党然としてくれるなら此方も戦いやすい。戦いにおいて複雑な事情や状況は一番面倒な事になる。相手が悪党、シンプルなのが一番だ。

 

「どうすんだ坊主? オレ様についたの後悔するか?」

「馬鹿言うんじゃねえやい。それと勘違いすんな、俺はあんたについたんじゃない」

「あん?」

「あんたを護ってやるんだ。成り行きだろうとな」

「……へっ! ガキが生意気言うじゃねえか!」

 

 ガキで結構、これでもまだまだ10代の少年でいたいんだ。

 さて敵の数は木々にまぎれて正確には把握できないが30以上だろうか。まあ多いといえば多い、カリオストロ一人を捕まえるには過剰なんじゃないのかと思うぐらいだ。

 

「だが相手が悪かったな……メドゥ子!」

「何よ?」

「待望の見せ場だぞ」

 

 見せ場、と言われてメドゥ子が迫る男共を見て目を輝かせた。

 

「……つまり、暴れていいわけ?」

「思う存分な。あいつらに偉大なる星晶獣の力って奴を見せ付けてやれ!」

「……っん~しょおぉーーーーがないわねえ!! いいあんた達、しっかりと目に焼き付けなさい! この誇り高き星晶獣メドゥーサ様の大活躍をねっ! メドゥシアナ!」

「ガアアァァァ!!」

 

 メドゥ子がメドゥシアナを呼ぶと雄叫びを上げてメドゥシアナ(省エネ)が瞬く間にメドゥシアナ(通常)へと変身。身の丈数十メートルはあろう魔蛇メドゥシアナが光臨した。

 対して俺達に向かっていた男達は驚き足を止めた。突然現れたその巨大な存在に圧倒されたのだ。

 

「よく聞きなさい愚かな人間達よ! アタシは誇り高き星晶獣メドゥーサ! 何人たりとも石化の魔眼から逃れる事はできないのよ!」

 

 メドゥシアナの頭部から叫び名乗り挙げるメドゥ子。彼女の髪の毛もうねり幾つもの蛇が生まれる。

 

「アタシに刃向った事を後悔するがいいわ!」

 

 別にお前に刃向ったわけでもないんだけどね。

 

 ■

 

 二 カチン、コチン

 

 ■

 

 錬金術師の男は困惑した。目の前で起きた出来事が信じられなかった。

 

「どう見たっ! これがアタシの実力よ!」

「おーすげーすげー。これなら指名手配犯とかの捕獲で役立つな」

 

 学会で雇っている傭兵達数十名、錬金術師に対しての訓練も行ってきた精鋭でもあった。だがその精鋭達の殆どは男の目の前で体を石へと変えられてしまっていた。

 

「た、助けてくれぇ!?」

「おかあちゃーーーーんっ!?」

「なんでい、無口でプロ傭兵気取りが一気に安いセリフ言うようになったな。オイラ達が出る幕もねえや」

「今日はメドゥ子の初依頼だからな。このまま不完全燃焼も悪いし花持たせよう」

「あ、あんた助けてくれよ! 俺達は金で雇われてるだけなんだ!」

「だろうと思ったよ。適当に解除してやるから大人しくしてな」

「はっ! 流石は星晶獣ってか? ちいせえくせに中々やるじゃねえか」

「当たり前でしょ! アタシを誰だと思ってんのよ!」

 

 石化した男達は一見すると助かる見込みも無さそうな状況だが、メドゥ子は器用な事に彼らの鎧や服のみを石化させた。そのため今彼らは口で許しを請うことが唯一出来る事だろう。

 

「じゅ、術師殿! これは想定外です!」

「星晶獣が居るなんて話聞いていませんっ!?」

「わ、わかっている!」

 

 無事な者も男を含めて五名程になった。始めは30人を越える戦力だったはずがあっという間に居なくなってしまった。

 

(せ、星晶獣だとぉ!? なんだってそんなのが居るんだ!? 遺跡調査を受けただけの騎空団と聞いただけなのに……こんな、星晶獣が居る騎空団なんて……星晶獣の、星晶獣の居る、騎空団?)

 

 「あ」と男は間の抜けた声を出した。

 騎空団の団長である少年に「俺達を知らないで来たの?」と言われた。何の事かわからなかったが今思い出した。近頃噂のヤバイ奴等、団員に星晶獣を抱える騎空団。所詮噂だと本気にしていなかったあの話を。

 

「嘘だろ……本当に居たのか!? 【星晶戦隊マグナシックスとB・ビィくんマン&均衡少女ZOY】!?」

「何だ知ってたのか?」

 

 長い長い騎空団の名前を叫ぶ。少年の反応は肯定であった。

 

「お前らそんな名前の騎空団だったのかよ……」

「うるへー! 俺だって反対したんだよ!」

「団長なんだろお前、何負けてんだよ」

「喧しい!」

 

 そして判明した騎空団名にカリオストロが軽く引いていた。

 

「じょ、冗談ではない! だとすれば、そこのやつ等も星晶獣!? て、撤退だ!」

「あ、ええっ!? 術師殿お待ちを!?」

「お、置いてかないで下されえ!」

 

 圧倒的不利、勝てる見込み0%。敗北を悟った錬金術師は一目散に逃げ出した。スタコラと逃げていく姿は、最初に見せていた余裕そうな雰囲気を感じさせない情けない後姿であった。

 

「あぁん……? 馬鹿共が、逃がすと思ってんのか? おい坊主、昨日オレ様と一緒に拾った杖よこしな!」

「杖? ああ、これのこと?」

 

 カリオストロに言われ団長がベルトに固定していた杖を手渡す。それを受け取るとカリオストロは杖を掲げてみせた。

 

「お前も長い事封印されたから暴れたいだろう? 出て来いウロボロスッ!」

 

 カリオストロが叫ぶ。すると掲げられた杖の周りに光の粒子の様な物が集まり、杖に巻きついていた蛇の装飾が動き出したかと思うと、巨大な蛇の怪物となって飛び出してきた。

 

「うお、なんだこれ!」

「この杖はただの杖じゃねえ、オレ様が作り上げた最高傑作の一つ。そしてそれに封じられていたのがこのウロボロスだ!」

「ただの蛇の串焼き杖じゃなかったのか!」

「んなわけあるかっ! お前そんな風に思ってたのか!?」

「ちょっと、あんたメドゥシアナの事真似しないでよ!」

「真似じゃねえよ! 調子狂う奴等だな……まあいい、行けウロボロス!」

「ギシャアアァァッ!!」

「ひえっ!? な、なんだぁ!?」

 

 カリオストロに命じられたウロボロスは雄叫びを上げ逃げる男達へと向かった。メドゥシアナ程ではないが巨大な怪物と言っていい存在であるウロボロスが後ろから迫っている事に気がついた男達は悲鳴を上げる。

 

「寝てて腹も減ってるだろうウロボロス? ……そいつら食べちゃっていいぞっ☆」

「駄目に決まってんだろ!? 後で依頼の妨害しに来た犯人として突き出すんだから、殺しは駄目!」

「ええー、駄目ぇ~?」

「駄目っ!!」

「ちいっ!! ならしかたねえなぁ……ウロボロス!」

 

 カリオストロの命を受けあっと言う間に男達へ追いついたウロボロスはその長い胴体を円状にして男達の周りをグルグルと回り出した。特殊な力が働き男達はそこから身動きが取れなくなる。

 

「カ、カリオストロ様! おやめ下さい!?」

「おいおい今更カリオストロ様だぁ? そりゃちょっと調子が良すぎるんじゃねえのか?」

「そ、それは……っ!」

「あとてめえ……さっきオレ様に向かって「まだ本調子ではない」とか言ったよな……ククッ! だといいなあ? 本調子なら今からお前ら全員どうなると思う、ええ?」

「ひ、ひいっ!?」

「あはっ☆ 冗談だよ、えへへ! ……お前ら坊主に感謝しろよ、今回はお仕置きで済ませてやるからなあ!」

 

 カリオストロが手に持った本を広げ意識を集中させた。ウロボロスの回転が早まり魔術とは違う力の本流が生まれだす。

 

「これが、真理の一撃だ! アルス・マグナ!」

 

 ウロボロスの激しい回転と共に急激に収縮、そのまま力場が破裂を起こし眩い閃光が走る。一瞬の事に男達は悲鳴を上げる間もなく意識を失った。

 

「はっ! 開祖直々の錬金術だ。てめえも錬金術師の端くれなら、見れてうれしいだろぉ?」

「気失ってますけど」

「あぁん? 手加減してやったのに情けねえガキ共だぜ」

 

 目を回す錬金術師を見て呆れた様子のカリオストロ。

 石化した傭兵が多いが死傷者は一切出さないまま、一先ずは錬金術師の襲撃を団長達はやり過ごしたのだった。

 

 ■

 

 三 可愛い証明

 

 ■

 

 あの後かなりの手間だったが石化した傭兵も気絶した錬金術師もまとめてエンゼラに運び込み、再度全員メドゥ子に頼み死なない程度に石化させた。ガロンゾへと行く前に空の風紀員である秩序の騎空団にでも引き渡す。犯罪者と言われると微妙だが、正式な依頼を受けた騎空団の妨害と言う事で預ける事はできるだろう。

 そして最大の問題はいつも最後に残るのである。

 

「それで結局コイツってなんなの?」

 

 エンゼラの食堂でメドゥ子が聞いてくる。彼女の目の前には再び可憐な少女に戻ったカリオストロが可愛らしくジュースを飲んでいた。

 

「ええ~? カリオストロはカリオストロだよっ☆」

「そう言う事言ってんじゃないわよ!」

「まああの一連の流れでわかっちゃいるんだけどさ……どうなの団長?」

 

 マリーちゃんも半信半疑と言う様子で聞いてくる。まあ普通は信じられん無いようだろう。

 

「この人は間違いなくカリオストロ、錬金術の開祖カリオストロだよ。今の錬金術師のレベルなんて俺はよう知らないけど、こんなレベルの錬金術師がそう居てたまるか。逆に開祖って言われた方が納得だよ」

「ほう? 坊主見る目あるじゃねえか」

「そりゃどうも」

 

 カリオストロは俺の隣に陣取っている。可愛い少女と開祖の狂気に満ちた表情がコロコロ変わる存在が隣に居るのは気が休まらん。

 

「私も錬金術に関しては素人だが、歴史上の人物として開祖カリオストロの名は知っている。しかし錬金術師開祖カリオストロは1000年以上前の人物だろう?」

 

 流石コーデリアさんだ。錬金術なんて有名そうで実際ニッチでマニアック極まる分野だ。名前を知っているだけでも十分ですよ。

 

「ああその通り、オレ様が生まれたのはもう1000年以上前の事さ。だが数百年前、オレ様も油断してな……あの廃墟の中に封印されちまったんだよ」

「くふふっ! そ、それにしたって……ひひひっ! あはは! 封印時点で相当の高齢のはず、君ははははっ!! どう見ても少女、ぶははははっ!?」

「……おい、こいつ」

「あ、あのルドミリアさんは持病でこうなってるです。申し訳ありませんが、とことん気にしないで上げてほしいです」

 

 ブリジールさんの説明を受けつつも、爆笑しながら話しかけるルドさんに流石のカリオストロも困惑していた。

 

「ま、まあ言いたい事はわかるからいいけどよ……オレ様は錬金術の開祖にして錬金術を極めた存在だ。延命なんてわけねえよ」

「何と……錬金術とはそこまでの業を可能にしていたのか」

 

 ユーリ君が錬金術のもたらす神秘とも言える業に驚いている。今現在の空で百年以上の延命を可能にする魔術の類は存在していない。だが遥か過去、そして目の前に居る存在はそれを可能にしたと言う事だ。

 

「……まあその所為で封印されたわけだけどな」

「どう言う事でありますか?」

「長く生きるってのは、想像するより良い事ばっかじゃねえのさ。むしろ敵が増えるばかりでな。あの学会の奴等もそう、オレ様が長く生き過ぎると都合が悪いんだとよ。理由は……くそ下らねえ事さ、話す気にもならねえ」

 

 1000年以上を生きる錬金術師。その内の数百年は封印を施されていたと言うが、封印に関して疑問がある。

 

「あのタイミングで封印を解いたのはなんでだ? あの廃墟にあった力の残魂は俺達が到着するほんの少し前に封印が解けた名残だ。まさか俺達が来るのを知っていたわけじゃないだろ?」

「それはオレ様が知りてえよ」

「え?」

「封印が解けたのは全くの偶然だ。あの日目を覚ましたら偶然お前らが来たんだ。だから最初はお前等利用して、適当な島まで運んでもらおうと思ったんだけどな」

「それで取り入りやすいように美少女気取ってたわけね?」

「違うよ団長さん? 気取って、じゃなくて正真正銘美少女なのっ☆」

 

 はいはい、わかったわかった。

 

「じゃあなんで封印解けたんだろうな」

「さあな……まあ封印の術式が緩むほどの天変地異が連続して起こればあり得なくもねえ。だがそんな規模の事、1000年に一度あるかないかだ。ましてそれが連続でなんて……」

「あ」

「……あったのか?」

 

 強力な術式が緩むほどの天変地異の連続、そして比較的最近に……。

 

「アレかあー……」

「あれだな相棒」

「間違イナイナ」

「まあアレだろうなあ」

『あの時か……』

「おいおい、何だってんだ?」

 

 もうほぼ間違いないけどまたアイツが関わるのか。

 

「まだ一月経ってないけどさ、前俺の幼馴染が滅茶苦茶機嫌悪くなって天変地異起こしたんだよ」

「頭大丈夫か坊主?」

「その反応は当然だが傷つくぜ」

 

 突発性お兄ちゃん分不足による天変地異……あれちがったか? もう何起きても驚かないような現象だからなアレ。重要なのはお兄ちゃん不足であるところだし。

 

「確か各島であり得ない異常気象が連続したよな。俺気絶してたから知らないけど」

「ああその通りだ団長。私の均衡センサーによれば雷、雹、嵐、火山噴火と間欠泉の放出、島の浮力変動が一日で連続したよ」

「待って、あれそんなレベルでやばかったの? 俺詳しくは分かってないんだけど」

「まあ無事だから特に言わなかったよ」

「あれアンタ達の所為だったの!? ルーマシー群島で行き成り雹が降って怪我したんだからね!?」

「俺の所為じゃねえよ」

 

 地味に身内に被害が出ていたのか、と言うか浮力変動って一歩間違えば空の世界壊滅じゃねえか。

 

「……お前の幼馴染って人間か?」

「人間なんだよなあ……」

 

 きっと今も強くなっているのだろうな、全空一の暴れん坊。ビィとラカムさんの身が心配である。

 

「だが本当なら封印が解けるのも納得だぜ……ある意味お前の幼馴染とやらに感謝しなきゃいけねえな」

「会いたきゃその内合わせてやるよ、見た目普通の女の子だけどな」

 

 だがジータとカリオストロ、果たして会わせていいものか。とんでもない化学反応を起こさなきゃいいけど。

 

「ちょっといいかね?」

 

 話も終わりそうな気配が出て来た時、コーデリアさんの高らかな声が響いた。

 

「どうしました?」

「最後に疑問がある。錬金術開祖カリオストロだが……たしか男性と記憶しているのだがね」

 

 その瞬間この場に居る皆の視線が一斉にカリオストロへと向いた。コーデリアさんやっぱり知ってたか。開祖カリオストロ、そうだ確かに“彼”は歴史では男性として知られている。話題に出すの嫌で黙っていたが、まあ知ってるなら気になるよね。

 

「ねえカルバ……ちょっと今日一日でわけわかんない事実の連続過ぎて、あたし混乱しそうなんだけど」

「私もだよマリー……」

「男が女で、女が男……これは哲学かなあ」

 

 きっと哲学ではないよフィラソピラさん。

 

「……んもーっ☆ 何言ってるのコーデリアさん、カリオストロは可愛い女の子だぞ?」

「ホムンクルスだろ」

 

 俺が“ホムンクルス”と言うとカリオストロが凄まじい形相で睨んで来た。

 

「あんたの本に載ってた人体錬成、あれは文字通り人間を人工的に錬金術で生み出す業だったな」

「ホムンクルス……あれは伝説の存在と思ったが、可能なのかい?」

「くっそ面倒で難しい上に、現在じゃやる意味が殆ど無いんでやろうと思う奴が居ないけど、理論自体は確立してますよ。正にここにいるカリオストロの手によってね。錬金術の参考書にも話だけは出てきたのを覚えてます。興味ないから忘れてたけど」

「……お前本当にポーション生成しか出来ねえのか?」

「出来ねえよ、俺は錬金術師になる気はないからな」

 

 信じられるか? あのばあさんポーション生成させるだけを目的で錬金術参考書50冊持ってきてそれ三日で無理矢理読破させたんだぞ。もう知識だけなら負けん。代償として一日寝込んだがな! しかも面倒な上に買う方が早い時があるんで現状意味ねえ。

 

「意味がないとはどういう意味でありますか?」

「仮にホムンクルスが出来たとしてそれは肉体が出来ただけ、そこにあるのは人の形をしていてもただの肉塊なんです。肉体を動かすための魂が無きゃ意味が無いわけですよ。錬金術で物質をどうこう出来たとして、”生きてる”って言うレベルの魂なんて非物質を生み出したり移動したりなんて普通は出来ないですよ……一人を除けばね」

 

 皆がまじまじとカリオストロを観た。言い方は悪いが珍獣を見るような視線だ。

 

「本当によくわかってるじゃねえか坊主。ああその通り、オレ様がいた時代でもホムンクルスが作れたとしても、殆どの錬金術師共は魂の創造と移動は出来なかった。だが天才のオレ様は別だ」

「先ほど話していた延命の方法とは、肉体の維持では無く肉体の創造、ホムンクルスを、別の肉体を作って……自分の魂を入れ替えたと言う事だったのか……」

「そうだよっ☆」

 

 果たしてこの”美少女”の肉体は何体目なんだろうね? 聞く気にはならんが。

 

「けどにゃあ~? なんでまた、美少女なんて作ったにゃ?」

「ばーかわかんねえのか、この酔っぱらいが」

「ひ、ひどいにゃ!」

 

 いやラムレッダはこんな時ぐらいは酒を置け。

 

「長い時代を生きるんだ……だったら美少女が一番だろぉ?」

 

 いや、それは違うと思いますが……。

 

「ああ、この完璧な美少女ボディ……我ながらほれぼれする、何してても可愛いんだぜ?一挙手一投足全て可愛い、昨日そこの星晶獣、ゾーイだったな? そいつに頭を撫でてもらった時のオレ様を見たかぁ?」

「あの時? 慰めてもらった時だよな?」

「そうだよ……怯えるオレ様が撫でられてる姿……さいっこーに可愛かっただろう?」

 

 お前……あの時妙にうっとりしてたのって自分にうっとりしてたのかよ。

 

「とんでもないナルシストやな自分」

「ナルシストじゃねえ、オレ様が世界で一番可愛いのは決定事項だ」

「そう言うんをナルシスト言うんやで」

 

 カルテイラさんのツッコミも聞く耳持たずである。カリオストロは自分に酔いしれていた。

 

「けど成程だぜ。これで相棒がカリオストロに反応しなかったのにも納得だ」

「中身ガ男ダカラ本能的ニ見タ目ガ可愛イ少女デモ反応シナカッタノカ」

「癒し守備範囲は広く、それでいてストレスに苛まれ続けた主殿にとって、カリオストロの可愛いは露骨過ぎたわけだな……」

 

 ほらーこう言う話になるー。だからホムンクルスの話題出す気にならなかったんだよ。

 

「……おいちょっと待て」

 

 ところで隣のカリオストロの顔が滅茶怖いんすけどねえ。

 

「この可愛いオレ様が露骨すぎるだぁっ!? てめえ坊主、昨日オレ様の事可愛いって言っただろ!? ありゃあ嘘だったのか、ああんっ!?」

「ちょちょちょっ!? なんすか行き成り!」

「オレ様はっ! 世界で一番! 可愛いんだよ!」

 

 おいおい、こいつマジか……。

 

「露骨だろうが何だろうが、可愛いだろう!?」

「そ、そこは人それぞれの好みもあるから!」

「知った事かよっ! 坊主!」

「な、なんすか?」

「いいか、見とけよ!」

 

 カリオストロは突然席を立ち、俺の目の前にへと移動した。そしてそのままピースサインを決めた謎のポーズをとったかと思うと険しい表情を一変させる。

 

「……えへっ☆」

 

 ……え?

 

「え、はい?」

「……どうだ?」

「どうって……」

 

 突然立ち上がったと思ったら妙なポーズを決めただけの様な……。

 

「えっと、何を言えばいいのか……」

「可愛いだろうがっ!?」

「あ、それ!?」

「それ以外何があんだよ!」

 

 知らねーよ!? 何なのこの開祖、ただの馬鹿なんじゃないのか!?

 

「あぁーはい、まあ可愛いんじゃない?」

「そんな適当な返事をするんじゃねえ! 何にも感じねえのかお前は!?」

「知らねえよ、んもおーっ! いいでしょうが俺一人ぐらい反応薄くってもーっ!」

「よくねえんだよ!! このオレ様が可愛くないなんて事あってたまるかっ!」

「別に可愛くないとは言ってねえだろ!」

「心が籠って無いんだよ!」

「だってお前中身男じゃねえかよっ!? 無理だよ可愛いなんて心から思うの!」

「ちげえ、オレ様は身も心も世界で一番可愛い美少女なんだよ!」

 

 だーもう、言ってる事無茶苦茶だよコイツ!

 

「そもそもあんた年齢的にも爺どころじゃねえだろ!? あんたなんざカリおっさんで十分だこの野郎!」

「んだと、このクソガキがぁ~~~~っ!?」

 

 カリおっさんが怒声をあげて俺に飛び掛かって来やがった、猿かおのれはこの野郎!?

 

「訂正しやがれ! 誰がおっさんだこの野郎!?」

「うるせえ放せこいつ!?」

「やめたまえカリオストロ殿っ! 団長は少し特殊なんだ!」

「特殊って何すかコーデリアさんっ!?」

「関係あるか! 第一こんな美少女と密着して興奮一つしねえのかお前はっ!」

「だから男だろあんたっ!」

「うるせえ、好きなんだろぉ!? こういう女の子がさぁ~!!」

「別に女の子が好きってわけじゃねえ!」

「お前ホモかよぉ!?」

「ちげえよ馬鹿野郎っ!?」

 

 ■

 

 四 可愛いカリオストロを仲間にできてうれしいでしょ(威圧)

 

 ■

 

 カリおっさんとの口論と取っ組み合いは、コーデリアさん達によって何とか落ち着きを取り戻す。主に俺の顔に引っかき傷が多く残ったが……。とりあえずおっさん呼びは控えるとしよう。奴の逆鱗に触れてしまう。

 

「とんでもねえ開祖だぜ……自分の趣味で美少女ボディ作って生きながらえてるなんてよ……」

「全く反応する気配のないてめえの方がおかしいっての」

 

 そんな事はありません、少なくともあんたの方が色んな次元でおかしい。

 

「あーもう終わり、疲れたよ俺は。カリおっさ……」

「あ゛ぁ゛っ!?」

「……カリオストロは部屋貸してやるから大人しくしてな。次の島着いたら好きにすりゃいいから」

「あん? 何言ってんだ坊主」

「何って……おいおい、あんたこの後どうする気でいるんだよ。他の島に行くとか言ってたんだからそうするんじゃないのか?」

「馬鹿、お前等はもうオレ様匿って学会の連中と戦ったんだぞ? 関わらないで済むと思ってんのか?」

 

 ……え?

 

「それは、どう言う……」

「今回捕まえた錬金術師を突き出したところで学会連中はオレ様の復活なんて直ぐわかる。そうなりゃオレ様を匿ったお前らだって狙われるんだよ」

「いやそれは……」

「なーらー……オレ様が居る方と居ない方、どっちが良いと思う団長さんよ? 錬金術師の集団が攻めて来るかもしれねえんだぜ。しかも今度は星晶獣対応策も練ってくるだろうなあ?」

「確かにそうだけども……」

「なら錬金術師の一人でも仲間にいた方が良いと思わねえか?」

「そら、まあそうだろうけど……」

「だったら決まりだねっ☆ よろしくね、団長さん!」

 

 まだ俺はOKなんて言ってないのに彼女の中では仲間に入るのは決定事項らしい。ニコニコと笑いながら密着してくる。

 

「離れろ暑苦しい」

「ちっ! やっぱり無反応かよ……まあいい、そのうち骨抜きにしてやるからな」

 

 ならないよ絶対! なに勝手に変な目標立ててんだこの似非美少女錬金術師。

 

「よーしっ☆ それじゃあ世界で一番可愛いカリオストロが仲間になるんだもん、団名もあんな長ったらしいクソダサいのじゃなくて【世界で一番可愛いカリオストロと下僕達】に改名だよっ☆」

「ざけんな」

「んがっ!?」

 

 言うに事欠いて下僕とはなんだ、下僕とはこの野郎!

 

「て、てめえ坊主! 口引っ張るんじゃねえ! この体に傷ついたらどうしてくれんだっ!?」

「錬金術で直せっだろ!」

「そう言う問題じゃねえ! 可愛いオレ様の身体に傷なんてつけれるか!」

「ちょっとあんた、この誇り高き星晶獣メドゥーサを差し置いて勝手に団名変えるんじゃないわよ! ここは【誇り高き星晶獣メドゥーサとメドゥシアナの手下達】に決まってるでしょ!」

「それもねーよ、馬鹿野郎!!」

 

 カリオストロの言葉に触発されたのかメドゥ子が口論と取っ組み合いに加わってきやがった。やっと話が終わると思ったらこれかよ!

 

「団名改名ト聞イテハ黙ッテハイラレンナ……【美しきティアマトの風】ヲ認メテモラオウカ!」

『いいや、次こそは我の案を飲んでもらうぞ』

「そう言う話だったらオイラも参加するぜ!」

「……よくわからないが、みんなで語り合うんだな! 俺も加わるぜえっ!」

 

 心の底から面倒なメンバーが参加してきやがった。

 

「もう勘弁ならねえッ! てめえらその気なら表出やがれ! 今度こそ騎空団【グランブルー】にするからなっ!!」

 

 その後俺達は何時かの様に完全に泥仕合となった醜い争いを行い、全員同時に倒れる事になる。そのため団名は変更されずただ色物団員が増えるのみとなった。

 こんなんで俺は無事ガロンゾに、いやガロンゾの後もやっていけるのか不安で仕方なかった。

 

 ■

 

 五 (笑)と癒しの星晶獣が8体(+α)いて、割と吐く大酒飲みのドラフと、格闘馬鹿と、回る哲学者と、イケメン騎士と、頑張り騎士と、名の知れた商人相場師と、始終笑い続けるキノコキチハンターと、歩く天災のファッションクレージーと、腐女子絵師と、ちびっ子騎士団長に生真面目ナイトと、世界で一番可愛い錬金術師様がいるアットホームで団長の胃痛が耐えない騎空団です

 

 ■

 

 

 とある島の酒場、そこで噂話をする男達。

 

「なあ聞いたか? 星晶戦隊(以下略)に仲間増えたってよ」

「今度はどんな濃い奴だよ」

 

 空のどこかで騒ぎがあると必ず変な仲間が増えている。それが噂の騎空団【星晶戦隊マグナシックスとB・ビィくんマン&均衡少女ZOY】。そんな騎空団の噂は、多くの人間の興味を誘う。

 

「なんかデカい蛇と蛇っぽい女の子に、かなりの美少女って聞いたぞ」

「蛇っぽいってなんだよ?」

「いや実際に見たわけじゃねえが、とにかく蛇っぽいらしい」

「……好きなのかな、そう言うの」

「かもな」

「いやそれよりも美少女も追加か……これはロリ疑惑が深まるな」

「ただもう別の噂だと美少女なんだがな……男って可能性があるとか」

「うっそだろ!? お前そうなると……」

 

 男の一人がゴクリと唾を飲み込んだ。

 

「ああ、前ハーヴィンが仲間になったのと男性団員が増えた事、そして例の【ジータと愉快な仲間たち団】との関係等のあらゆる噂を総合するとだ……あそこの団長は「ロリコンの年上巨乳好きで、幼馴染属性のホモの可能性がある女装っ子好きのケモナー」って事になる」

「すげえな、いやあくまで噂だけどよ」

「そうあくまで噂だ」

 

 だが噂だとしても、凄まじく濃い面子が仲間になった事は間違いない。どこまでが真実でどこまでが嘘か……本人が聞いたら泣きながら「全部嘘に決まってんだろ!」と言う事だろう。

 

「しかも前帝国ともやりあったって話じゃねえか」

「全くすげえ奴等だぜ。早々出来るような事じゃねえ」

「更に見逃せねえな、あの騎空団の活躍がよ」

「ああ全くだぜ……」

 

 どこか遠くを見る様にする男達。滅多にいない騎空団の活躍が羨ましいような、気の毒なような、色々な思いが彼らの中にはあった。

 

「……俺やっぱあそこの団長と友達になっとこうかな……」

「……お前」

 

 エルステ帝国とも戦い、人々への話題のネタ提供的にも八面六臂の大活躍(?)の騎空団の噂は、例え根も葉もない話としても空に住む多くの人間にとって中々のエンターティメントであった。

 そしてこの噂を聞いた団長は泣いた。

 




ハンサム・ゴリラ楽しかったウホホホ。

ゴリラ・ゴリラ・ファータゴリラ。結局イベント本編には本物が登場してはいなかった。だがイベント終了後、ツイッター公式アカウントに掲載されたイラストで踊ったり髪型が複数あったりと、今後本物との交流と戦いを描いたイベントが来る!……かも?

現在と「地味な少女」……どっちもすこ

古戦場でスノウ・ホワイトいいなあって思ったら、るっ!で出てきて笑う。
だけども、るっ!では、ゴリラ以前にルナール先生が出始めたから、まあルナール先生は出るだろうと思い、同時にポンメルン(若)が出て来たからまさかゲーム本編に!?と少し期待してた。

次かその次からはガロンゾ編になる予定。

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