俺は、スーパーザンクティンゼル人だぜ?   作:Par

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主にコルワのキャラ崩壊と二次創作独自の設定や解釈があるのでご注意ください。

また登場キャラクターのフェイトエピソード等のネタバレを含みますので、その点もご注意ください。


SAMURAI GIRL

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 一 始まりは日常から

 

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 なんて事の無い、何時も通りの朝。日が昇る少し前に目を覚まし、顔を洗ってから操舵室で航路の確認をしているセレストに朝の挨拶をして食堂へと移る。今日は俺が食事当番だ。

 本日はコロッサスが食事当番お休みの日である。日頃から「アサツヨイシ(*・ω・) ボクヤルヨ♪」と自ら朝食当番を買って出てくれたコロッサスだが、そもそも彼は生物の肉体とは違い古のドラフの技術で創られた機械のボディを持つ特殊な星晶獣である。基本的に他の星晶獣以上に“眠る”等の行為の意味が無いのである。

 勿論大変ありがたいし、非常に助かるが全て任せっぱなしと言うわけにもいかない。彼が本当になんの意志も持たない便利なだけの機械であるなら話は別だがいまやコロッサスは──俺と出会った事が原因らしいが──ジータ達が出会ったオリジナル・コロッサス以上の自我を得てしまい個として確立している。最早それは生命と言って良い。ならば互いに助け合わねばならない、日頃も彼一人だけじゃなく手伝いの当番を決め、或いは一日休みを与える。騎空団団員、持ちつ持たれつだ。

 本当なら他にも食事当番の人がいるのだが、俺はザンクティンゼルからの習慣で日も昇らない内に起きてしまうから先にとっとと準備を始めてしまう。

 

「んぁ~……あぁ、おはよう団長さん」

「おやコルワさん? おはようございます」

 

 火をつけ食事の準備をしていると、最初に食堂に顔を出したのはコルワさんだった。他の食事当番の人が来るにしても早い時間なので少し驚く。

 コルワさんは寝起きの調子が抜けておらず、眠そうな顔でフラフラと歩いて倒れ込むようにして席に座った。

 

「やけにお早いですね?」

「うん……あんま寝れなくてねぇ……それでもお腹すいちゃったから、軽くつまめる物無いか見に来ちゃった」

「おやまぁ、昨日は遅くまで?」

「新しい服のデザインに行き詰まっちゃってねぇ……横になってもあんま寝れなかったのよ」

「あらら……そいで新しいデザインってのは、誰かからの依頼ですか?」

「別に依頼ってわけじゃないのよ。ただな~んか新しいアイディアが浮かんだ気がしてねぇ……。だから直ぐそれを形にしようとしたんだけどピタって急に筆が止まっちゃったのよ! いやけど漠然としたイメージは描いたのよ? キュロットスカートをベースにしたボトムスでしょ? ゆったりとして羽織るようなトップスでしょ? ああ、けどそのトップスもネックなのよ、単純な上着も良いんだけど巧くボトムスに組み合わせられないかしらって思うとこうもうちょっと遊べる感じ? 工夫する余地があるの、ポッカリと空白がある感じなのよ、ありよりのありなのよ!」

「俺クロエちゃん語詳しくないけど最後クロエちゃんのうつってますよ。しかもちょっと意味違う気がする」

「うん、私も使ってそう思った。けどまだ話は続くの聞いてちょうだい。服って勿論お洒落も大事だけど動きやすさも重要なのよ、だって服だもんねそりゃそうよ。けど動きやすさ重視し過ぎたらそれもう作業着じゃないの。その両立が難しいんだけど、今考えてるのがまた難しいのよ。カジュアルでもいいけどフォーマルでもって感じの奴だから。でキュロットみたいなスカートの方は良しとしても、トップスが問題よ、袖口が広い感じでイメージ出来てるんだけどそれ使いづらくない? 動かし辛いでしょ、じゃあなんでそんなイメージ浮かんだんだって話だけど私が聞きたいわよっ!! 誰かこの天啓の概要を説明してよ!?」

「落ち着こうコルワさん! なんか徹夜テンションで暴走してる!」

「あら、ごめんなさい私ったら……けどね、ほんと、コレだッ! って言うのが思いつかないのよぉ~……もうずっとモヤモヤしちゃって……プチスランプだわ……」

 

 早口で喋りまくるだけ喋ると、ついにテーブルに突っ伏して天板に額をグリグリしだすコルワさんだった。

 

「まあまあ、頭グリグリしてもアイディアは出ませんよ……食事もう少しかかりますけど、コーヒーか紅茶なら用意しましょうか?」

「ありがとう頂くわぁ……コーヒーでお願い、頭冴えそうなぐらい苦いので……」

「あいあい」

 

 棚からコーヒー豆を取り出し、細かく挽いて要望通り苦味を強く淹れて出してあげた。コルワさんは砂糖を入れずにそのままコーヒーを飲みホッと一息ついた。

 

「あぁ~……ちょっと落ち着いた」

「アイディアは浮かびますか?」

「ん~~…………無理、駄目っ! なんも出ない!」

 

 コルワさんが頭を掻きむしり、脚をバタバタとさせ叫ぶ。どうやら濃いコーヒーでは彼女の悩みを解決するに至らなかったようだ。まあそうだろうね。

 

「しかもねぇ……なんか覚えがあるのよねこのアイディア。だから多分参考に出来る“何か”がある筈なのよ……なんだっけなぁ、結構前に見たと思うんだけど……」

「へえ、そうですか……」

「何かないかしら、このアイディアの空白を埋めるような刺激……」

「刺激、刺激ねぇ……」

 

 俺はふと食堂に張り出されている掲示板を見た。そこにはレターボックスとメモを張り出すコルクボード、そして月毎の予定が書かれる黒板がある。

 基本的に月の予定は、殆ど依頼やらで埋まっており今日もその例に漏れずシェロさんから受けた依頼の日だ。

 

「ふむ。コルワさん、刺激的かはわからないけど今日の依頼参加しますか?」

「依頼に?」

「ええ、今日はこの後寄る島で依頼があるんですよ。内容は……まあ大した事無いもんですが、前手に入れた品をシェロさんに納品するだけなんで。だから依頼を手伝うわけじゃなくて一緒に島を見る感じで良いですよ」

 

 コルワさんは俺達の仲間ではあるが、そもそも本業デザイナーである。エンゼラに乗った目的も刺激を求めて旅への同行を申し出たからであり、部屋も金を払って借りている。なので基本依頼を手伝う義務は無い。

 

「なるほど……確かに部屋でうだうだしててもしょうがないし……うんっ! いいわね、団長さんが良いなら着いてくわ!」

「納品の依頼でそんな期待した瞳を向けられてもアレなんですが……」

「そんな心配しなくて大丈夫よ。団長さんと行動すれば面白い出会いがありそうだもの」

「俺が引き寄せてるみたいに言わんで下さい」

「あら? なら違うって自信持って言える?」

「い、言えらぁっ!」

 

 言うだけならいくらでも言えらぁ! こんちきしょう。

 

「どっちにしろ初めての島だし楽しみだわ。なんだかインスピレーション湧きそうな予感が……ふぁぁ~……」

 

 俺の提案を受け乗り気になったコルワさんだったが、眠気が再び出て来たのかついつい欠伸が出てしまったようだ。

 

「お腹すいてるなら、部屋戻って寝る感じじゃないですよね? 朝食までもう少しかかりますからそっちのソファーで横になってていいですよ。そこの毛布でも使って下さい」

「ん~……ありがとう、そうするわね……」

 

 のそのそとコルワさんはソファーへと移動すると自由利用の備品棚から毛布を手に取りバッタリと横になった。熟睡とまではいかないが多少体は休まるだろう。早い事悩みを解決してあげた方がコルワさんのためだ。今回の依頼でそのきっかけがつかめる事を願いながら俺は朝食の準備を続けた。

 

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 二 納品クエスト 【南国バナナでこんにちは!】 納品完了しました

 

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 その後到着した島で俺達は、島の一番大きな街のバザーエリアに向かった。

 この街のバザーエリアの規模と盛況さは中々のものであり、他の島でもそれなりに名の知れたバザーだそうだ。外から来る人間がまず立ち寄る街がここである関係上この島内での物流の中心部でもあるらしい。ここでは他の島から集めた品を売る店が多く他の村や町からも人間が訪れている。

 食品、生活用品、衣類等を売る屋台や露店を見て同行しているコルワさんは、少し興味を惹かれていた。コルワさんが普段住んでいた地域では見れない品がここには輸入されているようだった。

 何かインスピレーションを受ける品もあるかも知れないと思い、元々俺達だけでやる依頼なのでコルワさんには少しバザーエリアを見て回って良いと言って一時別行動をとった。

 

「んじゃ、これとそれで全部……っと!」

「オイショー!! ( つ`・ω・´)つ」

 

 バザーエリアにあるシェロさんの店に着くと納品する品物が詰まった木箱をコロッサスと協力して積み上げていく。

 

「いやぁ~コロッサスさんが居てくれると、荷物も直ぐに運び終わって助かりますねぇ~」

「チカラシゴトナラ (*ゝω・´)b オマカセダヨッ!」

 

 シェロさんがズンズン荷物を運んでは積み上げるコロッサスを見て感心する。

 荷物の搬入搬出は、本気でコロッサスが居ると助かる。コロッサス一人で果たして何人分の働きになるか。省エネ形態でもドラフの男性十数人、いや数十人分は働いてるだろう。

 

「じゃあこれで納品予定の品は全部ですね」

「どうもありがとうございましたぁ~。輸送船の都合が付かなかったのですが、団長さんが居て助かりました~」

「ははは……しかしシェロさん、果実ってか急にバナナ好きになりましたね」

 

 俺達が納品した品物は、南の島にある果樹園で栽培された南国の果実、特にバナナが多く詰められていた。全てシェロさんが注文した品々だ。

 

「おやおやぁ~ご存じありませんでしたか~? 前の依頼で団長さんが手に入れてくれたバナナが切欠で、今この辺りの島々ではちょっとした南国果実ブームが起きてるんですよ~?」

「マジでか」

 

 話を聞くに俺達があのゴリラ島からゴリラにお土産で貰った多量のバナナや南国の果実をシェロさんにもお土産として分けたのだが、彼女はそれを南国の果実が手に入らない地域の島で売ってみた所良い感じに売れてしまったようで、その流れで軽くブームが起きてしまったとか。

 その後ゴリラ島はまだ立ち入りが難しいので南方の果樹園から入荷していたが、今回発注をしていた品を運ぶ予定だった艇がトラブルでこの島に来れなくなったため、俺達が急遽代理で納品したと言う流れだ。

 

「何時の間にか火付け役に……」

「あはは、ウケるっ☆ だんちょバナナ軽くバズらせてんぢゃん( ´∀` )。わら」

「バズ……る? バズとはなんでありますかクロエ殿?」

「ん~? ぁーね、ぁれぢゃんね、なんかめち話題んなって急にナウった感じ?」

「……っ!? ……!?」

 

 クロエちゃんの説明を聞いたシャルロッテさんは、頭に「?」を浮かべるだけしか出来なかった。

 

「……まあつまり、流行ったって事で良いんだよね?」

「それなっ(σ´≧∀)σ」

 

 やはりそうだったらしい。まあ話の流れでわかったけどさ。

 

「ともかく納品の方はこれで完了ですね。俺達このまま昼飯食いに行きますんで、また次よろしくです」

「こちらこそ次もよろしくお願いします~」

 

 納品を終えシェロさんと別れると、次にバザーエリアのお店を見て回っているコルワさんを探す。多分衣服を売るエリアにいるだろうと思いそちらに向かうと、やはりコルワさんの姿があった。

 

「コルワさん、コルワさん」

「あら、団長さん。よろず屋さんの方は終わったの?」

「ええ、無事納品完了です。そちらは?」

「そうね。結構面白いのがあるわ」

 

 コルワさんは店頭に並ぶ色とりどりの生地を見ていた。中でも目を惹かれるのは、柄が美しい生地だった。

 俺達がその生地を見ていると、店主の男性がにこやかに話しかけて来た。

 

「お姉さんこの生地が気になるのかい?」

「ええ、これ“クレープ織り”よね? 面白い模様が入ってるけど」

「お目が高いねぇ……これは東方の島から手に入ったもんで、あっちじゃ“ちりめん”って言われてるらしい。織り方を工夫して模様を入れるそうだが、東の方で伝わる模様を織ってるそうだ」

「へぇ……そう、東の方の。あら、こっちの染物も良いわね」

 

 興味が尽きないのかコルワさんは、そのまま興味のある生地を見ては店主にそれについて尋ねた。

 

「熱心だねぇ」

「しかし確かに良い品ぞろえであります。それにこちらの染物は、自分も故郷で見た覚えがあります」

「シャルロッテさんの故郷って雪国ですよね?」

「はい、自分の故郷は雪深い所でしたが、近くの島では染物が盛んな所がありまして、そこでは雪の上に布を広げることで布を仕上げ綺麗にするそうであります。それに自分も故郷では、特に雪が積もる時期に家の手伝いで編物を編んだものであります……」

「ぅちでもママゃ村のぉばぁちゃんが、ょく編物ゃってたっけなぁ~……ぁ、思ぃ出したら懐かしみヤバ、ちょぃセンチんなる……(・ω・`)」

 

 生地を見ていただけなのだが、シャルロッテさんとクロエちゃんの二人が故郷を懐かしんでいた。

 しかし二人の話を聞いていると俺もザンクティンゼルの事を思い出す。あそこも村の年寄り達は、しょっちゅう編物を編んでいた。あのばあさんも修行の合間ストールなんかを編んでいた記憶がある。

 

「おいおい、三人共故郷を懐かしむのは良いけど早いとこ飯食おうぜ」

「おっとそうだった」

 

 若い三人が望郷の念を抱いて空を見上げていると、奇妙な光景に呆れたB・ビィに食事の催促をされた。

 

「コルワさん俺達食事行きますけどどうします?」

「そうねぇ……うん、一緒に行くわ。私もお腹すいたし。店主さんごめんなさいね」

「いやいや気になさらず。またの機会があればよろしくどうぞ」

 

 どうやらこの生地だけでは、コルワさんのアイディアを刺激しインスピレーションを起こすような力は無かったらしい。中々惜しい所だったようだが残念だ。

 

「面白い生地みたいでしたね」

「ええ、東方の文化って私も興味あったけど意外な所で出会ったわね。このままもう一つ面白い刺激的な出会いがあればいいんだけどね」

 

 東方の文化に関しては、俺も本などでしか知らない。空域の東の方の島々は、俺達の住まう地域とは文化的な差異が多いらしく特に“侍”と呼ばれる者達がいる等の話を聞く。特に刀の扱いに長けた剣士をそう呼ぶそうだ。

 刀文化、その武術の起源は東方にあるとも言う。今でこそ俺達が住む地域でも刀を扱う者は多く、俺もばあさんに扱いの心得を叩き込まれている。だがそれは剣の扱いを学び、その流れで刀も扱える者が多いと言うべきか。

 別にどちらが優れていると言うものではないが、武術の入り口から既に刀を握り、真に刀一本で戦場を渡り歩くような者は多くないだろう。

 何時かその地に縁がある人と出会う事もあるのかもしれない。そんな事を考えつつ俺達は、どこか食事の出来る店を探しに行った。

 

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 三 フェイトエピソード 異国の風は味醂の香り

 

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 その少女がこの島に来たのは、“あの騎空団”とほぼ同時の事であった。連絡艇に乗ってやって来たその目的は、この島のバザーがこの周辺地域では特に有名と聞いたため、すなわち観光目的である。

 名前をミリンと言うその少女、この地域の島では見慣れない衣服に身を包んだ彼女は、遠路遥々東の島よりやってきた。その見慣れぬ衣服を珍しがる島の者達もいたが、同時に彼女もまた異国であるこの地を珍しく思い興味津々であった。

 女だてらに刀を携え、故郷を離れ島から島へと諸国漫遊一人旅。見る物全てが驚きに溢れ、中でもやはりこの目的たるバザーが面白くないわけが無い。

 並ぶは並ぶ店の数々。屋台に露天で叩き売り、島々から集まる商人と商品がズラリと目白押しであった。

「安くするよ」「いいや、もっと安くしろ」。そんな声がそこかしこで聞こえるこの熱気に押され気味になりながらもミリンは人込みを縫うように歩いていく。

 どれもこれも面白そうだ、楽しそうだ、珍しい物だと感心しながら歩いていると、店の店主から声をかけられたりもする。大抵は先程のように「安くするよ、買わないか」等の様な呼び込みであるが、中には目の利く者がいるもので──。

 

「お? そこの綺麗な“おべべ”のお嬢ちゃん! ええの着とるなぁ~、それ東の着物やろ?」

 

 と、すんなりミリンが着ている着物の事を言い当てるような者もいた。

 特徴的な喋りのエルーンの商人。驚いたミリンは自身が着ている“着物”を知っているのかと聞くと、その商人は「にしししし!」とこれもまた特徴的な笑いと共に頷いた。

 

「商人やったら知っててなーんもおかしーことないで。あっちゃこっちゃの服商品に仕入れる事なんて珍しい事やないからな。しかしその着物、ほんでその風呂敷包みもええ出来やなあ。お嬢ちゃん東の生まれか?」

 

 更に商人は着物だけでなく、ミリンが背負う風呂敷もまた上質な東の織物と見抜く。

 これらの物は、ミリンの母が自ら織ったものであり、何時帰るか分からぬ娘の長旅にも耐え、御守りの如くあるよう丹精を込めて作られた。ミリンがその由来を話すと商人は深く頷く。

 

「なるほど御袋さんがなあ、そら立派なわけや。いやこれは値が付けられへんなあ。しかしそれだけや無いな……そっちの腰の刀もまた立派なもんやで」

 

 こんな具合に店の前で立ち話。故郷の話をすれば商人は「ほうほう」と頷き旅の話しをすれば「へえへえ」と感心する。ミリンも故郷の事に興味があるらしいその商人に好感を抱いた。

 そしてミリンが腰の刀や背負った風呂敷包みを下ろし商人に見せてみたりと話が盛り上がっていると時のことである。不意に一人の男がミリンにぶつかった。

 

「おっと、失礼……」

 

 ミリンが何か言う前に男は素っ気無い謝罪を言うとその場を後にしようとした。だがその時商人が目を鋭くさせ男を呼び止めた。

 

「あんちゃん待ち、今盗ったんこの嬢ちゃんに返し」

「……!」

 

 男は呼び止められるとギョッとして商人を見た。ミリンもまた何事か分からず二人を交互に見た。

 

「あの、なにか……?」

「嬢ちゃん着物の袂んとこ財布入れとったんやないか? ちょっと見てみ」

「え? はい……えっと……えっ? あ、あれぇ!?」

 

 ミリンは悲鳴を上げた。商人の言うように着物の袂に入れていた財布がなくなっていたのだ。

 

「今抜き取られたんや、スリやでこの兄ちゃん」

「な、なんと!?」

「……いや、俺は」

「誤魔化しても無駄や。うちに背ぇ向けて見えんようにしても、パっと抜き取ったんは動きで分かる。まずはそれ返しなはれ、話はそっからや」

 

 男は額から汗を流しギリギリと歯軋りをして二人を睨む。すると脱兎の如くその場から逃げ出した。

 

「ああドロボーッ!? 拙者の財布返して────!?」

「追うで!」

 

 そしてミリンと、“カルテイラ”もまたその男を追いかけたのだった。

 

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 四 何か困ったことになってるみたい

 

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 飯屋を探して移動する俺達であるが、人込みで移動が阻害され広いバザーを中々抜けれないでいた。

 

「ううむ、何と言う人込み」

「そろそろ昼だってのに空く気配がありゃしねえな」

「クロエぉ腹すぃたぁ~……」

 

 人込みを縫う様に歩いていると、丁度バザー中心部の所へと出てきた。するとそこは、他よりは道が広くバザーの各エリアへ移動できるよう十字路となっている。

 そしてここに集まる屋台は、殆どが飲食関係の店であり、店頭で肉を焼いたりする屋台がズラリと並んでいた。

 

「なるほど食事の屋台目当ての人達でありましたか」

「昼になっても空かねえわけだぜ」

「肉を焼く香りが……ううん、この際屋台でも……いや、けど歩き食べは……」

 

 別に他の場所に行ったところで込んで入るだろうが、少なくとも屋台では落ち着いて座って食事は無理だろう。やはり繁華街にでも出た方が店も選べるなぁ……などと考えていると、急に俺達が歩く前方より騒がしい声が聞こえてきた。バザー特有の喧騒ではなく何かが原因で起きた混乱によるものだ。

 

「なにやら騒がしい……事件でありますか?」

「穏やかじゃありませんね」

 

 人込みの隙間からこの先で何が起きたか観ようとしていたら、今度はハッキリと複数の男女の声が聞こえて来た。

 

「どけどけどけっ!! どけてめえらぶっ殺すぞ!?」

「またんかワレェ──ッ!!」

「拙者の財布返してぇ──ッ!!」

 

 人々が驚き道を開けて行くと、その空いた道を一人の男がナイフを振り上げつつ走り、その後を何故かカルテイラさんと見慣れぬ少女が追いかけていた。

 

「ぁれカル姉じゃん!?」

「……そう言えば自分もバザーに出店するとか言ってたな……」

「それよりジミー殿、どうもスリか何かのようでありますよ」

「らしいですな。そいじゃここは一つ……」

 

 ナイフに驚く人々が道を開ける中そこへ躍り出る。男は突然現れた俺達を見て怒声をあげた。

 

「んっだぁてめえ!? どけぇ!!」

「お断り」

「この……死にてえのか!!」

 

 男はナイフを俺に突き刺そうとしたが動きが単純で簡単に動きが読めてしまう。

 

「ふんっ!」

「ってっ!?」

 

 ナイフを持つ男の手に向かって上から拳を振り下ろす。すると衝撃で簡単に手が開きそのまま男はナイフを落した。そしてそのまま男から少女の物と思われる財布を取り上げる。

 

「これあの子のだろ? 泥棒はいかんと思うよお兄さん」

「て、てめえ……くそ!」

「逃がさないであります!」

「んなぁ、いつの間に……っ!? ぎゃあ!?」

 

 男はその場から逃げようとしたが直ぐにシャルロッテさんが回りこむ。小柄であるシャルロッテさんの接近に男は直ぐに気が付かず、一瞬で組み伏せられてしまう。

 

「な、なんだこのガキ……なんて力、いでで!?」

「じ、自分は子供ではないであります!」

「いだだ……!? い、痛いって!?」

 

 たとえ小柄のハーヴィンであっても大剣を自在に振るうシャルロッテさんの腕力は、明らかにハーヴィン種を超えておりヒューマンの男性でも簡単に敵う相手ではない。地面に付した男は両手をシャルロッテさんに押さえられ悲鳴を上げた。

 そうして野次馬が集まる中、男を追っていた少女とカルテイラさんも俺達の所へ追いついた。

 

「団長はん……! ナイスタイミングやで……!」

「あ、あの……!! そ、その財布……!」

「うん、君のでしょ」

「あ、ああ! そうです!」

 

 息を切らせた少女に取り返した財布を渡す。彼女はそれを受け取ると大事に抱きしめた。

 

「よ、良かったぁ……!」

「念のため中身確認しておいてね。仲間とかいると逃げながら盗んだ物渡す時あるから」

「あ、はいっ! そ、そうですね!」

 

 少女は慌てたまま財布の中身を確認しだす。その様子を見ていると少女の風貌と持ち物が気になった

 彼女は見慣れぬ衣服を着ており、そしてその腰には刀を一振り下げていたのだ。先程東方の話をしたばかりなので、なんとなくそれが気になった。

 

「……うん、うん大丈夫。大丈夫です! 何も無くなってません!」

「そう、ならよかった。そいでカルテイラさん、何となく予想はつきますが何があったんですか?」

「いや無事解決した以上大したことやないんやけど、今さっきあっちで──」

「いよぉ、あんたら大活躍だな!」

「はい?」

 

 俺がカルテイラさんから事情を聞こうとした時、突然人込みから数人の男達が近づいて来た。その中のドラフの男は、大きな声で俺に話しかける。

 

「貴方達は?」

「なーに、ただの通りすがりよ。偶然ここに買い物に来ててな。しかし中々やるな兄さん達!」

「はあ……そうですか」

「まあお疲れさん。ああ……そこの不逞野郎は、俺達で衛兵に突き出しておいてやるよ」

 

 ドラフの男がそう言うと、他の男達はシャルロッテさんが押さえつけてる男に「ろくでなしめ」「盗人野郎っ!」と言いながら取り囲み持っていた縄で男を縛り付けてしまった。

 

「いや、別に俺達で連れてっても……」

「いや見たところあんたら外のもんだろ? 後始末は俺達島の人間に任せておいてくれよ」

 

 男が縛り上げた男を立ち上がらせると、なんと更に別の男達が「俺も手伝おう」等と言いながら現れる。

 

「それじゃあ市民の務めとしてこいつを衛兵に……」

 

 男達はそのまま捕らえたスリを連れて行こうとした。不思議とスリも諦めたのか特に抵抗するそぶりは無い。なんだか急な展開にキョトンとしてしまう。

 正義感の強い男達なのか? いや、なにか違和感がある。むしろこのタイミングと強引なやり方。俺は男達に声をかけ引き留めようとした。

 

「おやおやぁ~? 変ですねぇ~?」

 

 だが俺が声をかけるより先に、人込みより現れ男達の行く手を遮ったのは、さっき別れたばかりのシェロさんだった。

 

「おやシェロさん?」

「うふふ、どうも先程ぶりです~。騒がしいので様子を見に来ました~」

 

 この人がひょっこり現れるのは慣れたもの。何時かのトラモント島並みに不意をつかれない限りどこから現れようが俺は今更驚かないが、そんな事は知らない男達はギョッと目を見開いていた。

 

「な、なんだ……あんたぁ?」

「私はただのよろず屋ですよ~。それより衛兵さんの所に連れて行くなら方向が違いますね~」

 

 シェロさんは男達が行こうとした方向を見て首を傾げる。そしてスッと反対側のほうを指差した。それを見たドラフの男は、冷や汗を流していた。

 

「そ、そうだったな! いやあ今日は特に込んでて……いや道をな、間違えてな、いやいや、まいった参った……それじゃあ改めて」

「いえ、そちらに衛兵の詰め所はありませんよ~」

「……え゛!?」

「私はただ指を刺しただけでそちらに衛兵さんが居るとは一言もいってませんね~?」

「お、お前騙し……うっ!?」

 

 ドラフの男はうっかり口を滑らせた。直ぐに口を塞ぐがも遅い、俺達だけでなく一部始終を見ていた通行人ですら彼等を睨み非難する視線を向けた。

 

「シェロさん、こいつらは……」

「実は最近この島にスリのグループが来たと聞いていたので~……もしやと思いましたが、どうやら当たりのようですね~」

「呆れた……市民を装って仲間を助けようとしたのね。態々縄で縛って無駄に手の込んだこと」

 

 コルワさんが指摘したように、この男達によって縛られたスリは、この集団の仲間だったのだろう。衛兵に引き渡すと見せかけそのまま逃げるつもりだったのだ。

 

「本当に街の人間なら、一度道を間違えても指摘されれば思い出しますからね~」

「うぐぐ……」

「とは言え、私の勘違いと言う事もありますから~……ここは一緒に詰め所に行きますか~?」

「……ちくしょうっ!」

「むっ!?」

 

 突如ドラフの男は、シェロさんに殴り掛かった。追い詰められ怒りのままに動いたのだろう。俺とシャルロッテさんが直ぐにシェロさんを庇おうと動いたが、それよりも早く動き二人の間に入る者がいた。

 

「といやっ!」

「っう……!?」

 

 ピシっ! と男の手を強く叩く音がしたかと思えば、男は弾かれるように一歩後ずさる。男の手を掌で叩いたのは、あの財布を盗られた少女だった。

 

「こ、この……なにをっ!?」

「それは此方の台詞です! 暴力だなんて破廉恥極まりない。盗みを働くだけでなくこのような狼藉以ての外です!」

「何を生意気な、小娘風情が!」

「生意気小娘大いに結構! その様な小娘を狙って盗みを働く貴方達は、それ以下の小悪党ッ!」

「ぬ、ぬぬ……!?」

「もしこれ以上乱暴な振舞いを続けると言うのならば私が相手になります!」

「こ、この……馬鹿にするなよ小娘!」

 

 彼女の叱責を受けついに居直った男共は、逆上し腰に下げていたナイフや棍棒を手に持った。その内の一人がナイフを振り回し少女へ迫る。

 

「むむ、来ますか……ならばこちらも」

 

 少女は男達が得物を手に取るのを見て自身もバッと腰の鞘より刀を引き抜いた。

 鞘より抜かれた刃は光に照らされキラリと光る。美しさだけではない、見ただけでわかるその“刃”の精巧さ。道楽で持つような代物ではない。

 

「せいっ!」

「うっ!?」

 

 ビシィ──ッ! と、今度は手では無く刀の峰で男の手を打ちナイフを弾き飛ばす。

 

「えいやっ!」

「ぅが……っ!?」

 

 そして間髪入れずに強烈な峰打ち、あっけなく男は気絶し地面に倒れた。

 

「ふう……さあ、まだ来ますか!」

「こ、こいつ……! なら──」

「え!? あ、兄貴なにを!?」

「そら、こいつでもくらえ!!」

「わあぁ──ッ!?」

 

 ドラフの男は不意に自分達で縛った男を持ち上げそのまま少女へと投げつけた。スリの男も突然の事に驚いているが、ドラフの男はなにも気にした様子はない。

 

「うわわ……っ!?」

「おっと危ない!」

 

 急に飛んできた男に驚いた少女、まさか峰打ちとしても刀で飛んで来る人間を打ち払うわけにいかない。だが今度は俺が彼女の前に躍り出る。そして投げられた男をつかみ取った。

 

「やれやれ、無茶苦茶だ……ああ、そっち平気?」

「は、はい! 何度もすみません!」

「た、助か……」

「お前はそっちで寝てなさい」

「ぎゃっ!?」

 

 財布の事も合わせて礼を言う少女。スリの男も何か言っているが、いまコイツに構ってる暇は無いので適当に地面に転がしておく。

 だがその間に他の男達は反対方向に逃げ出そうと走り出そうとしていた。

 

「そら今の内に──」

「させんで!」

「うげっ!?」

 

 だが奴等にとっては予想外、振り向き走り出そうとした矢先男の一人がバシンッ! と顔を叩かれよろめいた。

 

「そんな簡単に逃がすわけないやろ、あほたれ」

 

 パンパンと手でハリセンを叩くカルテイラさん。今男の一人を叩いたのは、彼女のハリセンであった。

 俺達も男達の様子をただ眺めていたわけでは無い。諦めの悪そうな男達の事だから何かしらの方法で逃げようとすると思い、既にカルテイラさん達は男達を囲んでいたのだ。

 

「逃げれると思わぬ事であります」

「泥棒はダメって、子供でも知ってんょ~?」

「悪い大人はお仕置きが必要かしらね?」

「ま、抵抗するってんなら相手してやるがよぉ……!」

 

 シャルロッテさん達は武器を手に持った。B・ビィもマチョビィ形態へと変わる。そのように様子の変った俺達を見て刀の少女は驚き俺達を見ていた。

 

「あ、貴方達は一体……!」

「ふっ……どこにでもいる、普通の騎空団さ」

「それはねーよ」

「フツージャナイネ (=ω=)」

「……無いであります」

「無ぃわ~」

「うん、無いわね」

「う、うるせえやい!」

 

 せめて初対面の人にぐらい普通を装わせてくれ。

 

 ■

 

 五 侍少女大捕物

 

 ■

 

 バザーに集まった団長と仲間、一人の少女、そして犯罪グループ。騒ぎも大きなり始め彼等が居る場所には、一定の距離を保ちながらも野次馬が集まりだしていた。

 

「えーと……泥棒さん達、まあこんな状況だけどもね。俺としては、争わずに済ませたいのだけど」

「う、うるせえ!」

 

 団長は一人剣を抜かず話し合いでの解決を提案してみたがあっけなくそれは断られた。

 

「たかが小娘に小僧の騎空団なんて……」

「そこの黒ナマモノを見てもそう言うのかあんた……」

「それは……い、いやどうせ見かけ倒しだ! おい、お前等やっちまえ!」

 

 マチョビィの姿を見ても頭に血の昇った男達は抵抗する事を選んだ。むしろB・ビィのその姿が何か細工をしたものだと勘違いしたらしい。彼等は巨大な鎧姿のコロッサスの事もそのように考えていた。

 また団長以外の殆どが年若い女性である事、その事で男達は団長達の実力を見誤っていたのだ。

 リーダーであるドラフの男が指示を出すと、短剣を持った男達は団長とミリン、そして他の団員達のへと襲い掛かる。

 

「やる気なら仕方ない。君、腕に自信ありのようだけどやれるかい?」

「ミリンとお呼び下さい。あの程度の悪党に負けるつもりはありません!」

「了解、ならミリンちゃん。俺も頑張るとしようかね……来い!」

 

 団長もついに剣を抜き、隣に立つミリンと並び剣を構えた。

 それと同時に他の悪党達は、女子供のクロエやコルワを狙う。

 

「ひゃぁ! クロエの方も来たヽ(゚Д゚;)ノ!?」

「どけぇガキが!」

「ぃゃ、そっちが来んなし!」

「ぐが……っ!?」

 

 驚いた声を上げたクロエだったが、彼女はナイフを振り上げて迫る男のナイフの間合いを見切り、肩にかけていた鞄を男の顔に叩きつけその体勢を崩した。

 

「ってかぁ、大人なってドロボーとかダサィことしてんじゃね~……って──のっ!」

「ぶご……っ!?」

 

 そして態勢を崩した男の顎に向かい鋭くハイキックを放った。その一撃で男はそのままナイフを落とし地面に倒れた。

 

「ぉっ!? クロエってばバシッとゃれた? カッコょく決めちゃった系!? 特訓のせーかキタコレ(゚∀゚)!!」

「てめえ、やりやがったな!」

「クロエ殿、まだです!」

「ぇ……ぅひゃっ!?」

 

 一人の男を倒したクロエの傍に男が一人迫っていた。だがそれに気が付いたシャルロッテが素早く男の前に出る。

 

「ていっ!」

「ぎゃあっ!? ひ、膝が……ぎゃっ!?」

 

 シャルロッテは、男の膝に向かいクラウソラスの柄頭を強く叩きつけた。かなりの痛みだったのか男はその場で思わず膝をつく。それと同時に彼女は、バックラーを装着している左手で裏拳を男の顔に向かって振る。すると膝をつこうとして顔を下げた男の顔にバックラーが直撃、小柄である事を活かしたその攻撃に、男はたまらずそのまま気絶してしまう。

 

「ス、スゲェ~……ぁ、てかぁざますシャルるん」

「クロエ殿、十分特訓の成果は出てますが、何事も油断大敵でありますよ」

「は、はぃ、さーせん……(;´・ω・)」

 

 クロエとシャルロッテが二人の男を倒した時、コルワの元へも男が迫る。

 

「んだぁ、てめえは! 華奢なくせに武器も持たずやろうってか!」

「悪党風情が偉そうに言わないでよ」

「なにっ!?」

「あんた達みたいなのはね、世のハッピーエンドの障害よ。人の物を奪うなんて酷い事して、今まで何人の幸せ奪って来たのよ。知らぬ存ぜぬじゃ済まされないわよ!」

「なぁにがハッピーエンドだ!? わけわかんねえ事言ってんじゃねえぞこんあまぁ!?」

「聞く耳持たずね。なら私も遠慮しないわよ! これをくらいなさいっ!」

 

 コルワは手提げのバックから何かを取り出すとそれを男目掛け投げつけた。それは一直線に男の手元へと向かい、そのまま男の持っているナイフを弾き飛ばす。

 

「ってえっ!? なん、だ……って、これは!?」

 

 ナイフと共に落ちたのを見て男は驚く。それは編物に使う木製の棒針であった。

 

「油断したわね。そして次はこれ!」

 

 コルワは棒針に気をとられた男に向かい、勢いよく糸の巻かれた糸巻を投げつけた。

 

「くそ……何かと思えば、ただ物を投げつけてるだけじゃねえか! 舐めやがって!」

 

 だが今度は男もそれに気が付き飛んで来る糸巻をつかみ取った。しかしそれを見てコルワはニヤリと笑う。

 

「な、なにが可笑しい!?」

「ふふ……なんでかしらね? ところで貴方“まだやる気”かしら?」

「ふざけんな、なにを……! なにを……なに、言って……アレ? 俺……なんでこんな、急に……」

 

 男は自分でも驚く程急に気分が変わったのが分かった。体が重い、実に億劫だった。そして何よりも“罪悪感”が止めどなく溢れ出てくる。

 よく見れば男の掴む糸巻からは、細く長くコルワの下に糸が続いていた。

 

「その糸巻からは、“既に糸が出ている”。私の魔力を付与した糸がね。そして今あなたの罪悪感を増やした。ほんの“ちょっぴり”だけど、貴方に人の心があるならそれは十分な心の重みになる。そこで後悔しなさい、今までの行いをね」

「う、うう……俺は、俺はぁ……」

 

 男は溢れ来る罪悪感に耐えられなくなり、その場に座り込み動かなくなった。魔力を込めた糸を介して対象の気分を変える事の出来るコルワ、やろうと思えばこのような芸当も可能であった。

 

「お前あいつに何しやがった!?」

「あら?」

 

 だが彼女の後ろから他の男が近づき羽交い締めにする。

 

「やーね、女性に乱暴して」

「うるせえ! このまま締め落して──」

「出来ると思うのかよ?」

「ぅえ?」

 

 コルワを締め上げてやろうとした男だったが、後ろから聞こえる声に驚き振り向く。するとそこには自分を見下ろすB・ビィの姿があった。

 

「さあてその手を離してもらうぜ」

「うげええっ!? いだ、いだだだ……曲が、折れ……!? 俺の腕折れれぇ────っ!?」

 

 B・ビィはコルワに伸びた男の手を後ろから掴み上げる。するとそのまま強引に彼女から引き離した。尋常では無い剛力で腕を曲げられ、腕の骨も男自身も悲鳴を上げた。

 

「安心しなぁ、お前が抵抗しなけりゃ折れやしねえ」

「ふう、ありがとB・ビィ。どうやらハッピーエンド・スピン・クラッチを使うまでも無かったようね」

「なにその技、オイラ超気になる。そらコロッサス、こいつも頼むぜ!」

「うわあっ!?」

 

 コルワの秘められた必殺技が気になりつつも、B・ビィは引き離した男を両手で持ちあげるとそのままコロッサスに向かい投げ飛ばした。

 

「ハイ (*ゝω・)ノ キャッチ!」

「ぐえっ!」

「さあさあ、観念し。アンタらみーんな御用やで~」

 

 そしてコロッサスは、その投げ飛ばされた男を大きな手で受けとった。今彼の手には、既に彼に捕まり抵抗を諦めた男達が握られていた。そしてカルテイラも他の無力化された男達を縄で縛りあげていた。

 瞬く間に悪党達は全滅寸前となった。もう残ったのは、リーダーであるドラフの男一人のみ。

 

「そ、そんな……」

 

 ドラフの男の目の前には、気絶して倒れる仲間の姿があった。その傍には、剣と刀を構える団長とミリンの二人。

 

「まあこうなるよね」

「物を奪うか、逃げるかしか考えない相手に遅れなど取りません!」

 

 おそらくミリン一人でも十分に勝てる相手だったのだろう。男達は正にケチな泥棒でしかなった。ナイフの使い方も乱暴な振り回すだけの戦い方しか知らない。

 もしも大人しく投降していれば、このような事にはならなかったろう。だが往々にして悪党、特に小悪党とは自身と相手の力量の差を見誤るものだ。

 

「ど、どうしてこんな事に……」

「どうしても何も悪い事してるからでしょうに。長続きしないもんだよ悪事なんて、しかもあんた仲間に任せて逃げるばっかだし」

 

 なんとも情けない事に、このドラフの男は仲間に団員達の相手を任せている間戦いに参加する事無く何とか逃げようと右往左往するばかりであった。

 

「屈強なドラフボディが泣いてるよ。あんたリーダーなんじゃねえの? せめて率先して戦いなさいよ……」

「う、うるさい……俺は頭脳派なんだ!」

「頭脳派はこんなセコイ悪さしないんじゃねーかね」

「さあもう残ってるのは貴方一人、観念しなさい!」

 

 逃げる事も出来ず、仲間も皆やられた。ドラフの男は、ダラダラと汗を流し焦りや怒りで顔を歪ませていた。

 

「……ぐ、ぐぐ……ちくしょう、くそったれめぇ!!」

 

 するといよいよ捨て鉢になったのか、ドラフの男は棍棒を振り上げミリンに向かって行った。

 

「往生際の悪いこと……」

「お兄さん、ここは拙者にお任せ下さい」

 

 ミリンは徐に剣を鞘に戻したかと思えば、そのまま団長の前に出る。棍棒を片手に迫る男は、やはり腐っても巨漢ドラフ、突進する姿の迫力は中々のもの。だがそれに臆せずにミリンは迫る男をジッと見据えた。

 

「てめえなんかにぃっ!」

「──鳳回転流・抜刀術!」

 

 相手との距離が縮まり、自分の間合いへと相手が入ったその瞬間、ミリンは強く踏み込みながら鞘から刀を引き抜いた。

 まさに一瞬──白刃が舞い、風と共に閃光が走る。

 

「う……っ!?」

「……」

 

 ドラフの男は棍棒を振り上げたまま立ち止まった。ミリンは何時の間にか、男とすれ違いその後ろに立つ。

 するとどうした事だろうか、バラバラと男の持つ棍棒が輪切りになって地面へと落ちていく。そしてその事に驚愕するのと同時に男は白目を向きグラリ……と倒れて行った。

 ミリンは静かに刀を鞘へと戻す。

 

「ご安心を……峰スラッシュです!」

「うぅむ……! お見事っ!!」

 

 見事の剣技、それに唸る団長。称嘆の声を上げると野次馬達もつられて「お見事!」と彼女を褒め称える。

 

「凄い……あの子、素敵じゃない!」

 

 そしてこの時、誰よりもミリンの事を熱烈に見ていたコルワに団長は気が付いていなかった。

 

 ■

 

 六 かくかくしかじか ござござる

 

 ■

 

 あの悪党達を倒した俺達は、縄で縛り捕えた男達を街の衛兵に突き出した。奴らが現れた時シェロさんも言っていたが、あのグループは少し前からこの島で盗みを働いており衛兵達を困らせていたらしい。どうやら島から島を転々として悪事を働く奴等だったようだ。

 悪党達の後の事は衛兵さんに任せた俺達は、やっとこさ遅めの昼飯にありつく事が出来た。街の繁華街にあるファミリー向けカフェレストラン、気取った感じも無い入りやすい良い店だ。

 更にスリの被害者であり、共に男達をやっつけたミリンちゃんを誘い食事を共にする事になった。と言うのも何故かコルワさんが強く一緒に食事をしないか誘ったからである。

 

「ゃっとごはん~……クロエもうぉ腹がペコちゃん過ぎて、背中と引っ付ぃちゃぅ~……」

「丁度テーブル席空いててよかったな。奥の方だからコロッサスも入れるし」

「ショウエネモードナラ (´ω`) ダイジョーブダネ」

「あの……本当に拙者もいいんでしょうか……」

 

 席に座る俺達を見て遠慮がちにするミリンちゃん。中々席に座らず自分が場違いであると思っているようだ。

 

「良いの良いの! ほら貴女も座って、はいこれメニュー。好きなの頼んでいいわ、私払うから」

「ええ!? いえ、そんなお構いなく!」

「遠慮しなくていいの、私の方から誘ったんだから。あ、店員さーんっ! 取り合えず人数分のドリンクバー、それとポテトとオニオンフライの盛り合わせにシーザーサラダお願いね──っ!」

「コルワ殿なんだか慣れてるであります……」

「仕事柄こんなコミュニケーションも多いんでしょうね」

 

 やたら仕切りの上手いコルワさん。その強引とも言える押しの強さにたじろぐミリンちゃんは、遠慮がちなまま取り合えず席に着いた。

 

「無理に誘って悪いね。何と言うか、この人強引だから」

「いえ、誘って頂けたのは嬉しいです。そう言えば、もう一人……えっと、あの商人の方は?」

「ああカルテイラさん? あの人は──」

 

 泥棒を捕えた後カルテイラさんは直ぐに自分の店に戻った。スリを目撃し直ぐに追いかけたので、店はそのままだったらしい。特に問題が無ければそのまま商売を続けて稼いでくるそうだ。

 

「その内艇に戻ってくるけど、多分もう商売再開してる頃だろうね」

「そうでしたか……ちゃんとお礼を言っておこうと思ったんですが」

「気にしないで良いって言うだろうけどね」

 

 何時もの様に「にしししし」と笑ってそれで済ませそうだ。

 

「あ、それに皆さんにも……改めまして、拙者の名前はミリン。侍やってます!」

「お侍さん?」

「と言う事は、ミリン殿は東の御出身でありますか」

「はい! 空域のかなり東の方ですね」

「かなり離れていますが、お一人でありますか?」

「そうです。実は拙者異国の文化に興味を持ちまして、見聞を広めるため旅に出たのです」

「なるほどな。だから見慣れねぇ服着てんだな」

「はい、着物って言うんですこれ!」

「そう、着物よ!!」

「うわ、なんすか突然!?」

 

 B・ビィがミリンちゃんの着ている服について聞くと、コルワさんが強く反応を示した。

 

「着物! 東の島から伝わった伝統衣装! 今でこそ私達の住む地域でも年始に着たりしてるし決して珍しい物では無くなって来たわ。夏には着物の一種のユカタヴィラが夏のロマンスを彩って若者にも人気だわ。けどそれは昔に東から来た商人や、東に行った学者達の手を介してその現物や文献が伝わったためなのよ。着物を作る技術は伝わってるから、こちらの地方でも作られてるけど上質な生地を使って東の地方で作られた着物は、今でも価値が高くてこっちでは高値で取引されている事もあるわ。いえ、それはともかく……ああ、私とした事がすっかり忘れてた! 着物を参考にすればいいのよ、この頭に引っかかってるもやもやのデザインに!」

「あの……私なにか変な事言いましたか?」

「気にしないで、発作みたいなものだから」

「はぁ、そうですか?」

 

 早口でまくし立てるコルワさんに引き気味に何か自分が粗相でもしたか俺に尋ねるミリンちゃん。だがこの人は元からこんなんなので気にしなくていいです。

 

「そこでミリンちゃん!」

「ござるっ!?」

「ぉーコルワ姉燃ぇてんねぇ」

「はーい、ミリンちゃん怖がってますからねえ。はい、ちょっと下がりましょうか」

「おっと度々ごめんなさい」

 

 ずずいと身を乗り出しミリンちゃんに迫るコルワさん。美人さんとは言え興奮した顔で迫られれば怖かろう、コルワさんの肩を掴んで少し後ろに下げる。

 

「おほん……では改めてミリンちゃん。実は貴女にお願いがあります」

「お、お願いですか?」

「ええ、実は貴女の着物とそれを着た貴女をモデルにさせて欲しいの」

「モデル……? モデル……え、モデルですかっ!?」

 

 コルワさんはミリンちゃんに話す。服飾デザイナーである自分が今新しいデザインに関してスランプになっている事。そしてそのデザインの参考になる何かを探していた事。そしてそんな時に出会ったのがミリンちゃんだったと言う事。

 コルワさんは、彼女の着物とそれを着たミリンちゃんを参考にデッサンを描き、そこから更に新しいデザインを生み出したかったのだ。

 

「その綺麗な着物を着て、そして刀を扱う貴女を見て“これだ”と思ったわ。だから是非貴女をモデルに新しいデザインを考えたいの」

「せ、拙者をモデルに新しい服を……? な、なんだか恥ずかしいような……」

「あとそうね……勿論御礼も出すわ、モデルの依頼でもあるのだから」

「いえ、いえいえそんな!? お、御礼なんて……け、けれど嬉しいです。この着物を綺麗だって言ってくれて……商人の方、カルテイラさんにも話したんですが、これ故郷の母が織ってくれたものなんです」

「まあ道理で! 娘のミリンちゃんのために織ってくれたからこんなに素敵なのね!」

「えへへ、ありがとうございます」

 

 着物と母の事を褒めてもらい照れた様子のミリンちゃん。見ていてなんだか微笑ましい。

 

「えっと……拙者をモデルにと言うのは恥ずかしいですが、着物ならいくら見てもらってもかまいませんよ。着物文化が評価されるのは拙者も嬉しいですし、それにさっきは財布を取り戻していただいて私の方こそ御礼をすべきですし」

「いえそう言う訳にはいかないわ! それはそれ、これはこれ! これは私個人のあなたへの依頼だから、そこはハッキリしておきたいの」

「し、しかし……ううむ、けど」

 

 ミリンちゃんはグイグイと来るコルワさんに困惑していたが、御礼と言われ何か思うところがあるのか少し考えると控えめに口を開いた。

 

「その……拙者御礼と言うか、どちらかと言うと色々と助言等をいただきたいのです」

「助言?」

「はい、今話したとおり拙者は一人旅の身ですゆえ……お恥ずかしいのですが、異国について世間知らずと言いますか、何かと分からない事も多く……皆さんは旅慣れてらっしゃるようなので、何か旅の助言をいただけたらな、と……」

「なるほどオッケーよ! なんでも言ってちょうだい。力になってあげるわ、私と彼が!」

「…………え、俺ッ!?」

 

 なんかサラッと巻き込まれた。

 

「そう言えば皆さん騎空団の方達でしたね」

「ええ、彼は騎空士さんで騎空団の団長なのよ。私の本業は別だけど、今は彼の艇に乗せてもらっているの。理由は貴女と同じ、見聞を広める旅みたいなのと一緒。ね、団長さん?」

「あー……まあそんなとこです」

 

 かなり強引な加入ではあったが確かにそんな感じだ。

 

「なんと、そうでしたか!? 拙者と歳も同じ位なのに、既に人を率いる立場となり広い空を旅しているとは……お兄さん、いえ“団長”さんは大変立派なのですね!」

「はっはっは……ぅえっへっへ、そう褒めなさんなお嬢さん」

「相棒、顔が緩んでキモくなってる」

「うるせえ」

 

 褒められたら嬉しいんだからしかたねえだろ。見逃せそう言うのは、泣くぞ。

 

「んで、オイラ達はその仲間ってわけよ。こっちも改めて名乗らせてもらうぜ、オイラはB・ビィってんだ。まあ、よろしくな」

「コロッサスデス ( ^ω^) ヨロシクネ」

「自分はリュミエール聖騎士団団長シャルロッテ・フェニヤであります。自分もわけあって仲間と共にジミー殿の団に身を寄せさせていただいております」

「クロエでぇ~す。だんちょんとこでぇ~激っよヒーローになれるょ~に絶賛しゅぎょ~ちゅ~的な? ょろぴくまる~☆(´ゝ∀・`)ノシ」

「さっきのカルテイラさんも仲間でね。まあ他にも仲間は居るけど今別行動中」

「わあ……! 他にも沢山のお仲間がいて……きっと色んな所を旅されてきたのですね!」

「まあそれなりには」

 

 ミリンちゃんは俺達が騎空士だとわかるとその目を輝かせた。それはどこか、空の旅に憧れを抱いていた時のジータを彷彿とさせた。

 

「あの……よろしければ旅のお話を聞かせていただけませんか? 今まで騎空士さんのお話を聞く機会って無くて……それに、何か旅の参考にもなると思うんです!」

「俺達のか……あんま参考にはならないと思うけど」

「まあ反面教師にはなるだろ」

「うるせいB・ビィ」

 

 だが確かに俺の話が参考になるような状況になれるならなってみろって所はある。【Lesson,1】、まずは星晶獣とタイマンで勝ちましょう、である。まずねーよ。

 

「まあお話しようかね。時間なら十分あるし」

「やったぁ! ありがとうございます!」

「だが何から話したもんか……」

「お待たせしました~」

「おっ? 相棒、飯きたぜ」

 

 俺達の旅の中で常人でも理解の追いつく話を選んでいたらコルワさんの頼んだ料理が運ばれてきた。人数分のポテトとオニオンフライ、そしてシーザーサラダ。揚げたてなのか、ポテトはホカホカとして食欲を誘う揚げ物の香りが漂う。

 

「美味そうだ。とりあえずこれで騒ぐお腹を静めれるな」

「後は各々好きなの頼みましょうか。私そんな食べないし、スープか何か軽いので……あ、ミリンちゃんは何か決めた?」

「は、はい! 今決めますね!」

 

 ひょんな事で出会った侍少女。その出会いの経緯は可笑しなものであったが、しかし美味しい食事もあってその後お互い旅の話に花を咲かせたのだった。

 

 ■

 

 七 旅の九割苦労話

 

 ■

 

「ええっ!? コロッサス殿って星晶獣なんですか!?」

「(*´ω`)v ソダヨー♪」

「大分サイズ抑えてるけどね」

 

 食事をとりつつなんやかんやで話は盛り上がる。ミリンちゃんの旅の話は、観る物全てが余程新鮮に感じられたらしく、まるで先程観て来たばかりだと思わせる本人の語り口もあってか聞いていて実に面白い。そしてやはり故郷である東の島での話は特に盛上った。

 彼女の両親は元々別の島の生まれで、父が民族学者で全空の文化を調査して回り、母はその船の専属医であった。そうして両親は出会い旅の中で恋に落ち、揃って魅了された東の地に移住したそうな。

 この話にコルワさんが食いつき「イエス、ナイスハッピーエンド!!」と叫んでいた。まあ如何にも好きな話だろう。しかも幸せ物語主役二人の娘さんが目の前に居るのだから尚更テンション上がっていた。

 そして俺達の話もまたミリンちゃんの興味を刺激するには十分であったようだ。中でもうちの団が星晶獣大バーゲンセール状態と知って驚き、目の前に居る鎧と謎の黒いナマモノ、もとい化物トカゲもそうだとわかり更に興味津々であった。

 

「はあ……不思議な方達とは思いましたが、まさかです……」

「喋る上に変身するコイツを、よく不思議で済ませようと思ったね」

「しかし驚きです。異国では騎空団で星晶獣を仲間にするのが普通なのですね」

「違います、ミリン殿違います。ジミー殿の所がおかしいだけであります」

「おかし……っ!? おかしい……いや、そうですよね」

「あっ!? ちょ、違っ! ジミー殿誤解であります! 今のは言葉の綾と言いますか、決してこう言った状況が当たり前ではないと言う意味でして、ジミー殿がおかしいというわけでなくて!」

「平気……わかってます。わかってますから……」

「んも~だんちょナイーブ過ぎっしょ (-∀-`; )。純情ガラスハートゎろゎろ~」

 

 うちの団がおかしいのは自覚している。自覚はしててもやはり言われると辛いのだ。特にシャルロッテさんに言われるとなんか特に辛いのだ。と言うかフォローが更に辛いのだ。

 

「どう言った所で全空一のビックリ騎空団には変わらないわね」

「あんたその騎空団に身を寄せてる自覚有ります?」

「当然! とっても刺激的で楽しいわよ?」

 

 悪気の無い顔で言いやがるぜ、このハッピー大好きさんめ。

 

「しかしこんな騎空団があるなんて拙者想像もしませんでした。やはり異国は驚く事ばかりです」

「いや異国関係ないと思うよ俺」

「それに凄い大冒険の連続! 狂える星晶獣を鎮め、悪党を懲らしめる大活躍に大立ち回り! 星晶獣に乗ってのレースなんて!」

「いや、最後のは違うよ」

「あ、そうでした……えへへ、すみません。つい頭の中で大風呂敷を……」

「あれ、相棒そんな事やらなかったっけ?」

「やってねえよ」

「けど星晶獣には乗った事あるでしょ?」

「ええっ!? やっぱりあるんですか!?」

「それセレストの艇形態の事でしょ……」

「まあリヴァイアサン殿の波にユーリ殿達と乗ったりもしましたが……」

「星晶獣と波乗り!?」

「クロエん時は、がっちゃんに運ばれて落っこちたんだょね~。ぉかげでクロエ助かったんだけどさぁ~、ゎら」

「星晶獣に運ばれて落ちる!」

「みんなストップ! 話ややこしくしないで!?」

 

 あと俺が落ちるとこそんな興奮するとこかな? 星晶獣の要素除いたら、俺が落ちてるだけだよ? 

 

「すごいすごい! 団長さんなんだか昔話で活躍する英雄みたいです!」

「へへへ……よせやい」

「相棒、顔顔」

「うっせぃ」

 

 もう俺の顔は放っておいてくれよ。

 

「それでどう? 何か参考に……なるわけないか。まあ他にも答えれる事なら答えるから何でも聞いてよ」

「ありがとうございます! それではお恥ずかしい話ですが……やはり路銀についてちょっと」

「お金かぁ……足りないの?」

「いえ、両親が必要以上に持たせてくれたので今のところは……ただ今後旅を続けるならどうしても必要になる物ですし、拙者もよくよく節約してはいるんです」

「ああ、だから“さっき”の奴みたいなのを──」

 

 さっきの──と言うのは、皆で改めて好きな料理を頼もうとした時の事である。コルワさんが払うと言う事で好きなのを選んで良いと言われたミリンちゃんは、メニューに穴が開く程見ていたのだが中々注文を決められずにいた。そこで何か探しているのか聞いてみると「実はこれを探していたのですが」と言いながらメニューとは別に一冊の本を彼女は荷物から取り出した。

 俺はそれを受け取って見てみると、それは表紙の色が煤けている古いガイドブックだった。付箋の貼られたページには、上手に描かれたパスタのイラストがあった。更にその説明文には“若者の間で大流行”“今オススメの一品”とあったが、そんな話は最近聞いた事がない。

 俺は流行に疎いので念のためクロエちゃんにも確認をとってみたが「初知り~」と言われ聞いた事が無いようだった。

 不思議に思い本の出版年を確認してみてまたも驚いた。その本はもう30年は前のガイドブックだったのだ。

 どうやら特売品の棚にあった物だったらしく、中古品のため全ての情報が古かったと言うオチだった。そのためスパゲッティと言う名称以外が記載されておらず、彼女はスパゲッティがパスタの一種と言う事に気がつけなかったわけである。

 さあこれで待望のスパゲッティを頼めると分かったが、彼女はただ茹でた麺に塩のみで食べると言った。本当にそれでいいのか訪ねたのだが、「素材の味を楽しむので!」と本人は乗り気だったし、そして実際食べきっている。

 本人が良いと言うので良いのだろうが、奇妙と言うよりなんか渋い食い方だ。

 

「しかしまた古い本を見つけたもんだね。カレーライスまで流行扱いだし」

「たはは……一人旅の身ゆえ、路銀を節約しようと特売の文字に釣られよく調べもせずつい買ってしまいました」

「大事な事ではあるけどね。節約、大事。お金、大事」

「な、なんか気持ちこもってますね」

 

 そりゃ気持ちもこもるってもんだ。

 

「しかしこの本もですが、あまり節約ばかり考えてしまうと折角の旅も窮屈になってしまいます。とは言え今回のようにトラブルもありますし、万が一を考えると不安でして……そこで何か長旅で効率よくお金を得る方法ってあるでしょうか?」

「そりゃ俺が聞きたいよ」

「ござる?」

「いやこっちの事」

 

 何故か減らず増える借金を思い出し不貞腐れモードになりそうになったが直ぐに切り替える。

 

「それでお金、となると……まあやっぱ何処かしらで“依頼”を受けるかしてそれで稼ぐだね」

「うむぅ~……やはりそうなりますか」

 

 予想していた答えだったらしく、難しい顔になったミリンちゃんは腕を組んで唸った。

 

「実は拙者もそう思って何度か依頼を受けようとしたのですが、騎空士と言うわけでも無く女一人の身である所為かあまり大した依頼を受けさせてくれないんです」

「迷子探しや草むしりとか?」

「はい……無論誰かがお困りであれば迷子探しも草むしりもやりますが、拙者もある程度腕に自信はありますので魔物退治でも遅れはとらないつもりです。ですからそう言った依頼を受けたいのですが……」

「無理だったと」

「ござるぅ……」

 

 今度はしょぼくれてしまうミリンちゃん。申し訳ないのだが口癖のせいか妙に可愛い。

 

「けど確かに一人旅だとそれは問題かもな。いざお金が必要と言う時もあるだろうし……そうだな」

 

 騎空団と言う集団であるなら、“集団である事”が既に数と言う名の武器であるので早い段階で魔物討伐の依頼も受けられる。そうして活動する内にその団の名前がブランドになって広まり民衆や依頼を紹介するギルドからも信頼を得る事が出来る。

 また騎空艇を所持しているなら尚更良いだろう。騎空艇は騎空団にとって看板のようなものだ。“あの艇に乗ってる、あの騎空団”として人々の記憶に残るからだ。うちみたいに──良くも悪くも。

 だが個人であるとそれは難しい。騎空士でも無い旅人個人では、ミリンちゃんの様に受けれる依頼も限られ騎空艇も所持しようが無い。余程の強者、それこそジータクラスに強いなら話は別であるがミリンちゃんは流石にあのレベルでは無いだろう。

 とは言えミリンちゃんの強さは先ほど見たばかりだ。相手はケチな盗人であったが、この子のあの太刀筋は生噛りのものではない。それを知る者であれば実力相応の依頼をくれるはずだ。

 

「……さっきシェロさんいたし、あの人に紹介するか」

「シェロさん?」

「さっき泥棒を引き留めてくれたハーヴィンの人ね。よろず屋さんで何かと凄い人でね。何でも売ってるし、何でも用意して、何でも依頼を持ってきてくれる人。親切だしその人なら何度か依頼受ければ、困った時も助けてくれるよ」

「ほ、本当ですか!?」

「うん本当」

 

 さっきの現場にもいたし彼女の実力についてはわかっているはずだ。きっと彼女ならミリンちゃんの実力に見合った依頼を紹介してくれるだろう。悪い結果にはならないはずだ。

 

「後はそうだな……どこぞの騎空団に入団するのも有りかなぁ」

「騎空団、ですか」

「まあ自由気ままな一人旅とはいかなくなるけど──」

「それよ!!」

「うおっ!?」

「ござるっ!?」

 

 突然コルワさんがテーブルを叩きながら叫び、俺も驚き叫び、ミリンちゃんも驚き叫ぶ。

 

「団長さん、“それ”が一番ナイスなアイディアだわ。皆でウィンウィン、ハッピーエンドよ!」

「それって……まさか」

「ご、ござる……?」

 

 何やら一人話が完結しているコルワさん。何が何やらわからず首をかしげるミリンちゃん。

 一方俺は、なんかまた話が勝手に進められそうでとても嫌な予感がしていたのだった──。

 

 ■

 

 八 旅は道連れ、世は情け

 

 ■

 

『……で? 仲間にしたのか?』

「いや、そのね……まあ、うん」

 

 エンゼラの甲板、そこに並んで立つ俺とリヴァイアサン。揃って見るのは、甲板で目を輝かせているミリンちゃんである。

 

「うわぁ~……! 凄い凄い、どこもピカピカですね!」

「出来上がってからそう経っておりませんから。ほぼ新品同様であります」

「凄いなぁ……拙者こんな立派な騎空艇乗ったの初めてですよ!」

 

 シャルロッテさん達に説明を受けながら興奮している様子。いやあ、微笑ましいですねえ。

 

「なに呑気してんだおめーはよ」

「いて!」

 

 はしゃぐミリンちゃんを見てると横に立っていたおっさんに膝小僧を蹴られた。

 

「ただの納品依頼から帰ってきたかと思えば何仲間増やしてんだよ」

「色々あったんすよ……」

 

 ──時は遡る事30分程前、あの食事の席で俺の不用意な「騎空団に入団するのも有り」発言を聞いたコルワさんが突如「ミリンちゃんも仲間になればいいのよ!」と発言。当然ちょっと待ったと止める俺。

 いくら何でも急すぎる──それが何時も通りだとしても──ミリンちゃんと俺達は、出会ったばかり──これも何時も通りだとしても──初対面なのだから。

 が、コルワさんは続ける。

 

「団長さん、女の子が一人旅よ? 文化の違う場所から来てるのよ?」

 

 そう言う事言われちゃうと弱い俺。しかも古い観光案内の本を買って勘違いしたままで旅をするタイプの子。なんだか心配になってきた。

 とは言え本人の気持ちが重要だ。勝手に俺達で話を進めてはいけない。だが全員集合してないのに関わらず、こんな濃い面子の頓珍漢集団に入りたいと思うか? 普通思わないだろう。そこらへんの事を踏まえてミリンちゃんにも一応「一緒に来る?」と意見を聞いてみる。すると──。

 

「そ、そんなお気になさらず。それに急にお邪魔すると……皆さんの旅の邪魔になってしまいますし」

 

 なんか俯いてしまった。なんてこった、もしかしてちょっと期待してたの? 

 と言うか待ってほしい、違うのだ。別に俺は暗に「来るな」と思って聞いたんじゃないんだ。と言うか別に本人が希望するなら構わない、と言うか邪魔とかじゃないし、もっと言うならミリンちゃんみたいなタイプの子なら俺は一向にかまわん!! 

 

「──と言う話し合いがだな」

「おめーが甘いだけじゃねーか」

「あ、甘かないやい!?」

『お前は本当に女子(おなご)に弱いな』

「誤解与える言い方止めてもらえるっ!?」

 

 それに別に女子に弱いとかじゃねーし、一応俺もミリンちゃんも納得して入団と言う結論になったんだい。

 

「ミリンちゃんの剣の腕はかなりのもんだった。あれは俺達の助けにもなってくれる。彼女も彼女で旅を続けれて寝食の心配も減る、一応互いに悪い話じゃなかったんだよ」

「悪い話じゃなかった、ねえ? まあそれはコルワにとってもそうだったわけだがな」

 

 おっさんが呆れた様子でミリンちゃんを見る。その傍には仲良く話すコルワさんが居た。

 

「コルワはコルワで興味のある東の着物が見れる。ミリンの奴が持ってる他の着物に、知ってる着物文化の話も聞ける。良い事尽くめってわけだ」

「まあ別に打算だけで誘ったわけじゃないでしょうけど」

「わかってるよ。着物やなんかは建前、こっちが必要としてるからって事でミリン自身に入団を遠慮させねーためだろどうせ」

『真剣に彼女の事を心配しての提案だろうな。会ったばかりだがわかる。あれは素直な……いや、素直過ぎる娘のようだ』

「実際剣の腕が良かろうと慣れねえ見知らぬ土地で一人旅だ。さっき聞いたスリと言い、このまま一人で旅を続けてりゃ何かしら盗みか詐欺かの被害に遭ったろうぜ。世の中お前みたいにお人好しばっかじゃねーからな」

「……それ褒めてる?」

「褒めてる褒めてる。カリオストロ、優しい団長さんの事だ~い好き☆」

「そう言うの良いから」

「っんだとこの野郎!?」

 

 年齢不詳のおっさん美少女が怒っても怖かねえもんね。怖かねえが、膝小僧を狙うな。

 

『まあ我もそろそろ新しいメンバー増えるだろうとは思ってはいた。別に驚きはせんよ』

「思うなよ」

『今更何を……なんなら前のゴリラでさえ仲間にするんじゃないかと思ったぞ』

「何でだよ」

 

 流石にしねえよ。ゴリ坊達だって島離れたくねえだろうし。

 

『星晶獣が仲間になってるのに、野生のゴリラが仲間にならない理由があるか?』

「それは……いや、まあいいだろゴリ坊達の事は」

 

 今は昔のゴリラより今の仲間だ。

 そうこう三人で色々話していると甲板をあらかた見たミリンちゃんが俺に駆け寄ってきた。

 

「団長さん、団長さん! 凄い立派なお艇ですね!」

「あはは……ありがとうね。そう言ってくれると嬉しいね」

 

 借金した甲斐があると思えるよ……。

 

「いえこちらこそありがとうございます! まさかこんな立派な騎空艇で旅をする事が出来るなんて……拙者感激です!」

「ミリり~ん☆ っぎ艇ん中見にぃこぉ~(´∀`σ)σ!」

「あ、はい! 少々お待ちを!」

「ミリ……りん?」

「はい! クロエ殿が“にっくねぇむ”とやらを付けてくれました! なんでも親しい者同士でつけるハイカラな渾名だそうで。あ、もちろん団長さんも呼んでも良いですよ!」

「いや、俺はクロエちゃん文化圏の者では無いので……けど打ち解けるの早いのね君達、良い事だけど」

「えへへ……その、クロエ殿とは歳もそんなに離れておりませんので。それに拙者故郷を離れてからは、近い年代の人と話す事も少なくて……だから、なんだかとっても楽しいです!」

「そっか……うん、喜んでくれて何よりだ」

 

 明るく笑うミリンちゃん。それを見ると俺も温かな気持ちになる。

 

「まあ今日はゆっくり艇見てってよ。本格的に仲間になるのは明日だしね」

 

 実際の所今日はまだエンゼラを見に来てもらっただけである。俺達は今日島に来たばかりで、ミリンちゃんも既に島で宿をとっている。明日物資の補給後島を発つので、その前に艇の様子と使ってもらう個室を見てもらいに来ただけだ。

 

「あと念のため……もう一度聞いとくけど、俺達色々と受けてる依頼も多いからのんびり出来ない事も多いけど大丈夫?」

「もちろんです! それに艇に乗せてもらうのですから、依頼も是非お手伝いさせて頂きます! 故郷に伝わる隠し味「みりん」の名に恥じぬよう、精一杯団長さん達のお役に立ってみせます!」

「ふむ、“隠し味”と来たか」

「はい、そうなんです! 両親が侍文化に憧れてるので……主食でもおかずでもないけど、料理に必須の存在であるようにと!」

「ふふ、けど侍の君は……さしずめ“隠し味”ならぬ“隠し剣”かな」

「か、隠し剣……!? なんだかカッコいい……これ何か秘剣とか考えておいた方がいいですかね?」

「え? あ、マジに受け取られてしまった……」

 

 俺の何となく発言にわりと真剣になってしまったミリンちゃん。するとおっさんが呆れた様子でため息を吐いた。

 

「たく……別に気にすんな。こいつがちょっとカッコつけようとしただけだ」

「あれ、そうでしたか?」

「……うん、そうだけどさ。だけど別にカッコつけたとかじゃなくて……」

「自分で言っといて恥ずかしがってんな。ほれ、中案内すんだろ」

『なら我も行こう。そうだ……先ず食堂に来い、このリヴァイアサン自慢の大水槽を見せてやろう』

「星晶獣の水槽ですか!」

『ふふふ……アウギュステの海を再現した物だ』

「アウギュステですか……まだ拙者行った事無いんですよね。楽しみだなぁ」

「あ、こら君達、団長の俺を置いてくなよう……」

 

 こうして何時も通りの“なんだかんだ”で仲間となった侍ガールのミリンちゃん。明日ちょっと奮発して歓迎会でもしようか考えつつ俺達は彼女をエンゼラの中へ案内しに行ったのだった。

 

 ■

 

 九 道連れは、沢山いれば、もっと愉快

 

 ■

 

「そいじゃシェロさん、また次よろしくでーす!」

「はいはい~。道中お気を付けて~」

 

 後日、港から発つエンゼラとその甲板から手を振る団長、そしてそれに手を振り返すシェロカルテの姿があった。

 東からの旅人ミリンを仲間にした彼等は、また新たな依頼を受け次なる島へと旅立つ。

 彼等の行く先に待つのは何であるのか、それは彼等にもシェロカルテにもわからない。だが一つシェロカルテにはわかる事がある。それは彼等がどこに向かうとしても、その行く先には“騒動有り”。そしてそれを最後には丸く収めると言う事だ。

 

「おい、よろず屋……」

 

 次はどんな騒動を起こし、あるいは巻き込まれるのか──そのような事を考えていると、一人の男がシェロカルテの傍に現れた。

 

「あらあら~もう御着きになってたんですね~」

「今日が依頼の日だ。当然だろう……それよりも、受け取れ」

 

 灰色の髪を伸ばす不気味なその男の両手には、長い鎖が蛇の様に巻かれていた。不思議な事に男は立っているだけだと言うのに、その鎖は静かにジャラリジャラリ──と、風も無いと言うのに不気味に揺れる。その様子は手に巻いてあると言うよりも、まるで意思をもって鎖が“絡みついている”ようだった。

 男はその鎖の巻かれた手でシェロカルテへ一枚の紙を手渡した。

 

「報告書だ。頼まれた奴等は全て捕えた。盗まれていた金品も取り返してまとめて衛兵に引き渡したぞ」

「これはこれは~、流石お早い仕事ですね~」

「世辞はいい……それより、依頼にあった窃盗団の一つが既に捕まっていた。どう言う事だ」

「実はですね~……──」

 

 シェロカルテはその男に前日に起きた出来事を話す。すると男はその事に関しては、特に興味を抱いている様子はなかった。

 

「スリに失敗して居合わせた騎空団に捕まったか……ケチな盗人らしいな」

「すみませんでした~こちらでお会いしてからお知らせしようと思ってたんですが~」

「かまわん、そう言う事もある。第一俺の目当ては報酬では無いからな」

「それで、お目当ての情報は得られましたか~?」

 

 シェロカルテが男に問うと、つまらなそうに男は答える。

 

「何も……奴等はただ噂を聞いたに過ぎないコソ泥だった。俺が今持ってる情報と何も変わらん」

「そうでしたか~……残念です~」

「やはりもう少し踏み込んだ依頼で探るしかないか……」

「しかしそうなると、かなり危険な依頼になりますからね~。一人で受けるのはオススメ出来ませんよ~?」

「……関係ない、俺は俺の目的の為ならその程度の危険など──」

 

 その時であった。男の手に絡みついていた鎖が大きく動き伸びていく。

 

「これは……っ!?」

「おやおやおや~?」

 

 男の手から伸びた鎖の先には、強く光る紫の水晶があった。それは男の腕の自由を奪う程の力で真っ直ぐに空のある方向を指し示している。

 

「くあ……っ!? な、なんだ、この強い反応は……!?」

「ふ~む、これは恐らく団長さん達ですね~」

「よろず屋、何か知っているのか……!?」

 

 シェロカルテが何か知っているとわかった途端、不気味な程に冷静だった男の様子が変わる。詰め寄るようにして問いかけるがシェロカルテは何時もの調子で話し出す。

 

「入れ違いで先程話した騎空団の方達が飛び立って行った方向と一緒のようですね~」

「……窃盗団を捕まえた奴等か」

「はい~。あの方達……いえあの団長さんは、それはもう色々と呼び込みますからね~。もしかしたら、目的達成の力に成ってくれるかもしれませんよ~」

「……」

「おや~鎖が……?」

 

 男は沈黙し鎖が伸びる方向を睨むようにして見続けた。すると急に鎖はジャラリと音を立て地面へと落ちる。そして徐々に男の腕へと再び絡みついて行った。

 

「距離が離れたらしいな……」

 

 鎖の様子から何かを感じ取った男、彼はそのままその鎖の先につく紫の水晶を見つめ何かを決心すると港内の連絡艇乗船受付へと足を向けた。

 

「行き先は聞かないんですね~?」

「お前ほどの奴が気に入った騎空団だ。そんな客の情報など軽々と話したくもあるまい」

「ふふふ~お気遣い感謝いたします~」

「それによろず屋、お前なら“わかっている”だろう」

「そうでしたね~。行き先なんて聞くまでも無いでしょうね~」

「ああ……全ては、紫水晶の導きのままに……」

 

 シェロカルテと別れ団長を追う一人の男。水晶の指し示す先、それが団長へと繋がり男を導く。

 そして、また別の地でも──。

 

「……お久しぶりです。お師さん」

「きっちっち……! なんじゃなんじゃ、そんなしょげた顔して」

 

 場所は移り某島某所、秩序の騎空団収監施設、その面会室。そこには三人の男が居た。

 一人は秩序の騎空団の者、一人はそれに見張られるエルーンの男性。そしてもう一人は、そのエルーンの男に面会しに来た老齢のハーヴィンであった。

 

「俯いたままでもわかる。まるで萎れた青菜みたいになっとるぞ? お主、昔はもうちっとシャキッとした顔しておらんかったか?」

「いえ、その……」

「きっちっち……まあ、ワシに合わせる顔が無いという所かのう」

 

 ハーヴィンの老人がそう言うと、エルーンの男は更に顔を伏して沈黙した。

 

「まったく……別にお主を叱りに来たわけではない。ほれ、時間も限られとる。顔を上げんか」

「……はい」

 

 渋々と言った様子でエルーンの男は顔をあげる。なんとその男は、以前団長がクロエと出会った島で戦い倒されたあのエルーンの剣士であった。彼は顔を上げた後も気まずそうに視線を少し逸らしていたものの、少しして目の前の老人へと視線を向けた。

 

「本当に……お恥ずかしい事をしまして」

「盗賊の用心棒か……ま、それに関してはもうええわい。その様子じゃと自分の過ちは、もうわかっておるのじゃろう?」

「はい……」

「ならワシから言う事などない」

「そう、ですか……ところで、一体誰から俺の事を?」

「きっちっち……! 爺になるっちゅうのは、その分知り合いも増えると言う事じゃよ。まあ本来なら“もっと早く”会いにくるつもりじゃったがのう」

「そうでしたか……ふふ、運が良いのか悪いのか」

「なぁに、ワシはこれで良かったと思っとる。なんせワシ以外の者でもお主の道を正す事が出来たと言う事じゃからのう。世の中捨てたもんじゃないわい、きっちっち……!」

「いや、まったく……ふ、ふふふ」

 

 その老人は特徴的な笑いで場を和ませると、エルーンの男も徐々に表情が穏やかなものに代わっていた。

 

「……して、お師さん」

「む?」

「“アレ”の事で来られたので?」

 

 “アレ”、そうエルーンの男が言うと、今度は老人の顔色が変わる。

 

「違う、と言えば嘘になる。そっちはちぃと確認程度のつもりじゃった。話に出た以上聞くが……お主、アレと会ったか?」

 

 エルーンの男はフルフルと首を振って否定した。

 

「会っておりません。いえ、そもそも一度たりともアレと“会いたい”とは思いませんでした。だからこそアレがまた何か動いていると聞いた時は……正直信じられなかった。アレの腕は、お師さんが……」

「うむ……」

「ただ何人か他の弟子に会った時、その者達は「会った事がある」と答えておりました。皆一様に下らぬ悪事に手を染めておりましたよ……俺の様に」

「……唆されたか」

「そのようです。強者との戦いを求め、自ら修羅に堕ちた俺が言える事じゃありませんが、アレの恐ろしい所は人を魔道に誘い堕とします。誘い落ちた者は、最早傀儡の様なもの……誰かが目を覚ましてやらねばならないでしょう」

「誰かが、か……」

 

 老人が深いため息と吐くと、口ひげが僅かに揺れた。

 

「やはり、お師さんが?」

「無論ワシも動くつもりじゃ。じゃがのう……今、世は乱れておる。当然知っておろう? 各地でのエルステ帝国の侵略、それに伴い多発する星晶獣の暴走、そして剣を封じたはずのあ奴の暗躍……不穏な空気がそこかしこにある中、たかが爺一人が気張っても後が続くまい」

「……では、次代の者に」

「さよう。正にお主を正した者のような、のう?」

 

 老人に問われエルーンの男はジックリと自身を倒した団長の事を思い出した。

 

「実の所今日はその者の事を聞きに来たんじゃよ。うちの弟子の中でもかなりの腕であったお主を容易く倒した者がどうも気になってな。で、どうじゃったその者は?」

「彼ならば……あるいは」

「それ程の者か?」

「はい……少なくとも俺では到底勝てません。あの時でさえ、傍にいた娘に“血を見せたくない”と言う理由で手加減され、俺は本気で挑んだと言うのに剣では無く鞘と拳で倒されました」

「ほう!」

 

 エルーンの男は、自分が倒された状況の事と団長の事を話した。

 その少年は、一見して地味で頼りない男であった。だがその真っ直ぐな瞳、悪事を許さぬと言う意志の強さ、傍にいたクロエのような少女を護って見せると言う正義感、頼もしく信頼ある仲間達。

 そして何よりも、あの圧倒的で底知れぬ強さ。

 すると老人は強張った顔を緩ませ呵々大笑した。

 

「きっちっち……っ! そうか、そうかそうか! それほどの……、しかし鞘と拳での。ふふ……それは良い! 実に面白い!」

「しかも愚かにも、お師さんの奥義まで使おうとして……不発です、剣を鞘から抜く事さえ出来ませんでした」

「ほっほ……そうかそうか!」

 

 ほんの少しの出会いの話、修羅に堕ちた男がこっぴどく負けるだけの話だ。だが人と言うのは不思議なもので、自身の恥ずべき行為を誰かに話したがらない事もあれば、逆に話してしまいたい事もある。そして話してしまいたい相手と言うのは、大抵その者にとって親しく心許せる相手であるものだ。

 

「彼に言わせると、俺など“自分勝手な、ただの悪い奴”だそうです。だがまったく、その通り……否定しようがありません」

「きっちっち……! じゃがお主はその過ちに気付いた。その少年のおかげでのう」

「ええ、本当に……」

 

 あの少年の団長と出会ってなければ、果たして自分はどうなっていたのだろうか? 男は考える。少年ではなく、遅れてやってきた眼前の師に剣を封じられたか? あるいは盗賊の用心棒を続けているのか? またあるいは、更なる修羅となり後戻りできぬ事になったかもしれない。

 

「不思議な男でした……そうです、今思えば彼はどこかお師さんに似ていた」

「ほ? ワシにか?」

「はい……剣の腕、と言うよりも気質と雰囲気と言うべきか。覚えておりますか? 俺がお師さんに弟子入りをした日の事?」

「おうおう、あの時か」

「はい。剣では負け知らずである事に己惚れ無謀にも大剣豪に挑み、“釣り竿”で返り討ちにあった馬鹿な男、それが俺でした」

「ありゃお主が、戦え戦えと煩かったからじゃよ。おかげでワシぁあん時大物を逃がしちまったわい」

「あの時はとんだ失礼を……しかし、彼と戦って気を失う時にその時の事を思い出したんです。恐ろしく強い、しかし戦い自体には興味など無いと言う、あの雰囲気を感じて……」

「そうか……そこまでの者か」

 

 老人は粗方の話を聞くと納得がいった様子であった。そしてチラリと監視で傍に立つ秩序の騎空団の者を見た。すると彼は老人に向かって軽く頷いた。

 

「そろそろ時間の様じゃな……ここいらでワシは行くとするわい」

「そうですか……してお師さん、アレの方は」

「まあ暫く会う事はあるまい。色々やっとるようじゃがワシへの挑発程度……かと言って追って捕まる奴でも無い、暫くは泳がせるとするわい。ここでならば平気じゃろうが、お主も努々気を付けておくんじゃぞ」

「はっ! しかと……」

「うむ」

「……久しぶりに、会えて良かったです。お師さんも、お気を付けて」

「きっちっち……! のう、さっき昔の方がシャキッとしとると言ったが……どうやら勘違いのようじゃ」

「え?」

「昔のお主の顔は、確かにシャキッとはしていたが強さに捕らわれておって変に強張っておった……今の方がええ顔をしとる!」

「お師さん……!」

 

 老人は立ち上がると脇に置いていた釣り竿等の荷物を持った。その荷物を見てエルーンの男は、顔をほころばせる。

 

「はは……お師さん、相変わらず釣りですか?」

「きっちっち! こればかりは止められんわい、それにこれから大魚を釣らねばならん。あの時逃がした魚より、もっと大きな大きな“大魚”をのう! き~っちっちっち!」

 

 面会室に二人の笑いが響いた。

 そして、数日後。更に別の某島某所にて──。

 

「なあ聞いたか?」

「お? また星晶戦隊(以下略)か!」

「当たり!」

 

 二人の男が話題に出したのは、前から噂の星晶戦隊(以下略)の事だった。

 

「どうも新しい仲間が一人増えたってよ」

「ほう一人か?」

「ああ、まあ今までの事思うと少ないが新メンバーは新メンバーだ」

「ってこたぁまた濃い仲間だと?」

「いや、今回はある意味普通だ。女の子ではあるらしいがな」

「ふむ? ハーヴィンか?」

「いや、ヒューマン、そして侍だそうだ」

「……着物好きなのかな?」

「さあ」

 

 またとんでもない勘違いをされている団長。積み重なった噂が噂だけに、仲間一人増えるだけでも酷い勘違いが増える負の連鎖が生まれ続けている。

 

「つまりだ……「ロリコンの年上巨乳好きで、幼馴染属性のホモの可能性がある着物女装っ子好きの腋フェチケモナー」となる、と……?」

「ああ……だが俺思ったんだが、星晶獣仲間にしてるんなら人外も好きなんじゃねえかな? ケモナーとは別で」

「ああ~……つまりそうなると、「ロリコンの年上巨乳好きで、幼馴染属性のホモの可能性がある着物女装っ子好きの腋フェチ人外ケモナー」になるか」

「なげぇな~……ちょっとメモッとこうぜ、忘れちまうから」

「そうだな」

 

 そんなのメモってどうするんだ──団長がいればそう言うだろうが、あいにく彼ははるか遠く別の島である。

 

「ところでさ、お前今日何しにここ来たの?」

「ん? 夢占い」

「乙女かよ」

「いや最近夢見が悪くてよ。この島に腕のいい夢占い師が来てるって言うから相談でもしようかと」

「その占い師がこの子?」

 

 二人の男の目の前には、椅子に座ってぼんやりしている一人の少女が居た。目を薄く閉じており寝ているのか起きているのかわからない。

 

「腕はいいって聞いたぜ? んで、今占ってもらってる」

「寝てるんじゃなくて?」

「占い中なんだと。なあ、一緒にどうだ」

「何が悲しくて野郎と夢占いせにゃならんのだ。それに俺興味ねえもん……」

「まあいいじゃねえか。お前だって夢見んだろ」

「そりゃ……ただ俺大した夢見ねえよ」

 

 二人がお互いの夢の話していると、目を閉じていた少女が目をパチリと開けた。

 

「……ふぁ~、ううぅん……結果、はっぴょぉ~」

「お、お待ちかね!」

「……貴方は、何かを探してる。無くても別に困らない、けれど大切、無いととっても寂しいもの……」

「え!?」

 

 少女の占いの結果を言われると、男は驚き声をあげた。

 

「探し物? お前なんか無くしたの?」

「あ、ああ……実は数日前から御袋が昔くれたお守りがねえんだ……どっかで落としたみたいでよ」

「気になる気になる~……気になっちゃうと寝付けない。とっても気になる大事なもの……」

「そうなんだ……あれ以来俺なんか落ち着かなくて……無くしたって言うのも悪いしさ」

「うふふ……そっちのお兄さん……」

「え、俺?」

「貴方はちょっと忘れてる……あれよあれよと後回し。胸にしまった、うっかりさん……」

「胸にしま……ああ!?」

 

 少女に言われて男は驚き懐から一つ木彫りのチャームを取り出した。

 

「これもしかしてお前の?」

「それだよ! え、お前が持ってたの!?」

「艇で落ちてんの拾ったんだよ。誰のか聞こうと思って忘れてた……」

 

 取り出したチャームを渡すと、受け取った男はそれを大事そうに握りしめた。

 

「うふふ……うっかりさん」

「いや凄いな……完璧ピタリ賞だぜ……」

「ありがとなお嬢ちゃん。これ料金」

「まいど~……ふあぁ……ねえ、お兄さん」

「うん?」

「一つ教えて……さっきの、星晶戦隊(以下略)ってなぁに……?」

 

 料金を受け取ると少女は眠そうな瞳を向けて男達の話していた星晶戦隊(以下略)について聞いた。

 

「ああ、聞こえてたのか。星晶戦隊(以下略)──【星晶戦隊マグナシックスとB・ビィくんマン&均衡少女ZOY】──世にも珍しい星晶獣を何体も……更にやたら濃い面子を仲間にしてる地味な団長率いる騎空団だよ」

「結構有名だぜ? なんせ星晶獣が仲間だからな。まあ中々会えねえけど」

「そろそろ新しい星晶獣の仲間でも増えるんじゃねえかな」

「……ふぅ~ん。そうなんだ。うん、ありがとう……ふぁ~……」

 

 礼を言うと少女はそのまま目を閉じ眠りについた。

 

「寝ちまった……」

「まあ占いは当たりって事だな」

「そうだな。帰るか……けど御袋か、今度実家帰ってみようかな」

「いいんじゃね? 今回のもそうしろって事だったんだろ、どうせ暫く依頼もねえし」

「だな」

 

 占いの結果にも満足し、二人はそのまま帰って行った。そしてその場に残った少女は、二人が居なくなり周囲の人間も彼女に視線を向けなくなると不思議な事にその姿が煙の様に消えていく。

 

「……星晶戦隊……星晶獣が“仲間”……そんなの、嘘に決まってる……──」

 

 そして少女の姿は完全に消え去った。初めからそこには居なかったかのように、夢か幻の如く──。

 

 




何時も感想、誤字報告等ありがとうございます。大変励みになっております。

次に何のキャラを出すか、それに関して悩んでおりました。正直今も悩んでますが、今回チラッと出てもらった何クレインおじ様と、何ルラーハ爺は前々から出そうと思ってたんで出します。

が、出すのは良いけど何ルラーハの新フェイトエピ。筆頭弟子君か(考えてた物語が)壊れるなぁ。
なんで、ぶっちゃけ多分筆頭弟子は、登場するとしてもチラッとだけ、基本出さない方向で進めます。あんなん二次創作でまとめきれん。
何クレインに関しても同様で、どこまでやるかはまだ未定です。”敵”関係が正直此処までこじれる事になるとは昔は思わなかった。

最初の頃【本編】を勢いで書いて「追々あのキャラに~このキャラ出したらきっとたーのしー!」程度で考えてたんです。

ドグー君! 地中に帰ろう!
実は前話のゴリラ話でドグーを遺跡内に眠る星晶獣として出そうと思っていた時期もありました。そしたら古戦場ボス! うーん、出さなくてよかった。
あとフォボス思い出した人いない? きっと居たと思う。

また今回のミリンですが、ギリギリまで「ミリン OR メーテラ」で悩んでたりもしたんだなぁこれが。
そして【ジータと愉快な仲間たち団】にスーテラがいる。メーテラの我儘に振り回される団長、偶然出会うジータとスーテラ、スーテラの素直な良い人具合に思わずトレードを申し込む団長メーテラに怒られるの巻、とか考えてた。
ちなみに作中で「ガイドブックが30年前のもの」とありますが、これは日本でのイタメシブームを自分が参考にしたものであり、ゲーム本編には無い設定です。

グランブルー武闘伝GBVS、空がリングだ!
地味に本編であんま話題にならない設定出してくるのやめろぉ! 妄想が捗るでしょ!
空の民の技術では、一から騎空艇を造る事が出来ないってどっか説明あったっけ……。ルリアノートの記述はちょっとニュアンス違うし。
VS内の用語集でリュミエール聖国の聖王の全体図出て来たけど、これ初めてじゃないですかね。案外スラっとしててゲーム本編での活躍が楽しみ。

団長君! こちら引けなかったレイママの代わりに来た入団希望の星晶獣【ナイアルラトホテップ】君さんです! それじゃあ入団アピールをおねが――SAN値チェック
団長「帰れっ!!」


――以下、妄想の思い付き【シンデレラファンタジー】小ネタ

 ファンタジーの特撮ドラマを収録していた夢見りあむ。だが彼女は気が付くと収録衣装のまま異世界に来てしまっていた。

「ちょっとちょっと、なんだよここ!? 幸子ちゃんじゃあるまいし、なんだってぼくがこんな目にあうんだよう!?」

 だが青空の広がる異世界で、ルリアとビィと言う少女とドラゴンに助けられたりあむ。彼女はなんとか必死に騎空士として生き残ろうとする。

「なんかこの世界来てから変な魔法つかえんだけど!? え、炎出たけどアッツっ!? 燃えるよ、熱いよ、なにこれコワ!?」

 そして調子に乗るりあむ。

「ぼくの魔法案外強いよね。ルリアちゃんもそう思わない? これさ星晶獣とかも案外いける? ぼくミリも星晶獣とか知らないけどさ、これワンチャンいけんじゃない!? もうこれゲームとかだとぼくレアリティSSRとか来てんじゃないかなぁ~! りあむちゃんピックアップ開催されちゃうでしょ! それにこの世界ネットとか無いし、ぼくも炎上とは無縁生活じゃん! あれ、もしかしてここパラダイス!?」

 そして燃える。

「ええっ!? ぼ、ぼくがお尋ね者!? し、知らないよう、何もしてないよぼく!? え……ぼくの発言がこの島の王様に対して”不敬”に当たるって……いや知らないよ、ただの”呟き”じゃん!? 誰だよ聞いてたの!? ……え? もう噂が島中に広がって所属騎空団ごと炎上状態……ってこっちでも燃えんのかよぼくぅ!?」

 果たして彼女は誤解が解けるのか、そして炎上を鎮火する事ができるのか。


「結局こんなオチかよ――うっ! やっぱめっちゃやむ! うわーん!」

夢見りあむ(火)SR
【奥義】
ツイン・サイリウムブレード――火属性ダメージ(大)ぶちあがれ感情使用後ダメージアップ/自身の敵対心アップ解除

【アビリティ】
ぶちあがれ感情――攻撃力アップ、連続攻撃確立アップ
りあむ式着火プロセス!――自身に炎上効果と火属性追撃。りあむの敵対心アップ(永続)。
ぼくをすこれ!よ!――対象に対し魅了効果2~3ターン。成功した場合、りあむに対して攻撃行動をしない。

【スキル】
ザコメンタル――弱体耐性が低いが、HPが低い程攻撃力アップ
ちょっと乳がでかいくらい――物理防御が高いが、敵対率が高い。
(ほら今、意味不明の言語言いましたよ)

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