またゲーム本編のイベント【リペイント・ザ・メモリー】のネタバレ、登場人物のキャラ崩壊等があります。ご注意ください。
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一 始まりの前夜
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「ストレスだろう」
食堂のテーブル席、目の前に座るエゼクレインさんが、呆れた様子で俺に告げた。
──数時間前、俺は今停泊中の島でヴェトルちゃんとモルフェ君と言う姉弟の夢占い師に借金の悪夢を占ってもらった。それで得た占い結果は、良いと言えるものではなく俺の旅路を不安にさせる忠告にも思えるものであった。
その結果自体に不満はないがエンゼラに帰った俺は、試しに占い師であるエゼクレインさんにこの占いに関して聞いてみたのだが──。
「ストレス、ですか……?」
「そうだ。ストレスだ」
こんな答えが返ってきたのである。
「あのぉ……紫水晶で占ったりとかは……」
「するまでもない」
「そんなハッキリ……」
「ハッキリ言いもする。考えてみろ……お前がその悪夢を見た時は、金銭関連の事務仕事の最中だった。そんな中での転寝、浅い眠りは直前のイメージを残して夢に出た。もう一つの原因としても日頃のストレスと考えるのが妥当だろう」
「ま、まったくもって……その通りで」
理路整然と言われると占い以上の説得力だった。
「けど彼女の占いは、結構当たるようにも思えたけどなあ」
「……さあな。俺もその占いの結果にケチをつけようってわけじゃない。……そもそも夢占いは、俺の扱う占いとは異なる。むしろあれは精神分析の類だ」
「心理学のような?」
「ああ、そうだ……」
エゼクレインさんは、腕に巻かれた紫水晶を揺らしつつ話を続けた。
「俺の……俺の紫水晶を扱う主な占いは、わかりやすく言えば“失せ物探し”だ。紫水晶が示す先には、探し求める物かそれに導くなにかがある……つまりは指し示す占いだ」
「なるほど」
「一方で、だ……目で見る事も手で掴む事も出来ん曖昧な“夢”と言うモノを占う事は、紫水晶では出来ん。つまり夢占いは、読み取る占いだ。それが出来るのは……話を読み取る術に長け、分析力も優れた者だ」
「な、なるほど……」
だんだんとヴェトルちゃんが物凄い切れ者のように思えてきた。あの眠気眼の奥にそんな分析力があるとは。一瞬見せた刃のような視線こそが、彼女の本来のものであったのだろうか。
「後は……夢の内容から夢を見た本人が不安に思っている事を読み取って“それらしく”告げてやれば良い。それだけで相手は信じてしまう、不安こそが信憑性を高めるからな」
「そういうもんですかね」
「そう言うものだ。他の奴らもそうだったろう?」
そう言われると確かにルナールさん達も、夢から読み取れる範囲の不安な内容を織り交ぜて告げられていたように思える。
「つまり、だ……俺に夢占いの結果なんぞ聞かれても答えようが無い、つまりそう言うことだ」
「な、なるへそ……」
「まあ話を聞く限り、その娘がいい加減な占いをしたとも思わん。腕は……確かなんだろう。お前の感じた通り忠告として受け取っておくのが吉という事だ」
「ふむう……占いってのは難しいもんだ」
「だろう? ……難しいんだ。物事を占うって言うものはな……」
若干自嘲気味でニヒルな笑みを浮かべたエゼクレインさんは、手元のティーカップを持ち注がれていた紅茶を飲んだ。
「……ハーブティーか」
「ええ、今話した子の……弟さんの方がくれたものです。結構いけますよね」
「ああ……確かにな」
睡眠を良くすると言うハーブを調合した特性ハーブティー。香りだけでなく味も良い。モルフェ君の言う通り良い眠りが期待できる。ベッドに入ってスッと眠れそうだった。
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二 悪夢の目覚め
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「──ルナール先生、新しい仕事です」
声をかけられてハッとする。この声は、今の担当さんだったわね……ええ、そう、そのはず。
「来年出す予定の百科事典の挿絵、それと魔物図鑑の挿絵です」
担当のハーヴィンの男性が書類を次々と並べる。どれも大手の出版社の書類だわ。
「前回の挿絵も随分好評でしたよ。流石魔物を描かせれば全空一の絵師ですね」
つまらないお世辞だった。表面は笑みを浮かべて「ありがとう」と返しておく。
彼は更に別の仕事だと言っていくつか書類を置いて帰っていった。
はあ……──大きくため息をついた。
もう何年目だろうか、こんな風に絵を“仕事”にしてしまったのは。
別に辛いと言うわけではない、むしろ一般的には充実してる部類のはずだ。大手出版社からの依頼は、もう数年も絶えていない。描けばそれだけお金も入ってくる。何が不満だろうか?
不満……そう、不満はないはず。なのに私の心は満たされていない。
ふと、アトリエの本棚を見た。そこには、数々の参考画集や自身のスケッチがびっしりと並ぶ。
動物、魔物、人体、あらゆる絵を描くための参考書。けれど、その中にかつてあった本の名前はない。
『ポポルサーガ』、私にとって運命の絵物語。
ずっとそばにあるはずだったそれは……今はもうない。魔物絵師として、また挿絵画家としても大成した──してしまった私には、もう必要がなくなってしまったもの。
あれを手放すなんて思いもしなかった。だが多くの出版社やその関係者が出入りするようになった今あれを仕事場には置けない。ましてそれ関係の耽美物なんて……。
はじめは専用の部屋を作ってでも残そうとした。あるいは別荘を買ってでも。しかし……結局できなかった。仕事を優先してしまい、そのまま……結局ポポルサーガも……。
後悔してるのだろうか? いや、そんなものを感じる暇も無いほど仕事は多いのだ。それに、これでいいはずだ。全空で読まれる本に絵を載せているのだ。これ以上ない仕事、親にだって誇れるだろう。
耽美物に憧れ絵を描きだしたけど、理由をつけてはろくに絵物語もかけずにいた私には、これでいいのだ。むしろ十分すぎると思う。絵は好きだ……それを、仕事に出来てるなら……十分じゃない。
だけど、このぽっかりと空いたような……心の喪失感。これが埋まる日は来るのだろうか?
そんな日が来るのかわからないまま、私は絵を描き続ける……心が満たされない絵を……ずっと……ずっと──。
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三 予兆
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夢占いを受けた次の日、島での滞在二日目の朝。
久々の休日である(本来は木人暴走の時が休日だった……)。だが休みだからとあまり遅くまで寝る事はしたくない。折角の休日は、朝と言う時間も楽しみたい。そもそも日が昇ると目も覚めるし。
洗面所で顔を洗った後とりあえず食堂に移動する。どう休暇を過ごすにしても朝食を食わねば始まらない。
「あ、団長……おはよう」
「おや、セレスト。おはようさん」
食堂に向かう途中廊下でセレストに会う。
「だ、団長やっぱり朝早いね……」
「まあな。そっちも早いがなんかあったか?」
「えっとね……一応エンゼラの船体チェックをね、してたの……」
「さすが熱心だなあ。いや、団長としてもありがたい」
「えへ、えへへ……」
日頃の安全な航行は、ひとえに彼女のおかげである。本当にありがたい事だ。
「俺食堂でコーヒー飲むけどいる?」
「あ、私も欲しい……お、お願いします……」
「あいあい、了解」
他愛のない話をしながら二人揃って食堂に向かい扉を開ける。休暇の早朝とあってまだ誰もいない──と思ったが、既に先客がいた。ルナールさんだ。
基本夜更かし気味で朝の苦手な彼女がこの時間食堂にいるのは珍しい。あるいは、この時間まで起きていたと言うパターンもありえる。なんであれ声をかけた。
「ルナールさん、おはようございます」
「……」
「ルナールさん?」
テーブル席に座るルナールさんは、どこかボーっとしている様子だった。ただそれは、寝起きや寝不足のそれとは違うように見えた。
「ル、ルナール先生……?」
「……え、ええ? あれ?」
様子がおかしいルナールさんにセレストも声をかけた。すると今度は反応を示すのだが、やはり様子はおかしいままだった。
更には──。
「あ、あら……ごめんなさいボーっとしてて……ええと、あれ? 私なんでこんなとこにいるのかしら?」
「……え? ルナールさん?」
「変ね……私起きてから……あれ? 思い出せないわね……あ、それよりあなた達新しい担当の方かしら? どこの出版社の方?」
俺だけでなくセレストも寒気を感じたことだろう。ルナールさんにふざけている様子はなかった。まるで本当に俺達と“初対面”のように彼女は話しているのだ。
「ル、ルナール先生……!? なんで、私……セレストだよ……!」
「セレストさん……? 前にあったのかしら……いやね私ったら。担当さんもよく変わるから全員覚えてなくて……」
「昨日会ったばっかりだよ……! 夜もポポルサーガの話したじゃない……!」
「ポポ……ッ!? なんで知って……私誰にもそれが好きだって話してなんて──」
「ルナール先生が教えてくれたんだよ!? ポポルサーガも耽美物も……っ!!」
「耽美物……だ、だってあれはもう捨てて……」
「ルナールさんしっかり! あんた寝惚けてんだ!!」
思わず彼女の肩をつかみ体を揺らした。俺達の声が届いているのかすら怪しい程異様な様子だった。
「……あ、あう!? な、なに!?」
「ルナールさん、ここがどこで俺が誰かわかるか!?」
「え、あ……」
「わかりますかっ!?」
「あ、はい!? エンゼラの食堂で団長さんです!!」
「私は……っ!?」
「セレスト……え?」
俺とセレストの事をハッキリと認識した彼女は、今日は初めて目を覚ましたかのような顔だった。キョロキョロと辺りを見渡し、最後に俺達を見た。
「わ、私……なんであんな」
「ううぅ~……っ! び、びっくりしたよぉ……! 私の事忘れたのかと思ったぁ……っ!」
「ご、ごめんなさいセレスト……! やだ、私寝惚けてたの……?」
「……そう、ですね。寝ぼけてました」
「あぁ~……変にリアルな夢見ちゃったからかしら? ほんとごめんなさい、なんか妙に真に迫ってたのよね……」
果たしてそうだろうか──ルナールさんの言葉に同意しつつも俺は、違和感を覚えた。
普通寝惚けただけであそこまで記憶が混濁するだろうか? 真に迫った夢と言うがどれ程のものだというのか? 疑問が浮かぶ。
「ごめんなさい、もう平気だから……疲れたのかもね」
「よ、夜更かしのせいかな……?」
「あんなの夜更かしとも思わないけど……」
「け、けど耽美談義結構盛り上がったし……新しい原稿のアイディアとか──」
「わあっ!? だ、団長いる場で耽美トークはNG!」
「むぐぅ……!」
セレストが昨晩話していたらしい話題を言おうとすると、慌ててルナールさんが両手でセレストの口をふさぎ遮った。
「……なんにしても疲れてるんですよ。ちょうど休みですし、一日ゆっくりして下さい。良ければコーヒー淹れますよ」
「ええ、お願い……ブラックで濃い目で目が冴えるようなの」
「了解っす」
「ああ、ほんとに夜更かしってことかしら……酷く眠いの……ああ、眠い」
一応は調子を取り戻してきたらしい。一先ずはであるが安心する。
その後もコーヒーを飲みながら俺とセレストは、ルナールさんを気遣いつつ何時も通りに過ごした。また食堂にいた理由を尋ねると、「目が覚めて、水を飲もうと思ったことまでは記憶してる」とルナールさんは話した。おそらく寝惚けながら食堂に来て椅子に座り呆然としてたのだろう。
ルナールさんの話を聞きながら俺は、彼女の見た夢がまるで悪夢のようだと思った。まして現実にまで影響が出るほどならば猶更である。
数日前に見た俺自身の悪夢と言いどうも嫌な予感がした。
ただ全てが気のせいであってほしい──俺はそう祈りながらコーヒーを飲みほした。
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四 悪夢の手招き
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「──ラムレッダ、悪いが限界だ。明日からもう来なくていい」
店の店長にそう言われた私は、何も言い返す事ができずにいた。きっと表情だけは、僅かでも驚いて見せていただろう。
「今までの給料は出す。だが割れた食器や今までの粗相の分を引いたものだ……出すだけありがたいと思ってくれ」
チャリン──店長から投げ渡されたお給料が入った袋からは、わずかな金子が擦れる音が聞こえた。
私は何も言うことが出来ず受け取った袋を見て、やっとのことで「お世話になりました」と言葉を絞りだし、頭を下げその場を逃げるように後にした。
今回も駄目だった。またクビだ──トボトボと街を歩きながらもう何度目かわからない後悔をする。
適当なベンチに腰掛けて今後の事を考える。もっとも、考えたところで意味はない。先ほどのお金を含めれば、島を渡る程度のお金はある。それでまた別の島に行き新しい仕事を見つけるしかない。そしてきっと……またどうせクビになる。自分はそう言うやつだから。
惨めで誰かに慰めてほしい気持ちになった。だがそんなお人よしなんているわけがない。そうなると結局自分が頼るのは、手元にある酒瓶しかなかった。
酒瓶に直接口をつけアルコールの強い酒を呷る。すると少しだが気分が良くなった。けれど足りない。まだ酔えない。私はまた酒を飲んだ。
悪循環、まったくもってそうとしか言いようがない。私を慰めてくれるお酒を飲めば飲むほどに、私はもっとダメになってしまうのだから。
今回だってそうだ。酒に酔って失敗して仕事をクビになった。今回だけじゃない。なんどもなんども、なんどもだ。
修道院の時も……それに、“あの時”だって……。ああ、そうだ……そうだった。私はあの騎空団を飛び出してどれ程が経ったろう? 自分のような人間が騎空士として働けていたのが不思議なほど素晴らしい騎空団だった。優しい団長に気の良い仲間達、今までで一番長く働けた場所だった。あんなに居心地の良い場所があったろうか。
しかし、そんな素晴らしい場所を私は自ら飛び出した。“取り返しのつかないミス”をした。やはり酒が原因──いや、酒を飲んだ自分が原因で。
あの時一気に酔いが覚めた私は、無我夢中で逃げたのだ。気づけば彼らがいた島とは別の島にいた。それからは、流浪の旅である。
修道院を飛び出した時と同じだった。一度目は修道院の失敗、二度目は騎空団での失敗。自分の居場所になると思った場所なのに、その全部を私は自分自身で捨てて来た。
修道院のみんなにも、騎空団のみんなにも合わせる顔がない。
きっともう、私はこうやってしか生きられないだろう。酒を止めることも出来ず、今までの過ちから逃げるようにしか生きていけないのだ。
次の島でも、その次の島でも……また、その次の島でも──。
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五 異変
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島滞在三日目。カーテンの隙間から溢れる日の光を感じ目を覚ます。体を起こし背伸びをすると徐々に目が冴えてきた。
「ふう……朝だぞB・ビィ」
「んん……? オイラもうちょっと寝とくぜ……」
「そうかい? まあ朝食までには起きとけよ」
「あいよぉ……」
同室のB・ビィは、小型のベッドの中で毛布に包まり二度寝に突入。B・ビィは普段普通に早起きなので、今日は単にそう言う気分だったんだろう。休日だしうるさく言うつもりもない。
俺は軽く朝のストレッチを行いながら、今日はどう過ごそうかと考えていた。すると──。
「──んにゃああぁぁ~~~~っ!?」
部屋の外、廊下の向こうからラムレッダの声と思われる悲鳴が聞こえてきた。
声の距離からティアマトの部屋からだろうか? またぞろ、酒でなにか失敗でもしたのか? この時点で俺は、特に焦る事もなくその程度に考えていた。だが今度は、バタバタと誰かが走ってくる音が聞こえた。
「オイ、オイ……ッ!! オイ起キロッ!!」
「な、なんだぁ……!?」
突然部屋に響いた激しい扉のノック音、そしてティアマトの大きな声。悲鳴には反応しなかったB・ビィも、これには驚き飛び起きた。
「短い二度寝になったな」
「ふぁあ~……やれやれ、オイラまだ寝てたかったんだけど」
「そりゃ残念。おいティアマト待て、扉が壊れっちまうよ。今開けるから」
B・ビィとそろって驚きつつも、部屋の鍵をあける。するとティアマトは、扉を押し開け飛び込んできた。
俺はまた何事かと身構えたが、息を切らし妙に焦りを見せている彼女の表情を見るに、どうもただ事ではないようだった。
「……何があった?」
「ラ、ラムレッダノ……様子ガ変ダ……!」
「ラムレッダの? ああ……さっきの悲鳴か。で、どう変なんだ」
「ソレハ……アアッ! ト、トリアエズ来イッ!! ワタシノ部屋ニ居ル!!」
「ちょ、ちょちょぉ……っ!?」
「あ、待てよ!?」
何が何やらわからぬままに、ティアマトに手を引っ張られ連れて行かれる。B・ビィも慌てて追いかけてきた。
バタバタと朝から慌ただしく移動して、同じ階層でも“団長室”から少し離れた場所にあるティアマトも私室へと到着。そのまま飛び込むように部屋へと入る。
「オイ、ラムレッダッ!!」
「ひえっ!? ティ、ティアマ……ひょええっ!? こ、こんどは団長きゅんまでえぇ──っ!?」
ティアマトの部屋に入った途端、中に居たラムレッダは、俺の姿を見て何故か絶叫。そのまま怯えた様子でティアマトの布団に包まっていた。
「……な、何事さこれ?」
「ワカランカラ呼ンダンダッ!!」
ティアマトが言うには昨日の夜からラムレッダと部屋飲みして酔った二人は、揃って部屋で寝たらしい。だが朝目を覚ますとティアマトを見たラムレッダが、驚き先ほどの悲鳴をあげたらしい。するとそのまま「なんで自分がここにいるのか」「連れ戻しにきたのか」などと意味不明の言動を繰り返し、ついに困り果てたティアマトが俺を呼びに来たと言う。
「ワタシヲ見テカラ、ズットコンナ様子ダ……! モウワケガワカラン!」
「ひっ!? ……ひぃ! ごめんにゃさい、ごめんにゃさいぃ……っ!!」
気の毒になるほどラムレッダは、俺達に怯えていた。仮に酔っていたとしても、様子がおかしいのは明らかだった。
「……ティアマト、ここ水置いてある?」
「ン? アア……ソレナラ丁度チェイサー用ガアル。コップハソレ使エ」
酒瓶で散らかった机に水の入ったピッチャーがあった。空のコップに水を注ぎそれをラムレッダへ差し出す。
「……ラムレッダ」
「ひぃん!?」
「ここまで怯えられると傷付くぜ……ほら、まず水飲みなさい。なんか知らんけど、寝ぼけて混乱してんだよお前」
「だ、だって……団長きゅん絶対怒ってるにゃ……だ、だから連れ戻したんでしょ……!? わ、私“あんなこと”して……だ、だから逃げて……!」
ラムレッダはわけのわからない事をずっと話している。彼女の酒のミスなら何時もの事だが、それにしても脈絡が無さすぎる。彼女の言う“あんなこと”とやらに俺は全く身に覚えがない。
最も最近起きた事でなら木人暴走事件だが、あれは解決済みだしそもそもばあさんのせいである。吐かれるのも毎度のことだ。
「大丈夫、なにも怒っちゃいないよ、ラムレッダ。昨日だってお前何もしちゃないだろう?」
「ウ、ウソにゃ……そんなわけ……」
「嘘じゃないさ、怒っちゃいない。第一お前俺が怒ってると言うけど、お前俺に“なにを”したって言うのさ?」
「そ、それは……っ! ……それは? え、あれ?」
ラムレッダの言う話の中でも特に強い違和感を感じた“俺が怒っている”と言う点を指摘して行くと、徐々にラムレッダは大人しくなってきた。怯えていた表情も困惑へと変わり、自分の今の状況が見えてきたようだった。
「な、なにも……そうにゃ、あたし別に……なにもしてにゃいにゃ……」
「だろ? 昨日お前は、この部屋でティアマトと飲んでた。そうだな?」
「うん……あ、あたし……昨日ティアマトとお酒飲んで……そのまま」
「オ前私ノベッドデ寝テタンダゾ。オカゲデ私ハ床デ寝テタシ」
「にゃ……にゃははっ! はは……? そ、そ~だったかにゃ?」
それは多分単にラムレッダが勝手にベッド使って、ティアマトが酔いつぶれて床で寝てただけだろう。
「記憶の方は大丈夫そうだな。ほら水、取り合えず飲んどけ」
「あ、はい……ごめんにゃ団長きゅん……」
まだ困惑した様子のラムレッダだったが、俺やティアマトの声も届いている。ちゃんと水を受け取り少しずつ飲み始めた。
俺もティアマトもその様子を見て一応はホッと胸をなでおろした。だが安心してばかりもいられないだろう。
「なあなあ、昨日もルナールの様子がおかしかったって言うし、こりゃどうも変じゃねえか?」
「ふぅむ……」
B・ビィに言われ考えるが、実際のところ俺も何かがおかしいと思っていた。
昨日今日とで連続だ。しかも二人とも寝起きで妙な言動、記憶の混乱と似た様子ときてる。もうただの偶然や気のせいで片付けるのは、無理な話というものだ。
「……待てよ、ルナールさんとラムレッダが?」
この時ふと浮かんだのは、二人の共通点だった。単に俺達の仲間と言う事でなく、最近で共通事項がある。
「……二人とも、夢占いをした」
考えをまとめるように呟くと、B・ビィもハッとしながら俺を見た。
「一昨日俺と一緒に……二人とも夢占いを受けてるな」
「確かにそうだぜ。それで昨日はルナール、今日はラムレッダときた」
「それにあとは……カリオストロもだ」
妙な胸騒ぎを感じ俺とB・ビィは、ティアマトの部屋を飛び出す。
「オイ、ドウシタンダッ!?」
「ちょっと確認せんといかんのだ! ラムレッダはそっちで頼む!」
ラムレッダの事はティアマトに任せ俺達は、急ぎカリオストロの部屋へと向かった。あのカリオストロに限ってとも思いつつも、自分でも焦りを感じる。
彼女の部屋まで来るとさっきのティアマトみたいにドアを激しくノックし呼びかけた。
「朝から失礼! カリオストロ、起きてるか! ……カリオストロ? なあ、おっさん! おっさ──」
始め返事がなく不安になりさらにノックを強くしようとした時、扉が開き部屋の中から手が伸びてきた。それは俺の胸倉をつかみグンと引き寄せる。
「ぐえっ!? な、なに……ぅおっ!?」
手は下の方から伸びて来たため、俺は床に跪くように引っ張られてしまった。両膝を打ち痛みを感じていると、目の前には可愛いからは程遠い形相のカリオストロの顔があった。
「カ、カリオストロ……ッ?」
「まず答えろ……っ!」
「な、なにを……っ!?」
「いいから、答えろ!! お前は地味で苦労人で借金1千万でお人好しの騎空団【星晶戦隊マグナシックスとB・ビィくんマン&均衡少女ZOY】の団長っ! そうだなっ!?」
「だしぬけに酷いっ!? な、なに突然!?」
「そうだな……っ!?」
「う、うんうんっ!! そう俺団長……っ!! だ、だから離し、ぐええ……!!」
鬼気迫る顔のカリオストロの質問に驚きつつも、胸倉をつかまれたまま首が締るのを感じ早く解放してほしくて俺は頷き答えた。
「…………よし」
「ぐえ」
カリオストロは、しばし俺の顔をじっと見ていたが、やっと表情が落ち着き俺から手を離してくれた。離すのも突然で俺は、哀れそのまま床に倒れる。
「おいおい、大丈夫か相棒」
「だいじょばない……なんなのさもぉ~……」
「悪かったな……自分の記憶を正誤確認しないと、ちとやばかったんでな」
「記憶を確認?」
「そう、記憶だ」
「……もしかして、変な夢とかみてない?」
カリオストロの話を聞いて俺は「もしや……」と思い夢の事を聞いてみる。するとカリオストロは、少し驚いた様子であった。
「他でも起きてるのか、“これ”が?」
「みたいだーね。丁度それ確認しに来たとこなのよ俺は」
案の定カリオストロも悪夢を見たらしい。だが流石と言うべきだろう、カリオストロはそれによる記憶の混濁を自ら意識して克服していた。
「ルナールさんが昨日の朝に記憶の混乱、んで今さっきラムレッダが錯乱してた」
「なるほど……オレ様とで夢占いのメンバーって事か」
「流石気づくね」
「世辞は良い。……まず状況の整理からだ。直ぐルナール達集めろ。色々調べる必要がある」
「だな。B・ビィ、俺はルナールさん呼びに行く、ラムレッダの方呼んでくれ」
「あいよ、任せな」
B・ビィが再びティアマトの部屋へと向かい飛んでいく。俺もすぐルナールさんを呼びに行こうと部屋を出た。
「だ、団長……だんちょお……っ!」
「ぅおっと!?」
だが直ぐに慌てて泣きそうな声を上げるセレストが目の前に現れた。緊急時身体を霧へと変え自在に艇内を移動するセレストの移動方法である。この現れ方をするだけで何か更なる異変が起きた事がわかる。
「ど、どうしたセレスト?」
「ル、ルナール先生が……ルナール先生が、目を覚まさないよぉ……っ!」
困り果て涙声となるセレスト。俺とカリオストロは、互いに顔を見合わせいよいよ何かが起きたのだと感じ取っていた。
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六 閉じた眼
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──エンゼラ、医務室。
まだ日が昇り切っていない時間から、そこに集まった面々は、深刻な面持ちで椅子に座るラムレッダ、そしてベッドに横たわるルナールを見ていた。
「ど、どう……? カリオストロ? ルナール先生は……」
「……マズイな」
横たわるルナールの傍で彼女を診ていたカリオストロは、セレストの問いに首を振った。思わずセレストは、短い悲鳴を上げる。
「そ、そんな……!」
「まてまて、慌てんな。別に死んだとかじゃねえ。息も脈もある」
「じゃあ“マズイ”ってのはなんだい?」
B・ビィの問いにカリオストロは、困った様子で答えた。
「……名前を呼ばれたりしたら反応を見せたりする。肩をゆすったり外部の刺激でも同様だ。だがな……一瞬だ。少し目を開いたかと思えばすぐに閉じる」
「そ、それって……」
「眠り続けてるんだ……今こいつは」
カリオストロは、目を閉じたままのルナールをジッと見た。
ルナールの眠る顔は、穏やかだった。だがその穏やかな表情は、団長達には不安を感じさせた。
──時は遡る。昨日の事で不安が残っていたセレストは、この日朝になってルナールの部屋を朝訪ねた。するとルナールの部屋からは、返事もなく更に強い不安を覚えたセレストは、悪いと思いつつも身体を霧へと変えルナールの部屋へと侵入してみると、やはり原稿に突っ伏したルナールの姿があり、驚いた彼女は急ぎ団長達を呼びに来たのだ。
セレストに連れられルナールの姿を見て驚いた団長達は、すぐに彼女へ声を掛けた。するとその時ルナールは、瞼を開け団長達を見ると驚いた様子で「あなた達はだれ?」とだけ言った。そしてまた瞼を閉じ眠りに落ちてしまったのだ。
そして今に至る。
ルナールを心配して見守る団長は、ふと別で椅子に座るラムレッダを見た。
「……ラムレッダ、寝てないよね?」
「ね、寝てない……にゃ」
ラムレッダは、激しい睡魔と今戦っていた。
団長に水を飲ませてもらった後彼女もこの医務室に移動していたが、突然睡魔が襲い始めたのだ。
「ね、眠気も凄いけど……あ、頭も痛いにゃあ……」
「そりゃ二日酔いだろうが」
本来なら座るだけでも寝てしまいそうな睡魔であったが、二日酔いで前後不覚気味の彼女を今の状態で立たせておくのは、また別の意味で危険だった。
更には──。
「意識が覚醒して症状が治まるどころか、更に……症じょ……が、つよ…………」
「おっさん、あんたもやばいか?」
「おっさんじゃ……! ねえ……ああ、くそっ!!」
徐々に瞳が閉じかけたカリオストロに対し、団長が直ぐ“おっさん”と呼びかけた。カリオストロは、何時もの様に反論しようとしたが思うように言葉が出ない。
彼女もまた強い睡魔に襲われ意識を失いかけているのだ。
「腹が立つぜ……おっさん呼ばわりされた怒りで目を覚ますなんてよぉ……っ!!」
「まあ効果あるししゃあない」
「んがぁ──っ!!」
ラムレッダと同様眠気と戦うカリオストロは、団長にあえて“おっさん”と呼ばせ睡魔を怒りで吹き飛ばす作戦に出ていた。効果は十分であるものの彼女本人は、不本意極まりない様子であった。
「つ、追加のスパイス持ってきましたぁ~!」
「キンキンに冷えたお水もです!」
会議室にコンスタンツィアとブリジールが、慌ててお盆や桶で眠気覚まし用のスパイスと氷水を運んでくる。
「ま、またスパイスにゃっ!?」
「はい、更に辛いの持ってきたです!」
ラムレッダとカリオストロは、効果は一瞬であるものの強い刺激のスパイス等を眠気を感じて直ぐ摂取する事で睡魔に耐えていた。
「今寝ちまうとルナールと同じになっちまうんだよ……! オレ様だって食ってんだから、お前も我慢して食えっ!」
「す、すみませんラムレッダさん……!」
「頑張ってこれ食べて下さいですっ!」
「も、もう激辛唐辛子は……あ、ああっ!? にゃああぁぁ~~っ!?」
コンスタンツィアに肩を抑えられブリジールに唐辛子を口に投げ込まれ悲鳴を上げるラムレッダ。ふざけた光景だが、彼女たちは至って真面目である。カリオストロもまた唐辛子を口に含み激しい辛味に眉間の皴を寄せた。
「くっそ……これも効き目薄れてきやがった……」
「眠気が勝りだしたか……なんなんだいこの症状は」
「オレ様は医者じゃねえが、少なくともただの病気とは違うな」
「錬金術でなんとかは?」
「無理だ」
お手上げの状態になり、団長は頭を抱えた。それに対しカリオストロは眠らないように立ったまま話をつづけた。
「これの原因は“悪夢”だ。時間さえあれば解決策も見つかるだろうが、“夢”なんて曖昧なもん相手じゃ今すぐどうにかできねえ……まして今の状態じゃその解決策見つける前に眠ったままになっちまう……」
「……確かに、睡魔も更に激しくなってきてるみたいだ」
「んにゃああぁぁ────っ!? か、から……喉やけ……ねむ…………つめったあぁっ!?」
「寝ちゃダメ、とことん寝ちゃダメですラムレッダさん!! これ氷水タライにいれたです! もっと足沈めて下さいっ!」
「私手のここが、眠気覚ましのツボって聞いたことあります……!」
「ふ、二人共ちょ、ちょっとま……うにゃ゛あ゛っ!? 冷た……あだ、だだ……っ!? 冷たい痛い辛い眠いぃ~~~~っ!?」
睡魔の強さが増したのか、今にも寝てしまいそうなラムレッダを起こすため、コンスタンツィア達があの手この手で彼女を起し続けている。その様子は最早新手の拷問のようであった。
「あれで眠りそうになるんだからとんでもねえな……」
「まあな。話を続けるが、夢占いを受けた次の日……まずルナールが“悪夢”で記憶の混濁が起きた。オレ様とラムレッダはまだ大丈夫だったが、今日になってまとめて悪夢を見た。タイミングのズレに関しちゃ多分誤差みたいなもんだろう」
「悪夢の内容に関しては、何か共通項あったりした?」
「ルナールが寝ちまってるが……今わかる範囲で確認したが内容はバラバラだ。ただし一つ共通するのは、見た者にとってそれが“悪夢”である……って事、だけ…………」
「おっさんは、どんな夢見たんだ?」
「おっさんじゃねえし夢の事は話さねえ!! あーもうっ!? 唐辛子よこせっ!!」
「あ、はいこちらです……っ!」
カリオストロは、コンスタンツィアが差し出した唐辛子の入ったボウルから何個も掴み取り一気に口に放り込んだ。そして直ぐにその辛さに悶えテーブルをたたく。
「はぁ……! ぜぇ……! と、とにかく原因だ! きっかけはあの夢占いでまず間違いねえ」
「だよなあ」
団長も夢占い師である双子を思い出していた。彼女達が何者であるのか、この件にどう関係しているかはわからない。しかし解決策の無い今手掛かりは、あの二人しか思いつかなかった。
「このままじゃラムレッダもオレ様も何時昏睡状態になるかわからねえ。それに最初に占い受けたお前も時間の問題だ」
「わかってる」
夢占いを受けたメンバーで現在睡魔の症状が現れていないのは、団長一人であった。症状の現れない理由は、カリオストロの言う発症タイミングの誤差なのかそれ以外なのかは不明である。そうである以上この状態がいつまで続くかわからず予断は許されない。
「直ぐあの二人を探す。島を出てさえいなきゃそう時間はかからないはずだ」
「……その必要は無いみたいだぜ、相棒」
団長が団員全員でヴェトル達二人を探そうとしたところ、B・ビィが医務室の出入り口を見ながら団長の肩を叩いた。すると「おや?」と団長もまた医務室の出入口の方を見た。するとそこには、まさに今探そうと考えていた二人──。
「突然すみません! 団員の方に通してもらいました……! 今すぐ、どうしても確認しないといけなくて……!!」
酷く切羽詰まった様子の少年、モルフェと。
「夢の乱れ……さかさま、さかさま……ウソとホントが入れ替わる……」
「君達……何故ここに?」
「悪夢の誘い……誘われたのは、私? それとも、あなた……?」
モルフェに手を引かれ、何かを歌うように現れたヴェトル達双子の姿があった──。
いつも、感想や誤字報告等ありがとうございます。大変励みとなっております。
改めて『リペイント・ザ・メモリー』を何度も見直してますが、シチュエーション的に結構ホラーですよね。夢に食われる感じが。
そういえば、最近『爆チュー問題』でマジで鬼滅ネタやったみたいですね。またちょっと小ネタで爆チューはやってみたいかもです。
そして小ネタ。ず~~っと何かしらの正当な番外作品やPXZ的コラボを待ってる作品。初代と2の間ぐらいの彼等。
グラブルコラボいけるよ君、いけるいける!!
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ロックマンDASH ~蒼穹走る青き冒険者~
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ある日、とある島でグランサイファーの点検を行っていたルリア達は、島に黒煙を上げ近づく一隻の“奇妙な騎空艇”を目撃する。
「ありゃ不時着するぞ!」
ラカムが叫ぶ彼らは急ぎその艇が落ちようとする場所へ向かった。
黄色の色が目立つその艇は、フラフラと揺れながらもなんとか島に不時着。船体を傾かせながらも空の底への墜落だけは免れた。
ルリア達が外から呼びかけると、黄色い船体の横にある扉が開き、そこから――。
「けほ、えほっ!? な、なんとか助かっ――きゃあっ!?」
「あ、ロールちゃ……!? うわわっ!?」
女の子と男の子、それぞれが悲鳴と共に地面へと落ちてきた。
「げぇ~っほ! げほごほっ!! おいロール、ロック! 大丈夫かぁ~!?」
「ウキィ~……」
そして開いた扉からは、また別にひげを蓄えた男性が、小さいサルの様な生き物を手に上半身を出した。
「また妙なやつ等が落ちてきたな……」
「と、とりあえず助けましょう!」
いまだ黒煙のぼる艇と少年達を助けに向かうルリア達。
これが彼女達と、異界から現れた鋼の冒険心を秘める青い冒険者――ロック・ヴォルナット、その仲間達との出会いと冒険の物語、その始まりである。
「――突然島に現れた高エネルギー体?」
数日後、ルリア達に保護されたロック達は、彼らの家であり移動手段の飛行船フラッター号を一時不時着場所へ置いて自分たちの状況の整理を行っていた。
するとこのロック達が不時着した同日、島にあるダンジョンに謎の高エネルギー結晶体が現れたという話を島の人間から聞いた。
「もしやワシらの追っていた“ディフレクター”の事かもしれんのう」
「ディフレクター?」
「これじゃよ」
その話を聞いた老人――バレルは、服のポケットから、小さな結晶体を出して見せた。
「わあ、キレイですね!」
「爺さん、こりゃいったい……」
「ワシらの世界で“ディフレクター”と呼ぶものじゃ。ワシらディグアウターは、これを主に探しダンジョンを潜る」
「へえ、けどこんな小さいの何に使うんだよ?」
手の平に収まる結晶を見てビィは首をかしげるが、バレルは「いいや」と付け加える。
「これは小さいディフレクターで主に貨幣として使われるものじゃ。大きい物なら2m以上の物もあってそう言った大型のは、膨大なエネルギーを生み出す事が出来る。ワシらのフラッター号を動かしたりのう。大型で純度の高いディフレクターならば、その価値は正に一攫千金じゃ」
「そ、そんなになのか……」
思わず「ゴクリ……」とのどを鳴らすビィ。
一行はそのディフレクターにこそ元の世界に帰る手段とフラッター号を直す方法があると考え、ディフレクターを求めそのダンジョンがあると言う遺跡に向かった。
だがそのディフレクターは、ロック達とは別に思わぬ客人達を呼び寄せていた――。
「な、なんだぁ!? こいつら!」
「こいつらは……まさか“リーバード”!?」
ガシャンガシャン――森の木々の陰から聞こえる怪しい足音、そして不気味な気配。
この島に、この世界にいるはずのない異形の機械生命体リーバード。それがダンジョンへ向かう道中小型から中型まで姿を現しルリアとロック達の行く手を阻んだ。
一行はリーバードの事をよく知るロック達と協力し、何体ものリーバードを撃退する。
そして更に一行の前に意外な人物達が現れた――。
「お前達は……!?」
「お、おめえは……っ!?」
「空賊ボーン一家っ!?」
「青いヤロウッ!?」
ロック達の世界で悪事を働く空賊、その名も“ボーン一家”とその長兄ティーゼル・ボーン。
「青い人ですよトロンさま~!」
「それに他にも色々いますぅ~!」
「ロ、ロック……と、へなちょこメカニック!? なんであんた達もここに!?」
「それはこっちのセリフ……!」
ロールと何やら火花を散らすのは、ボーン一家長女トロン・ボーン。
「知り合いかロック?」
「う、うん……僕たちの世界で色々と……」
「なぁーにが色々とだ! お前のせいで俺たちがどんだけ苦労したと……っ!! くうぅ!!」
「そ、それはお前達が悪いことするからで……」
「黙りやがれ! わけのわからねえままこんなとこに飛ばされたが、ここで会ったが百年目だ! 行くぞ野郎ども!!」
「はーい!」
「あ、なんだかあの小さい子達かわいいです……」
「それより来るぞルリア!」
ボーン一家の子分ロボット“コブン”に目を奪われたルリアだが、ロック達に襲いかかかるボーン一家。しかしロック達もルリア達と協力して彼等を返り討ちにする。
「く、くっそぉ……! グスタフも本調子じゃねえし、やっぱダメかぁ……!」
「やっぱり二人乗りでは、狭くて操縦し辛いんですわ!」
「なぁにを!? トロン、そもそもグスタフぁ俺様が操縦して--」
「もう操縦した時間も腕前も、私の方が上です!」
「うっぐぅ!? それは……そうだけどよ……」
「な、なあお前ら? 言い争うのは後にして、負けたならオイラ達の話聞いてくれよ」
ボーン一家の主力兵器、グスタフを操縦するトロンに対し負い目があるのか強く言えないティーゼル。どこか空気が緩んだのを感じたのか、ビィが彼らの間に入り、今の状況を説明。なんとか話し合いの末、一時休戦する事ができた。
ボーン一家も加えた一行は、ついに目当てのダンジョンへ到着。そしてその奥へと進み――。
「超大型リーバード!?」
「こ、こんなもんまで居やがったのか!?」
遺跡の奥深くで姿を現す超大型リーバード。
「見た感じ最後の番人かぁ! こいつを倒せばディフレクターのお出ましってわけかよ!」
「わからないけど、とにかく倒すしかない!」
「へなちょこメカニックは、邪魔だから下がってなさい!」
「誰がへなちょこよ!? もう……気を付けね、ロック!」
ロックとルリア達、そしてボーン一家が協力し、超大型リーバードに立ち向かう。
果たして彼らは、この大型リーバードを倒す事が出来るのか。そして謎を秘めたディフレクターとは。
「データ、この遺跡の施設……カトルオックス島のメインゲートと似てる……!」
「そうだよロック。この遺跡、いやこの島自体が元々――“ボク達の世界”から来たんだよ」
青の冒険者の手によって、遺跡に眠る謎が今目を覚ます――。