またゲーム本編とイベント【リペイント・ザ・メモリー】のネタバレ、登場人物のキャラ崩壊等があるため、ご注意ください。
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一 睡眠見守り隊
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──団長達がラムレッダを救出した頃の事、現実にて。
「だ、大丈夫でしょうか……まだ誰も目を覚ましませんけど……」
エンゼラの医務室では、眠りについた団長達の
現実にいる彼女達は、夢の中にいる団長達の状況を知る事も出来ず、そして手を貸す事も出来ない。
「何も出来ないなんて、とことんもどかしいです……」
「ミンミィ……」
共に見守るブリジールとミスラ。大人数で夢の世界に行けないからとは言え、団長達を助けにも行けない現状に不安だけでなく苛立ちを募らせた。
「……ダガ案外ウマクイッテルカモシレンゾ」
「え?」
「見テミロ、ラムレッダ達ノ顔」
だが一人ティアマトが悪夢に囚われ眠るカリオストロ達の僅かな変化に気づいた。コンスタンツィアは、ティアマトに言われじっとカリオストロ達の顔を見てみる。するとどうだろう、確かに僅かであるがその表情が穏やかになっているようにも見えた。
「モシカシタラ悪夢カラ抜ケ出シタカモシレン」
「なら団長さん達も!」
「多分無事ダロウ。ソンナ軟ナ奴ジャアナイカラナ」
「け、けどそれなら……後は」
悪夢に囚われた内の一人、最初に悪夢を見たルナール。彼女だけはまだ死んだように眠り続ける。果たして彼女の方は、今夢の中でどうなっているのかブリジール達には、想像がつかない。
「だ、大丈夫……だよ……!」
だが一人、ルナールの傍から離れず見守るセレストだけは不安を見せない。
「団長達が……絶対ルナール先生も、みんなも助けてくれるから……」
「セレストさん……」
「だから、大丈夫だよ……!」
セレストは、ルナール達を助けに向かった団長達を信じていた。何よりもルナール自身が悪夢から目を覚ますであろうと信じている。
「それに……団長には、“秘策”あげたんだ……眠る直前にね……」
「秘策? ナンダソレハ?」
「ひ、秘密だよ……だから、秘策だもん……」
自信ありと言った様子のセレスト。彼女の言う秘策とはなんぞやと不思議そうに顔を見合わせるティアマト達。
「が、頑張ってルナール先生……ま、まだ見本市……一緒に行ってないもん……夢で終わらせちゃ駄目だよ……!」
きっと自分の声も聞こえていると信じ、セレストは眠るルナールへと声をかけ続けた──。
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二 ほんとにほんとにほんとにほんとにラムレッダ
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──夢の回廊。ラムレッダの扉前。
予想外のラムレッダ分裂などの事態を受けながらも俺達は、ラムレッダの悪夢から脱出する事ができた。酒の臭いが充満する空間から出れてホッと一息である。
「ふぃ~……。息しても酒臭くねえや」
「僕まだちょっと鼻に残ってます……」
「オイラも流石に気分悪くなりそうだったな」
強烈なアルコール空間でモルフェ君は顔をしかめ、B・ビィも若干気分を悪くしたようだ。何時の間にやら通常形態に戻っている。
「まあ全員無事に出れて良かったよ」
「確かに全員無事だな。と言うか、増えたんだが?」
俺の言葉に対し、カリオストロが呆れた様子である集団を指さす。そこにいたのは、合計五人の同じ顔。
「助かって良かったわ、ラムレッダ!! 本当に!!」
「レダ美達のおかげよ!! 本当にありがとう!!」
俺達が助けたラムレッダ、そしてその彼女から生まれたと言うレダ美、ラム子、レム代、羅無。俺命名“名前のラ行ややこし”シスターズである。
「それにこれで私達勢ぞろいね!」
「今こそ真のラムちゃんズ!!」
「いやーにぎやかでいーねー」
「ラムレッ……たす、か……よか。お゛ぅえ゛えぇぇ……っ!?」
「耐えよレム代。空気を読め」
ラムレッダを中心に集まるラムちゃんズ。傍から見ると本当になんだこの集団。
「団長君、みんなも改めてありがとう!!」
「それは気にしなくていいけども……ラムレッダ?」
「なあに、団長君?」
「君性格変わってない?」
悪夢の中では指摘する暇もなかったが、脱出した今いい加減聞いておきたい。ラムレッダの性格が変わりすぎである。活舌も良くて足取りも悪くない。
「あ、あぁ~……これは、ね? そのぉ……」
「これじゃ普通のシスターじゃないか」
「ふ、普通のシスターだよ私は!? ……元々」
「実はラムちゃんズの一人で、本人じゃないとかないよな?」
「ししし、失敬な!?」
俺の発言にショックを受けているラムレッダだが、やはり普段のイメージと違いすぎる。
「確かに……こんなラムレッダ見たことねえな。にゃあにゃあ言わねえし、嘔吐いてもねえし」
「オレ様が仲間になる前からずっと“そんな風”だったんだろ?」
「うん、酒瓶手放したのだって見た事ないよ俺」
「オイラも」
「見なさいラムレッダ、あなたの普段の行いが団長君達に不信感を与えてるわ」
「あーん、ひどいぃ!?」
「にゃはー自業自得だねー」
更にショックを受けるラムレッダ、レダ美さん達にさえ言われている。だが、本当に違和感スゴイからしかたない。ほぼ別人である。
「ほんとにほんとにほんとにほんとにラムレッダだよ!! 居酒屋で団長君の頭酒瓶でぶってシチューに入れたラムレッダだよう!?」
「改めて酷い出会いである」
「それはごめんなさいでしたぁーっ!!」
流れるような腰を曲げての謝罪。なるほど、この感じはラムレッダである。
「(笑)団員の空気がある。確かにラムレッダだ」
「判断基準っ!?」
「シスター(笑)だったろ今まで」
「あひぃん、否定できない……およよ……」
酔っぱらって詠唱魔法嘔吐いて使えないシスターなんて(笑)で十分である。
「団長君、これが“素”なのよ。本当にラムレッダの素面」
「普段からこうあってほしいものである」
「素直な感想だにゃ~」
「言われておるぞ、ラムレッダよ」
「はい……面目ないです」
酒を飲まない、酔っ払わない。たったこれだけで、これほどに違う。人間とは、酒とは
「とりあえず……夢の世界だから素面でいられた、というか戻れたわけ?」
「うん、多分そうだと思う。悪夢の中じゃ、ただ酔ったつもりだったわけだし」
「ならさっき使ってた拳法みたいなのは?」
「あれはー……確かだいぶ前、お父さんが使ってたのを見て覚えてたと言うか……」
酔っ払い共相手に使った拳法に関して聞いてみると意外な答えが返ってきた。
「親父さん拳法家なの?」
「ううん、めっちゃ厳しいけど聖職者だよ。めっちゃ厳しいけど」
どうやら父親に苦手意識があるらしい。余程聖職者として厳格なのだろうか。
「そもそもドラフだから腕っぷしは強いんだ。けどなんかああ言う拳法みたいな動きもしてたんだけど……もしかして、一子相伝な感じだったりしてね」
「まだやれる感じ?」
「見よう見まねだけど多分」
「……現実では?」
「自信ないです!!」
きっと「(酔って動けないだろうから)自信ないです!!」って意味で受け取るほうが良いのだろう。
「ほろ酔い程度なら大丈夫だろうけど……」
「ほろ酔いで済むの?」
「へ、へへへ……」
「まあ現実の方は、現実戻ってから考えるよ。今はまだ……おや?」
次にやるべき事に向けて移動しようとしたが、俺達が出入りしたラムレッダの悪夢への扉が淡い光を発し出した。
「モルフェ君、これはさっきと同じ……」
「はい、ラムレッダさんの悪夢が消えていきます」
「……主を失って、ただの夢になる。覚めれば消える……ただの夢」
カリオストロの時と同じように消える扉、そして悪夢。ヴェトルちゃんの言葉通り、あの悪夢は夢となって消えるのだろう。
だが、今回はカリオストロの時と少し違う事があった。
「……んじゃ、あとは頑張りなさい。ラムレッダ」
「げぇ!? ラ、ラムちゃんズ!?」
「皆さんなんか薄くないっ!?」
レダ美さん達ラムちゃんズの皆までも光を放ち消え始めていた。
「私達はあなたの悪夢だからこそ、存在していた。だから悪夢が消えれば、私達も消えるわ」
「ようは、手助けはここまでってことだねぇー」
「そ、そんな……けど」
「か、悲しまな……い、でえぇおえぇ……」
「暫く我らの助けなどいるまい」
少しづつ消えていくレダ美さん達。彼女達は、ラムレッダに近づき、そして手をとった。……レム代さんだけ、嘔吐いてるためもたれ掛かるようにしてるが。
「それに消えると言っても、あなたに戻るだけ。私達はあなた自身なんだから」
「どうせ酔ったらまた会えるしさー」
「レダ美、ラム子……」
「ラムちゃ……ズは……、ずっと……いっしょ……えヴぉ!?」
「貴様が酒を飲む限りな」
「レム代、羅無……レム代は、ほんとに大丈夫なの?」
「だいじょ、ヴぁな……い……から、先に……さよなら……う、うぇおぉ……ぅヴ──」
レム代さんの口が一瞬膨れこの場の全員が「ヤバい」と思った瞬間、彼女は光の粒子となってラムレッダの中へ消えた。
「よかった、夢の中まで虹を見る羽目にはならなかった」
「今頃ラムレッダの中で思う存分吐いてるな」
「嫌な言い方やめてB・ビィ!?」
完全に吐く寸前でラムレッダのへ戻ったので間違いじゃないが、B・ビィの例えに本気でラムレッダは嫌がった。
「最後までレム代はレム代ね……けど、だからこそラムちゃんズなんだけどさ」
「あれもラムレッダの一面だよねーにゃはは~」
「あまりにも身に覚えあるから反論できない……」
「ラムレッダー肩ひじ張らず程々がんばりなー。んで、酒も程々に~。そんじゃ、僕もさいにゃら~。にゃはは~──」
続いてラム子さんが笑いながらラムレッダの中へ消えていく。
「ラム子の言う通り、お酒は程々に。団長君達に迷惑かけちゃ駄目よ?」
「あは、あはは……自分に叱られちゃうとなぁ」
「つまり文字通り“自制”しなさいってこと。それじゃ団長君、みんな、会えて良かったわ。機会があればまた会いましょうね──」
レダ美さんが俺達にも手を振ってラムレッダへと消えて行く。そして最後には──。
「……ラムレッダ、レダ美達の言葉もしかり、だが道楽あっての人生よ。精進せい、悪夢の酒に惑わされぬよう」
「こ、心がけます」
「くはは……っ! ならば良い。貴様が飲む酒は、我らの飲む酒。今度はちゃんと美味い酒を飲め」
「それは勿論! 美味しく楽しく、それがモットー!!」
「うむ……」
羅無さんは、他のみな同様ラムレッダの中へと消えようとする。
が、不意に立ち止まりラムレッダの耳元に口を寄せていく。
「──忘れるなラムレッダ、悪夢で貴様が酔えていない事も、苦しんでる事も、あの小僧は気付いてくれたぞ」
「……へ?」
「良い団長よなぁ。唾でもつけておくがよかろう」
「はいぃっ!?」
「ふははは……っ!! また宴で
なんか高らかに笑うと羅無さんは、ラムレッダの中へと消えていった。
最後の言葉は、ラムレッダに向けたものらしく、俺達の方では聞き取る事は出来なかった。ラムレッダの反応からしてなんぞ変な事言われたらしい。
「羅無さんなんて?」
「へっ!? いや、いやいや……いや~なんでもないにゃあっ!?」
「ちょっと戻ったぞ」
「戻ったな」
何を焦ってるのかは知らないが、若干俺達の知るラムレッダの口調に戻ってきた。主にラム子さんとレム代さんが戻ったからだろうか? なんかホッとする。
そしてホッとしたなら次の事。俺達には、まだまだやることがあるのだ。
残る扉は、あと一つ。どんな悪夢が待つかわからぬ魔の扉、ルナールさんの悪夢へ続く扉であった──。
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三 三つ目のドア
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目の間にあるこの場で最後に残ったルナールさんの扉。おそらくルナールさんと出会った時に招かれた家で見た彼女の私室の扉だろう。
扉からこの奥が彼女の私室、あるいはそれに近い室内なのはわかる。尤もそれが現実の通りとは限らない、何よりもどんな悪夢であるかが問題であるが、それは入ってみないとわからないのが辛いところである。
「茶化すつもりはねえが、やっぱ趣味に関してじゃねえか?」
B・ビィがルナールさんの夢に関して予測を立てる。俺もそうであろうとは思っているが、どっこい必ずしもそうとは限らない。
「最初の悪夢を見た時のルナールさんは、なんて言うか“普通の人”だった。まあ色々予想出来んくもないけど……」
「いえ、あまり予想を立て過ぎると却って混乱するかもしれません」
悪夢についてあまり予想を立てるのは、あまり良くないだろうとモルフェ君。
「僕自身ラムレッダさんの悪夢で予想も何もかも崩れました……。夢だからとかじゃなくて、今回は常識が通用しなさ過ぎです……。団長さん一人じゃ頭グルグル巻きで戻るし……かと思えば、悪夢にご本人登場with五人とかなんなんですか? なんかのコントですか、コントなんですか!?」
「モルフェが荒んじゃった……」
「ラムちゃんズで理解を超えたか」
「な、なんかごめんにゃさい……」
だんだん声を荒げるモルフェ君。経験した事の無い悪夢に色々理解を超えてしまったようだ。肩で息までして落ち着こうとするモルフェ君。なんだが大変申し訳ねえ。
「……す、すみません、取り乱しました」
「いや気持ちはわかる」
「いえ……それより、一つ分かる事があります。ルナールさんは、皆さんの中で最初に悪夢を見た人です。そして一度目を覚まし、そして二度目はそのまま……つまり、一番眠りが深い状態にいます」
「ルナールさんが、悪夢にいた時間が一番長いわけか」
「そうです。ですのでこちらの存在は勿論、言葉でさえ中々認識されない可能性があります」
ルナールさんは、俺とセレストが目撃した最初の悪夢を見た時でさえ俺達をの声もすぐ届かず記憶も混濁していた。最早目を覚ます事すら出来ていない今、果たしてどんな悪夢が待つというのか。
「……けどとりあえず、もう入ってみるしかないです」
想像できない悪夢に対し、思わず“ゴクリ……”と唾をのんだ俺だったがモルフェ君は、すぐなんか緩い感じになった。
「急にいい加減に……」
「だってなんかもう、団長さんなら何起きても大丈夫な気がしてきました僕」
「その通りだぜモルフェ」
「こいつだいたいの事だいたい何とかするからな」
「しちゃうよね」
「なぁーんで君達が自信満々で答えるぅ?」
異議を唱えたいモルフェ君の言葉に俺より先にB・ビィ達が答えるのはなぜですかねえ? と言うか、モルフェ君遠慮無くなってきたな。
結局議論の意味が無いのでこのまま扉に突入することとなる。出たとこ勝負のルナールさん救出作戦である。ずっと出たとこ勝負とか言ってはいけないのだ。
「それと皆さん……ルナールさんを悪夢から解放したらオネイロスも何か反応するかもしれません、そちらも用心してください」
現在影すら見えぬ星晶獣オネイロス。こんな摩訶不思議空間で不意打ちをされてはたまらないが、姿を見せない以上対策も難しい。
「やれやれ、この世界にいるだけで、既に奴の腹の中にいるような気分だってのにな」
「団長さんじゃ……お腹壊すかも、ね?」
「ハッハー……そりゃどういう意味かなヴェトルちゃん?」
「ふふ……うふふふふぅ……」
ヴェトルちゃんは、俺を見て微笑むのみ。からかわれたのかもしれん。
「はぁ……それじゃあ最後の扉、頑張って行きましょうかねえ」
ドアノブを回し、思い切ってバッと開ける。そして、俺達の目に飛び込んできた光景は──。
「なんだ……これ……」
扉の中には、やはりルナールさんの私室があった。だがそこに広がる光景は、床一面に散らばる──最早敷き詰められたと言っても良いほどの量の“折れたペン”、そして“破けた白紙の紙”。
そして、その薄明りの中部屋の中心で膝を抱えるルナールさんの姿だった──。
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四 折れたペン、破けた紙、挫けた心
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果たして耽美絵師を目指した彼女──ルナールは、如何にして悪夢にのまれたか。
ただ地味な少女でしかなかったルナールは、古本屋で出会った絵物語を見てからそれに運命を感じ取り、自然と耽美絵師を目指した。その耽美絵の基となった名作『ポポルサーガ』との出会いも彼女の人生を大きく変えただろう。
自分も絵を描きたい、ポポルサーガの絵を、耽美モノを──そう思った彼女は、気づけば絵を描いていた。そのための勉強をした。
幼き故に耽美モノが買えないならば……と、人体図鑑などを両親に買ってもらい、それに載る“そういうところ”を食い入るように見て楽しんだ。
そして時が経ち、絵も十分に巧くなった。少なくとも図鑑の挿絵などに載せれる程の腕前を持った。特に魔物の絵に関しては、評判が良く売れっ子と言っても良いほどだった。
彼女自身「十分準備は整った」と思った。魔物絵師として挿絵を描く傍ら、耽美モノの練習もした。ネームも棚に収まらないほど描いていたのだ。
彼女は意を決し本の展示会であり即売会でもある書物見本市へ参加を応募、そしてそれは見事通った。
気持ちが舞い上がるままに彼女は、本を描き始めた。そして筆は大いに進んだ。頭に描いていた物をこれでもかと言うほど描いた。
原稿を入稿し、そして無事印刷。仕事でためた旅費で見本市へと赴き、そして存分に祭りを楽しみ帰る──はずだった。
「──絵柄が向いてない」
それは、彼女の本を手に取り数ページ読んで買わず去っていった見知らぬ誰かの言葉だった。
悪意とは違う純粋な意見であったろうが、それは初めて見本市に参加したルナールにとってあまりに厳しい生の意見だったのだ。
更にそれ以降、本を買うどころか手に取る者すらおらず時間だけが過ぎ去った。まるで孤島で遭難した気分だった。
意気揚々と参加した見本市。しかしルナールは、自分が酷く場違いだと感じるようになった。
そしてそのまま彼女の見本市は終了、本の在庫を抱えたまま帰宅する。気が付いたら全ては終わり家に戻っていた。
家に戻ってからも暫し呆然として、そしてふと……自分の描いた本を手に取った。敬愛しバイブルといえるポポルサーガを基にした耽美モノの絵物語。渾身の出来と思った作品だ。だが、今見てみるとなんの感情も湧かなかった。
そして頭にあの言葉が繰り返し浮かんだ。
「──絵柄が向いてない」
言われなくてもわかっている。癖なのだ、自分の作風なのだ──だが、ハッキリ言われた言葉は、まるで呪いのようにのしかかった。たった一言があまりにも重かった。
ならば、と。彼女はなるべく絵柄を変えて絵を描いてみた。なるべくマイルドな絵柄を目指す。
そして時間は流れ別の見本市。最初より少し小規模のものを選んだルナールは、わずかながら余裕をもって参加してみた。
だが、結果はどうであったろうか。彼女の本を手に取る者もいたが買っていく者は皆無であった。
意気消沈した彼女は、また在庫を抱え家に戻る。そして考えた──やはり絵柄だろうか? そのように。
ルナールは、また少し絵柄を変えてみた。慣れない絵柄だがこれならば、と彼女は思う。そして三度見本市へ参加、描いた本を並べるが──結果は変わらなかった。
何故なのかとルナールは、酷く悩んだ。売り上げの問題ではない、なぜ誰も私の絵を、耽美モノを読んでくれないのか──その理由は、やはり絵柄なのだろうかと思い至る。
それから彼女は、更に人に受け入れられるような絵柄を目指してみた。
──だが違う、なにかが違う。筆がのらない、ペンが進まない。強引に変えた絵柄は、むしろより歪な絵柄になってしまった。
更に別の絵柄を目指す、がやはり違う。更に絵柄は歪になった。
その後も何度も絵柄を変えてみる。だがどう描いても絵は歪になるばかり。
何度も何度も、何度も何度も……何度も描いた。歪な絵を。
「なんなのよ……何よこの絵は……っ!!」
そして何時しか魔物絵すら歪になり、彼女本来の絵も描けなくなっていた。
「“向いてる絵”ってなに!? 受ける絵って何よ!? こんなの、もう私の絵じゃない……私の絵は、絵は……っ!」
憧れた世界はこんな風ではなかった。
「ポポルサーガ……楽しい、面白いわよ……そうでしょう私!?」
目指したものはこんなモノではなかった。
「……ほら、有名作家の耽美モノよ!! こんなのを描いてみたいって……思ってたでしょう!? ずっと、ずっと思ってたじゃないのぉ!?」
たった一言の言葉は、こうもあっけなく、そして簡単に彼女の心を折ったのだ。
──以来、ペンを握っても、紙を見つめても、そこに描くべきものが浮かばなくなった。大好きだった耽美モノや、ポポルサーガを読んでも創作意欲がわかなくなった。
そして彼女は、今日も自分の部屋の中で床に座り込んで膝を抱える。最早“いつ頃からそうだった”かは、彼女自身でもわからない。とにかく“ずっとそうだった”のだろう。しかし折れたペンと破けた紙の数が彼女の苦悩と時の長さを表した。
何も描けず、何も楽しめず、そして未練だけが残り……ただ虚無感のみを味わう日々。それが、今のルナールだった。
楽しめた事が楽しめなくなった人間は、あまりにも脆いのだ──。
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五 届かぬ声を届けるために
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「おいおいおぉーい!? ルナールさん、ルナールさんっ!? ねえってばちょっとぉ!?」
「ルナール、起きてっ!! 団長君達が来てくれたわよ!!」
夢の扉をくぐり異様な光景を前にした俺達。床を埋め尽くすペンと紙のゴミの中でうずくまるルナールさんを見つけるが、案の定まともな様子ではなかった。
ラムレッダ達と一緒に声をかけても、肩をゆすっても、なんなら軽く頬を叩いてみてもピクリともしない。反応がなさ過ぎて不気味に思うほどだった。
「悪夢に浸かり過ぎたんだ……。殆ど心が閉ざされ始めてる……」
ルナールさんの様子を見たモルフェ君が、酷く深刻そうに呟いた。
「そりゃ、つまりどう言うこったい……」
「悪夢に心が負けそうなんです。そうなったら肉体じゃなく心が、精神が先に死んでしまいます……」
「そんなん死んでるのと変わらんじゃんか!?」
想像以上に事態は切迫していた。今すぐルナールさんを正気に戻し悪夢から引き揚げ正しい記憶を思い出してもらわなければ彼女自身が悪夢の住人になってしまう。
「ルナール、随分衰弱してるみたい。回復魔法とかかけた方がいいかしら……今の私なら魔法も」
「いえ……多分無意味です」
死人のようなルナールさんを見てラムレッダがヒールか何かをかけようとしていた。だがルナールさんの様子を見たモルフェ君は、首を横に振った。
「どれだけ回復魔法をかけても、ルナールさん自身がそれを認識しなければ意味はありません……いや、そもそもルナールさんは、“弱っていない”はずなんです」
「弱ってないって……どういう事?」
「この悪夢のせいです。ラムレッダさんが自分が“酔ってる”と思い込んでたように、ルナールさんも、“衰弱してる状態”だと思い込まされて……」
「思い込みで……ここまで? そんな、私より酷いじゃない……」
もはや思い込みや暗示の域を超えた悪夢の影響。ほんの少し前まで自分自身もそうであった事実も相まってその恐ろしさにラムレッダは、顔を青くしゾッとしていた。
そして事実異様な睡魔や記憶の混濁など現実にまで悪夢は影響を与えだしている。
「だが起こそうにも生半可な刺激じゃ効果がねえ。どうすんだ……」
「ガツンとデカい目覚まし使うしかねえんじゃねえか?」
「んなもんどこにあるってんだよ……」
カリオストロとB・ビィの会話を聞きながら俺は考えた。殆ど外部の声が聞こえない程“今のルナールさん”は弱っている。肩を揺らしても反応が無いため肉体への刺激も鈍くなってるだろう。
そしてこの悪夢には、ルナールさん以外の存在がいない。カリオストロやラムレッダの時は、それぞれ“妹”と“酔っ払い”、更には“ラムちゃんズ”が居た。だが今ここには悪夢の住人が誰一人いないのだ。悪夢の欠片すら姿を見せない。登場人物の少ない悪夢は、この世界の詳細を知るのを困難にさせる。あるいは、もうそんなモノが必要無い程ルナールさんが弱ってる……悪夢として完成されている証かもしれない。
「……“アレ”を、使うしかないかもしれん」
早急に、そして確実にルナールさんを正気に戻す方法。たった一つ思い当たるその手段。俺の呟きに対しカリオストロが顔向けた。
「おい、アレってのはなんだ?」
「実は寝る前にセレストからちょっと……が、正直使いたくない。けど確実に……ルナールさんを正気に戻せると思う」
「だから、そりゃなんだってんだよ?」
「何って言われると、まあ……これですが」
カリオストロに急かされた俺は、懐から一冊本を取り出した。カリオストロは、ギョッとしてその表紙を見た。
「お前……それまさか」
「うん、ルナールさん直筆のやつ」
「そんなもん何時の間に……」
「寝る直前にセレストが渡してくれた。身に着けてれば夢でも持ってるだろうからってな」
一人の半裸の青年がもう一人の半裸の青年を後ろから抱きしめる表紙からして濃い~内容を覗かせるルナールさんの本。セレストの要望で描いたほぼ下書きで趣味のものとの事。
「とは言え内容は出来てて、一応オチまである……あと全年齢向け」
「んなこたぁ聞いてねえ。お前……それで何するつもりだ?」
カリオストロは、それはそれは如何にも「嫌な予感がする……」と言った様子で俺を見る。多分彼女の予想通りの事を今から俺は、この場でやるつもりだ。
「許せルナールさん。これもあなたを助けるため……」
俺は覚悟を決め手に持った本を開いた──。
■
六 邪眼音読黒歴史
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「…………」
悪夢の中、ルナールの心は、虚無感だけに支配されていた。
重ねた挫折は、彼女の気力を奪い完全な無気力とした。だが今や何をするにもやる気は起きず、食事すら億劫になった。
ペンを握る気力も起きない。原稿に向かう意欲もわかない。ならば自分は、死んだも同然とさえ思った。そしてそのまま本当に死んでしまうのだろうと……。
そんな事をふと思っては、すぐさま思考さえ虚無となる。闇に闇を重ねた深淵に飲まれるかのような虚無感。いっそそれを心地良いとすら感じた。
耽美モノへの憧れも、創作への熱意も失い、ただ消えるのみの小さな火のような存在。そうである事を受け入れたルナール。
悪夢と言う暗闇に溶ける感覚を味わいながら、彼女の思考は完全な無となり、そして命さえ闇へと消えていく──。
「──“待てよ。こんなところで終わるなんて残酷じゃないか? ”」
──かと思われた。
突如ルナールの耳に彼女に語り掛けるような声が聞こえてきたのだ。
「“──その時、マキリはポポルを壁際まで追い詰める”」
「…………」
「……ほら……次、ポポルの出番よ」
「早く、ポポルのセリフ……続けて」
「おい……やっぱ、言わねえとダメか……せめて役変えさせろ、オレ様のキャラじゃねえ……」
「ジャンケンで決めようって言ったのあんたじゃん……! 俺だってマキリ恥ずかしいんだから……! ほれ、時間ないんだから……早く……」
「あーもう、わかったよ……はぁ……──“よしてくれ、もう充分なはずだろ”」
「“いいや、駄目だね。こんなもんで満足出来るわけないだろ。俺も、アンタも……”」
更に聞こえてきた別の二つの声。
「“バ、バカ言わないでくれ!”」
「“へえ? ならなんでもっと強く拒まない?”」
「“──恥じらうポポル。だがマキリは、更に彼に迫る。二人の距離は、互いの吐息がかかる程に縮まった”」
耳に入っても気にも留めなかったはずの外部の雑音。だがその声が語る内容にルナールは、とても覚えがあった。
「“それは、君が強引だから……”」
「“その俺の強引さを理由にしたいんじゃないのか?”」
「“なにを……っ!”」
「“おっと、逃がさないぜ”」
「“ああっ!? ”」
「“──隙間から逃げようとしたポポルの肩をマキリは、左手で押さえつけた”」
ルナールの闇に沈んでいた意識が急速に浮かび上がった。感覚全てがクリアになっていく。
「“は、離してくれ……”」
「“いいやダメだね。俺は、強引……だからな”」
「“──マキリの情熱を秘めた視線は、澄んだポポルの瞳を見て離さなかった。そのギラギラとした視線を受けてポポルは、戸惑いと同時に何かを期待する気持ちが芽生えるのを感じていた”」
「“なあ、いい加減ハッキリさせよう。俺は、お前にとってなんなんだ……?”」
「“……友達だよ。当たり前だろう”」
「“違う、そんな答えを聞いてるんじゃない”」
「“他になんの答えがあるって言うんだ!”」
──あれ? これ、まさか“耽美モノ”? って言うか、なんかすっごい覚えある内容なんですけど? どっかで読んだ? あれ?
聞こえてくる会話、そのシチュエーションは、二人の男性が痴話喧嘩のようなやり取りをしているようであり、更に何故かそれに覚えのあるルナールは、その情景がありありと想像できた。
「“お前だってわかってるハズだろ”」
「“そんなの、言えないよ……”」
「“悲しいな……俺は言えると言うのに、ハッキリと……”」
──いや、いやいや……覚えあるっていうか超心当たりあるんですけど? なんなら自分で作った……え、これわた、私が描いたやつ? メイドイン私? 描いた? いや待って、だって……“何時”描いたの?
意識が戻りだしたルナールは、悪夢の記憶と現実の記憶が入交そして正しい記憶へと修正され始めた。
「“俺はいつだって思いを隠さなかった。はぐらかしたのは、ポポル……お前だけさ”」
「“ち、違う……! 誤魔化すつもりなんて僕は……っ! ”」
「“じゃあわかるだろ! 俺にとってお前は、もう友達なんかじゃ我慢できないのさ”」
「“君、それは……”」
「“友達のままだなんて……それじゃ収まりやしない。この気持ちはな”」
「“マキリ……”」
──あ、描いたわ。私描いてる……。誰かにヨイショされて調子乗ってホイホイ描いて──“誰か”? 誰かって……違う、セレストよ。そうよセレストにお願いされて描いたんだ。それも結構最近……え? それ読まれてる? 朗読?
ルナールの脳裏には、自分の部屋──エンゼラでの自室でセレストと二人語らいながら今読まれている本を描く光景が思い浮かんだ。そしてそれが今目の前で朗読されている事に気が付きいた。
「“……わかってるさ、お前の気持ちもそれを言えない理由も。けど俺は、どうしても聞きたいんだ。お前の口から、お前の気持ちを! 口に出して伝えてほしいんだよ!?”」
「“……ぼ、僕だってっ!!”」
「“──ポポルの手が、自身を壁に押さえつけるマキリの手へと伸び重なる。それは自然と手の平を合わせ、そして指をからませ強く互いに握り合った。もう、離れたくはないといわんばかりに”」
「“僕だってそれが言えれば、君にこの気持ちを伝えれるならどんなに……!!”」
「──ちょ、ちょ……ま」
擦れた声だが、ルナールの口から声が出てきた。制止の声だ。聞こえてくる声の主達を止めるためのもの。
「“なら言えよ!! 言ってくれ!! ためらう必要なんて無いはずだ!!”」
「“わかってくれ! 僕と、君は……僕達は……!!”」
「ちょっと……?」
「“──ポポルとマキリ、二人は例え互いに想い合っても共に道を歩む事は許されない運命にある。だが! この時燃え上がる友情を超えた思いは、最早その運命でさえ抑えられない程に! ”」
「ちょっと待っ……え? なに? あれ、どこここ……って言うか、団長? それにカリオストロとラムレッダ……?」
「“国は関係ない!! これから何があったとしても、俺達の気持ちは嘘にはならないだろう!? 少なくとも、今のこの気持ちは……っ!! ”」
「いやそれより待って……待ってまてまて……何でみんなそれ読んで……ねえやめて? ね、ちょ……やめっ!?」
三人の声にも熱がこもる。いよいよ場面はクライマックスへと近づいてきたのだ。それと同時にルナールの表情は、みるみる生気が戻り始める。それどころか焦りさえ見せ出しはらはら汗を流し顔を上げた。
「“僕は……僕は……っ!!”」
「止め、とめ……ストッ!? ストォ──ップ!?」
「“答えてくれポポルッ!! お前にとって、俺は……!!”」
「“──マキリの想いに応えられるのは自分しかいない、ポポルは決意した! たとえ、自分たちの未来が、どれ程残酷だとしてもっ!”」
「ちょっとお三方ぁっ!? ねえ、止めてお願い止めて、死ねるから!? 羞恥がやばいから!? ほら目ぇ覚めてる!! 状況わかんないけど私もう気づいてるぅ!?」
「“マキリ……僕は”」
「やめてっ!? ほんとそれ以上は……」
「“僕にとって君は……!! 君は──”」
「やめ……や、やめてえぇぁああぁぁあぁぁああ────っ!?」
最後のキメ台詞が言われようとした瞬間ルナールは、叫び声をあげ立ち上がった。その姿は、既にあの死人のようなものではなくなっており、常に創作への熱意に溢れる彼女へと完全に戻っていた。
「キエアァ──っ!? 描いた本を本人の目の前で朗読しないで!? 死んじゃうでしょ!? 心がっ!? ぐえぇーっ!? その場のテンションで描いたのよっ!? 盛り上がった勢いなのよっ!! だって深夜テンションだったんだもんっ!? 邪眼が私をそそのかしたのよっ!! 自分で聞いてて鳥肌立つわよっ!! ……嫌いじゃないけどねっ!?」
「はい成功っ!! 終了、終わりっ!!」
「……へ?」
立ち上がったルナールが立ち上がり叫ぶと朗読は止んだ。
「ほんとに目ぇ覚ましやがった……」
「効果あるものなのねぇ」
叫ぶだけ叫んだルナールを見て朗読を止めた三人──団長、カリオストロ、ラムレッダ。
「あ、あのぉ……もう終わりました?」
「お~……目、覚めてるね……」
「うん、終わったからもう耳いいよB・ビィ。お子さんには、刺激が強いからねえ」
「あいよ」
そしてヴェトルとその耳を塞ぐモルフェ、そして更にモルフェの耳を塞ぐB・ビィ。
「いやーどうなるかと思ったけど……まあ上手くいって良かったなあ。うん……ほんとに、うん」
「……だ、団長? これはいったい……?」
自分の状況を理解できないルナールは、キョトンとした様子で団長を見た。その視線に若干気まずそうな団長であったが、なにか意を決し彼女に一冊の本を渡す。
「いやなんだぁ……うん、まあルナールさん。色々説明したいことはあるけども……まあなんだ、とりあえずこれ返します」
「これ?」
団長からスッと渡された物をつい受け取ったルナールは、手に取ったそれを見てみる。そこにはモノクロながら気合の入った表紙の絵物語があった。そう、正に今の今まで団長達に朗読されていたルナール作の耽美モノ──『キミと
「あ、あぁ……!」
「え~とですね。とりあえずそのぉ……いい作品でしたよ?」
そしてルナールの脳裏には、先ほどの朗読劇の様子が鮮明に蘇った。
「いぃ────やああぁぁ────っ!?」
再度自分の作品が目の前で迫真の演技で読まれた事を理解したルナールの悲鳴は、悪夢の世界を消し去る程のものであった──。
いつも感想、誤字報告ありがとうございます。大変励みになっております。
リペイントメモリー編は、今年中の完結を目指してましたが無理そうです。とは言え、ルナール救出したので近々決着に向かわせます。
今回ルナールの悪夢は、邪眼の最強剣士アナザールナールを出すか悩んだ回でした。やたらとクソ強い悪夢の番人として登場、ルナール悶絶的な展開で。
ただ出すと展開がややこしくなるので断念。いつか別の機会に出したい。
フェザー君活躍しすぎぃ!! やったね!!
ただここまでイベントのメインキャラクターになると思ってなかったため、今後こちらでのフェザーの扱いは、話に盛り込んだとしても上限解放SRフェザー、また【サウザンド・バウンド】でのフェザーまでと考えています。ただ一応【マリオネット・スターズ】関係は、小ネタや話題程度として出すかもしれません。
ドラえもぉ――――んッ!! (映画イントロ開始)
ボボボーボ・ボーボボに始まり、今年のコラボイベやば(嬉しい)。パーティ編成にボボボーボ・ボーボボとプリキュアと銀魂とガチャピンとドラえもん並ばせられるのはグラブルだけ!! ……これなんのゲーム?
ドラちゃんの上限解放絵? 主人公の机の引き出しですかね? 地味に主人公の部屋の内装わかる絵になる? しずかちゃんジータ風の服で可愛いし、のび太も期待!!
ハチャメチャに楽しみなイベントだぜ……。
オチの小ネタは、グランとジータが一緒にいる世界線。てか既に誰かやってそう! 【吸血鬼すぐ死ぬ】パロで次回までさようなら。
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小ネタ 星晶獣Y談堕天司
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グランサイファーで平和な日常を送るグラン、ジータ、ビィ、ルリア、その仲間たち。だが突如としてその平穏は崩された!!
「フフフ……。俺は”星晶獣Y談堕天司”」
「星晶獣Y談堕天司!?」
「ただのベリアルじゃねえか!?」
どうして空は蒼いのか完結後の次元の隙間からしぶとく復活(ちょっかい出しに来た)した全力公然猥褻変態堕天司ベリアル改め星晶獣Y談堕天司。グランサイファーに現れた彼は、謎の下ネタ攻撃”星晶Y談波”を放ち団員を襲った!!
「俺の催眠術にかかれば、君たちはY談しか話せなくなる。くくく……! 性癖をぶちまけて慌てるヒトの子を見るのはたまらないよなぁ……!」
「めっちゃどうしようもねえな」
わざわざ復活してやると思えぬ低次元な行いに呆れるビィ。
「貴様! 僕は巨乳のドラフに甘やかされたいんだっ!!」
「こっちはただの巨乳好きだし」
なおベリアルに襲われていたグランサイファーの年少団員をかばったグランは、無残にも歩く性癖拡散器と化していた。
「お前は巨乳ならハーヴィンでもいいと思っているのか!?(ベリアル、ここから逃げ切れると思ってるのか!?)」
「クハ……! 無論思っちゃないね」
※ベリアルはY談語を理解できる。
「ので逃げる」
「この野郎――!!」
逃げ出したベリアル。
「まて不審星晶獣……ってベリアルじゃんっ!?」
「ええ、なんでグランサイファーに!?」
そこに現れたジータとルリア。
「ルリアッ! きみのビーチクに触れたい!! (そいつのビームに触れちゃ駄目だ!!)」
「グランが変態にっ!?」
「何があったんですか!?」
グラン必死の警告も変態発言に終わる。その隙にベリアルは、ルリアに向かい星晶Y談波を放った!!
「!? ……ち、ちんちん!? ちんちちんちん!!」
「ルリア!?」
「!?!?」
「どうしたのルリア、急に男子小学生みたいになって!」
「ち……ちんちーん!?」
「ルリアアァァ――!!」
哀れグランに続きルリアも星晶Y談波の餌食となった。
「星晶獣Y談堕天司……てか、ベリアルの催眠術のせいだぜ! かかるとグランやルリアみたいにY談しかはなせねえんだ」
「なにそれおも……なんて恐ろしい事を!!」
「ジータ……?」
巨乳大好きグランとY談語彙なさ過ぎて”ちんちん”が鳴き声と化したルリア。とにかくベリアルを追うジータ達だが……。
「エルーンの姉ちゃんは、腋見せ服よりハイレグ衣装の尻がエロい」
「待たれよ、ユカタヴィラの魅力は」
「ああ、分かるぜ。エルーンユカタビラの背中とか最高……」
熱心にエルーンの魅力を語るソリッズ達などがそこかしこに。
そう、逃げ回るベリアルの手によっグランサイファーは、既に艇中下ネタワンダーランドと化していた!!
そこに通りかかったのは、スタン。
「あ、スタン! Y談ベリアル見なかった!?」
「あっ! ジー……う…………!!」
「ああ、やられたんだ。けど今は緊急事態だよ!!」
「え……?」
「教えてあいつはどっちに行ったの!?」
「うっ!」
「ほら、早く!! 団員のみんなのためだよ!!」
「あぁ……あっちの方……では、俺はリード……されたい派です……!」
「やっぱり強気な娘が好みなんだね」
「いじめるなあぁ――ッ!!」
ヤカンが沸きそうなほど顔を赤くして答えたスタン。羞恥心と共に彼が指さした方には、談話室がありそこに居た団員達も犠牲者となっていた!!
「男はデカくてナンボでしょ」――メーテラ
「リンゴを咀嚼するビィ君はエロい!」――カ?リ?
「腰骨のラインが重要」――ヘルナル
「ワー大惨事」
「おい、なんかヤバいのいなかったか!?」
更には……。
「かわいい子にムダ毛があると興奮する……!」――グリームニル
「”なんか言いそう”って理由でこの配役は哀れだね……」
そして更に……。
「俺は【ピ────】だが特に【ピ────】」
「イングウェイさぁ────んっ!?」
恥じらう事すらない伝説の伊達男イングウェイ。彼からすればこの程度子供会話のようなもの。
「伏字になる程のY談なんて、さすがイングウェイさん。グラン達とは大違いだね」
「うるさい、悪いか! おっぱい大好き!!」
「ちんちん……!!」
あんまりなジータの言葉に憤慨するグランとルリアだが、やはり下ネタであった。
そんな瞬間、彼女達の隙を狙いベリアルが姿を現した!!
「隙ありY談波!!」
「うわーっ!? ビィガード!!」
「ジータなにをぅウオオォォッ!?」
なんとジータここで咄嗟にビィを引き寄せ身代わりにしてしまう。
「【ビィ────】!?【ビィ────】!?!?」
「あ、ごめんビィ」
「ビイイィィ――ッ!?」
「ビィさぁーんっ!?」
哀れ身代わりにされたビィは、ピー音ならぬビィ音を鳴らしジータに対し憤慨した。
――結局、その後大慌てで集合した四大天司やらと共になんとかベリアルを撃退。強引に時空の狭間に押し戻す事に成功。
「堕天司死すともY談死なずぅ――ッ!! また遊ぼうぜぇ特異てあァアアアア!?」
そしてグランは――。
「あ、おっぱい星人!! ナルメアさんには、揉ませてもらえた?」
「グ、グラン……」
公然におっぱい大好き団長と認識されるに至り、しょっちゅうジータにからかわれ、ルリアにはなんか悲しい目を向けられたと言う。
「チクショーもう忘れてよチクショー!!」