■
一 悪しき姦計
■
「お前ら、自由行動とは言ったけどさ……その荷物はなんだ?」
「イヤ、ソノ……」
俺の目の前でティアマトが正座している。あとそれ以外の女性陣は、正座こそしてないが頭を垂れている。場所は、街のマーケット。当然目だってしょうがないが、しかし言わねばなるまい。
「俺の目には、大量の女物の服が見えるなぁ?」
ティアマトの横には、しこたま女物の服の入った買い物袋が並んでいる。ゆうに20人分はあるだろうか、それも色とりどりの良い服だ。
自由行動で街を巡って、シェロさんの店に顔出したらこれだよ。
「あの前しこたま服買ったから、仕方なしに……フィラソピラも仲間になったから、本当に仕方なく、借金増やして女性陣のためのクローゼットを増やしたばかりだよなあ」
俺達男共で服を着るのは、人間である俺とフェザー君だけでそもそも服なんて少ない。動ければいいのだ。だから必然的に女性陣の衣類が多くなるのは、確かに仕方ない事だ。星晶獣とは言え、彼女達もオシャレはしたいだろう。だがそれと爆買いする事は別である。
「シェロさん、これらの品はお幾らです?」
「そうですね~どれも有名ブランド製で、希少な生地を使った物が多いので~……しめて26万5600ルピとなります~」
「返品します」
「待ッテクレ!!」
俺の言葉を聞いてティアマトが土下座から素早く俺の腰にしがみ付く。
「コノブランドノ、コノモデルガ売ッテルノハ、コノ島ダケナンダ!!シカモ今季限定モデルデ、今買ワナイト絶対ニ手ニ入ラナイ」
「やかましいっ!!前同じこと言って服と靴買ったろうがっ!!」
「アレハ、【ギュステ・オリジナル】ノ、別モデルダッ!!」
「知らんわっ!!」
本当に駄目になったなこの星晶獣(笑)!!真面目にティアマト(真)さんとトレードするか、ザンクティンゼルの祠にぶち込んでやろうか。
「だ、団長……私の服はいいから、彼女の分は買ってやってくれないか? 見るに堪えない」
「にゃぁ、あたしも基本は修道服だし……」
待て待てお前達、特にゾーイ。お前はオシャレと言うものが新鮮だから買い物やいろんな服を着る事を楽しんでいるのを俺は知っている。他の星晶獣達も、基本決まった姿でしかないからこそ色んな服を着るのが楽しんでるのは、わかってるぞ。
だがこのティアマトは別だ。こいつはもう十分楽しんだ。他の服は、財政難の我が団でも正直買えん値段ではない。値段も、数も圧倒的にこいつが増やしてる。団の資金を切り詰めるとしたら、こいつしかない。
「諦めなさいっ!!」
「ヤダヤダ、絶対買ウンダッ!!」
「駄目ったら駄目ッ!!」
「買ウッタラ買ウンダ~~ッ!!」
前代未聞、服を買いたくて駄々をこねる星晶獣(笑)。皆さん、これ片割れとは言え、ポート・ブリーズ群島を守護する星晶獣(笑)ですよ?多くの騎空士達が感謝する風を生み出す星晶獣(笑)ですよ?
「……どうしても買いたかったら、お前の分だけ自分で稼ぎなさい」
「稼イダラ買ッテイイノカッ!?」
「団の資金で買わないなら今日は見逃してやる」
「ヨロズ屋ッ!!丁度服買エル報酬ガ出ル依頼無イカ」
俺ね、結構前から思ったんだけど、このティアマトは、ティアマトの子供の部分が分かれたんじゃないかと思う。だから対応の仕方も幼児へ向けるような対応で十分だ。
「そうですね~ティアマトさんの服のお値段分でしたら~丁度増えすぎたゴブリン討伐依頼が来てますね~」
「オオッ!!」
「……ちょっと待った」
すげー嫌な予感がする。
「シェロさん、その依頼って街外れの洞窟で増えたゴブリン?」
「おや、ご存知でしたか~?」
「さっきそれを、例のコーデリアさんとその知り合いに依頼しに来た男が居たんだけど」
「あれ~それは、おかしいですね~?この依頼は、かな~り増えたゴブリンの掃討依頼なので~私やギルドを通してでないと依頼は、出来ないはずなのですが~」
「普通の一般人が依頼を頼むことは無い?」
「ほぼ間違いなく~」
三日前、コーデリアさんは男達に襲われていた。曰く、恨みを買ってしまった。との事。
「……相棒、行くか?」
うむ。
「お前ら、全員で行くぞ」
駆け足だ。
■
二 今、正義を叫べ
■
「ギヒイッヒイイイ!!」
「はあぁあっ!!」
「ギャヒッ!?」
暗闇で蒼の光跡が走る。ゴブリンの断末魔が洞窟内に広がっていくが、その音もすぐに別のゴブリン達の下劣な笑いと叫びにかき消された。
「くっ……きりがないな」
「コ、コーデリアちゃんっ!!」
「かまうなブリジール!今はとにかく走れ!」
「は、はいです!!」
ブリジールが洞窟の奥へと走り、その後をコーデリアが付いて行く。後ろからは、暗闇から湧き出るかのような錯覚を覚える程。
「っう!」
右足に激痛を感じ、コーデリアが態勢を崩す。
「ああ、コーデリアちゃん!!」
「へ、平気だよブリジール、少し痛むだけだ」
「け、けど……」
「大丈夫だ。さあ、今はとにかく」
本来甲冑で守られているはずの右足だが、無残にも甲冑は砕かれ、へこみ込んでいる。割れた甲冑の隙間からは、赤い鮮血が垂れていた。ゴブリン達は、その臭いを追う。若い女の血を目ざとく嗅ぎ分け追い詰める。
(あの男達……気が付くべきだった。私としたことが……)
痛む足を庇いながら、自分達にゴブリン退治を依頼しに来た男達を思い出す。
それは、洞窟に入って少し経ってからの事だった。
「そろそろゴブリン達が多くいる場所です。奴ら、ここら辺を居住エリアにしてるんです」
先導する男がゆっくりと進みながら話す。男の言う通り洞窟は、奥に進むほどただの土の壁からは、打って変わってある程度の生活感がある様子に見える。それでもゴブリンの様な魔物が手を加えた物なので、通路に設置された松明や簡単な木製の家具に、恐らく人々を襲って手に入れた生活用品がちらほらとある程度だ。
「あ……き、騎士様っ。あ、あそこに」
身を屈めて男が指さす所。岩陰からのぞき込めば、そこには一体の大柄なゴブリンを中心に集まる無数のゴブリンがいた。大型は一般的に「ゴブリンソルジャー」と呼称される近接特化のゴブリンであり、それ以外は小柄な「ゴブリン斥候兵」と思われる。ゴブリンソルジャーがここのリーダー格であるのは、間違いない。だが、その数が予想をはるかに超えていた。
「ぴいっ!た、たくさんいるです……」
「仲間を集めたか、それとも増えたのか……」
10体程度と聞いていたが、ざっと見てもその数は、30を超えている。しかも入り組んだ洞窟には、恐らくまだ多くのゴブリンがいるだろう。
(これは、我々だけでは無理だな……多すぎる)
10体程度であれば、問題なく倒す自信があったがそれ以上となると、コーデリアの実力でも不可能、更には戦闘に不慣れなブリジールがいては尚更であった。撤退の二文字が頭に浮かぶのには、時間を要せず男達にもすぐに逃げる事を伝えようとしたその時であった。
突然の破裂音。同時に高温がコーデリアとブリジールを襲った。
「なにっ!?」
「きゃあっ!!」
咄嗟にブリジールを庇い地面に伏せる。急ぎ立ち上がり爆発のあった後ろを見ると、洞窟の通路が完全に崩れていた。
「こ、これは……むうっ!!」
そして男達が一人もいない事にすぐさま気が付く。
「ここまでごくろうだったなあ、コーデリア・ガーネット」
爆破され崩された通路の奥から聞こえる男の声。今までいた男達とは別の声だったが、その声を彼女は、よく覚えていた。
「貴様はっ!!」
「覚えてくれてたのかいっ!!嬉しいねえ!!そうだよ、あんたに騎士団を追われた哀れな男だよ、懐かしいなあオイ!!」
その品の無い言葉遣い、コーデリアは忘れるはずもなかった。
「清く、正しく、高潔に」をモットーとするリュミエール聖騎士団と言えど、その心に醜きモノを隠し持つ者は、少なからず存在する。故にコーデリアの様な遊撃部所属の者が存在するのだ。
この声の主である男。この男は、コーデリアが記憶する中でも特に下劣な部類の男であった。ヒューマンでありながらも、ドラフと見間違えるような恵まれた体躯にすぐれた剣技を認められリュミエール聖騎士団への入団が許されある程度の地位を得たが、徐々にその本性を現す。自身がリュミエール聖騎士団の名の知れた騎士である事を利用し、裏で悪事を働くようになった。時には無法者と結託し、男にとって手ごろな悪党を仕立て上げて己の手柄とするなど、最早リュミエール聖騎士団のモットーばかりか、人の道に反する行いをするようになっていた。
表向きは、模範的な騎士を演じていた男であったために、誰もがこの男が隠していた醜さまでは”その時”まで誰も見抜く事が出来なかったのだ。
遅れてこの事に気が付いた遊撃部上層部は、急ぎコーデリアに男への【正義審問】を命じた。この【正義審問】こそがコーデリアの任務、遊撃部最後の切り札としての最大の使命。リュミエール聖騎士団に害なすと思わしき騎士団内の団員を暴き、正義を問う。真意を探り騎士団へ仇名すと判断されれば、その者を討つ。
即座に男の元へと現れたコーデリアは、証拠を押さえた男の罪の数々を突き付け最後に正義を問う。たとえ外道であっても、一時はリュミエール聖騎士団の騎士であった男、それは最後の審判、そして情けともいえる。”正義とは何ぞや”それを問われた男は、言葉ではなく剣で答えた。その行動にコーデリアの怒りが爆発したのは、言うまでもない。最早問うべき正義は無い。研ぎ澄まされた剣技は、男の力を上回りあっけなく倒してしまった。
遊撃部の団員達によって連行された男。その後男は、しかるべき沙汰を牢獄で待っているはずであった。
「詰めが甘かったなあコーデリアよぉ!俺の息がかかったのが、団内にいないと思ったかい?時間はかかったがなあ、無事に逃げ出せたぜ」
「貴様ぁ……」
「てめえのせいで、俺の人生計画が一からやり直しだ……本当なら直接殺してやりてえが、その悔しそうな声が聴けただけいいとするぜ」
「こ、この程度の壁……ぐうっ!?」
「コーデリアちゃんっ!!」
剣を抜き力を込めた斬撃で壁を破壊してしまおうとしたコーデリアであったが、右足に激痛が走り倒れてしまう。
「コーデリアちゃん、怪我をしてるです……っ!」
爆破から咄嗟にブリジールを庇ったさい、爆風と吹き飛んできた瓦礫が不運にもコーデリアの右足を強く殴打し深い怪我を負ってしまった。
「じ、自分を庇ったせいで、そんな……」
「かまうなブリジール、貴君のせいではない……っ」
「怪我でもしたかあ?役に立たねえ仲間がいると、大変だねえ」
「だまれっ!!」
「遊撃部最後の切り札もこうなっちゃお終いだなぁ……まあ、あとはゴブリン共に任せて俺達は退散させてもらうぜ……飢えたゴブリン共に嬲られて死んじまいな……」
「ま、待てえっ!!ぐうっ!!」
遠ざかる男達の笑い声。立ち上がるのさえやっとな今のコーデリアには、壁を壊し追う事も不可能だ。そして何よりも今彼女達は、恐ろしい危機の中にある。
「ギギィ!人間ッ!!」
「サッキノハ、オマエラカッ!!」
爆発で混乱していたゴブリン達が、倒れているコーデリア達を見つけ自分達の住処に攻め込んで来た人間達だと認識し興奮状態になった。急ぎ武器を持ち洞窟の奥から無数のゴブリン達の声が聞こえてくる。
「コ、コーデリアちゃん……」
「くそ……ブリジール、とにかく逃げるぞ」
「け、けどどこに逃げるです!?」
「むう……っ!だが、どのみちこのままでは、奴らに嬲殺しにあうのみ。そこの道を進むぞ、走れ!!」
痛みに耐えながらも立ち上がり、コーデリア達はゴブリンの数が少ない方の分かれ道へと入りとにかく走り続けた。
そして、今に至る。二人は必死に逃げ入り組んだ道の各所からゴブリン達が現れては、二人でお互いを庇いつつ撃退し、なんとか逃げ続けた。
しかし、怪我を負ったコーデリアと、戦いに慣れていないブリジールの二人の逃走劇が長く続くはずもなかった。勝手もわからぬ入り組んだ洞窟にも苦しめられながら、最後にたどり着いたのは、無情にも二人を待ち構えたような行き止まりであった。
「そ、そんな」
「いや……どうか、ここであっていてくれ……」
ブリジールの表情が絶望に染まるが、コーデリアにはある考えがあった。右足が痛む中壁へと急ぎ駆け寄りその壁を手で探る。
「コーデリアちゃん、なにを」
「ブリジール、貴君はジッとしていたまえ」
後ろからは、迫るゴブリン達の声が聞こえるが、彼女は実に冷静であった。
「間違いない……神よ、感謝いたします」
何かを見つけたのか、コーデリアは小さく呟きながら蒼剣ブルークレストをかまえ、叫んだ。
「ライトニング・ピアースッ!」
放たれる剣技。しかし今の彼女には、本来の威力を出す事は出来ない。鋭いキレも無い力任せの攻撃。だが渾身の力を込めた剣は、壁の一部を穿ち僅かだが外へ通じる穴を開けてみせた。
「男達から聞いた洞窟の構造……あれも嘘であったら無理だった……」
洞窟へと向かう前、男達の一人から聞いた洞窟の話の中で洞窟の一部は、壁が薄い場所があると聞いていた。風によって風化し外から崩れていった場所が多いせいだった。そのような薄い壁であれば、今の自分でも壊せるのではないかとコーデリアは考え、どこかの行き止まりを探した。その場所が外へと通じるかは、大きな賭けであったが、見事彼女は賭けに勝った。
しかし、それでも開けれた穴は、小さなもの。精々ハーヴィン一人が身を屈めて通れるかどうかの大きさである。
「ブリジール、君はここから逃げろ」
力を使い果たしたのか、壁に背を向けて倒れ込んだコーデリアがブリジールにとって、非情な言葉を告げる。
「そんな、コーデリアちゃん、なにを言ってるです!?」
「背を向けるんだ、急ぎ貴君の甲冑を取る……そうすれば、この穴でも君は通り抜けれるはずだ……」
「ちがうです、そんな事を聞きたいんじゃないです!!逃げるなら二人で!」
「甲冑を着ては、無理だ……二人で取る時間もない。それにこの怪我では、逃げたとしても足手まといになる」
討ち捨てられたゴブリンの死骸は、同時に二人の行き先を示す痕跡となる。もうゴブリン達は追いつくだろう。仮に二人で逃げれても、もうまともに走る事もできないコーデリアを連れてでは、直ぐにゴブリンは追いつきやはり、ブリジールも助からないだろう。コーデリアは、せめてブリジールだけでも逃がすつもりだった。
「誰かが、あの男達の事を騎士団に報告をせねばならない……なおも騎士団の誇りを貶める男を許すわけにはいかぬのだ」
「それは、それじゃあコーデリアちゃんが……」
「ブリジール、頼む……」
「ダメです……そんなの、ダメです……っ」
「……友よ、君には、生きてほしいのだ」
ブリジールさえ生きていれば、リュミエール聖騎士団へ報告が可能だ。そして遊撃部、最後の切り札として最後の責任を果たし、なによりも彼女を助ける事ができる。それ以上今コーデリアが望むものは無く、それだけを願う。
「……ダ、ダメです」
「ブリジール……?」
「違うです、それじゃあダメなんです!!」
やにわにブリジールは、コーデリアの手とその手に握られたままのブルークレストを掴み上げた。
「自分は、最後まで諦めないです!」
「待て、ブリジール何をっ!!」
そしてブリジールは、そのままコーデリアからブルークレストを奪い、開いた片手に握り自身の持つ剣と共に構えた。
「リュ、リュミエール聖騎士団ブリジール。同聖騎士団が正義審問に則り、いざ……この碧き剣に誓い、応えるです……っ!」
ブリジールがブルークレストを掲げ、たどたどしくも言葉を繋ぐ。
「自分にとって……正義とは、一日十善です!自分の正義を、押しつけと思われたって、たとえ無理だとか、ダメだと言われても、自分は、自分の正義を信じてるです!諦めないです!!とことん貫くと決めたんです!」
「ブリジール、それは……」
「正義審問、一度だけ見たことあるです……コーデリアちゃんの目的、わかってるです!!だから自分の正義、とことんみせるです!!」
それは、まさしくリュミエール聖騎士団の正義審問であった。誰かに問われるまでも無く、ブリジールは自ら蒼剣へと己の正義を誓ったのだ。
「イタゾッ!!」
その時、ゴブリン達がついに二人を見つけ出し、ワラワラと洞窟の奥から溢れるように迫った。だがブリジールは、果敢にもコーデリアを庇うように立つ。
「自分がコーデリアちゃんをとことん護るですっ!!」
足も震え、目に涙をため、しかしその正義の叫びは騎士のものである。
今、この瞬間のブリジールは、リュミエール聖騎士団団長に劣らぬ、真の騎士であった。
そして、正義を叫ぶ者は、決して孤独ではない。
「壁が邪魔あぁっ!!!!」
叫び声が聞こえたかと思うと、紫の閃光が壁をぶち抜き二人に向かい襲いかかろうとしていたゴブリン達を巻き込んで全てを吹き飛ばしていった。
「ゴ、ゴブリンが、居なくなった……です?」
「こ、これは……助かった……のか?」
「あ、いたいた。無事っすか?」
コーデリアの呟きへの答えたのは、破壊によってできた土煙が晴れる中から現れた少し前に別れを告げたはずだった、あの地味な少年であった。
■
三 濡れ手で粟
■
俺は今、かなり上機嫌だ。
一度胸糞悪いクソ共の阿呆な企みを知って激おこであったが、今となっては気分が良い。スカッとしている。
「異常発生のゴブリン討伐と合わせて指名手配犯逮捕協力の報奨金……なは、なははっ!!」
エンゼラの金庫にしまわれた大金。思わぬ形で受けた依頼によって芋づる式に捕えた元リュミエール聖騎士団出身者とその仲間の犯罪集団の捕縛。
あの時、不穏なゴブリン討伐に向かったコーデリアさん達を追いかけて行くと。明らかに怪しい集団が例のゴブリンの巣から出てきたので取りあえずボコボコにした。もし違ったら「ごめんね」だが、「くくく……いくら遊撃部、最後の切り札と言えど、手負いであれほどのゴブリン達相手では一溜まりもあるまい」とか言いながら出てきたから問答無用である。
コーデリアさん達の居場所を吐かせようとして、最初強情だったリーダーの男だったがその場で星晶戦隊全員がサイズ抑えながらもマグナモードになり、B・ビィがマチョビィへと変貌しゾーイが甲冑へと変身したら完全に怯えきって全部吐いた。
男達はその場で気絶させてユグドラシルに頼み土中に体埋めて生首状態にした。ラムレッダとフィラソピラに男達の監視を任せ、俺達はすぐさま突入。途中埋まっていた通路は吹き飛ばし、ガンガン進む。
作戦内容「
もう後は蹂躙である。
「オラオラオラアッ!!死にてえ奴から、かかってきやがれっ!!」
「ウオオオオッ!!魔物だろうと全力で、語り合うぜええっ!!」
「お前達は、増えすぎた……それは、均衡を崩すッ!!」
「私ノ服ノタメニ、大人シク狩ラレロオオオッ!!!」
「全員……死を奪って、あげるから……」
「我が、光の剣に貫かれるがいいっ!!」
〈水底へと、沈めてくれる……〉
「【アクシス・ムンディ】!!」
「クラエッ ▒▓█▇▅▂∩(・ω・)∩▂▅▇█▓▒▒ カクサンレーザーッ」
正直やりすぎた。
未だかつて、ここまで蹂躙されたゴブリンは、いなかったろう。気の毒に思うほどだった。俺はとっとと二人を担いで外に逃げたが、そのあとついに洞窟は完全に消し飛んでしまった。調子が出てきたコロッサスが、うっかり広域攻撃の「プロミネンス・リアクター」を結構な出力で発動させてしまい星晶戦隊達ごと巻き込んで洞窟ごと吹き飛ばしたのだ。上空へと撃ち上がって行く星晶戦隊達は、なんともシュールだった。リヴァイアサンなんか、まるで昇り竜のようだったよ。
まあ、みんな無事だったよ。髪がある奴は、みんなアフロで。唯一人間だったフェザー君は、よく無事だったと思うけどね。アフロにタンコブ一つで。この団で過ごした所為か、肉体的にも色々と慣れてきたな彼も。コロッサスは「(・ω<) テヘペロ」だってさ。んもー。
その後は、埋めといた男達連行して衛兵に突き出して終了。ゴブリン討伐も完了して報酬ゲットでワッハッハ!
しかも、リーダーの男がリュミエール聖騎士団出身者のうえに、脱走犯と言う事もあって、リュミエール聖国側からの何かしらの謝礼を期待してよいとシェロさんがちらりと話していた。むふふ。
ともかく結構な臨時収入だ。追加報酬も期待できるときたもんだ。借金全部返済とは行かないが、一日ぐらい騒いでもいい分の金は手に入った。なので後日俺達は、シェロさんの経営する店を貸し切って宴会を開く事とした。
「という訳で、今日は無礼講である!みな良く呑み良く食って、大いに騒げ!!」
「無礼講も何も、うちの団に序列あるのか?」
「うるさいよフェザー君!よし、乾杯ッ!!」
俺の乾杯音頭にみなも呼応してグラスにジョッキを掲げて叫ぶ。そしてすぐにそれを飲み干し、並んだ料理に手を伸ばす。貸し切りであるので、体のデカいコロッサスや人型でないリヴァイアサンも不自由なく飲み食いできる。……そういえば、コロッサスってどうやって飲み食いを……。
まあいいや、さあ宴会だ!たまには、俺だって何にも気にせず飲み食いしたいんだ!酒は無理だがジュースをあおる!
「カーッ!こぉの一杯ッ!!」
「オレンジジュースでよくそこまで唸れるな主殿」
お黙りシュヴァリエ。この100%オレンジジュースの美味さをわからんのか。
「ヘ、ヘヘ……トコロデ団長?例ノ事ダケド」
「うわぁ」
突然ティアマトが気持ち悪い笑みを浮かべて擦り寄ってくる。なんだよ気味悪いなあ、わかったよ、言いたい事はわかってるから寄るなっ!!
「しかたない、欲しがった服ぐらいは良しとする。買うがいい!!」
「イヨッ!!団長太ッ腹ッ!!全空一ノ地味男!!チョロ男ッ!オーイ、ヨロズ屋!!キープシテタ商品全部買ウカラナッ!!」
こんな時だけ団長である俺をおだてるティアマト。調子の言いやつめ。まあ、今俺もちょっと調子乗ってるけどね、うはは。
「自然と馬鹿にされたのに気がついてないねえ~」
「ば、場の空気に……流された、みたいだね……」
何か聞こえるが気にしない。
「はいは~い!どんどん、お料理追加しますよ~」
シェロさんと店員がしこたま追加の料理を運んできてくれる。普段なら気を失うような値段の料理だが、今日は大丈夫なのだから気分がいい。
「うっひょー!りんごの山だぜ!」
「酒っ!おさけにゃあ!!」
追加料理と追加の酒に飛びかかる者達。うむ、にぎやかである。
「やあ、団長殿」
団員達を眺められる場所でゆったりしていたら、イケメンボイスが傍から響く。いつの間にか、コーデリアさんとブリジールさんが揃っていた。
「今日は来てくれてありがとうございます」
「こちらこそ、声をかけてもらえて光栄だよ」
「招待されましたです!」
宴会をすると決めた時、二人にも声をかけておいた。コーデリアさんは、怪我を負っていたので、来れないかもと思ったが、どうやら大丈夫のようだ。
「傷の方は、大丈夫ですか?」
「ああ、あの後君の仲間、フィラソピラ殿に傷を癒してもらったおかげで、もう大事は無いよ」
コーデリアさんの言う通り、フィラソピラの回復魔法での処置が早く行われたのは、良かったろう。でなければ彼女は、未だ病室にいたはずだ。彼女の足には、包帯が巻かれているがそれが取れる日も近いだろう。
「次ぎに会う時は、共に食事でも……とは言ったが、こうも早く約束が果たせるとはね」
「全くです。っと、そういや飯追加貰いに行くんだった」
「あ、自分料理持ってくるです!」
「え?いや、けど……あの中に?」
料理がある場所へ視線を向ける。
「おしゃけぇ~おしゃけドンドンもってこぉ~~いっ!!」
「美味しい……はむ、はむ……これも美味しいなあ……」
〈酒は樽に入れてくれ、グラスでは飲めん〉
「―――――♪」
「シュ、シュヴァリエ……全部の手で料理取るの……ずるい……」
「あるものを使って何が悪いッ!!」
「ヒャッハーッ!!酒ダ!!酒ヲモッテコイ!!」
「(*´ω`)オイシイネ」
「コロッサスは、ほんと器用に食うよな、どうなってんのそれ?」
配膳された料理へは、星晶戦隊と異次元ストマック少女ゾーイとその他が群がりえらい騒ぎだ。あの中に小柄のこの人が行くのか……。
「無理じゃないかなあ……」
「い、いえ!ここは自分に任せてくださいです!とことん料理運ぶです!」
そう言うやブリジールさんは、料理が並ぶ机に突進していった。星晶戦隊にもみくちゃにされなければいいが。
「彼女は、今回の様な事があっても変わらずですか」
「そうだね。だがそれでいいのだ……私が怪我を負った事で、負い目に感じてしまわないか心配だったが、それもまた今回の事で吹っ切れたみたいだからね」
自分に出来る事を精一杯に、一日十善。それが彼女のモットー。まあ真面目なのだ。ブリジールさんは。きっとこれからもそれを貫くのだろう。
「……結局騎士団の任務は、ちょっとは済みましたか?」
「……ああ」
態々聞くことも無いのだが、捕らえた男が元リュミエール聖騎士団と言う事もある。やはり気になってしまう。
「あの男は、厳重に移送される。今度こそ牢獄へと入り直ぐにでも沙汰が下るだろう。奴と通じていた団内の者も直ぐに捕らえられる。奴らは、もう日の目を見る事はあるまい」
まあそれはそうだろう。きっと叩けば埃がしこたま落ちるに違いあるまい。今回だけでなく、色々な事を騎士団でもやっていたようだから実に救いようの無い男だ。
「ブリジールさんへの用事ってのは?」
「それも今回の事で意図せずながらも、無事終える事ができた」
「ん、よかったすね」
「ああ、まったくだ」
終わり、終了。これではれて、完全に依頼達成……とは、ならず。
「けどまだ残ってるんでしたっけね。探してる人」
色々重なって“めでたしめでたし”と言いたくなったが、考えたらブリジールさんへの用事とやらは、本命ではなかったのを思い出した。
「その通りだ。これが極めて厄介な人物でね。シャルロッテ・フェニヤ、我らリュミエール聖騎士団の現団長だ」
「……ん、んんっ!?」
なにサラッと言ってるのさ、この人。
「任務内容ってあんま話さないって、言ってませんでした?」
「普通はね……ただ、貴君には話しておこうと思う」
「それは、またどうして」
「……貴君は、信頼できると思ったからね」
少し陰のある微笑。そして机に置かれたグラスを指でなぞる仕草が様になる方だ。
「私はリュミエール聖騎士団の遊撃部に所属しているのだ」
「遊撃部、ですか」
「そこでは戦時の際、哨戒、攪乱、陽動を行い主要部隊のサポートに回る特殊戦術部隊」
「はえーなんかかっこいい」
「ふっ、そうかい?」
男の子は、特殊部隊と言う言葉に弱いのです。
「普段は、諜報活動に内偵調査、篭絡、暗殺など工作員の如き秘密任務に従事している」
「なお更かっこいい」
「ははは……だが私は、その中でも団内の裏切り、不正行為を調査し告発する【正義審問】において絶大な信頼をえている。身内を疑う任務だからね、団内からでも私を嫌う者は、少なくない。何時しか人を信じる事を忘れていたよ……」
「はあ」
「だがブリジールの真直ぐな正義に目を覚まされたよ。私には、あんな素晴らしい友がいた事を思い出せた」
確かに二人は、色々と正反対だ。見た目も中身もアベコベ、けれどだからこそ二人は、唯一無為の友と成れたのかもしれない。
「貴君にも感謝してるよ」
「俺ッすか?」
だが身に覚えが無い。
「三日程度の付き合いの私達のために、団員全員引き連れて助けに来てくれたからね。貴君等が現れなければ、私だけでなくブリジールもやられていたろう。それを思えば、幾ら感謝してもし足りないさ」
ティアマトが服を買いたいために進撃したのもありますがね。
「あー……その、あれですよ、“当然の事をしたまでです”ってやつ」
「ふふ、素晴らしいね」
「まあ、あはは……ところで、ブリジールさん遅くないですか?」
「確かに、どうしたのか」
揃って配膳された料理の山に視線を向けると、相変わらず野獣のように群がる星晶戦隊や酒を飲みに突撃するラムレッダ等がおり、その中でワチャワチャして目を回すブリジールさんがいた。
「あーあー……」
「はっはっは!彼女には、あの中に入るのは少し荷が重かったようだね」
「助けますかね」
「そうしよう」
俺達は席を立ち、未だ星晶戦隊の中から抜け出す事も出来ないブリジールさんの下へと向かった。
■
四 踊れ乙女
■
「あう、目が回ったです……」
「無理せんでいいのに」
星晶戦隊にもみくちゃにされたブリジールさんが、へとへとになって椅子で休んでいる。結局料理も俺達で運んだ。
「こ、これぐらいでしか今回のお礼が出来に無いと思ったのですが……面目ございませんです」
まあらしくていいけどね。言っちゃ悪いが、見てて面白かった。
その後色々話をしていると、会って最初の頃には、態々話さないような事も話題に出る。
「ブリジールさん、俺より歳一個上なんすね」
「はい、ちょっとだけお姉さんです!」
「それよりも、コーデリアさんが二個上って言うのが意外……大人び過ぎてない?」
「任務の弊害かな。眉目秀麗、そうあるべきを心がけてるからね」
「けどコーデリアちゃんは、本当はもっと女の子らしい恰好や趣味が」
「はっはっは、やめようか、ブリジール」
引きつりつつも爽やかな笑みでブリジールさんの口を押えるコーデリアさん。はい、何も聞いてません、聞いてないから剣に手を伸ばさないでね。
そんな他愛もない話をしていると、シェロさんが「ちゅ~も~く」と声を上げる。
「今日は音楽隊の方達をお呼びしておりますので~そちらの方も、存分にお楽しみくださいね~」
シェロさんがそう告げると、店の控えめながらも、立派なステージに6人編成の音楽隊が現れる。いいじゃないか、こういう演出は好きですよ。
直ぐに音楽隊による明るい演奏が店内に流れる。いいなあ、何時か何も気にせず、あの故郷のユグドラシルハウスや、風の穏やかな日に船の甲板で音楽を聴きながらのんびりとした時間を過ごしたい。
ユグドラシルハウスに帰ってももれなく星晶戦隊達がいるだろうし、船の甲板は、基本フェザー君達が暴れるから静かさなど皆無だが……。
「ふふ、こう言う音楽が流れると気分が乗るね」
「そうですね」
すると、彼女の口が悪戯っぽく弧を描く。
「どうだい?一つ付き合ってくれないか?」
「は?」
おもむろにコーデリアさんが立ち上がり俺の手を掴む。
「あ、ええ?何を……」
「宴には、余興が付きものだろう」
そう言うと彼女は、俺を立ち上がらせて音楽隊の前に連れて行ってしまう。きっと例の任務だとかでこうやって人を誘う事に慣れているのか、流れるような動きでなんとそのまま俺と踊り出してしまう。
「ちょ、ちょっと!?」
「安心したまえよ、私に合わせればいい」
俺は踊りなんて踊った事は無いのに、勘弁しておくれよ。あ、ああ!ほら見ろ、他の奴らが面白そうに笑って見てる!!ティアマトそのむかつく顔やめろ!!
「さあ、胸を張りたまえ、若き団長よ!」
突然踊り出した俺達に興が乗ってきたのか、音楽隊の方達の演奏も一段と激しく、早くなる。それに合わせてコーデリアさんの踊りのペースまでが上がる。一方俺は追いつくのに必死だ。
「団長!腰が引けてるぞ!!」
フェザー君うるさい、勝手がわからないんだ!!
「男ガリードサレテ情ケナイゾ!!」
うるさいティアマト、服没収するぞ!?
「て、って言うか!!コーデリアさん、酔ってます!?」
見ると照明の加減で今まで気がつかなかったが、コーデリアさんの頬が赤い。確かに、結構呑んでいたきがする。
「異な事を言うね。かように楽しき宴で酔わぬは、無礼と言うものだよ」
くっ!イケメン力が高すぎて納得してしまう。
いかん、もう完全に彼女のペースだ、巻き返せない!リードが上手すぎる……っ!!ああーーーっ!!だめだ、こ、心が乙女になる~~っ!!いやあーーーっ!!
―――その後、二人の踊りに盛り上がった団員達もまたそれぞれ思い思いに踊りだし、宴の熱狂は、朝まで続いた。
またこの時の踊りが元になり、団長は後に新たなジョブ「ダンサー」を確立させ、踊りながら戦う【舞闘】をマスターするのであった。
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五 濡れ手で”泡”
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結局大幅に出航が遅れに遅れ、俺達はやっと島を発つ。思った以上にややこしい事件だったので、宴会の後も更に依頼の報告やら、手続きに時間がかかった。
人探しの依頼のはずが、なんとも長い滞在になったものだ。失せ人探しからのゴブリン掃討オーバーキル、元リュミエール聖騎士団員の捕縛と結構疲れた。次は、適当に島巡りながらアウギュステ方面にでも行ってみたいと思う。
「積荷の確認は済んだぜ」
「ご苦労さん、全員乗ったな?」
フェザー君達と積荷に乗員の確認。後はもうセレストに声をかけて出航と言うタイミング。
「おーい、待ってくれたまえ!」
すると遠くから声を上げて駆け寄ってくる人影が三つ。
「よかった、間に合ったです!」
コーデリアさんと、ブリジールさん。そしてシェロカルテさんの三人だった。
「どうかされました?依頼の方は、昨日全部確認してますけど」
「いや、それとはまた別だ。また頼みたい事が出来てね」
「新たな依頼ですか?」
「依頼とも言えるが、まあ聞いてくれたまえ」
俺としては、コーデリアさんとブリジールさんが持つ大きめの荷物が気になる。なーんか、この展開、嫌な予感がする。
「実は、昨日本国から知らせが入った。例の男達は、問題なく移送されているが、あの男の息がかかった仲間が、国外にまだいる可能性があるとね」
「はあ、それじゃあそいつらを捕まえるって事ですか?」
「ああいや、それも頼みたいが……単刀直入に言おう、私とブリジールを君達の旅に同行させてはくれないだろうか?」
「お願いしますです!」
ほら来た。それぞれの手荷物からなんとなく予想できたよ、この展開。
「いやいや、コーデリアさんの任務どうすんですか」
「勿論、それも引き続き行う。どうも貴君等の団にいれば、失せ人も直ぐに見つかると思えてね。それに、6体以上も星晶獣がいる騎空団は、リュミエール聖国でも危険視されている……監視が必要だろう?」
「えぇ……」
マジ?俺ら危険人物?またまたご冗談を。
「知らないんですか~?あの【ジータとゆかいな仲間たち団】に勝るとも劣らない、また別の方向で危険な、星晶戦隊を引き連れた“騎空団のヤベー団”として、団長さん達は有名ですよ~?」
「うそやん」
「いや、真の事だ。既にリュミエール聖国だけでなく、各国でも貴君等の事は、マークされているだろう」
「……うそやん」
「星晶獣6体以上引き連れておいて今更ですよ~うぷぷ~」
あはは……まるで、反論できねえ……。
「それに正式な指令でもあるのだよ、“件の騎空団に同行し、任務を続けよ”とね。どうも私の報告を聞いて、本国でも私と同じ考えに至ったようだ」
それ言っていいの?まあ、いいのか。きっと話しても問題無い事しか話してないな、この人。
「……それはいいとしても、じゃあブリジールさんは何故?」
「はい!自分はコーデリアちゃんの補佐として同行を命じられたです!」
胸を張って答えるブリジールさん。とても誇らしげですね。
「自分、これほどの任務を受けるのは、初めてです!!とことん頑張るです!!」
そして嬉しそうですね。友人の力に成れるのが嬉しくてたまらないのか。微笑ましみ溢れる。
「それに、団長さんの傍にいれば、自分もっと強くなれると思うです!団長さんのように鍛えれば、コーデリアちゃんの役にも立って、シャルロッテ団長の様な騎士にも成れると思うです!!」
俺参考にしない方がいいです。まず限界まで体作ってから、マグナ6体と戦っても余裕でるぐらいになって、最後に本気のプロバハとゾーイ(ジ・オーダー・グランデ)と戦う必要があります。
「……まあ、いいか。それじゃ、しばらくよろしくお願いします」
俺の応えに二人は、笑顔を浮かべてくれる。
「ありがとう。勿論、貴君達に迷惑はかけない。騎空団としての依頼も手伝おう」
「自分もとことんお手伝いするです!自分、掃除洗濯も得意です!なんでもするです!!」
「期待させてもらいます……んで、シェロさん?」
「はい~」
ある意味一番嫌な予感がする。
「実はですね~先日の宴会の料金なのですが~」
「……はい」
「頂いた金額が、ちょ~~~~~っと、足りないんですよね~」
はい?え、え?ちょちょ、俺の耳が悪くなったのかな?今なんて?え?
「すんません、もう一回お願いします」
「貸切宴会の支払いが足りないんですよ~」
「うそやん」
「本当です~」
「だ、だだだって確かに宴会貸切の料金ぴったりを払ってるはず」
「それにプラス、音楽隊の演奏21万ルピに食べ放題飲み放題“対象外”の品分150万2345ルピ、計171万2345ルピが未払いのままなんですよ~。お食事に関しては、かなりお高いお酒が多かったので、このお値段ですね~。こちらも今回の事で何かと忙しく手間取ってしまいまして、確認が遅れてすみません~」
「まって」
まって。
「まって」
「はい、未払い分は、借金に回しておきますね~」
違う、そうじゃない。
「音楽隊の料金?」
「ええ~」
「あれって……サービスじゃ……」
「違いますよ~別料金です~結構な音楽隊の方達なのでちょっとお高いですが~」
「だって……頼んでない……対象外の料理とか……聞いてない……」
「いえいえ~お店の予約の際に頼まれてますよ~?そちらでの説明もお願いしたはずですけどね~?」
「全員っ!!集合っ!!」
俺の凄まじい怒声を受け、ワラワラと団員達が集合する。
「どうしたのかにゃ団長きゅん?」
「うん、聞くけどね……俺って店の予約確かフェザー君に頼んだよね?」
「ああ、けど予約しに行こうとしたら、強そうな奴を見かけて、語り合いたくなったから、ちょうど居たラムレッダに任せたぜ!」
「ラムレッダ?」
「にゃぱっ!?だ、団長きゅん顔が怖いにゃ……」
話、続けてどうぞ?
「あ、あたしは、フェザーきゅんに頼まれたから、予約しによろず屋さんに行こうとして、そ、そしてたら前から欲しかったお酒が売ってたから……誰かに買われないうちに買おうと思って、ちょうど通りかかったゾーイちゃんに予約お願いしたにゃ……」
「なるほど、それでゾーイ?」
「うん、そのままよろず屋に言って予約をしてたけど、私は予約コースとかよくわからないからな、それでどれがいいか悩んでたらティアマトが通りかかって」
もういいです。
「ティアマトの馬鹿はどこだっ!!!」
「さっき千の風になると言ってどっか飛んで行ったぞ?」
ふ、ふふふ……いい度胸だあの野郎!!
「今宵の火属性ソードは、血に餓えておる……」
「まあまあ、落ち着きたまえ」
暗黒面に落ちそうになった俺を、コーデリアさんの冷静な声が現実へと引き戻す。
「そうやけになってはいけないよ。確かに彼女の所為で、酷い出費は出たようだが、貴君程の男であれば、この程度直ぐに稼ぐ事ができるさ」
「で、でも今回の報酬より、多い……借金が増えるだけ……」
「無論彼女が相応の罰を受けるのは当然としても、貴君はその刃を仲間に向けてはいけない。身内に刃を向けるのは、私の様な疑う任務を請け負う者の役目。貴君の刃は、この様な事に振るわれるべきではない。彼女には、また別の罰を与えればいいよ。それに、本国から謝礼が出る事は、聞いているだろう?僅かだが、それも今回の支払いに回すといい。それに、資金稼ぎは、私も協力するよ」
「あ、あぁっ……」
流れるように肩を抱き寄せられ、そのまま耳元でささやくような声に、脳が致命傷を受ける。やばい、コーデリアさんに後光がさして見える。いや、それ以上の……これは、イケメン力が溢れているっ!
「コ、コーデリアさん……そうだ、俺貴女みたいな人仲間にしたかったんだよっ!!」
「そうかい?それは、光栄だね」
じょ、常識人!!圧倒的な常識人!!癒し等とは、また別の俺の求めた仲間!!常識人枠!!しかも
「俺には、貴女達が必要だったんだああぁーーーっ!」
「わわわっ!?」
「はっはっは、熱烈だね」
俺にとって精神的にも非常に頼もしい仲間が増えた事に、俺は感涙の涙を流し二人を思わず抱きしめた。今後の旅が、今まで以上に楽になると信じて。
なおティアマトは、見つけ出した後ボコボコにして縛り上げて、「(笑)」と書かれた紙を顔に張って腹に落ちにくいインクで落書きして、マストに一日吊るし上げておいた。刃は向けてない、拳を向けた。あとご飯抜きだもんね、バーカバーカ。
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六 友のみぞ知る
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コーデリアちゃん、自分は知ってるです。
貴女が、誰よりも乙女である事を。本当なら、自分以上に遊撃部での任務に向いていないはずなのに、あなたはその繊細な性格を押し殺して、騎士団の正義のために任務に当たっている事を。
コーデリアちゃん、自分はわかってるです。
あの宴会の席で飲んでたお酒は、そんなに強くなかったです。それにコーデリアちゃんは、そんなにお酒弱くないです。あの頬の朱色は、お酒の所為じゃないです。
コーデリアちゃん、自分は覚えてるです。
貴女は、誰よりも乙女で、甘酸っぱい恋を綴った詩集が好きで、そして好みの男性が、ちょっとアレな感じなのを。
だから、コーデリアちゃん。自分、いつでもとことん、貴女の味方です!!
露骨なラブコメ臭が最後ありますが、あんま気にするほど重要な要素にはしないんじゃないだろうか。
主人公が、借金あるとはいえ、中々ジータに会いに行かないのは、なんだかんだで、今の面子で旅をするのが楽しいからです。ティアマトとかには、絶対にその事言わないけど。
常識人来たし、問題児増やしたい。うちに居ないけど、十天衆とか他の戦闘狂とからませたい。いざ戦おうマン/ウーマンとかにからまれるがいいや。