-遊園地 入口付近-
「…。」
光焔の御子と呼ばれたシャルロットはイライラしてした。それは隣で事あるごとに競いあったり仲良くなったりと騒がしい二人や、何故か急に眼鏡をかけているイケてはいるがシャクに触る白銀騎士のせいでもなく、その彼らの前にいる褐色肌の美女にイラついていた。
「何でこんな時にも女装してんの!金獅子!」
「あぁ?別にいいだろ?それにこれは女装じゃねぇ、メンズケアの奥義よ!」
急にシャルロットは最前にいる美女に突っかかった。
「んなのが奥義だったら世界が大変なことになるわ!」
「あー…キーキーうっさいわ…これでいいだろ?!」
すると男口調な褐色の美女はバサりと身を翻すとそこには美女ではなく、褐色の筋骨隆々な肌に地にも着きそうな長い髪をした男、オウガが現れたのであった。
「これでいいだろ?元御子さんよぉ?」
「ふんっ!それでいいわよ!変に目立つから変な真似しないでよ!」
「それを言うならキーピーと子ネズミの様に喚く元御子様が目立ってんじゃねぇのか?」
「きっー!」
「…クライヴさん…あの二人止めて下さいよ…」
「…無茶言うな…燃焼状態にされてやられるって…」
「…なら燃焼無効のアクセサリー…は持ってないか…」
蚊帳の外の二人は項垂れていた。
「とこで…どうしてクライヴさん眼鏡を?茶熊でも無いのに?」
「ん…一応変装だな、リアムだって…」
「んむ?何ですかクライヴさん?」
振り向いたリアムの手には沢山の食べ物があり、それがどんどんリアムの口に運ばれていた。
「リアム…少しは…我慢をだな…」
「駄目ですよ、リアムは我慢としりとりが苦手なんですから…」
「おい、最後のはいらねぇだろ?」
「いらなくてもお前の持っているハンバーグサンドは頂戴するぜ!」
ザックは素早い動きでリアムの手にある食い物を横取った。
「あぁっ!てめぇ!?待ちやがれ!」
「あ!?おい!?リアム、ザック!?」
「いいじゃないの!ここで決着つけてやる!」
「おお?やる気か?!やるなら来いや!」
「あの二人も…!あぁ…もう…!」
クライヴは頭を抱えてその場に崩れた。
「待ちやがれ!ラースブレイザー!!」
「喰らえっ!光覇滅陣剣!!」
「おおっと!?」
「向かい打つぜ!オウガファイナリティ!」
そしてその一帯は爆炎に包まれた。
-遊園地 ゴーカート乗り場近く-
「はぁ…はぁ…逃げられたか…!」
クライヴ達は入口から全速力で園内に逃げてきて物陰に隠れていた。
「おい!白銀獅子!逃げるなんて戦士らしくねぇぞ!?」
「俺は戦士じゃない!騎士だ!」
「うわ…クライヴさん怒ってるぜ…多分。」
「でもよぉ…俺達なら大抵の奴が来ても打ち負かせるぜ?ザック以外は。」
「おいっ?!」
「ムカデも余裕だし、最悪土偶が来ても何とかなるしねー。」
「そうじゃない!そうすれば更に被害が広まるだろ?!」
「まぁ…被害が広がるのは困りますが…それでもそれを楽しんでいる人もいますので…」
「その発想は…って、誰だ…?」
クライヴが聞きなれない声を聞き、振り返るとそこには口が付いた至って地味そうな帽子をかぶった少年のような人がいた。
「あ…どうも…」
「どうも…って誰だよ本当に!?」
「ひぃ!?」
ザックが驚くとそれにつられて少年も驚いた。
「おいてめえ!一体何処の誰なんだ?!」
「あわわ…!」
そしてリアムが少年に詰め寄ると、少年はそれを逃げるように後ずさった。
「リアム!ザック!あまり驚かせるな、可哀想だろ?!」
「にしても根性ないわね…」
「すっ…すみません…」
「なら…!俺様が鍛えてやろうか?!そうすりゃ戦士にだってなれるぜ!」
「うわっ!?えっ…!遠慮します…!」
少年は遠巻きにいるシャルロットとオウガには見るだけでもビクビクと震えていた。
「そこの二人も…!あぁ…!大丈夫か?」
「あっ…すみません…」
だがクライヴが触れると自然とその少年の震えは止まっていたのであった。
「君は…誰なんだ?」
「えっと…自分はこの遊園地のスタッフで、ここら辺一体を見ています。…あと特技は存在感を0にするのが得意です…。」
「存在感を0にする?」
「あっ…すみません…言っても分かりませんよね…すみません…」
「いや…謝ることじゃ…」
だがクライヴの次の句は空をよぎったのであった。
「…!?いない!?」
「………こっちです…。」
そしてその言葉はクライヴの後ろから発されたのであった。
「こんな感じです…。」
「…成る程…不思議だな…。」
「んで…そのスタッフさんは何しに来たんだ?」
「いえ…特に用は無いです…ただ気になるお客様には付いて行っても構わないので…あと自分の事は気にしないで楽しんで下さいね…。」
そう言うと係員の少年がまたフッと消えたのであった。
「…なんだかな…そう言われてこう言われると…ちゃんと遊ばねぇとな…」
「あぁ…何だかすんげぇ申し訳ないよな…」
「だったら…!楽しむしかないな!」
そう言うとクライヴはかけていた眼鏡をたたみ、懐にしまうとババッーっと駆け出した。
「あっ…!?クライヴさん待ってくださいよ!?」
「俺を置いてくなっての!」
「待てや!俺も行くぜ!」
「あっ…!?置いてくなー!」
後の四人もクライヴに付いて行き、クライヴ達はゴーカート乗り場へとたどり着いた。
「よしっ!ますばここにしよう!」
「ほぉ!随分と面白そうじゃねぇか?」
クライヴ達の目の前のゴーカートはルーンではなく電気の力で走らせるタイプで、コースは平坦な楕円形のコースであった。
「それじゃ…乗るか。」
そうしてスタートラインにいくつのカートが並び、彼らの目線の先に赤いスタートランプが灯った。
「伝説級の走りを見せてやんよ!」
「それにしても…帰ったら足が疲れそうだな…」
「なんだ?負けたときの言い訳かザック?」
「なっ…!そんなんじゃねぇよ!」
「金獅子!あんたにだけは負けない!」
「ハッ!ぶっちぎってやんよ!」
そして彼らの前のランプが緑色に灯った時、風を切ってスタートラインから走り出した。
「待ちやがれ!くそっ!何でもっと速く走らねぇ!?」
レースはオウガがトップであり、その後ろにはシャルロットとクライヴが同位でザック・リアムが前に出ようとしていた。
「ちきしょー!なんでカーブで軽量級が重量級に勝てないのよー!?」
「ハハハッ!ブッチギリだぜ!」
「伝説級のハンドルさばきな俺様が最下位なんて…ありえねぇんだよ!」
「二位…何故か安心する…?」
「四位なんてダセェ…!こうなったら…!」
「んなっ!?なんかチクチクするぞ!?」
ザックは懐からほつれぼつれのギターの弦をクライヴに巻き付けていた。
「クライヴさんには悪いけど…意地でも上位に…!」
「バカな真似はよせザック!」
巻き付けられたクライヴはハンドルを左右に切り弦から抜けようともがいていた。
「…そうか!その手があったか!」
クライヴがふと後ろを向くとそこには何故か海平スタイルなカツラを手にしていたが、どうしてかそのカツラには棘がいくつもあった。
「前に進めねぇなら…!前を走る奴の妨害をするまでよ!」
「何でそんなものを!?」
「先ずは大将首をいただく!喰らえぇ!」
リアムは自分のカートのハンドルの上に乗ると手にしてるカツラを先頭で独走するオウガに投げつけた。
「…あぁ?」
カツラは謎のジャイロ回転をしながらオウガにポカッと当たるがオウガには全く効いていないように見えた。
「効いてない…だと…!?」
「ちょっと!何あたしに当ててんのよー!」
そしてスパイクカツラはシャルロットのカートに当たっていた。
「わっ…悪い…」
「あー!もう!こうなったら走った方が速いわ!」
そう叫ぶとシャルロットはカートから降りて走り出した。(個人的にシャル以外の剣士[強化シャナ以外]を使うと世界が遅く感じてしまう…[今更])
「あれ?走るのってアリなのか?」
「どうしてカートと合体しないんだ…?」
「しないわよっ!?」
だが走り出したシャルロットはコロコロしつつもオウガを追いかけた。
「むっ!見つけたぞ金獅子よ!とぉっ!」
そしてもう少しで追い付くと思える距離で陽の光に影が覆い被さった。
「なっ…なんだ!?」
「くっ…聞いたことあるような無いような…!?」
クライヴはギターの弦を振りほどき終わると声の方向へと向いた。そこにはシャルロットの乗っていたカートに薄いピンク色の髪で褐色の肌と身につける緑色が特徴的な女性が乗っていた。
「なんだ!?って速いわ!?」
「まかり通る!」
緑色の女性はガガガとカートを何度もドリフトさせてあっという間にオウガに追い付き隣についた。
「久々振りだな、金獅子よ約束を果たすときだ!」
「ん?おお!そういやそんなのもしたっけな…?まぁいい!売られたモンは買わねぇとな!」
二人がそう言うとお互いに懐から物騒な鉄血なメイスの斧や槍を取り出し、コースアウトしながら打ち付けあっていた。
「…なんか勝手に始まってやがる…」
「あぁ…」
「あれ?俺達ってレースしてたんだっけな…?」
そうしてレースは独走していたオウガが突如現れたアルザーンと共に何処かへと行って、そのまま走っていたシャルロットが一位となった。
「んー…何か納得いかない…」
「俺は三位か…なんだかな…」
「そうか、俺は無難で二位だったな。」
「何で…最下位なんだよ…」
シャルロットはトロフィーを手にしてクライヴはバッチを手にザックは棒付きキャンディを頬張っており、リアムはボロボロであった。
「それにして…不幸だったなリアム。」
「不幸どころじゃねぇよ…何でレースに牛が乱入してくるんだ…?」
「わりとあるんじゃないのー?」
「それに牛で良かったな、ヤギだったら確実にカティアせんせー行きだぜ?」
「それは勘弁だな…何か変なの投薬されそうだしな…」
そして四人はトコトコと園内を回り、フードコーナーにたどり着いた。
「あー…にしてもお腹空いてきた…」
丁度お昼を過ぎていて、回りには様々な屋台が並んでいた。
「俺はほぼ四六時中腹空かしだぜ!」
「オウガがいないが…まぁいいか。」
「そんじゃ…伝説君何か買ってきてよ?」
「あぁ?何で俺様が…!?」
「最下位はあんた、勝者はあたし。これで分かるわよね?」
「ぐぐ…覚えてろ…!」
そうしてリアムはズカズガと屋台へと向かって行った。
「あっ!俺は焼きそばでな!」
「ちっ!わかってんよ!!」
そうしてリアムは渋々懐から財布を取り出して、そこらの屋台を物色し始めた。
「えっと…激辛熾烈級たこ焼き…焼きもやしソバ…ろくなのがないな…」
その他にも勇者の焼きとうもろこし鮭風味や星光納豆ペーストやら、アンドロイド用エネルギー補充缶や瓶詰めされている食用の魂なども屋台には並んでいた。
「…何か普通なもの…普通なもの…普通って何だっけな…?」
リアムは悶々と悩んでいた。
そしてそれを待つ三人は近くの小さな円卓を囲う椅子へと腰を下ろした。
「ふぅ…ようやく落ち着けるな…」
「そうね、金獅子がいないから気分がいいわー」
「…(ギュルルル…)はぁ…腹減ったぜ…」
「辛抱しろ…もうすぐリアムが何か持ってくるから…」
「来たぜぇ!」
「来たわね、何を…って!?」
シャルロットが声の方向を見るとそこにはリアムではなく、オウガとアルザーンがいた。
「何で戻って来てんのよ!?」
「何でって…お前らが勝手にはぐれるからだろ?」
「はぐれてんのはアンタだでしょうがー!」
シャルロットは顔に怒りの表情を浮かべて剣を降り下ろしたがオウガにはかわされた。
「おおっと?当たらねぇぜ?」
「放せーっ!」
そしてオウガはかわしてる最中にシャルロットの首根っこを掴み、シャルロットは宙吊りにされてジタバタとしていた。
「ったく…おい白銀獅子!暫く時間かかるから先に戻ってな!」
「…!?あっ…あぁ…ところで何をする気なんだ?」
「あぁん?そりゃまずは紐で縛り付けてからあの高台から暫く逆さ吊りにして…」
オウガはまず近くのバンジージャンプの台を指差し。
「それからあの速そうな蛇のような乗り物に乗りながら元御子様を旗のように…」
次にその少し近くで走るジェットコースターを見ていた、なおその最中シャルロットは青ざめていた。
「そうだ!お前らも来るか?」
「…遠慮しときまーすー…」
「…済まない…辞退する…」
「ふむ…私は少し疲れたからここで休もう…」
クライヴとザックは互いに少しうつむいてオウガへの視線を避け、アルザーンは先程までシャルロットが座っていた席に腰を納めた。
「そうかい、なら俺がやんねぇとな?」
「ぎにゃああああ…!!」
そうして園内の一部にはシャルロットの叫び声とオウガの楽しそうな声が木霊したとか。
「待たせたな!チェリートマトパスタにフラワーサラダだ!伝説の直感で選んだぜ!…ってありゃ?どうして俯いてやがるんだ?」
そうして数日後の飛行島、そこの一角には野点がありシャルロットやフランやらソフィやコリンそしてカモメやサワワなどの遊園地にてRASNやクライヴ達とは別行動していた女性たちがある程度集まってお茶会をしていた。
「へー…そっちはすぐに合流したんだー」
「はい、それに合流する前にこちらでは他にも人が来ましたけど…」
そう言ってサワワは色々な星たぬき模様の湯のみに入っている抹茶を啜った。
「確か二人ともシャナオウさんの知り合いでゼロキスさんとベンケイさんですね。」
「ふーん…」
シャルロットも抹茶を啜るが一口飲むとすぐに近くの茶菓子や星たぬきの卵等を何個か頬張った。
「大丈夫でござるか?!」
「ん…へーきへーき、大丈夫。それでそのあとはどうしたの?」
どうにかして口のなかを空にして彼女らに問いかけた。
「その後ですか…その後は皆様でコーヒーカップという乗り物に乗りましたね。」
「はい!でも…何故かゼロキスさんは乗りませんでしたね…?なんか『今日はもうダメだぁぁぁ!!』って叫んでいたような…?」
「確か乗り物が視界に入るなりにぶつくさ呟いてから叫んだっけ?」
コリンは首を傾げながらそう言った。
「へぇー…ここにもまた変なのが入ってくるわね…」
「でも仲間が増えるとその分サミュゼになるでござるよ!」
フランはそう言うとささっと茶が少ない湯のみに茶を注ぎ入れていた。
「…増えると言えばさ、やに新しいようで懐かしいような面々もここに来ているようだねぇ?」
「はい、確かアルザーン様もここに来たみたいですね。」
「知り合いなの?」
「はい!新体操仲間です!とても綺麗に踊るんです!」
「へぇ~そんなら皆でいっちょ踊りにいますかね?」
「おぉ!それはいい考えでござる!」
「えー…いやアタシは…」
シャルロット以外がわいわいと盛り上がるなか、シャルロットは嫌そうな顔をしていた。
「…片付け終わったでござる!」
「えっ?」
そしてふと気付くとシャルロットは立たされて目の前にあった野点は片付けられていた。
「それでは向かいましょう!」
「えっ…ちょっと!?」
シャルロットはカモメに掴まれている手をやんわりとほどこうとするがまるでびくともしていなかった。
「シャルロット様…どうされましたか?」
「体調でも悪いのかい?」
「いっ…いやそんなわけ無いし…!」
「それじゃ向かいましょう!」
その後女子一同はアルザーンの元に訪れ、新体操をすることなった。皆レオタード姿となったが何故かカモメだけはスクール水着であったが。
「(確かに楽しいけど…疲れるなぁ…)」
シャルロットは内心そう思っていた。