エレイネ!!〜魔王と私と仲間達〜   作:アリーナ

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拝啓××様





お久しぶりです。





最後に手紙を出してからもう随分と時間が経ってしまいましたが、そちらは如何お過ごしでしたか?





此方は、まだ表面上は何も無く平和なのですが……確実に状態は悪化しています。







街々の治安の悪化。





降りかかる災害。





崩れて行く均衡。







そちらに影響が及ぶのは、おそらく時間の問題でしょう。












………思えば貴女が此処を出た日から、もう10年もの月日が流れたのですね。

















ーーーあの日から、ずっと。
















私は貴女だけを頼りに生きてきました。











「きっと、全てを救う術を見つける。」











そう言って微笑んだ貴女の表情を。









私の頭を、そっと撫でた手の平を。









10年間、忘れた事はありません。












私にできる事なんて限られていたけど、それでも貴女の笑顔を思い出せば頑張れた。






寂しい日も、泣きたい日も。














ーー少しずつだけど、確かに前に進めた。



















………だからやっと。












やっと、此処まで来れたんだ。
















ーー貴女は今迷っているのでしょう?







私に言われる間でも無く、リミットが迫ってる事位とっくに気付いてる筈だもの。











……もう、躊躇する余裕はない。









私は、私達は大丈夫だよ。他でも無い貴女の意思を継ぐ者だもの。









『例え、身を裂かれる様な苦痛に襲われても諦め無い。必ずこの場所を守る。』











……あの時、そう誓い合ったじゃない。









だから、貴女はやるべき事を果たして。













私達の最後の希望は、この場所の未来は。
















貴女に……お姉ちゃん達に託されているのだから。






××××年 ×月×日
敬具




fin








1話〜戻らない時間〜

 

 

AM6:30

 

 

 

 

 

……腹が立つ程に眩しい日差しが、冷え込んだ部屋に差してくる。

 

 

 

 

 

 

朝ってのはどうして来るのだろう。もしもずっと夜が続いてくれたのなら、何も考えずに眠り続けられるのに。

 

 

 

 

 

そんな事をぼんやりと考えながら、私はいつもと同じように着替え、いつもと同じように朝食を食べ、いつもと同じように仏壇の前に座った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そして、

今日もいつもと同じ様に呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………おはよう、父さん。母さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………お兄ちゃん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

私とお兄ちゃんは、田舎の小さな村で生まれて育った。

 

 

 

小さいが古い歴史のある伝統的な村で、私達の父さんは、その村の神社に仕える一族の長男だった。

 

 

 

本来なら父さんの一族は、30歳で当主になる事が許されると言う決まりがある。しかし、私の祖父にあたる先代当主と祖母が事故で亡くなり、一人っ子だった父さんは齢19歳で当主となり、一人で神社を守っていたそうだ。

 

 

 

 

そんな父さんの元に、ある日異国人の女が迷い込んで来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

……それが、私達の母さんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

事情があり行く当ても無く彷徨っていた母さんを、お人好しの父さんは放って置けず、神社に住まわせ一緒に暮らす事にしたらしい。

 

 

 

そして、共に暮らすうちにお互い相手を想うようになり、当時16歳で天涯孤独だった母さんと、20歳だった父さんは結婚した。

 

 

 

 

 

父さんは自分の結婚を報告しようと、村人達の元を訪れる事にした。……この小さな村では、結婚や葬儀の祭は村人全員に知らせるのが暗黙の了解となっていたと言う。

 

 

 

 

 

 

しかし父さんは、普段村の中心から離れた神社に住んでいるせいか、村人とは余り関わりが無かった。

 

 

 

 

 

 

神社と言っても、村人は殆ど訪れる事はないし、近所に住んでいる人もいない。だがそれでも自分が村の住人である事には間違いないので、父さんは村人達に自分の結婚を伝えて、母さんを紹介した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……しかし父さんの生真面目さは、大きく裏目に出る事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小さな村の住人には、保守的な人が多い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元々、何を祀っているのかも知れない古ぼけた神社に、20歳そこそこの男が一人で住んでいると言う時点で、村人達は余り快く思っていなかった。

 

 

 

 

そこに、自分達とは明らかに風貌の違う女を嫁として紹介してしまえば、村人がどう思うのかは想像に難くない。

 

 

 

 

案の定、母さんと父さんは村人達に散々罵倒され、慌てて神社に逃げ戻った。

 

 

 

それからは、必要最低限以上に村には近寄らずに二人で静かに暮らしていた。村人から神社への嫌がらせも激しかったが、必死に耐えていたと言う。

 

 

 

 

 

 

 

……そして一年後に、お兄ちゃんが生まれた。

 

 

 

 

 

 

山奥の神社で、夫婦二人だけの出産育児は容易く無かったと思うが、それでも母さんと父さんの愛情を受けてお兄ちゃんはすくすくと育っていった。

 

 

 

……しかし、母さんと父さんは決してお兄ちゃんを村には近づかせずにいた。村人達が息子に非難の目を向けいじめるのを防ぐ為だろう。

 

 

 

 

ーーそれから3年が経ち、5年が経ち。

7年、8年と月日が流れていった。

 

 

 

 

 

やがて10年後、妹である私……

月河 桜が生まれた。

 

 

 

 

 

しかし、父さんと母さんは私が生まれてから何故か忙しくなってしまい、殆ど家には帰らずにあちこち出掛けていたので、一緒に居られる時間は少なかった。

 

 

 

 

 

……仕方ない事だとお兄ちゃんに言い聞かされていたので、恨みとかは無いし二人の事は大好きだ。幼心に寂しさはあったが、いつもお兄ちゃんが隣に居てくれたからそこまで辛くは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

『さくら、暇ならお兄ちゃんと遊ぼうか!』

 

 

 

 

『いい子だね、さくら。さくらはお兄ちゃんの自慢の妹だよ!!』

 

 

 

 

『さくら〜、大きくなってもお嫁に行かないでね?』

 

 

 

 

 

 

 

 

……思い返せばお兄ちゃんは、相当なシスコンだったと思う。だがそのシスコンっぷりのおかげか、私は毎日悩みも無しに楽しく過ごせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーお兄ちゃんと毎日遊んで。

 

 

 

 

 

 

ーー時折帰ってくる父さん母さんと、ピクニックに行ってご飯を食べたり、絵本を読んで貰ったり。

 

 

 

 

 

ーー二人が持って来てくれるお土産に、いつも飛び跳ねて喜んだっけ。

……幸せだったなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう。本当に幸せだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あの日』までは、ずっと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 











燃 え さ か る 炎 。




何 か が 焼 け 焦 げ る 様 な 、
嫌 な 匂 い。



















……あ れ は 、何 ?








目 の 前 で 赤 黒 く 光 る あ れ は 、何 ?












今 、 わ た し が い る の は ど こ ?











わ か ら な い 。






わ か ら な い 。









な ん に も 、わ か ら な い 。










ぼ ん や り と し て、 頭 が 働 か な い 。









怖 く て 、
怖 く て 必 死 で お 兄 ちゃ ん の 手 を 握 る 。









夢 だ。 き っ と 夢 な ん だ。









そ う 思 い 上 を 見 上 げ れ ば 、
ぽ つ り と お で こ に 雫 が 落 ち る 。


















ーー お 兄 ちゃ ん は 、泣 い て い た 。










……静 か に 、 静 か に 。























《 もう、今までの日々は取り戻せない。》

















……戻らない時間の温もりを。



















酷く、冷たく感じた。







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