2016年のお正月に作られた感じでお正月をアオイの島にてといった感じです、今思えば元題が少しダサダサですなー…って。

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ここはアオイの島、ちょっと前までは闇の勢力が暗躍していたり温泉が掘れたり一番風呂騒動など様々な事が起きた島。今も雪化粧が残るこの島で新年を迎えようとする者達がいた。



白猫 -正月welcome!-

-アオイの島 天守閣-

 

水平線の向こうから初日の出が顔を出し、その日の光が天守閣の中に差し込んでいた。 

 

「ほんじゃ改めましてアイリスはんにキャトラはんにRASNはん!あけおめやでー!」

 

「明けましておめでとう、セオリはん。」

 

「…!」

 

「皆様明けましておめでとうございます。」

 

「将軍さんは相変わらずお堅いわねー」

 

そんな天守閣では飛行島の面々のアイリスとキャトラとRASN(皆まで言うな)がアオイの島のミカドのセオリとコジローとクローの弟である将軍のジュウベイが面と向かって新年の挨拶をしていた。

 

「にしてもまたアオイにやって来るなんてめっちゃ嬉しいでぇ!」

 

「当たり前じゃない、今までは行ったところで正月を一番楽しめそうなのはここにしかないからね!」

 

「そんなー!誉めても何も出ぇへんでー!?せや、他の面々の方はどないしたんや?」 

 

「そうね、寝てたのもいればもう起きていていなかったのもいなかった感じね。」

 

「そうですか…兄上も寝床にいなくて…折角おせち料理も用意してあったというのに…」 

 

「おせち!?なら今すぐ食べましょう!お腹ペコペコでたまんないのよ!」

 

食べ物の話を聞くといきなりキャトラがズイズイと乗り出してきた。

 

「いや…やっぱりみんなで食べた方が…」

 

「将軍はん、ウチもお腹ペコペコなんや今城にいる人だけでもエエからはよ食べようや?」

 

「…!」

 

「…実は私も少しだけ…」

 

「…仕方ありませんね、では皆さんは寝ている人達を起こしに行ってください。お食事は大広間にてお待ちさせておきますから。」

 

そいうと将軍はそさくさとその場から去って行った。

 

「そんじゃ!さっさと起こしに行くわよー!」

 

「もおキャトラったら…あまり無理矢理すぎな起こし方はいかないでよね?」

 

「分かってるわよー!」

 

「ほな行くでー!」

 

キャトラはセオリに抱えられてドタドタと走り出した。

 

「心配ね…RASN。」

 

「…!」

 

「一応私も行ってくるわ、RASNも…気を付けてね?」

 

「…!」

 

そうしてアイリスはキャトラ達の後を追い、RASNは男達の寝室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-アオイの島 神社-

 

一方その頃朝早くとも賑わいを見せる城下町近くの神社にはカスミやフローリアやレンファ、そしてコリン達がいた。

 

「それにしても…早朝なのに物凄い賑わいですね…」

 

「周りが物凄くめでたい…踊りたいわ…」

 

「まぁ…こんぐらいは普通じゃない?」

 

「さっさと用を済ませて帰るわよ?」

 

そうして四人は境内へと足を踏み入れ、先ず御手洗で穢れを落として四人は拝殿へと足を運んだ。

 

「ここにお賽銭をいれて…祈るんですよね?」

 

「そうよ、でも二礼二拍一礼ぐらいはしなさいよ。こうやって…」

 

カスミは三人の前に出て賽銭箱に五ゴールドを入れて凛とした動きで二礼二拍手一礼をこなした、するとそれを見ていた三人と周りの参拝客から歓声と拍手が舞い上がった。

 

「……ほらっ、アンタ達もさっさとやりなさい。後がつかえているし。」

 

「でも流石はカスミですね、様になっていました。」

 

「流石は凛としてるねー、あたしも思わず見とれちまったよ。」

 

「…感想はいいからさっさと参りなさい…!」

 

そうして三人もカスミに後ろから押されてお参りをしたのであった。

 

「ほんじゃ、次はお楽しみな御神籤といきましょうか?」

 

「そうね、そうした方がいいわね。」

 

そうして四人は御神籤を引いたが、四人とも引いた籤を開こうとしなかった。

 

「何で開かないの…?」

 

「いやー…先ずは先程大活躍だったカスミ殿の一年を見てみたくてねー?」

 

「そうですよ、私もとても気になります…!」

 

「そうよ、うちも気になるって…」

 

「アンタら…グル?」

 

「「「…!?」」」

 

カスミの一喝とその眼差しで三人はドキリとして思わず手にしていた御神籤を落としてしまった。

 

「そっ…そんな訳無いじゃないですか…?」

 

「そっ…そうさね、そんな訳ナイヨー単純に気になってネー?」

 

「そっ…そうよ!フローリアさんが発案してコリンが悪乗りしたなんて…あっ…!?」 

 

レンファがしまったと言わんばかりの顔でコリンとフローリアの手によって口を塞がれていたが、それらに相対しているカスミの目は静かな怒りに満ちていた。

 

「ふーん…そうなの…?」

 

「…。」

 

「返事は…?」

 

「…そうですね、隠しても仕方ないですから。レンファさんの言う通りで私が発案者です。」

 

フローリアは申し訳なさそうに目を伏せていた。

 

「…はぁ…全く貴女は何時もそうね…」

 

「おっと!隙ありっ!」

 

そしてカスミがヤレヤレと頭に手を置いた瞬間コリンはキラリと目を光らせてもう片方に握ってあった御神籤を奪い取った。

 

「やりましたっ!」

 

「んな!?返してっ!?」

 

「へっへー嫌だねっー!どれどれ~?」

 

コリンはニヤついて奪い取った籤を開こうとし、フローリアとレンファはカスミを阻んでいた。

 

「何で邪魔してんの!?たかが御神籤なのに!?」

 

「おや…カスミは御存じないのですか?ここの神社はですね縁結びで有名なんですよ?」 

 

「そっ…それで?」

 

「実はね…ここの恋御神籤の的中率は恐ろしく高いらしくて、ここのお陰で結ばれた人も多いって言うめでたい所なんだって。」

 

「それで…?」

 

「そうですね…簡単に言えばカスミの運命の相手は何処にいるのかを…」

 

「ちょっと!?なにその理由!?」

 

「そうね…相手が決まったら粉骨砕身で踊ってあげるわ!」

 

「いや…そこまでしなくていいから…!」

 

「ところで…コリンさんどうでしたか?」

 

「ふむふむ…よーく見てみれば?」

 

そうしてコリンは三人の目の前にカスミの御神籤を突きつけた。そして御神籤には中吉とあり、

『願望:努力すりゃ何とかなる。

健康:油断しなきゃ基本的に無病息災で。

待人:意外と近くに居たり、積極的に攻めよう!

金運:日曜日に聞け。 』と記されていた。

 

「へー…普通なぐらいめでたいわね。」

 

「意外と近くに…RASNさんでしょうか?」

 

「なっ…なんでアイツが出てくんのよ!?」

 

カスミは耳まで赤くしてしまっていた。

 

「あー…その可能性は無くはないねー?でもそうならライバルは上から下まで凄く広いねー?」

 

「だからっ!?」

 

コリンは慌てるカスミの脇腹をニヤニヤと小突き。

 

「めでたいわね…!はぁ~よいこらさっさー!」

 

「やめなさいって!?」

 

「…ハァ…ハァ…踊り疲れたわ…」

 

突然舞うレンファだが数秒も経たない内に疲れ倒れた。

 

「あり?何時もなら五秒ぐらいは持つんじゃ…?」

 

「いや…さっきのは…かなり特別な浄蓮の舞で…うぅ…頭痛い…」

 

「大丈夫…じゃないっぽいかー、仕方無い引き上げますか?」

 

「……そうね、二・三点気にくわなかったけど…帰りましょう。」

 

「そうね…戻ったらゆっくり休みたいわ…」

 

倒れるレンファをコリンがおんぶして神社から去って行った。

 

 

 

 

 

 

-アオイの島 宴会場-

 

アオイの島の城内の宴会場にはRASNやアイリス達が用意されていたおせち料理に舌鼓をうっていた。

 

「ふぁ…とても眠いでござる…でもおせちはとても美味しいでごさる…ふぁ…」

 

「何で只の蒲鉾なのよ!?カニカマに変更なさーい!」

 

「ケッケッケッ!酒も旨ェなァ!」

 

「はぁ…このなます良いお酢加減だわ~」

 

「ピヨ…パパ…大根入ってる…」

 

「ありがてぇ…!ありがてぇ…!タダ飯だぁ…!」

 

「美味いが…辛くないっ!」

 

「エシリア!食べきれた数で勝負ってのは…!」

 

「えー…?ふつーに食べよーよ?」

 

なお彼らの目の前のおせち料理はどれも小さな重箱で出されており空になったら脇に置いて次のが来るのを待つ方式であり、何故かバイパーが黒紫な割烹着を身に纏って重箱を運んでいた。

 

「何でお前が運んでんだよ…?」

 

「別にいいだろ、それより良く食うなメア?」

 

バイパーの目線の先のメアの重箱は七段位積まれており、他の人らは大体三段目である。 

 

「ええ、結構美味しいし綺麗だし、何より甘いものもあって今の所飽きないわね。」

 

「そうか、それじゃ次は俺の料理…ローストビーフだ。」

 

「オイオイ…おせちにローストビーフって…何か違くねぇか?」

 

「何を言ってる、最近はこういうのもあるんだぞ。あとこれはお前の分だな。」

 

そうしてバイパーはオズマの前に五段目の重箱を置いた。

 

「おう、悪いな。」

 

そうして目の前のおせちの蓋に手を出そうとした時宴会場に声が鳴り響いた。

 

「えーっと…宴も手向け…?いいや宴もたわけ?…そうだ!宴もたけなわですが皆さんに発表がありまーす!」

 

おせちを前にする者たちは声の発せられた宴会場の舞台の上に立つセオリの双子の弟であるアキヒコが立っていた。

 

「実はですが…この宴会場の入口を封鎖させていただきましたー!」

 

突然のアキヒコの宣言によって会場内はざわつき始めた。

 

「あーでも安心しなって、重箱があんだろ?それの空いたやつをな五個持ってくれば出してくれるぜ?そんじゃお先にしっつれーい!」

 

するとアキヒコは空の重箱を五個持って入口にいる役人に手渡すと宴会場の出入り口から出て行った。

 

「オイオイ…てかバイパー…」

 

「あぁ、面白そうだったからな。あとな、五段目の奴は苦手そうなものしか入ってない重箱でな…」

 

「おっとっと?残念ながら俺は苦手なものはまだ明記されてないから余裕だなぁ!」

 

バイパーがまだ説明している中オズマは勢いよく目の前の重箱の蓋をあけ放った。

 

「…ぇ?ふつーな料理しか並んでないな…?」

 

オズマの目前に広がるのは言ったって普通な料理しか並んでいなかった。

 

「おいおい…これなら楽勝だな、いただくぜ!」

 

「おっと待て…。」

 

箸を持って重箱の料理に手を摘まもうとしたがそれはバイパーによって阻まれ、持っていた箸を奪われた。

 

「何すんだ!?」

 

「何って…口を開けないのか?」

 

そしてバイパーは奪った箸でオズマの代わりに重箱の料理を摘まんでそれをオズマの口へと運ぼうとしていた。

 

「いや…何でお前が箸持っているんだよ?」

 

「そうだな、言われた通りで特に何も無さそうだから仕方なしに『あーん』するからだが?」

 

「いや…待て待て待て…!?そういうのはな…女の子にやってもらうもんだろ!?」

 

「そうだな…だが…今は俺だ…!」

 

「なら…!せめてメアちゃんに…!」

 

オズマがメアのいる方向を見たが既に席を立っており、そこには空の重箱が三段置いてあった。

 

「ありゃりゃ…」

 

「ちなみにメアの五段目は寿司だったが、上手い事ガリ残しで行けたみたいだな。それじゃ続きをやるか?」

 

「おいっ…やめろって…!?アッー!?」

 

そうして宴会場には空の重箱を持って抜け出すものや、座ってうんうん唸る者が続出したとか。

 

「何だよこれー!?カレーライスなのに何でライスの部分がカレーピラフ!?しかも辛いー!今年はもう駄目だー!」

 

「ふぇぇ…セッシャの苦手な納豆尽くしでござる…!」

 

「くぅ…これが噂の青汁と呼ばれるブルードリンク!この脅威から守れるのか!?」

 

「まっ…待て!?吾輩は食べるということ自体がないぞ!?」

 

「いいから…………食……え……!」

 

「モガッー!?」

 

「くぅぅぅぅ!何故和風な重箱から小麦粉製のパンがぁぁぁ!?」

 

「この魚…骨が多過ぎる!?」

 

「何でこのような席なのに芋の皮むきをー!?」

 

そうして正午の砲台が鳴り響くまで宴会場にはほんの数名の冒険家が残ってしまったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-アオイの島 城内庭園-

 

そうして難を逃れられた冒険家達はその後各々別れて行動する事となった。

 

そんな中城の中の庭園ではRASN達が正月遊びを楽しんでいた。

 

「行きます…えいっ!」

 

「ほぎゃ!?」

 

「……打つべし!」

 

「もぎゃ!?」

 

「あたしに任せな!コォーン!」

 

「ぎょえ!?」

 

「いっけー!ライジングパワー!」

 

「シビレビレ!?」

 

リーゼロッテやサワワやライライやらコリンが二対二で羽子板を楽しんでおり、四人共顔に墨をつけながら楽しそうにしていた。だがそんな楽しそうな声の中で苦悶の声を上げるクマロンが飛び交っていた。

 

「リッ…リーゼロッテ!?もう…ギブ…いくら羽根が無かったからって…!」

 

「……抉りこむように……打つべしっ!」

 

「ぐぼぁ!?」

 

そうして暫くラリーは続いた。そしてそんなクマロンの叫び声を受けながらフランとカモメは餅つきをしていた。

 

「それでは…いくでござるよカモメ殿!」

 

「はいっ!全速力で餅つきを行きます!」

 

カモメは斧ではなく杵で餅を突きフランは臼の隣で隙を見て突かれた餅を返しており、カモメは正確かつ力強く突きフランは目にも止まらない速さで餅を返していた。

 

「すごい!全く見えないよ!?」

 

「ピヨヨ…速い…!」

 

「待ってて下さいね船長!美味しい餅はもうすぐですよー!」

 

「…!」

 

「ふふふ…楽しみね。」

 

「アタシは熱いのは駄目だから冷えていて美味しいのを頂戴ねー!」

 

そしてそんな二人をキャトラとタローは寝そべり、RASNとアイリスとその二人の膝の上でヒナとコヨミが縁側で見ていた。

 

「あら?何だが楽しそうね?」

 

そんな中、部屋からカスミやフローリア達がやって来た。

 

「あっ、皆さん今カモメさんとフランさんが餅をついているんです。よかったらどうですか?」

 

「でも人数分あるのでしょうか?」

 

「んーそう思ってセッシャアンコールを持って来たでござる!」

 

すると庭で餅を返していたフランが縁側にいて、その手にはもち米が入った釜を持っていた。

 

「あら?またフランお得意の分身かしら?」

 

「そうでござる!」

 

「ボンジュール!セッシャの方は餅に合いそうな物を持って来たでござる!」

 

そしてフランがもう一人増え、そちらのフランの手には海苔やらきな粉やら醤油などの餅に合いそうな物が溢れんばかりに持っていた。

 

「すごいわね…!」

 

「それでは追加してくるのでこれを任せるでござる!」

 

そうして調味料たちを持っているフランはメアに調味料たちを預けると、釜を持つフランと一体になりカモメの方へと向かった。

 

「カモメ殿ー!追加が入るでござるが良いでござるか?」

 

「はいっ!バッチ来いであります!」

 

更にフランが一体になると餅つきはより激しく餅ついていた。そしてメアは受け取った調味料たちを落とさないように部屋に置いて行った。

 

「それにしても本当に楽しそうね…」

 

そうしてカスミ達はRASN達同様に縁側に腰掛けた。

 

「…!」

 

「…遠慮するわ、さっき中でシズクさん達とカルタをして疲れたから…」

 

「カルタをして…疲れる…?」

 

「はい、途中でシズクさんが酔いだして…いやー…酔いを止めるのに手間取っちゃって…今は付き添いでいたシャオフーさんと目覚ましで温泉中らしいし…」

 

レンファはやれやれと頭を掻いてそう話した。

 

「あー…それは災難ね…」

 

「…カスミ?」

 

「ん?何?」

 

皆が餅つきを見るのに集中していく中、RASNの隣のカスミは隣にいるフローリアに耳打ちをされていた。

 

「カスミ…今がチャンスですよ?」

 

「えっ…!?なっ…何言ってんのよ!?」

 

「…憶えていないんですか?朝のおみくじですよ…?」

 

「あっ…あんなの信じるわけないでしょ…!」

 

「まぁまぁ…騙されたと思って…RASNさんにアタックしてくださいよ?」

 

「そんな事して何になるの…?」

 

「…幸せになれますよ…?」

 

「だからっ…!」

 

「ピヨ…?何をお話しているの?」

 

「…!?」

 

すると隣の膝に座るヒナが首を傾げてカスミ達を見ていた。

 

「なっ…何でもないわよ…!」

 

「……そうだ!ねぇヒナちゃん…!」

 

「おっと…フローリア…ちょっと話があるのだけど…いいかしら?」

 

フローリアがヒナに対して次の句を言おうとしたらカスミは立ち上がり、冷ややかな笑みを浮かべてフローリアの首根っこを掴んだ。

 

「ゴメンねヒナちゃん、ちょっとフローリアを借りるわね…?」

 

「うん…いいよ?」

 

「あの…カスミ?笑っているようで怒っている様に見えるんですが…?あの…もしもし?」

 

そうしてフローリアはカスミに引き連れられて餅つき場から姿を消した。

 

「あら?カスミとフローリアは?」

 

そうして最初にいないのに気付いたのはキャトラであったとか。

 

 

そして餅が突き終り室内へと運ばれ更に人を招いてお餅パーティとなった。

 

「ほくほく…温かい!」

 

「んー!流石に突きたては絶品ですね。」

 

「やはり…お餅はお米に限りますねっ!」

 

「ふむ…餅…ならここで一席、先の程に黄金餅なるものを…」

 

「アフゥ…?!焼き餅がレプチャーしたでござる!?」

 

「ピチッ…!?熱い…パパ…」

 

「…?」

 

お餅パーティ会場は賑やかになっていた、だがその外の庭園にはクマロンが転がっていた。

 

「くぅぅ…!おのれ…リーゼロッテ…!吾輩を置き去りにするとは…」

 

クマロンはジリジリと灯りと騒ぎが出る家屋へと身を這わせていた。

 

「吾輩は諦めんぞ…!ぐおおお!」

 

クマロンは何とか縁側に上り、会場までは障子を一つ越えるだけである。

 

「よし…!…って…取っ手が高くて開けん!」

 

だが障子の組子には届かないのであった。

 

「くぅぅぅ…このままでは…っとおや?」

 

するとクマロンの身はふわりと浮かんだのであった。

 

「まさか吾輩のパワーが…!なわけないが…一体誰だ?!」

 

そうしてクルリと振り返り自分を持つ者に相対した。クマロンの黒い丸点の眼には黄色い髪だが緑色の眼と眼の間の髪には茶色いワンポイントがあり、その黄色い髪からは獣人の証たる耳が生えており尻尾も生えていた少女であった。そしてさらにそのケモノミミの間にはぴょこんと黄色い髪が一本立っていた。

 

「わぁ…喋るドングリ…世の中はとても広いですねー?」

 

「えっ…ドングリ?」

 

「さて…新年一発目のドングリ割りです!はぁぁぁ!」

 

少女はクマロンを空に放つと両足を地に着け構えを取っていた。

 

「なっ…なにをするだー!?」

 

「ドンッ!」

 

そしてクマロンが少女の目線近くまで落ちてくると、少女は拳をクマロンへと突き立てた。

 

「ヒィギャ!?」

 

「そして…グリリリリリ!!!」

 

そしてその拳をグルグルと回してクマロンを吹き飛ばし、クマロンは簡単に城壁を飛び越えたのであった。

 

「のわぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「あっー!?私のドングリー!?待てっー!!」

 

そしてクマロンを飛ばした少女は飛んだクマロンを追いかけて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-アオイの島 城外の平原-

 

アオイの島の城のすぐ近くの平原にはリアム達が凧揚げをされていた。

 

「おおいい!!!ザックぅ!!もっと風に乗らせろぉぉ!!」

 

「ヘイヘイ…」

 

地面にはザックが呆れた顔で凧糸を持ち、そのタコ糸の先には凧があるのだがその凧にはリアムが張り付けられていた。

 

そして彼らの辺りにも普通な凧揚げをしている人たちがいる中バイパーがオズマを凧揚げしていた。

 

「どうだ俺の作った凧は?安心できる乗り心地だろ?」

 

「おいおい…!幾らなんでも操作が雑じゃないのか!?クルクル回ってんぞ?!」

 

「回しているんだよ。」

 

「やめろって!!?」

 

オズマ凧はクルクルと回りながらリアム凧の高さを追い抜いたのであった。

 

「んなぁ!?おいザック!もっと高度を上げろー!!」

 

「いいのかー?」

 

「構わねぇ!上げろ!」

 

「はいはい…どうなっても知らないぞー?」

 

ザックは渋々と凧糸の束を解いてリアム凧の高度を上げていた。

 

「のわっー!?」

 

そんな中オズマ凧はヒュルヒュルと落下していっていた、そしてリアムはそれを尻目に更に飛んで行き彼の眼には日に照らされる城と城下町が見えてきたのであった。

 

「これで…俺様が凧揚げられの伝説と…」

 

「……のわぁぁぁぁぁーーーー!!!」

 

「へっ…?」

 

リアムがその情景を見ている最中城の方から茶色い物体がリアム目掛けて飛んできた。 

 

「ま…まずい!伝説作りの障害が…!ザック!右だ!右!」

 

リアムが叫ぶがその声はザックに届かずそれはリアムに直撃し、落下していった。

 

「うおおおおおおお!?」

 

そして落下していくリアムは偶然にも近くに沸いてあった湖のような温泉へと落下した。 

 

「痛つつ…何だよ…!」

 

温泉から顔を出し陸に上がるとさっき自分がぶつかった物を吊し上げた。

 

「……何だ?この栗は?」

 

「栗ではない!吾輩はクマロンだ!…ぐぅ…」

 

「おっ…!?おいっ!?」

 

リアムはクマロンを持ち上げていたが途中でクマロンが脱力してしまった。

 

「ぐぅぅ…濡れていては…力が出ぬ…ドライヤー…」

 

「んん?乾かせばいいのか?そらよ!」

 

「ぎぃやああああああ!!絞られるうううううう!!千切れるおおおお!?」

 

そしてリアムは手にしているクマロンをギュギュっと雑巾の如く絞り上げ、クマロンは叫び声を上げていた。

 

「よしっ!乾いたぜ…!」

 

「あっ…後で泣かす…」

 

そしてクマロンは乾いたが湿っていた時よりもぐったりとしていた。

 

「何でお前飛んできやがったんだ?」

 

「それはな……」

 

「見ぃーつーけたー!」

 

クマロンが開いてる口から声を出そうとしたがそれを阻むが如くの轟音と雄叫びもとい雌叫びのような声と共にクマロンを吹き飛ばした少女が駆けつけてきた。

 

「おっす!そこの人!そのドングリを返して下さい!」

 

少女は辿り着くと同時にリアムの腕に収まるクマロンを指差してそう叫んだ。

 

「ドングリ…?これは栗だ!」

 

「違ーう!吾輩はクマロンで大悪魔だー!」

 

「いいえドングリです!チャッピーの初割りドングリとなるドングリなんです!」

 

「割るにしてもあの技でドングリを叩いたら割れるどころか粉々だろうが?!」

 

「…待てよ…って事はよ、俺を撃墜したのは…こいつのせいってわけか?」

 

「…まぁ…間接的だがそうなるな…」

 

「俺様の伝説を阻んだのはお前か…たっぷり礼をさせて貰おうか!?」

 

するとリアムは腰からスルりとアロンダイドを取り出した。

 

「ふん!たかが剣如き!リーグンドーで弾いてやりますよ!」

 

するとチャッピーと名乗っていた少女も身構えた。

 

「リーグンドー?聞いたことねえな?」

 

「フッ…知らないのですか?リーグンドーとは獣人最強となる拳法なのですよ!」

 

「最強…ハッ…伝説には程遠いぜ!」

 

「何を言うのですか!?リーグンドーが最強なのです!」

 

「いいや伝説!」

 

「最強!!!」

「伝説!!!」

「最強!!!」

「伝説!!!」

「最強!!!」

「最強!!!」

「伝説!!!」

「伝説!!!」

「最強!!!」

「伝説!!!」

 

そうして二人は構えを見せあいながら互いにギャアギャア叫び合っていた。

 

「ぐぬぬぬぬぬぬぬ!!」

 

「むう!むう!むうううう!」

 

するとチャッピーに異変が起こっていた。

 

「ぐうう!ぐうう!」

 

チャッピーの頬がプクりと膨らんで顔は赤くリンゴのようになっており。

 

「ぐぅぅぅぅ…!」

 

そして彼女は倒れてしまった。

 

「ふっ…俺様の伝説の勝ちだな…」

 

「いや…どう考えても、息すんのを忘れて倒れただけだと思うが…」

 

そして胸を張って誇っているリアムの元にザック達とバイパー達が現れ、チャッピーはソフィに介抱された。

 

 

「ぐうう…また息するのを忘れてしまいました…!」

 

「それにしても…とても可愛らしいですね!」

 

なおソフィはエドッぴー着ぐるみを着たエドガルドを揚げていた。

 

「それに…申し訳ありません!ドングリと間違えて殴ってしまって…!」

 

そしてチャッピーはクマロンを装着したリアムに土下座をしていた。

 

「いや…もう反省しているしな…許してやろう!…それより城に戻るぞ!これでは吾輩がリーゼロッテに見捨てられる!?」

 

「…!それなら私にお任せを!送り届けます!」

 

するとチャッピーはリアムの腕からクマロンを奪い森の中を駆け出していった。

 

「まっ…待て!?森の中は…がぁぁ!枝がぁ…!?」

 

そうして森の中にクマロンの悲鳴が木霊した。

 

「そんじゃ…ザック!再開しようぜ!」

 

「…はいはい…やりゃーいいんだろ…」

 

「おっと!いけません!エドッぴーを飛ばしたままでした!?」

 

「それじゃ…俺達も…」

 

「ノーサンキューだっ!」

 

そうしてザックとリアムとソフィは凧揚げられに戻り、オズマはバイパーから逃げ出した。

 


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