あと、もしかしたらログインユーザーではない方の中にも感想を書きたい方がいるかもしれないと思ったため、アンケートをとることにいたしました。
後書きの下にアンケートがございますので、よろしければご回答ください。20日の23:59あたりで締め切らせていただきたいと思います。
それでは、どうぞ。
錬金術とは、狭義的に言えば、卑金属を貴金属に作り直そうとする試みである。他の錬金術はどうかはともかく、少なくともリリスの扱う異端技術交じりの錬金術は、金属だけでなく、石や水といった自然物、道具などの人工物のほかに、生命なども、分解し、構築しなおす対象に入っている。
「実験体にする」。このリリスの言葉に嘘偽りはない。
だが、ノイズを生み出す少女を囲んでいるアルカ・ノイズに下されている命令は「目標を分解せよ」であり、どう考えても少女を赤い粉塵になるまで分解するつもりしかないように思える。
だが、錬金術師ならば、言葉と行動に矛盾は生じない。
なぜなら、錬金術は知識さえあれば、生命であろうとも分解したものを再構築できるのだから――
□
亜空間に閉じ困られてから少女が最初に取った行動は、自身を取り囲んでいる
しもべを生み出し、ぶつけ、消す。彼女がとれる行動はそれだけだったが、これはうまくいっていた。敵とぶつかったしもべは炭となって消えていくが、敵もまた赤い粉塵となって消滅していくからだ。
少女にとって、しもべは限界が来るまでなら量産できるものだったので、消滅する分この前戦った装者たちよりは容易い敵に感じた。あとは、敵が全滅するまで量産を続ければいいはずだった。
――異変に気づいたのは、何分か経ったぐらいだった。
ぶつければ消えていくはずの敵の中に、いくらしもべをぶつけても消滅するのはこちらだけで、まったくダメージを受けていないように見える敵が何体かいたのだ。
それは巨大な球のようであり、全体が白く発行していた。よく見れば、それにぶつかったしもべは見慣れた炭の色になって崩れ落ちるのではなく、敵を消滅させたときに出るような赤い粉塵をまき散らして消えていくのだ。
さらに、少女はもう一つのことにも気が付いた。
あの丸い敵以外のしもべもどきにぶつかっていくものの中にも、赤をまき散らして消えていくものがたまにいるのだ。そういうしもべは、どうやら一方的にこちらが消滅していくようで、なんとなくだが、あの丸い敵のように白く輝くところに触れてそうなっていくような気がした。
それに、最初は限りあると思っていた敵の数が、まるで減っていかない。どこからか補充されていることを察したが、どこからかが分からない。
少し休んだとはいえ、少女はまだ本調子とは言えなかったため、疲労という名の量産の限界が少しずつとはいえ近づいてきた。
敵の数は減らず、自身は少しずつ消耗させられ、さらに時々とはいえ一方的にこちらのしもべを消滅させられる。
幸い一番の問題である丸い敵の移動速度は驚くほど遅いが、それでもゆっくりとこちらに向かってくる様子は逆に不気味に思える。
少女は、じわじわと自分が追い詰められていくのを肌で感じ取っていた。
◆
リリスは、亜空間に閉じ込められた少女の様子を、内部にいる監視機能付きのアルカ・ノイズから送られてくる映像で観察していた。
機能特化型の開発に参加していた彼女は、亜空間を作り出すアルカ・ノイズ以外にも様々な機能に特化したものを作り上げていた。例えば、いま少女が警戒しているボール型のアルカ・ノイズもそうである。
全体を解剖器官でおおわれているため、端から見ると白く光り輝いているボールのように見える。
このアルカ・ノイズの恐ろしいところは、どの部分も解剖器官でおおわれているため分解されずに触れることはほぼ不可能であり、強力なエネルギーによる攻撃でない限りは通じることはないと想定されていることである。
すなわち、この「物理攻撃完全無効化」をコンセプトにして作られたアルカ・ノイズに対抗する手は、ノイズを量産して従わせるだけの少女にあるはずがないと結論付けることができる。
(もっとも、干渉破砕効果を無効化するよう調整されたシンフォギア相手では無意味ですが)
自身の攻撃が全く通用しない敵を始めとした現状に焦りを見せ始めた画面の中の少女を見ながら、リリスは揶揄するようにそう考えた。
シンフォギア相手だと鎧袖一触の勢いで倒されていく同じ雑魚同士でも、錬金術により長年にわたる改良を受けたアルカ・ノイズの方が多少勝っているという目の前の結果に対して、彼女は実に無機質な感想しか抱いていなかった。
むろん、目的を確実に達成させるために用意している特化型は、この「無敵型」と現在進行形で亜空間を発生させているアルカ・ノイズだけではない。
「亜空間型」と同じように光学迷彩で姿を消し、さらに通常のアルカ・ノイズを量産する役目を負った「戦力投入型」が逐次アルカ・ノイズを出現させ、少女を追い詰める要因の一つとなっている。
そして同様に姿を見えなくしている「観察型」が、まさに今リリスが見ている映像を届けており、亜空間内でトラブルが起きてもリリスが外から対処することを可能としている。さらにいえば、カメラやマイク以外にも様々な観測器具が組み込まれているため、目や耳で捉えられない情報もしっかり把握することができている。
備えあれば憂いなし。まさにその言葉を体現しているかのように、失敗の可能性が万に一つもないと考えられるほどの万全の状態であった。
人類の天敵であるはずの少女は、もはや蜘蛛の巣に絡めとられた蝶だった。人類の叡智の積み重ねという糸を、抜け出す穴がないように慎重に編んだテリトリーに、はるか過去の遺産に頼るだけの少女が捕られられていた。
「まあ、ここに至るまでの経緯を見ると、ただ『頼っていただけ』というわけでもないのでしょうが」
結果的に追いつめているとはいえ、この状況になるまで消耗したアルカ・ノイズの数も把握していたリリスは、ぽつりと呟いた。
そもそも、アルカ・ノイズの位相差障壁の出力を、通常のノイズ以上に引き上げるあの亜空間で、ここまで長時間持ちこたえられる方も大概なのだ。
確かに、それなりに仕様が違うとはいえ同じノイズであるためか、相手側の
位相差障壁とは、いわば高さの違いである。
全く同じ緯度・経度の場所に存在していても、標高の高さが違えば二つのものは直接ぶつかることはない。上にある――もしくはいるモノが、下のモノに高さを合わせるように高度を下げるか、その逆が起こらない限り接触は起きないのだ。
位相差障壁を持つノイズとアルカ・ノイズは、この例えだと他のモノより高い位置を保持することができることになる。さらに、今わかっている範囲ではノイズと同じ高さに至れる方法がないため、あちらから高度を下げて攻撃をしてこない限り――といっても、その場合はだいたいこちらが消されるのだが――こちらから有効な手を打つことができないのである。
――では、
ノイズは、相手に接触するなり自身とともに炭化させることで攻撃をおこなっている。
対して、アルカ・ノイズの攻撃方法は、体の一部となっている解剖器官で、相手をプリマ・マテリアという赤い粉塵に分解するという一方的なものである。
かたや自爆特攻。かたや物理的防御も無効化し、自身にダメージがない攻撃。
同数を用意した場合、比べるまでもなくアルカ・ノイズに軍配が上がるのは確かなことであるはずだった。
しかし、あの少女が生み出すことのできるノイズの数が想像を超えていたこともあるとはいえ、当初予想していた以上に、相手から取った駒の数に対して自身の駒を多く取られていたのだ。
錬金術の歴史に及ばないとはいえ、おそらく長年にわたって使い続けることによって向上してきた、あの少女の巧みなノイズ操作技術が自身の想定を上回る状況を作り出していることをリリスは実感した。
予定時間を過ぎてもなお、「少女を分解する」という目的を果たすことができていないのは、ある意味当然だといえた。
だが、結局のところ「予定よりも時間がかかった」という結果以外、この状況においてリリスの想像を超えたものは何もなかった。
まだ抵抗を続けているとはいえ、見たところ少女も疲れ始めてきたようだ。聖遺物の
――だが、彼女の心には、得体のしれない不安があった。
(状況的に、こちらの優位が揺らぐ兆候はない。
にも関わらず、今にもどんでん返しが起きる気がしてならない。なぜ……?)
そこまで考えて、ふと、映像の中の少女と目が合った。
どこまでも深い闇の中に、暗くも激しく燃える炎が映っているように見える瞳。このような瞳に、自分は覚えが……。
「……ああ、そういうことですか」
そこまで考えて、答えにたどり着いたリリスは、誰に聞かせるわけでもなく呟く。
かつてそれは、全世界へと届けられた映像の中で見た瞳だった。
その瞳は、あの少女のように憎しみで染まっていたわけではない。だけど、その瞳には「正義」が宿っていた。
サンジェルマンのように、目的は理想であっても、そこに至るまでの手段が理想に反しているという矛盾に気づきながらも、自分の「正義」を他人に強制するものとは違う。
手段が目的と相違することなく、ゆえに心の奥底から信じて行動することができる「正義」だ。そしてその行動の先に、ほんのわずかばかりでしかないはずの可能性をつかみ取り、自身が望む結果をつかみ取ることができる者の目だった。
あの装者の行動は「善」であるため、いまだ人類は存続している。しかし、あの少女は……
「悪……いや、
□
――このままじゃ、負ける。
ノイズを生み出す、人類の天敵たる少女は、自分の敗北が目前にまで迫ってきたことを肌で感じ取っていた。
いくらしもべを生み出して向かわせても、あの丸い敵にはまるで歯が立たない。
さらに他の奴らも、完全に一方的というわけではないにしろ、こちらの方が不利であることには変わらない。しかもそいつらは、どんなに倒しても倒しても減る様子がない。切りがない、という思いを、皮肉にもこの前の装者たちと同じ立場になって少女は抱いた。
自分のしもべが、あのしもべもどきに赤く砕かれていくのを見ると、自分もいずれああなるということを嫌でも実感させられる。
今こうしてしもべを生み出し続けているのは、あの運命をできるだけ遠ざけて死から少しでも逃れたいからだろうか……。
(――違うっ!!)
否! 否!! 否!!! そうではない!!
あの運命から逃れるためじゃない!! あのふざけた奴らを倒して、あの人間を殺すためだ!!
自分が死ぬのが怖いからじゃない!! この世から殺しつくさなきゃいけない奴らがいるからだ!!
だから、こんなところで死ねるものか!! まだあいつらに奪われたものを帰すべき場所に戻せていないんだ。
だから! だから!! だカラ!!! ダカラ!!!! Daかlぁ!!!!!
——オマエタチカラ、コノヨカラケシテヤル
少女の中で憎悪と決意がまじりあい、一つの実を結んだ。
それと連動するかのように、少女の体にも変化が起きた。
少女の体の至る所から、色とりどりのナニカが出てきた。
それは、まるで肉塊のようだった。血管が浮き出ているわけでも筋肉が下にあるわけでもないのに、肉のように有機的で脈動をするものが少女の体の中からあふれてくる。
手からは赤、腕からは橙、胴体からは緑、背中からは紫、腰からは桃色、脚からは黄色、足元からは青、そして頭からは黒い肉塊が顔を出し、ふくらみ、少女の体を覆っていく。
この肉塊の正体は、ノイズであることは明らかである。
ルナアタック、フロンティア事変において、複数のノイズ同士、あるいはノイズと聖遺物の融合ができることは確認されている。
いわばこれは、その応用である。ただし、
今までの融合は、ソロモンの杖の操り手によって指示され、おこなわれてきた。
しかし今回は、彼女自身の意志によって、ノイズが融合している。そして、ある意味ノイズ自身である彼女の望む形で融合が行われるということは、最高のパフォーマンスで、彼女の望む形に最も近づいて
——もっとも、この前の装者たちとの戦闘があったからこそ、
少女を呑み込み、どこまでも膨れ上がっていくかと思われた肉塊は、200mほどの高さまで大きくなったらピタリと膨張を止めた。そして今度は、内側に押し込まれていくようにみるみると小さくなっていき、ノイズの主――いや、ノイズの
そして、災厄は進化した。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
実際にノイズとアルカ・ノイズが戦ったらどうなるかが分からなかったので、改良されたというアルカ・ノイズの方が上位ということにしてみました。位相差障壁についての解釈などは本当は違うのかもしれませんが、設定はガバガバなものでお許しを……。
最後に、大したものではありませんが、おまけを一つ。
おまけ もしメリュデをXDに出してみたら②(楽曲編)
□アバター「メリュデ」にセットできる楽曲(願望)
・「明日に繋がる左腕」
・「迷いも怖れも断殺できれば…」
・「SOL=NIGER」
完全に願望です(笑)できれば次回もどうかお願いいたします。
オリジナルキャラの挿絵などもあった方がよろしいでしょうか?(作者自身が描くが、画力は期待しない方がいいレベル。描くならペイントか手描きの二択)
-
挿絵はあった方がいい(ペイント)
-
挿絵はあった方がいい(手描き)
-
挿絵はない方がいい
-
どちらでもよい