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それでは、どうぞ。
2019/06/29 後になってから、「これは不快に思う人もいるんじゃないか」と感じたおまけを削除いたしました。
あと一。ついに残りはあと一になった。
あともう一回取り戻せば、みんなをあの場所に帰すことができる。
それが終われば、今度こそルル・アメルを滅ぼす。新しく手に入れた力もあれば、今度こそ。
生まれた星とは異なる空間の中で、少女はゆがんだ笑みを浮かべた。
◆
パヴァリア光明結社の錬金術師、そしてノイズを操る謎の少女との戦いから装者たちが帰還したS.O.N.G本部。先に響の手で担ぎ込まれた調と切歌、そして戦闘の後、二課の職員によって回収されて運び込まれた翼にクリス、マリアはメディカルルームでのチェックを受けた。
幸い、イグナイトモジュールをリセットされた際のダメージは既に抜けており、ノイズの少女との戦闘でも衝撃を体に受けはしたが大した傷はなかったので、少しのあいだ休んだらすぐに司令部に行くことができた。
絶望的に思えた戦いから装者が全員帰ってきたはずの司令部の空気は、重い。
それも仕方がない、と言えるだろう。なぜなら、賢者の石のようにこちらの札を無効にするだけでなく、逆にこちらの力を利用されてしまう手が相手にあると分かったのだから。その力が自分たちの信を置くものであれば、なおさらだ。
明らかになったタイミングが状況が好転し始めた時だからこそ、弦十郎の危惧したほどの精神的ダメージを装者たちが受けることはなかったが、それでも受けた衝撃は言葉で語り切れない。
実際に目にした翼、クリス、マリアは厳しい表情をし、その場にいなかった翼と切歌は理解できないものを前にしたような顔をし、響はぽかんとした表情を浮かべていた。
「……今回の戦闘で計測されたデータから、確かな根拠を得ることができました。
ヴォカリーズを歌っている際、装者のフォニックゲインが低下。それに対照するかのように少女のフォニックゲインが上昇していました」
「さらに、アガートラーム、イチイバル、天の羽々斬の波形パターンを、いずれも少女の体から検知。何度も確認を取りましたが、間違いないです……」
「やはり、あのヴォカリーズの特性は『繋ぎ束ねる』ことだったか……」
「何悠長に言ってやがる!」
淡々と計測結果と推測を口にすることしかできない面々に、クリスは激昂する。
「あの女の歌がこのバカと同じような特性を持ってたってことは、予測がついてたんだろ!?
ならどうして、それをアタシたちに話しておかなかった!? 知っていれば――」
「知っていれば、どうにかできたと?」
弦十郎からの問い返しに、クリスは言葉を詰まらせる。実際、あの能力があると分かった現在でも、どのような手を使えば盤面をひっくり返せるのか彼女もまだ知らないのだ。
「あの少女の歌は、いわば絶唱の威力とバックファイアを伴なわないS2CAだ。
タネが分かったところで対策が思いつかない以上、ファウストローブにイグナイトモジュールが封じられたばかりの状況でこのことを話すのは、君たちの士気を下げるだけだと判断した」
「そう判断されても仕方ないのかもしれないわね……。
あの時の私たちは、自分たちが足手まといな現状に、無茶ばかりしてきたもの……」
弦十郎の言葉に、マリアが表情を曇らせる。
実際、奥の手を封じられた二課組だけに戦わせてしまうのが忍びなくて、LiNKERを用いないままギアを纏っていた自分たちだ。そんな情報をもたらされたら、あの時以上に焦りの気持ちが出て大変なことになってしまったかもしれない。
そういう意味では、弦十郎の判断は正しいものだと言える。同じ考えに至ったのか、調や切歌といった他のLiNKERを使用する装者も表情を暗くする。
「だがそれは、君たちにあの少女の危険性を正しく伝えなかったという俺の判断ミスだった。
もし俺が知らせていれば、あの場で少女の本当の危険性を認識している君たちが戦闘を仕掛けることもなかっただろう。そして、それをしなかった結果、クリス君やマリア君の命を、本来なら必要ない危険にさらしてしまった。
……すべては独りよがりな俺の責任だ。すまなかった」
「……くそっ」
自分の配慮が結果的に裏目に出てしまったことを悟っていた弦十郎は、装者たちに頭を下げる。弦十郎の謝罪に対し、クリスは近くにある机をたたいて悪態をつく。
本当はクリスも分かっているのだ。自分たちの司令が、部下である自分たちを――特に、昔のことをうじうじと引きずっている自分を――気遣って黙ってくれていたことに。
本当なら責められるべき自分に非を詫びる弦十郎を見て、クリスはやりきれない気持ちを抱えた。
「頭をあげてください、司令。事情はどうあれ、守るべき後輩がいるにも関わらず血気に逸ったのは自分も同じことです」
「それは私も同じよ、翼。あの少女が積極的でない以上、本当なら調と切歌を連れて退くべきだったのに、千載一遇の機会を前にして焦ってしまった
……次は、こんなことは起こさない。守るべきものを二度と見失うものか。
風鳴司令、あなたの判断は、なにもできないもどかしさに無茶を重ねる私たちにとって決して間違いではなかった。自分の行動に、どうか胸を張ってほしい」
「そうデス! アタシたちのためなのに謝られたら、こっちの方が申し訳ないデス!
アタシだって、足を引っ張るようなことはこれっきりデス!」
「私も、もう二度と、しなくてもいい無茶で戦えないようになんてならない……!
だって司令を始めとした皆が支えてくれるんだもの……!」
「えーと、よく分からないけど、師匠はなにも悪くないですよ!」
「お前も少しはいつものスクリューボールっぷりを反省しろ!」
「いたっ! クリスちゃんだって何も反省してないんじゃ……!」
「アタシもアタシで自分の選択に思うところあるんだ! そのくらい察しろ! このバカ!」
「うう、クリスちゃんがいつにもましてお怒りマシマシな気がするよ……」
装者たちは、弦十郎の謝罪を皮切りに、彼を励ます言葉をかけると同時に、今回の戦いにおける各々の行動を反省し、二度と同じことを起こしてなるものかと決意する。
「……まさか、守るべき子供に大人が励まされるとはな」
「いいんじゃないですか。たまには守るべきものに励まされるというのも」
「私たちだって、彼女たちの行動に勇気づけられたことも何度かありましたしね」
「まあ、僕たちの場合は彼女たちが鉄火場で戦っているのを後方でサポートしているだけの時点で、偉そうなことなんて言えないんですけどね」
本当なら支えるべきだと思っている装者たちに優しい言葉をかけられたことに、判断は間違いではないと言われて気持ちが軽くなったような、大人として頼りにならない自分が情けないような、なんともいえない感情を抱く弦十郎。
そんな弦十郎に対して、たまにはこういうこともあっていいと裏方で数多くの仕事をこなしている緒川が言葉をかけ、いつも本部から装者たちをサポートしている友里と藤尭が追従する。
「……そうだな。よし、いつまでも湿っぽいのはなしだ!
気持ちを切り替えて、あの少女のヴォカリーズ、およびパヴァリア光明結社のラピス・フィロソフィカスへの対策を講じるぞ!」
◇
S.O.N.G.にて脅威となる敵への対策会議が開かれた後、今日のミーティングは解散し、翼。クリス、マリアの、ノイズの少女と戦った三人は大事を取ってS.O.N.G本部のメディカルルームで一晩を過ごすことになり、調と切歌も抜剣の強制解除後の経過観察およびマリアの付き添いという形で共にいることになった。
響がリディアんの学生寮に帰ると、いつものように未来が出迎えてくれた。戦いがあったことを知っているにも関わらず、彼女が
今日は未来が晩御飯を作ってくれるとのことで、自分も手伝おうかと響は言い出したが、「響は夏休みの宿題がまだ残ってるでしょ」と厳しいお言葉をもらってしまったため、今は理解できないところが多々ある難問に取り組んでいる。
夏休みからやってきた魔物との格闘の途中に、ビーフストロガノフを作っている未来から今日あったことに関する言葉をかけられ、ふと日常では話せないとあえて頭の片隅へと追いやっていた《敵》のことが気になり始めた。それは響の中で大きく膨らみ、口に出すことになった。
「ねえ、未来。何かを手に入れたいと思ったら、他の何かを手放さなきゃいけないものなのかな……。
全部をなんとかしたいって思うのは、私のわがままなのかな……」
思い出すのは、サンジェルマンと呼ばれていた錬金術師。彼女は、人の命を礎にすることで、バラルの呪詛を解除し、相互理解を取り戻すと言っていた。同時に、響のことを「思いあがっている」とも。
彼女の言う通り、人の命を守ったうえで他者とも分かり合いたいと思っている自分は、「思い上がり」で我儘なのだろうか。そのような気持ちを込めて尋ねた響に対して、料理を作りながら彼女の親友である未来は答える。
「私は、響の我儘が好きだよ
響の我儘は、いつだって他の人の幸せを願っているものだから」
そう返してくれる親友に、響は「え!? い、いやぁ~、そう言われるとは思ってなかったなぁ~」と照れた様子で、しかし素直に言葉を受け止める。未来の顔も心なしか赤い気がするが、気のせいだと思うことにしよう。
しかし、頭の中に浮かぶのが
――じゃあさ、踏みにじられたから誰かを憎むようになるのは、やっぱり正しいのかな。
響の頭の中で、今日のミーティングのことがよみがえる。
ラピス・フィロソフィカスのファウストローブに関しては、現状では何も対抗策が浮かばないため、錬金術の専門家であるエルフナインに任せるほかないという結論に至った。
問題は、ノイズの少女、そのヴォカリーズへの対策についての話だが……。
「実際に戦い、ヴォカリーズでフォニックゲインを奪われた経験のある装者に聞きたいのだが……彼女の《歌》に関して、なにか他に分かることはないか?」
そう問いかける弦十郎に対し、まず翼が答えた。
「はい、以前あの少女のヴォカリーズに歌を打ち消されたと感じていた時に、どこかで経験したことのある感覚がしました。
その時は特に気にしていなかったのですが、そのヴォカリーズの性質が立花のそれに近いものであると分かった今だからこそハッキリと言えます。あれは、S2CAで立花が絶唱を収束している時の感覚に近いものだと」
「そういや、確かにそうだな」
「そうね。アガートラームで感知したエネルギーの流れも、S2CAによく似ていた。
このギアのベクトル操作でも抵抗できないほど、力強く引っ張るような感じ。言われてみれば、立花響のガングニールに近いような感じがするわ」
「マリア! その言い方は……!」
「ちょっとあんまりな気もするですよ!」
まるで「立花響とノイズの少女は同じだ」というようなマリアの発言に、調と切歌が非難の声をあげる。マリアは、若干響に申し訳なさそうな視線を送りながらも、二人に言い聞かせるように答えた。
「確かに言い方は悪いかもしれない。でも、大切なことから目をそらしていては、いつまで経っても前に進む事なんてできないわ」
「ふむ……やはり響君の歌に近い特性を持っているようだな。
響君は、彼女のヴォカリーズに対して、何かわかったようなことはあるか?」
「え!? えーと、ですね……」
弦十郎からの問いかけに慌てながらも、彼女のヴォカリーズから感じ取ったことを述べていく。
「確かに、まるで歌をつなげられるような感覚はしたと思います。
ただ、あの子の歌は、なんていうか、私のよりも強い感じがしてですね。
私のは『手をつないで取り合う』っていう感じなんですが、あの歌は、『手首をつかんで引っ張る』とというか、むしろ『上から覆いかぶさって体を動かされる』ような感じと言いますか……」
「ふむ。『繋げる』というよりは、『強奪』……いや、『支配』といったほうが近いか。
だとすると、響君の『繋げる』歌よりも、より強制力があると見ていいだろう」
響の言葉から、ノイズの少女の歌の特性が響のそれよりも上であることを理解し、「支配」という言葉で表現する弦十郎。
「響ちゃんの歌の、上位互換といったところでしょうか」
「
「だが、響君の歌が似たような性質を持っていることは、彼女を倒すカギとなるはずだ。
足りないのは出力。それを補えさえすれば……」
大人たちがノイズの少女に対する方策を考えている最中に、クリスは響に話しかける。
「なあ。分かっているとは思うがよ、今度は拳をふるうことをためらうなよ」
「え?」
「どういう訳かは聞かねえが、お前はアイツに、いつも以上に入れ込んでるような気がすんだ。違うか?」
「そ、そんなことないと思うけど……」
「バレバレなんだよ、バカ」
分かりやすすぎる響の動揺に、クリスはため息をつく。しかし次の瞬間には呆れた表情を一変させて、真剣な表情で話し始めた。
「いいか、お前はまたいつものように戦う前に話し合いたいだの思っているだろうけど、アイツ相手は諦めろ。
あっちに話をする気は毛頭ないだろうし、何よりあんな目をしている奴が人を殺すのをやめるはずがない。いい加減、お前も覚悟を決めとけ」
「……分かった」
クリスに言われるまでもなく、そのことを感じ取ってはいた。だが、サンジェルマンに「あなたの気持ちを理解できる」と言った以上に、彼女に対してはまるでもう一人の自分かのように共感してしまうのだ。それこそ、一つ歯車が違うだけで互いに相手のようになってしまうかのように。
響の「繋ぐ」力を持つ胸の歌。ノイズの少女がその歌と近い能力を持つヴォカリーズを歌うのも、あるいは――
「みんな、聞いてくれ」
弦十郎の声に反応して、装者の視線が彼の方を向く。全員の注目が自身に集まったことを確認した彼は、今後の方針について話し出す。
「ノイズを操る少女に関してだが、ヴォカリーズを歌うことから、これからは彼女を便宜上『少女V』と呼称する。
少女Vに遭遇した場合の対処についてだが、接敵した者は、その場に装者6人がそろうまで足止めをする。もし彼女が周辺に被害をもたらしていないとみられる場合は、戦闘行為に及ばず監視だけにとどめておいてくれ。
装者6人がそろい次第、彼女の捕獲を目的として動いてくれ。
そして、少女Vが使用するヴォカリーズへの対抗策についてだが……」
なお、弦十郎が提案した対策は、いつも通りの力押しでこそあったが、効果があるとは認められるものだった。
◇
日が沈み、月が辺りを照らす深夜、ノイズの少女はバビロニアの宝物庫から外に出た。
彼女が転移したのは、海が近くにある人工埋め立て地の港で、メリュデの視線は海の向こう側にある。
(――間違いない。あのとてつもなく巨大な湖の中に、いる)
「海」というものを知らない彼女は、それを信じられないほどの規模の湖だと思い、その奥底に自身の《仲間》がいるのを感知する。
さすがに水の中――それも水圧で潰れてしまう海底――に転移するわけにもいかず、一番近くの陸地からノイズを送り込むことにしたのだ。
少女は、いつものノイズよりも少し時間をかけて巨大なノイズを体から創造していく。作り出されたクジラ型のノイズは海に飛び込み、目的地へと向かっていった。
◆
一方、寮で未来と一緒のベッドで眠っていた響の端末に、緊急の連絡が入り着信音が鳴り響く。響にとってはもう慣れたもので、すぐに起きて電話をとった。
「はい、響です」
『ノイズの反応を検知した。陸地で生み出され、そこから海の中を一定の方向へ進んでいるようだ。
海の中にある目的の場所へと向かわせて、聖遺物を回収するつもりだと考えられる』
響の声で眠りが浅くなっていった未来は、目を覚まして電話をしている響の姿を目にする。
「分かりました。場所は……はい……はい……。すぐに現場に急行します」
ピッと通話を切った響の目に映ったのは、不安そうな目で見つめる未来だった。
「ごめん、未来。ちょっとこれから任務にいってくる」
「……響」
これから任務に行こうとする響の手を、未来が握る。それに驚いた響が未来の方を見ると、彼女はどこか心苦しそうな表情で語る。
「……響が私に話したくないことがあるって分かってた。
たぶん、それは今起こっていることに関係してるんだと思う」
「未来……」
知らない間に大事な幼馴染にまで負担をかけていたことを察し、悲しそうな表情を浮かべる響。そんな響に対し、彼女の親友である未来は、笑顔を作る。
「でも、これだけは言える。響が誰かのために、自分の我儘を押しとおすのは間違ってない。
響が握った拳は、いつだって優しさが詰まっている。だから、私は笑顔で帰ってきた響を迎えることができるんだよ?」
大事な人からの優しさがこもった言葉に、思わず目から涙がこぼれそうになる。
立花響にとって、小日向未来はまさに陽だまりであった。
「未来……」
「だから、勝たなくてもいいから、負けないで。負けないで帰ってきて、また響の笑顔を見せてね」
「……うん、ありがとう」
だからこそ、立花響という少女は、相手のために、そして陽だまりを守るために拳を握って戦うことができる。
救い、守るための歌と、殺し、取り戻すための歌。二つが三度ぶつかりあうのは、もう間もなく。
いわば、二度目の戦闘の後の話と、三度目の準備段階でした。弦十郎の判断などについては、本人の考えそうなこととは違うかもしれませんが、作者が未熟なため、どうかお許しを。
おまけを書いてみました。よろしければご覧ください。
おまけ NG
少女は、いつものノイズよりも少し時間をかけて巨大なノイズを体から創造していく。作り出されたクジラ型のノイズは海に飛び込み、目的地へと向かっていった。
そして、クジラが飛び込んだ時の水しぶきで、少女はびしょぬれになった。
「……………………」
最初に飛び込んだクジラ型ノイズは、間もなく炭になったとさ
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次回もどうかよろしくお願いいたします。
オリジナルキャラの挿絵などもあった方がよろしいでしょうか?(作者自身が描くが、画力は期待しない方がいいレベル。描くならペイントか手描きの二択)
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挿絵はあった方がいい(ペイント)
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挿絵はあった方がいい(手描き)
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挿絵はない方がいい
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どちらでもよい