それでは、どうぞ。
2019/06/29 調と切歌が重傷を負うシーンを、軽傷を負うシーンに変更するなどの内容変更をおこないました。内容を勝手に変更してしまい、申し訳ありません。ご理解のほどをお願い申し上げます。
一体、少女の目の前にいたはずの装者の誰が、こんな展開を予測できたのだろうか。
目の前で体からノイズが変化する際に見られる形状と同じような肉塊を、体のあらゆるところからあふれさせ、そしてその肉塊に取り込まれた少女。
あわや自滅かと思った次の瞬間、どこまでも大きく膨らんだいくかと思った肉塊が急激に収縮をはじめ、気づいたら目の前には、軽いながらも頑丈そうに見える装備を纏ったノイズの少女がいたのだ。
その姿を見て、最初に答えにたどり着いたのは、風鳴翼だった。
「まさか、ノイズをプロテクターとして体に固着させたのか!?」
その事実に装者たちは驚きを隠せないが、ここが戦場であることはしっかり理解しているため、戦闘態勢は解かない。
自分たちのシンフォギア以外にも、ファウストローブを始めとしてプロテクター自体は存在していることは知っている。ましてや、二課所属だった三人は、ネフシュタンの鎧と融合する形とはいえ、大量のノイズがフィーネの巨大なプロテクターになるところを実際に見ている訳なので、他の装者ったちよりは衝撃が少なくて済んだ。
だが、彼女のノイズ・アーマーの能力まではそうはいかない。
「いったい何をするか分からない! 一旦距離を取って散開してから……。!?」
自分を落ち着かせる意図も含めて、装者たちに指示を下そうとしたマリアだったが、目の前に急にノイズの少女が現れ、その三本の刃が付いた腕を振り上げたのを目にしたため、言葉を中断せざるを得なかった。
なんとか相手の攻撃を防御するマリアだったが、その攻撃のあまりにも強すぎる衝撃に踏ん張れず、はるか後方に吹き飛ばされてしまう。そしてコンテナに勢いよくぶつかったところでようやく止まり、地面に落ちて倒れてしまう。
「マリア!? このっ!!」
「絶対に許さない!!」
「待て、お前ら! 今の奴はどう考えても出鱈目だ!」
幼い時から親しくしていた仲間が倒れ伏す光景に頭が沸騰し、それぞれの武器を以てノイズの少女に攻撃を仕掛ける切歌と調。
クリスから止める声が掛けられるが、今の二人の耳に入るはずがなく、そのまま武器を振りかぶり、ザババの刃がノイズの少女を襲う。
しかし、少女Vは先ほどの同じような肉塊を肩から放出、一瞬で二又二対の巨大な腕へと展開し、二人の攻撃を受け止める。
「そ、そんな!」
「変形が早すぎるデス!」
驚愕する二人の攻撃を、二又のうち片方の左右の手で受け止めたノイズの少女は、残った手で二人を捕獲する。
「くっ! はな…すデス…!」
「つかまっ…ても…わたしの…シュルシャガナな」
それ以上、調は話すことができなかった。なぜなら、話している最中に、まるでそのまま拍手でもするかのように、二人の少女が思いっきり叩きつけられて衝突したのだから。
強すぎる衝突で気を失い、ぐったりとする少女たち。幸いにも、シンフォギアに備わっているバリアのおかげで、それほど重傷は負っていない。
「よくも後輩たちに手を出してくれたな!」
それでも、自分の後輩が傷つけられて黙っているクリスではなく、ガトリング銃を吹かして、無数の銃弾でノイズの少女を撃ち抜こうとする。その攻撃によりノイズの少女は二人の少女を取り落とした。
だが、ノイズの少女の纏うノイズ・アーマーが持つ位相差障壁は、その程度の攻撃を通すようなことはしない。クリスが放った銃弾は、ことごとくがすり抜けていく。
「なっ!?」
その光景に注意を奪われるクリスのスキを突くかのように、少女Vは腰についている爆弾を二つほどつかみ取り、それらをクリスに投げつける。
投げつけられた爆弾は、地面に跳ね返った時点で大爆発を引き起こし、クリスに多大なダメージを与えた。
「あああああああ!!」
「雪音ぇ!!」
「クリスちゃん!!」
爆風に焼かれ、地に落ちる仲間の姿に悲鳴を上げる響と翼だが、彼女たちの後ろに少女の姿が――
「倒れた装者の状況はどうなっている!?」
「四人とも軽傷ですが、気を失っています! 現場の状況を考慮すると、危険な状況かと……」
「急ぎ本部を現場に急行させろ! 倒れた装者を回収するんだ!」
突如ノイズで構成されたプロテクターを纏い、さっきまでとは真逆の様子で装者たちを追い込んでいく少女V。
先ほどまでは歓声が上がりそうだった司令部は、今では悲鳴が上がりそうな勢いで慌ただしかった。
「まさか、あんな奥の手を隠し持っていたとは……」
「あのようなものがあるなら、前に追いつめられた時にこそ使っていたはず!
つまり、このわずかな時間のうちに修得したとでもいうのか!
もはや聖遺物がどうとかいう次元ではない……他でもない、彼女自身が一番の脅威だ!」
厳しい顔をする二人の見るモニターの中で、ノイズの少女が、剣ごと翼を腕の刃で切り裂いて戦闘不能にしていた。
「があああああ!!」
「翼さん!!」
響の悲痛な声もむなしく響き渡り、クリスと同じくノイズの少女の攻撃に倒れた翼は、意識を失った。
「み、みんな……」
響は、またたくまに倒されていった仲間を見て、茫然となる。
攻撃の衝撃で吹き飛ばされ、コンテナと衝突して倒れたマリア。
互いに体をぶつけられ、気を失って地面に落とされ倒れた調と切歌。
爆風を正面から受け、その身を焼かれながら倒れたクリス。
そしてたった今、ノイズの少女に剣ごと切り裂かれ倒れた翼。
無残な姿で地に伏している仲間の姿に、優しい少女の思考は怒りに染まっていく……。
「許さない……」
皮肉なことに、仲間を傷つけられた今の方が、同じく負の感情で動いている少女Vのことをより理解できるようになっているだろう。
「たとえどんな理由があろうとも、これ以上みんなを傷つけるのは許さない!」
響は胸のマイクユニットをつかみ、引き抜くように外したのち、
「イグナイトモジュール、抜剣!」
掛け声とともにスイッチを押し、呪いに満ちた黒い装束を身に纏う。
「が、ぐ、あああああああああ!!」
だが、今の怒りを抱いた状態では、ダインスレイフが負の感情を一気に増幅させ、いつもなら打ち勝つことができるはずの破壊衝動に押し負けてしまいそうになる。
ある意味、負の感情もまた聖なる力での浄化と同じく、イグナイトの封じ手であるといっていいだろう。そう言われても納得できるほど、今の響は危険な状態であった。
「ま、けるかああああああ!!」
そんな状態にもかかわらず、響はどうにか体を動かす。
今の彼女に力を与えているのは、怒りのみではない。傷ついた仲間を守りたいという想い、そして目の前の彼女すらも
「うおおおおおお!!」
雄たけびを上げ、勢いのまま少女へと向かっていく響。それに対してノイズの少女は、ノイズ・アーマーで底上げされた身体能力に任せてかわす。
「はああああっ!!」
「!?」
だが、達人である弦十郎のもとで修業を重ね、幾度もの戦いに身を投じ近接格闘を鍛えてきた響にとって、たとえ自分より素早くてもある程度捉えられれば、素人の先を読むことなど造作もなかった。
ここにきてはじめて、響は少女に直接拳を叩き込んだ。
「うおおおおおおお!!」
そのまま、インファイトを目の前の少女に叩き込んでいく。拳、蹴り、頭突き。そのどれもが生半可なものではなく、仮に「完全な肉体」を持つ錬金術師であっても大ダメージは免れないだろう。
そのはずなのだが、目の前の少女は攻撃の衝撃に多少体を押されはするものの、まるでダメージを受けたような様子はない。その手ごたえのなさに思い至った響は、思わず打撃を叩き込みながら声に出す。
「まさか、位相差障壁!?」
響の一言に、司令部の面々が驚く。仮にも人が、ノイズと同じ位相差障壁を使えるとは思えなかったからだ。
だが、計測の結果、確かに位相差障壁の仕業であることが分かった。
「た、確かに位相差障壁の反応を確認! しかし、数値が異常です!」
「通常のノイズとは、出力が比べ物になりません! これでは響ちゃんの攻撃は、ほぼ効きません!」
友里からの悲痛な報告に、より表情を厳しくする弦十郎。
「ただノイズを身に纏っただけだはなく、その能力をも使役することができるという事なのか……!」
「クリスちゃんの攻撃をすり抜けたように見えたのも、位相差障壁によるものと考えられます!」
「イグナイトの出力でさえ届かないほどの壁……一体どうやって……」
緒川の声から漏れ出す疑問に答えるかのように、モニターに映し出される響はマイクユニットへと再び手を伸ばす。
その危険すぎる賭けに、弦十郎たちは度肝を抜かれた。
「まさか、アルベドへとイグナイトを開放し、その出力で強引にねじ伏せるつもりか!」
「抜剣! セカンドセーフティ、リリース!」
そして、響はさらなるリスクと引き換えに、イグナイトの恩恵をより享受することを選択した。
先ほどよりも強烈な破壊衝動が響を襲うが、その衝動さえも攻撃の勢いに利用して挑む。
「うおおおおおおおおおおおおお!!」
より強力な打撃の連続。両の拳でともかく殴りつけたかと思ったら、相手を蹴り上げ、ハンマーパーツのジャッキを思いっきり引き延ばし、ジャッキを戻る反動を利用した強烈な一撃を下から見舞わせる。
着地してからも、攻撃の手は緩めない。落ちてくる少女に対し、両腕のアームドギアを巨大なドリルへと展開させ、跳躍して横から穿つような巨大な二撃をくらわせる。
勢いよく横に吹っ飛んでいく少女にも容赦はしない。足のパワージャッキを使って最速で少女の上へと移動し、空中で叩き潰すような勢いで、上から踏みつぶすように蹴りをお見舞いする。
地面にミサイルが落ちたかのような衝撃を伴なって墜落するノイズの少女。ふらふらと
立ち上がる少女のもとに響はむかい、ふたたびインファイトで打撃の雨あられをプレゼントする。
殺戮の呪いの深淵に自らを沈めていくことによって手に入れた力。さらにリスクであるはずの破壊衝動をも攻撃の激しさに転化させることで、セーフティの解除は圧倒的な戦い方を響に繰り広げさせていた。そのかいもあってか、ノイズの少女は多少ダメージを受けているようにも見える。
だが、ここでもう一つの問題が響の足を引っ張る。
(やっぱり、フォニックゲインをまた奪われている……!
皆がいないだけじゃない、このプロテクターのせいか、前よりもヴォカリーズの『支配』の力が強まっているんだ……!)
攻撃を続けながらも、響は荒い息を吐くようになっていた。
彼女の言う通り、ノイズ・アーマーの恩恵は、主に位相差障壁によるインパクトの減衰と、身体能力の強化である。ノイズの少女の「歌を支配する」ヴォカリーズも、その強化の対象に入っているのだ。
少女の歌にフォニックゲインを奪われ、シンフォギアの身体強化の機能は少しずつ失われていき、ギアはむしろ枷になりつつあり響の体を疲労が襲ってくる。
先ほど地面に倒れた翼とクリスもまた、よく見てみると意識は取り戻したようだが、ヴォカリーズによって歌を奪われてしまったために満足に動くことができないらしく、うめき声をあげるだけだった。
「うぐっ……クソッタレ……」
「よもや……ここまでとは……」
彼女たちの、自分の無力に悔しがる表情が、響の目に突き刺さる。
ここで響はようやく、他のみんなを連れて逃げることを考え始めた。ノイズの少女が自分たちを易々と見逃すとは思えない。だけど、このまま戦い続けても勝ち目がないどころか、場合によっては
そうなるくらいだったら、倒れている装者全員連れてこの場から逃げ去ったほうがいいかもしれない。
そんなことが頭によぎったせいか、それとも一瞬でもクリスたちの方へよそ見をしてしまったせいか、響の打撃の一発が、ノイズの少女をかすめるだけに終わってしまった。そのすきを突くかのように、今度はノイズの少女が懐に入ってくる。
「!! しま――」
顎下からの、刃を伴なったアッパーカット。響の続く言葉は、その一撃により消え去った。
そのまま上へと吹き飛ばされる響。幸いにも、イグナイトモジュールが第二段階のセーフティを解除したアルベドフェイズだったからこそ、強固なバリアのおかげで傷もダメージもあまり負ってはいない。それでもヴォカリーズで歌を奪われているうえに、この攻撃によって歌を中断させられたことで完全にフォニックゲインは失われている。
それが意味するところはすなわち、戦闘不能である。
最後に地面へと堕ち、動くこともままならなくなる装者、立花響。彼女に向かってノイズの少女は、ゆっくりと近づいていく。
「やめ……ろ…!」
「そいつに……てを……だすんじゃ…ねえ…!」
フォニックゲインを根こそぎ奪われ、それでもなお友の窮地に動かぬ体を懸命に動かそうとする二人の歌女たち。しかし現実は残酷な世界であるために、これがお前たちが希望を託してきた「歌」の選択だ、とでも言わんばかりに、キセキは答えてくれない。
ノイズの少女の両肩についていた腕の二又がくっつく、あるものの形を形成していく。
それは、先ほどまで響が使っていたアームドギアの一つであるドリルだった。両肩についた二つのドリルは高速回転しながら、動けない少女に狙いを定める。
そして無情にも、響の命を奪う形をしたノイズは、彼女へ向かって突き出された――
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
二俣の腕に関しましては、本体の肩関節からアームが出てきて、それがある程度の長さになったら、そこが肩関節のようになって二本の腕が阿修羅にように生えてきているイメージです。VitalizationやExterminateのような機械っぽい腕です。
感想を書いていただければ、作者にとって励みになりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
次回もよろしくお願い申し上げます、装者たちの逆転回になりますので。
オリジナルキャラの挿絵などもあった方がよろしいでしょうか?(作者自身が描くが、画力は期待しない方がいいレベル。描くならペイントか手描きの二択)
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挿絵はあった方がいい(ペイント)
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挿絵はあった方がいい(手描き)
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挿絵はない方がいい
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どちらでもよい