その少女は、災厄(ノイズ)であった   作:osero11

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 今回は、装者たちが反撃する回です。

 今更ですが、登場人物たちの原作でのキャラをちゃんと再現させることができているかどうか自信がありません……。そういう意味でも、どうかご注意ください。
 また、できれば感想は書いていただけると大変嬉しいです。皆様の声が、確かなモチベーションになります。多少批判的な内容も歓迎しております。ただ、オブラートに包んでいただきたいとは思っておりますが(^^;

 それでは、どうぞ。


歌と雑音の死闘(2)

『いちかばちか、ギアを解除して三人とも逃げろ!』

 

 装者たちの耳に弦十郎の声が聞こえたかと思うと、突如どこからか発射された何発ものミサイルがノイズの少女を襲い、直撃。爆風が彼女を包んでいく。

 

「まさか、おっさんが仕掛けたのか!?」

 

「話はあとだ! 指示に従い、ギアを解除して、他の四人の救出に急ぐぞ!」

 

 これを好機と見た翼は、ギアを解除し、フォニックゲインを奪われて枷となりつつあったシンフォギアから解放される。イグナイトモジュールよりもリスクが高く、そしてリターンが少ない行為ではあるが、シンフォギア自体が行動を縛る鎖となってしまった現状では、これが今できる最大の最善だった。

 生身のまま、まずは一番近くに爆風で飛ばされてきた響を助けるために駆け出す翼を見て、クリスもギアを解除する。

 

「ああくそ、やっさいもっさい! こうなったらやけっぱちだ!」

 

 クリスもギアも解除し、翼の後に続く。翼は倒れている響を抱え、次は調と切歌を救出しようと向かう。

 一方、ノイズの少女は、絶え間なく撃ち込まれるミサイルが巻き起こす爆音と黒煙で見えざる聞こえざる状態にあり、位相差障壁でダメージこそないものの自分が狙っていた人間たちの位置すら分からない状態だった。

 

 

 

「攻撃は絶え間なく続けろ! 少しでも中断したら、装者たちの命はないものと思え!」

 

 弦十郎は、装者たちに重荷となったギアを解除させて逃がすというリスクの高い逃走方法を実現させるために、潜水艦であるS.O.N.G.本部に備わっている武装でカバーすることを選択した。

 だが……

 

「ミサイルの弾数、残り30%を切りました!」

 

「このままだと、1分以内に装者たちへの援護ができなくなります!」

 

「構わない! 少しでも攻撃の手を緩めたら、それがスキになる!」

 

 そもそも位相差障壁で通常兵器が効かない相手を足止めするために、ミサイルを打つ込んでいくこと自体に無理があった。

 相手には衝撃も含めたダメージは届かないから、煙と音で視界を妨げ、聴覚を封じるほかない。だが、そのためには絶え間なく攻撃をし続ける必要がある。国連直轄の組織とはいえ、シンフォギアのような特異兵器を扱う特別機関であるために通常兵器をあまり保有しないS.O.N.G.では、そう長くは止められない。

 

 さらに、ここで彼らにもノイズの牙がむく――

 

「! 司令! 海中のノイズがこちらへと進行中です!」

 

「なんだと!」

 

 青い顔をしたオペレーターからの報告に、牙がこちらにも向いたことを悟った弦十郎。

 モニターを見れば、確かに海中にいるクジラ型のノイズが数体、こちらへ泳いできていた。レーダーでは、さらに多くの反応がこちらへ向かってくるのが分かる。

 

「あちらが、攻撃の出所に気づいて反撃を開始した……というよりは、ノイズの基本的な習性で僕たちを狙ってきたというところでしょうか。

 いずれにしろ、こちらもかなり危ない状況であることには変わりませんね」

 

「こんなに命の危機を感じたのは、バルベルデ以来ですよ! あれ、意外と最近じゃないか……」

 

「口を動かす暇があったら手を動かす!!」

 

 冷静に分析する緒川と、非常事態に若干パニックになったように見えるも意外と冷静な藤尭、それをいさめる友里。

 どちらにしろ、目の前の危機は去っておらず、自分たちの命も危うくなっていることに変わりはない。

 

「ノイズから距離を取りつつ、少女への妨害は決して途絶えさせるな!

 死んでも装者たちを守れ! 守れなかった場合は、死んでも死にきれないぞ!」

 

 

 

「つ、翼さん……?」

 

「気が付いたか! 立花!

 大丈夫……ではないな。私のふがいなさのせいで、すまない……」

 

「つ、翼さん、なんでギアを……纏ってないんですか……?」

 

「……司令からの指示でな、今のあの少女相手では、シンフォギアはむしろ枷にしかならないと思ったのだろう。だが、おかげで立花を助け出すことはできた。

 案ずるな、この身は剣と鍛えた身。例え天の羽々斬を纏えずとも、仲間を背負って逃げることはできる」

 

 翼は、自身の腕の中で響が目覚めたのを見て、一安心した。あとは司令たちが少女Vの足止めをしている間に、彼女とマリア達三人を連れて安全な場所まで逃げればいいだけだ。

 そう思っていた翼だったが、響から思いもよらない一言が掛けられる。

 

「……ダメです、翼さん。あの子とは、もう……戦うしかありません……」

 

「なっ! いくらなんでも無茶だ、立花!」

 

「だって……あの子が、私たちを逃がしてくれるとは、思えないんです……。

 それに……シンフォギアじゃないと、あの子を本当に止めることはできません……」

 

「! それは……」

 

 翼もまた、あの少女が目の前の獲物を素直に逃がしてくれるものなのかと疑問を覚えていた。

 仮に逃げることができたとして、この周辺の住民たちや、いま戦っている司令たちを犠牲にすることはないと言い切れるのか?

 それを考えたら、少しでも対抗できる力を持った自分たちが立ち向かう方がずっといいに決まっている。だが、翼の懸念は、まさに「対抗できる力」を持っているかどうかだ。

 

「だが、フォニックゲインは彼女のヴォカリーズに奪われてしまう……。

 悔しいが、フォニックゲインがなければ、シンフォギアで戦うことは……」

 

「へいき、へっちゃらです……」

 

「なに?」

 

 響の言葉に、まさか勝利への活路があるのかと感じた翼は、彼女の顔を見る。

 響の続く言葉は、リスクは高いが、なるほど説得力のある言葉だった。

 

「イグナイトモジュールのアルベドフェイズなら、一人でもダメージを与えることができました……。

 私の時は少しでしたけど、みんなのうたを重ね合わせれば、きっと……」

 

「……確かに、抜剣であれば対抗できる手となりえるかもしれない……。だが、我々三人だけでは……」

 

「翼さん……前を見てください……」

 

「前……?」

 

 響の方に集中していた目線を前へと移すと、そこには……

 

「私がいない間に、ずいぶんと手ひどくやられたのね」

 

 コンテナに衝突して戦闘不能に陥ったはずの、マリアがいた。シンフォギアを纏ってはいるが、少女Vのヴォカリーズは既に中断されているため、彼女のフォニックゲインはまだあるようだ。

 

「マリア!」

 

「いつからあなたは、敵に背を向けるような人間になったのかしら?」

 

「! 仲間の危機に鞘走るのが防人としての矜持! だが、鞘が抜けないこの状況では……」

 

「分かってる。敵に背を向けてきたのは私たちも同じ。その悔しさも無力感も、私にも分かる……」

 

 自身の言葉に、心の底から悔しいと感じていることが分かる表情をする翼に対して、マリアは物憂げな視線を向ける。

 防人として、自身を鍛えてきた翼にこんなこと言うのは、本当は心苦しい。だが、こうでも言わないと、今の翼には発破になりえないこともマリアは知っていた。

 

「だからこそ、私たちに戦う力があるというのなら、戦わなくてはならない!

 今まさに危機的状況にある人たちを見捨てるために、私たちはここにいるわけじゃない!

 翼! あなたが防人ならば、向かっていくのは私たちではない! あの敵に向かってだ! 防人を名乗るならばこそ、立ち止まるな!」

 

 ひとしきり厳しい言葉を翼に投げかけたマリアは、表情を一変させてニッコリと笑ったかと思うと、翼に手を差し伸べた。

 

「私たちがあなたに支えられたように、今度は私たちがあなたを横から支える。

 私たちは一人で戦っているわけじゃない。だからこそ、立ち止まらずに進むことができる」

 

 翼はぽかんとした表情を浮かべたかと思うと、不敵な笑みへと表情を変える。

 

「ああ、そうだな。そういえば私はもう、一人ではなかったな。

 ところでマリア、最初に脱落してから今の今まで戦場にいることができなかった奴が目の前にいるのだが、どうフォローして(ささえて)やればいい?」

 

「なっ!? それは言わない約束でしょう!? この剣、本当にかわいくない!」

 

 翼のからかいに、マリアがすねる。そんないつも通りの光景に、響の頬も緩む。

 そんな彼女たちのもとに、他の装者たちも集まっていく。

 

「まあ、先輩たちのムチャに付き合うのも後輩の役目だ」

 

「今度は二人だけで突っ込んだりしないデス!」

 

「うん、切ちゃん……。みんなで一緒に、戦おう!」

 

 倒れていた調と切歌も目を覚ましており、クリスとともに響たちと合流した。響も翼に降ろしてもらって、どうにか地面に立つ。

 

 ――Imyuteus amenohabakiri tron

 

 ――Killter Ichaival tron

 

 そして、ギアを解除していた翼とクリスも、シンフォギアを再びその身に纏う。

 シンフォギアを、歌をその身に纏って戦う六人の装者は、互いに相手の目を見て、覚悟を決めてうなづく。

 

 そのとき、ミサイルによる爆音と風圧がやむ。ついにS.O.N.G.が保有する武装の限界が訪れたのだ。

 少しずつ晴れていく黒煙。うすれゆくそれを介して、ノイズの少女はシンフォギア装者を視認する。

 

「イグナイトは、エルフナインちゃんがくれた力だ。

 シンフォギアは、了子さんが作ってくれて、いろんな人が支えてくれた力だ。

 そして歌は、世界中の人が守ってくれた命だ! だから、絶対に負けられない!」

 

 口上を述べる響たちに向かって走り出すノイズの少女。だが、もはや彼女たちを止めることなどできない。

 

 ――抜剣、イグナイトモジュール! オールセーフティ!! リリー―ス!!

 

『こんなところで終わらせて、なるものかあああああああ!!』

 

 すべての装者が、イグナイトモジュール最終段階のルベドへと至る。そのさいに生じた風圧は、位相差障壁で通常の物理法則が効かないはずのノイズの少女さえ後ろに後退せざるを得なかった。

 それが意味するところは、つまり……。

 

 

 

♬「アクシアの風(後半)」♬

 

 

 

 黒を身に纏い、されど心はどこまでも美しい色をした少女たちが、そこにはいた。

 

 イグナイトモジュール、最終ルベドフェイズ。最大のリスクと、最強の力を背負って、ノイズの少女の前に立ちはだかる装者たち。

 そのだれもがノイズの少女を見据え、同時に少女もまた怨敵たる人間たちを睨みつけている。

 

 

 

「全装者、イグナイトモジュールを起動! 同時に、フェイズ・ルベドへとシフト!

 カウント、開始します!」

 

 S.O.N.G.本部では、装者たちの抜剣に呼応して、友里が状況を説明した後、イグナイトモジュールのタイムリミットを示すカウントが「999」から減っていく様子がモニターに映し出される。

 通常のニグレドフェイズの何倍ものスピードで「0」へと近づいていく残り時間。それこそが、装者たちがこの窮地を打破できる最後の時間だ。

 

「まさか、あの状況から出された一手が、ここまでの力押しとは……」

 

「いつも通りと言えば、いつも通りだがな。まったく、俺もアイツらも、今回は無茶の連続だな」

 

 緒川は苦笑した様子で話し、弦十郎も呆れたように語りながらもどこか笑みを浮かべている。どこまでも力押しで切り抜け、それで大概の危機はなんとかしてしまう弟子の姿に、無意識のうちに自分を重ねていたのかもしれない。

 

「さて、こちらももう少し踏ん張らないとな」

 

「とはいっても、時間の問題ですね」

 

 二人は落ち着いた様子で話すが、彼らの視線は現在自分たちの乗っている潜水艦を追い続けているクジラ型ノイズを映し出しているモニターの方を向いている。

 全速力で逃げてはいるが、少しずつ追いつかれている。銃後もまた、現場に立つ彼女たちと同じく命を懸けて戦っていた。

 

 

 

「デエェェェス!」

 

「はあぁぁぁぁ!」

 

 まず最初にとびかかったのは、ザババの刃。切歌は鎌を、調は円形の鋸を、いつもの何倍も巨大に展開させて攻撃を仕掛ける。

 それをノイズの少女は、両肩についたドリルをさらに巨大に展開して()()()()()

 

 本来なら攻撃は防がれたため失敗に終わったかのように見えるが、この場において重要なことは、()()()()()()()()()()ことである。

 

「これなら!」

 

「手が届くデス!」

 

 直接攻撃を加えた二人は、その手ごたえに活路を実感する。他の装者もまた、それを見て自分たちの賭けが全くの無駄ではなかったことを感じ取った。

 イグナイト、その最終段階であるルベドフェイズを解放したシンフォギアの出力は、そのまま「調律」にも影響しノイズ・アーマーの位相差障壁を大幅にひっぺがすまでに至っていた。

 

 無論、ここまでの出力になったのは、立花響の「繋ぐ力」も重要な一役を買っている。同じ想いを抱くことによってシンフォギア同士が共振し、共通の旋律と詩が胸に浮かぶまでに重なり合った6人の歌を、その力で束ねることでさらに繋がりを強固なものにしているのだ。

 重なった強大な歌はノイズ・アーマーにより強化されたヴォカリーズの「支配する力」にも匹敵し、「支配」でも奪えないほどの「繋がり」を持った歌へと昇華されていた。

 さらに、「調律」しきれない分の位相差障壁すらも、この「繋ぐ力」の応用で、無意識に、かつ強引に、ごく一部ながらも世界同士を接続することで無理やり物理法則のもとへ引っ張り出していた。

 

 つまり、あとは同じ土俵に引きずり出した相手を、力押しで押して押して押しまくるだけ。

 

「調と切歌が抑えている間に、一気に叩きこむ!」

 

 マリアの掛け声とともに、残りの()()()装者もまた各々のアームドギアでノイズの少女に立ち向かう。

 翼は剣を、マリアは短剣を手に、ノイズの少女へと真正面から挑みかかり、攻撃を仕掛ける。少女Vは、それを自身の両手で受け止めて防ぐ。

 

「くっ、やはり……」

 

「私たちの攻撃は、そう簡単には通らないか」

 

 二人が表情を歪めるなか、ノイズの少女は次の手を打つ。彼女のノイズ・アーマーから肉塊が沁み出すように出てきたかと思うと、その肉塊が少しずつ無数のノイズへと形を変えていく。

 ノイズ・アーマーは数万のノイズを変形させたプロテクター。ならばこそ、アーマーからノイズを発生させることなど容易い。

 武器をドリルで受け止められている調と切歌ならともかく、自身の攻撃を手でつかまれているマリアと翼のスキを突くのなら十分すぎるほどの精製速度だった。

 

 あっという間に形成されていくノイズを前にして、翼とマリアは不敵な笑みを浮かべた。

 

()()()の攻撃は通らない、とは言ったけど」

 

「仲間がつく隙も作れない、とは言ってないぞ」

 

 少女がその笑みに疑問を覚える前に、顔面に拳が叩き込まれる。目の前の二人は、上に目を向かせないためのおとり。本命は、上空から最高出力で吹かしたバーニアでの響の強襲である。

 

「うおおおおおおおおおおお!!」

 

 最高まで高められた破壊衝動を利用した、強烈な一撃。その一撃はノイズの少女の顔面に埋没し、次の瞬間少女は後ろに大きく吹き飛ぶ。

 吹き飛ぶ間も、装者たちによる攻撃はやまない。両手に剣を持ち、剣と脚部のブレードに炎を纏わせて、まるで炎の鳥を思わせる姿でノイズの少女へと飛翔し、高速回転しながら突進、斬りつける。

 

――羅刹 零ノ型

 

 翼の攻撃によって、さらに上へと弾き飛ばされる少女。

 

「今だ! マリア!」

 

 翼の声とともに、さらにその上からマリアが攻撃を加える。長大な剣を携えた左腕を構えて、バーニアと重力で加速してノイズの少女を斬りつける。

 

 少女だって、ただやられるだけではない。両肩についたドリルを上空に向けて、マリアを迎撃しようと構える。しかしマリアの必殺の斬撃は高速回転する少女の武装を破壊し、胴体へと命中した。

 

――SERE†NADE

 

 上からの重い一撃で切り裂かれ、地面へと叩き込まれる少女。血を吐きながら、ふらふらとなんとか立ち上がるが、既にその場にはザババの攻撃が準備されていた。

 どこからか黒いロープでからめとられ、地面へと縛り付けられる。同じ方向から射出されたアンカーが彼女のすぐ前と後ろを通り過ぎ、接続される音が聞こえる。そして二方向から、アンカーに繋がれた切歌のギロチン状のアームドギアと調の乗る禁月輪に挟撃される。

 

――禁殺邪輪 Zあ破刃エクLィプssSS

 

「ガッ……………」

 

 二つの刃に挟まれる瞬間、無意識的にノイズ・アーマーの位相差障壁を一時的に限界を超えた出力にしたため切断されずに済んだが、それでも大ダメージを与えられたことに変わりはない。

 ノイズの少女は、新たな力を手に入れた現在でも、この人間たちに力押しで勝つことは到底なしえないことだと理解し始めた。

 

 

 

「イグナイトの最終段階が、彼女たちの歌が、あのプロテクターの位相差障壁を上回っています! これならば……!」

 

「ああ、最後まで油断はできないとはいえ、勝利は目前だ」

 

 緒川と弦十郎は、顔と言葉に喜色があふれるのを隠さずに現状を評価する。

 ミニターで見る限り、こちらの装者の動きに相手は追いつくことができていない。この勢いのまま突っ切れば、必ず勝つことができるだろう。

 

「……だけど、こちらは時間切れのようですね」

 

「ようだな。だが、ここにいるみんなもよくやってくれた」

 

 しかし、向こうは危機から脱出することができても、こちらはそうはいかない。

 クジラ型ノイズはもう潜水艦のすぐそばにまで迫ってきている。シンフォギアでなければ迎え撃つことができない以上、生還は絶望的だと言っていいだろう。

 

「ノイズとの接触まで、あと20秒と予測されます……。限界です……」

 

「でも、最後に響ちゃんたちだけでも生き残ることができそうで良かった……」

 

 オペレーターたちにも、既に自分たちの命を諦めている者が多い。

 弦十郎は、自分の判断に彼らを巻き込んでしまったことを申し訳思いながらも、装者たちの今後を憂慮しながら今生への別れを告げようとし――

 

 

 

――GIGA ZEPPELIN

 

 

 

 無数のクリスタル状の矢がすべてのクジラ型のノイズを打ち抜き炭素へと還していく光景がモニターに映し出されたことで、それが杞憂だったことを知る。

 

『眠てえことを言ってくれるなよ、おっさん』

 

 すべての力を解放したイグナイトがもたらす恩恵は絶大で、たとえ空中からアームドギアを水中へ撃ち込んだとしても、十分すぎるほどの威力を保ったままノイズを倒すことすら可能としたのだ。

 後方の仲間たちを救った少女の声は、弦十郎に言い聞かせるようにも、自分に言い聞かせているようにも聞こえた。

 

『アタシは、守るべきものはちゃんと守れる女だ!』

 

 その言葉を最後に、クリスからの通信は切られた。

 

「どうやら、まだまだアイツらの面倒を見なければいけないらしいな」

 

「素直になったらどうですか? 『助けてくれてありがとう』と」

 

 命が助かったことに歓声が上がる司令部の中で、大人二人はそんな会話をした。

 

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 一方、装者たちの方では、異常が起きていた。何重にもわたって装者たちの強力な攻撃を受け続けたノイズの少女のプロテクターが、突如膨張を始めたのだ。

 大きく膨らんだ部分はやがて右腕と背中へと収束し、それぞれ、とてつもなく巨大な鉤爪が付いた武装と、ジェット機のような噴射口がついた翼へと展開する。

 

「くっ!」

 

「あれだけの攻撃を受けて、まだ戦えるというのか!?」

 

 ノイズ・アーマーで人間とは思えないほどの強さを手に入れているとはいえ、尋常ではないスタミナに戦慄するシンフォギア装者たち。

 

 少女の雄たけびとともに噴射口にエネルギー(フォニックゲイン)がチャージされ、その数秒後、ノイズの少女は音速を超える速度で突進を仕掛けてきた。

 幸いにも、あまりにも速すぎるために方向を制御しきれず、直接装者たちに攻撃が当たることはなかったが、それでも突撃により発生したソニックブームに吹き飛ばされる。

 

『あああああああ!!』

 

 吹き飛び、体勢を崩し、地面へと倒れる装者たち。そのすきを狙うかの如く、少女が振り返り、再び噴射口にエネルギーを充填し始める。

 

 だが、そこにミサイルの雨あられが降ってくる。少女はそれを、全身のプロテクターに原料となるノイズを追加し、更に防御力を高めることでどうにか防ぐ。

 海中のノイズを倒しにいったあと、戻ってきたクリスによる攻撃だ。自分に攻撃を加えた下手人の姿を目視した少女は、今度は彼女に向かって超音速の突撃をかます。

 

「ぐ、ああああああああ!」

 

 今度もなんとか攻撃は逸れたとはいえ、目標物との差は確実に縮まっていた。強烈な衝撃に悲鳴をあげながら舞い上げられ、地面へと落下し衝突するクリス。()()()()()()()、そこは響たちのすぐ近くであった。

 

 この時、もしもノイズの少女がすぐに響たちに攻撃を仕掛けていたら、すぐに勝利することができていただろう。しかし、音速を超える攻撃は、使用者である少女にも大きな負荷をかけるものであり、ノイズ・アーマーで人智を超えた力を手に入れた肉体といえでも、少し休憩を取らざるを得なかった。

 

 膝をつき、荒い息を吐きながら装者たちを睨みつけるにとどまるノイズの少女。だが、翼のバーニアにはフォニックゲインが徐々に収束されており、準備ができ次第いつでも発射できる体制を整えている。

 あと十数秒で、次の、そして最後となるだろう攻撃が訪れることを、装者たちは察した。

 

「あの攻撃をもろに受けたら、今度こそお陀仏だぞ!?」

 

「なら、装者全員のアームドギアを一つにし、迎え撃つのみ!」

 

 マリアの決断に他の装者もうなづき、六人は手を重ね合わせる。

 そして装者六人のシンフォギアが、フォニックゲインを質量として変換、アームドギアとして展開していき、六つのギアは一つの技を作り始めていく。

 

 そこに現れたのは、六人の絆が合わさった証だった。

 重なり合った翼の剣とマリアの長剣をベースに、調の車輪、切歌の鎌でできたウィングとバーニア、エンジン代わりの雪音のミサイルを、響の「繋ぐ歌」で組み合わせた、イグナイト最終段階に至った六人の最終奥義。

 

 そして、点火。歌と雑音、二つが地を蹴り、天を駆け、音のなき世界でぶつかり合う。互いに互いを削りあいながら、それでも相手に真正面から立ち向かい続けている。

 

『おおおおおおおおおおおおおおおおー!!』

 

「アアアアアアアアアアアアアアアー!!」

 

 凄まじい風圧にさらされながらも、それでも雄たけびを上げてその場に踏みとどまる7人。曲げられぬ信念を持つ者同士、一歩を譲るつもりはなかった。

 装者たちの剣は半ばほどまで折れ、少女の剛腕もまた自身の拳の少し前まですり減っていた。どちらに勝負が転ぶのか分からない、まさにそんな瀬戸際。

 

(負けて、たまるかああああああああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!)

 

 瞬間、少女は思いもよらぬ行動を取った。右腕と翼以外の全身を覆うノイズ・アーマーを解除し、その分の力をすべて右腕に集中させたのだ。

 再生し、より巨大な手となる彼女の武装。その大きく膨らんだ手で彼女たちの必殺技を丸ごと掴み、握りつぶす。

 

 爆発四散する、装者たちの切り札。その爆風により、はるか後方へと飛んでいく装者たち。

 

 

 

 ――勝った!!

 

 

 

 攻撃の反動でずたずたになりながらも、勝利を確信した少女は顔を大きくゆがませて笑みを作る。

 勝った。あとはとどめだ。そう思った少女はノイズを精製しようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおおお!!」

 

 

 

(なっ、そんな――)

 

 だが、爆発のただなかから飛び出し、こちらへ向かって一直線に向かってくる響に、思考が真っ白になる。

 ガングニールを纏った少女は、どこまでも一直線に、その拳をふるって打ち抜いていく。それがたとえ、ノイズの少女であろうとも――

 

 

 

――BONDS SYMPHONY

 

 

 

 そして、戦いの終わりを告げる一撃は、ノイズの少女に撃ち込まれたことによって戦場に響き渡った。

 

 

 

 




 これにて今回のお話は終わりです。

 原作では、イグナイトを使ったうえでの全装者6人のユニゾンが無かったので、使わせてみました。
 「BONDS SYMPHONY」は、「風月ノ疾双」と「Change the Future」と組み合わせたうえでウィングを切歌の鎌にしたような乗り物がイメージです。あと、名前についてはお許しください……他にいい名前が思いつかなかったんです……。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

オリジナルキャラの挿絵などもあった方がよろしいでしょうか?(作者自身が描くが、画力は期待しない方がいいレベル。描くならペイントか手描きの二択)

  • 挿絵はあった方がいい(ペイント)
  • 挿絵はあった方がいい(手描き)
  • 挿絵はない方がいい
  • どちらでもよい
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