その少女は、災厄(ノイズ)であった   作:osero11

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 6月最後の投稿になります。
 死闘の結末。そしてリリスがノイズの少女を調べた結果、一つのことが明らかになるお話です。

 それでは、どうぞ。


呪われた運命(さだめ)

 響は、自身の想いを込めた一撃が、ノイズの少女の胸に命中したのを確かに感じた。そして突撃する勢いをそのままに、後ろへと押し込んでいく。

 やがてノイズの少女の後方に壁が見えた時、それは起きた。

 

 最後の抵抗のつもりか、それとも無意識か、両腕にアーマーを展開し、今まさに自身に攻撃を加えている響の右腕を握りつぶす勢いで圧を加えてきた。

 

「! ぐうぅぅ!」

 

 痛みに声を漏らす響。強化された圧力はすさまじく、彼女の苦痛とともに腕の黒いガングニールのハンマーパーツが砕け、破片が飛び散る。

 しかしそれでも、響の攻撃の手を緩むことはない。勢いを保ったまま突き出される響の拳と、少女の体のあいだに、ガングニールのかけらが入り込み――

 

 

 

 

 

ドカアアァァァァァァン!!

 

 

 

 

 

 まもなく、すさまじい音が鳴り響いた。ノイズの少女が、壁に激突した音だ。

 腕のプロテクターは解除され、口から血を吐き、ぐったりとしながら壁に寄りかかっている。もはや誰がどう見ても、戦闘不能だった。

 

 装者たちは、イグナイトモジュールを解除した。少女が戦えなくなった今、タイムリミットも迫る中、イグナイト状態であり続ける必要はなくなったからだ。

 今までで最大の強敵に勝利したことに喜ぶ、遠くの装者たち。しかし少女に最後の一撃を加えた響は、悲しそうな目をして少女を見下ろす。

 一時こそ、仲間を傷つけられた怒りで頭がいっぱいだったが、それでもこのノイズを操る少女を救いたいと響は思っている。例えそれがノイズの少女にとって無意味なことだったとしても、憎しみの檻から解放されてほしいと切に願っていた。

 

 

 

 だが、呪いがそれを許しはしない。

 

 

 

「少女Vのプロテクター、完全に解除! 戦闘不能状態になったと思われます!」

 

「やりました! 響ちゃんたちの勝利です!」

 

 S.O.N.G.司令部でも、オペレーターたちの勝利の歓声が大きく響き渡っていた。

 今まで自分たちも含めて危機的状況にあった分、そこから上がるボルテージはもはやうなぎのぼりだ。肩を組んで喜び合う者たちまでいる。

 司令官である弦十郎や、その右腕たる緒川も喜びの感情を隠せない。

 

「相性はこちらが圧倒的に不利、パワーも絶大的。そんな相手に勝利するとは、流石としかいいようがありません」

 

「今回もまた、響君に救われてしまったな。響君の『繋ぐ』歌、イグナイト最終段階という力押しながらも逆転をつかむ発想、それに、装者たちの歌を重ね合わせることによる相乗効果。

 これならば、少人数でも異なる装者同士の『絆のユニゾン』も可能となるかもしれん」

 

「『ユニゾン』……切歌さんと調さん、ザババの刃の同時運用による相互的な出力の上昇特性ですか?」

 

「ああ。シンフォギアではなく、それを纏う装者たちの結びつきを軸にして出力の引き上げを図るつもりだ。

 イグナイトが封じられた今、この絆によるユニゾンが決め手となってくれるはずだ。

 若干不安があったが、今の彼女たちならば、成し遂げてくれるだろう」

 

「そうですね、絆の力で絶対的な危機を脱した、今の彼女たちなら……」

 

 そう言って、モニターに映る少女たちの方を見る二人。今回の件で、また戦力的にも精神的にも大きく成長したことだろう。

 さて、装者たちに思いっきり働いてもらった後は、こちらの仕事だ。まずはあの少女を確保し、なんらかの手段でノイズの発生を妨害しなくてはいけない。そのあとに、話を着かえてもらう必要がある。

 そう考えた弦十郎は、自分たちが現着するまで響に少女を捕まえてもらおうと指示を下そうとして――

 

 

 

『ガ、アアアアアアアアァァァァァァァァァァ!?』

 

 

 ノイズの少女の叫び声で、まだ事態は終わっていないことを察した。

 

 

 

 

 

 

 憎い。

 

 

 

 にくい。

 

 

 

 ニクイ。

 

 

 

 

 

ニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイ

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ニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドウシテ、オマエラハミンナヲウバッテイクノ?

 

 ドウシテ、オマエラハタガイニコロシアウノヲヤメナイノ?

 

 

 

 ニクイ、ニクイニクイニクイニクイニクイニクイィ!!

 

 ドウシテオマエラハソウナンダ!!

 ドウシテテヲトリアッテイキヨウトシナイ!!

 ドウシテハハナルホシヲソコマデケガスコトガデキル!!

 

 ニクイ、ナニモカモガニクイ!!

 

 ワタシノカゾクトイバショヲウバッタヤツラモ!!

 ワタシニツメタイメバカリムケテキテ、ジブンタチノコトシカカンガエナイヤツラモ!!

 ニンゲンゴトキガケッシテフミイッテハイケナイトコロニフミイッテキテ、シゼンヲケガスヤツラモ!!

 ソレサエモジブンタチノコロシアイニシカツカオウトシナイヤツラモ!!

 

 

 

 スベテガニクイ!! ニンゲンノスベテガ!!

 

 

 

 ……アア、メノマエニモニンゲンガイル。コロサナキャ!

 デモ、カクジツニコロスノハマタコンドニシヨウ。モウカラダガボロボロダ。

 

 カワリニ、コイツラヲオイテイコウ。セイゼイアガケ。

 

 デモ、モシコイツラカライキノコッタラ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――オマエダケハ、ワタシガゼッタイニコロシテヤル。

 

 

 

 

 

 

「ガアアアアアアアアアアアア!!」

 

 目の前で突然立ち上がり、のどが避けるんじゃないかと思うほどの叫び声をあげる少女を前に、響は動くことができなかった。

 胸から黒いナニカをぐじゅぐじゅとあふれさせ、雄たけびを上げる彼女の周りからは、黒いオーラが立ち込めている。この感じに覚えがあった、とてつもなく。

 

 そして気づく、自身のイグナイト状態のガングニールが、あの少女の胸の中に押し込められていることを。思い至った響は、驚愕を思わず声に出す。

 

「まさか、ガングニールのかけらを取り込んで……!?」

 

 次の瞬間、カルマノイズが()()生み出された。まるで普通のノイズを作るかのような時間で。

 その事実に思わず動きを止める響。そうしている間に、黒きオーラを纏った少女は、緑の光に包まれて消えていく。

 

「! 待って!」

 

 響が手を伸ばすも、その手が少女に届く前に、少女Vはまんまとこの場から離れていった。

 そして、手を差し伸ばしたまま呆ける少女に、残されたカルマノイズ(憎悪)が襲い掛かってきた――

 

 

 

 

 

 結果だけを言うなら、装者たちはなんとかカルマ・ノイズを倒すことができた。ノイズの少女と比べたら、カルマ・ノイズの相手の方が大分マシに思えるのも、倒すことのできた理由の一つかもしれない。

 

 だが、大勝利を飾ったとはいえ、結局ノイズの少女をまたもや逃がしてしまったことに、装者たちは悔しさを感じざるを得なかった。

 さらに、カルマノイズを一気に数体も生み出していたことから、響のイグナイト状態のギアのかけらが作用しているのではないかと推測され、次はさらなる困難が待ち構えていることを予感させた。

 

 恐るべきスピードで進化を遂げる災厄の少女。その存在に不安を抱きながらも、ラピスへの対策は組まれ、パヴァリア光明結社の錬金術師たちとの決戦が、始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 一方、イグナイトの力を期せずして手に入れた少女であったが、現在は自身を蝕む呪いに苦しみ、何もできない状態であった。

 

 やらなければいけないことがある。だけど、今はそれをすることができない。

 憎しみに飲み込まれ、()()()()()()()()破壊してしまわないように、必死で自身の負の感情を抑え込んでいる。ゆえに、《仲間》をもとの場所に帰すのは遅くなってしまいそうだ。

 

 そして災厄の少女は、異空間にて回復し、自身の膨れ上がる憎悪を再びコントロールできるようになるまで、行動を起こすことはなかった。

 

 

 

 

 

 

「……今のところ、共通点はないみたいですね」

 

 パヴァリア光明結社の拠点の一つ、そこでリリス・ウイッツシュナイダーは、ノイズの少女が回収していた聖遺物について調べていた。

 彼女を倒すために必要なものは情報であり、彼女の目的である聖遺物の分析も、情報収集の一環だ。

 

 ちなみに、彼女の能力であるノイズのルーツに関してはある程度調べてあったので、()()()資料という形で情報をまとめなおすことはできた。

 

「彼女が操るノイズは、『禁忌の地』からそれほど遠くない文明で開発されたことは分かっているのですが……。

 理由は不明ですが、あの大量のフォニックゲインは、当時から、というよりかは元々の体質で保有していたようですね。そこに目を付けられ、環境に被害を与えず人類のみを殺戮することを目的とした自律兵器の母体に改造され、あの状態に至ると……。

 全く、いくら相互理解が妨げられているとはいえ、ルル・アメルはどうしてこんな残酷な真似ばかり……」

 

 自分のことを棚に上げて、相変わらず残酷さに限界がない人類の非道に呆れていると、ジリリリリリという音がリリスの部屋に鳴り渡った。

 ふと音の鳴ったほうを見ると、そこには昔ながらのダイヤル式の電話がいつのまにかあった。それを見て、誰からのテレパスか察しがついたリリスは、ため息を一つ付くと、受話器を取った。

 

「もしもし、リリスです」

 

『順調かい? あの少女の始末は』

 

 電話の相手は、パヴァリア光明結社の統制局長であり、超高位の錬金術師であるアダム・ヴァイスハウプトであった。

 術師としてのセンスは皆無だが、魔力だけはありあまっているために、結社の誰よりも強力な錬金術を使うことができる男だ。テレパスを電話として実体化できるのも、それゆえである。

 

「申し訳ありません、今の段階では討伐は不可能と判断し、情報を収集している段階です」

 

『必要ないよ、情報なんて。ただ排除すればいい、邪魔者はね』

 

 これだから嫌なんだと、リリスは内心でため息をつく。

 この男は、なんでもかんでも力づくで物事を動かせばいいと思っている。力が足りなければ、自分よりも弱い者たちを働かせて用意させればいいと考えている。だからこそ、なにひとつ自分から生み出そうとしない。

 リリスは、何千年経っても、この男と話して疲れない日は来ないだろうと思っている。

 

『日本にまた現れたみたいだよ、あの少女が。君が仕事をしっかりしないからだとぼやいてたよ、カリオストロがね』

 

「そうですか、それはすみませんでしたと伝えてください。

 それで、肝心の『神の力』を手に入れるための計画は順調なんですか?」

 

『もちろん順調だよ、この上なく。既にティキが座標を特定したから、後は捧げるだけでいい、生贄をね』

 

「それは良かったじゃないですか。じゃあ、私は仕事に戻りますので、これで」

 

『……一応言っとくが、僕のものだよ、神の力は。結社の誰にも使わせるつもりはないよ、君でもね』

 

「別にいいですよ、もともとあまり興味のなかったものですし。データさえいただければ、それで結構です」

 

『……相変わらず、おかしな奴だね、君という女は』

 

 ブツッと相手から一方的に切られ、固定電話が消えていく。リリスは黙ってその様子を見ていたが、やがて作業に戻る。

 

「さて、さっさと分析を進めてしまいましょうか」

 

 アダム・ヴァイスハウプトには、リリス・ウイッツシュナイダーが理解できない。それは、男女の意識の隔たりとか、性格の違いというよりかは、()()()()()が全くと言っていいほど異なったものであることに根拠を持つだろう。

 

「さて、結局これらの聖遺物の共通点は何なのか……。

 これらにまつわる伝承の種類はバラバラ。その用途についても、剣や盾といった武具もあれば、機械の一部として組み込むようなものもあるし、効果が不明なものもある。製作元をたどれば見つかるかと思った共通点も、なにもなかった。

 一体、どう繋がりがあるのやら……『禁忌の地』周辺の文明で作られた聖遺物とかなら、回収する理由も分かる気がしますが……『禁忌の地』?」

 

 リリスは、自分が言った特徴的な言葉を反芻する。まさか、と思いながらも、聖遺物についての詳細なデータの中から、エネルギーの波形パターンを探し出し、それらを調べ出す。

 

「なるほど、私が調べていたのは、あくまで()()()()()()()()()のみ。

 自動車などは、別々の会社から部品を購入し、それらを組み合わせることで製品として完成させることが多い。それと同じように、最後に聖遺物の一部として組み込まれた場所が違っていても、文明同士が取引をしていれば、部品として作られた場所は一致するはず。

 それが、もし『禁忌の地』近くの文明ならば、あるいは……」

 

 必要な情報を入力して、自身が懸念している部分が一致するかどうか、機械に計算させる。そして、モニターに結果が表示される。

 結果は、一致。モニターをずっと見つめていたリリスは、その結果に思わず立ち上がった。

 ここにきて、ようやく少女の目的が明らかにすることができた。だが、リリスはそれを手放しに喜ぶことができなかった。

 

「――まさか、『禁忌の地』の、よりにもよってあの生物たちのエネルギーを使うとは……」

 

 リリスは腰を下ろし、ため息をつく。何も知らないとはいえ、まさか人類がそこまでの愚行をするとは。ノイズを生み出し、それに滅ぼされるのも納得だと思えるほどの愚かさだった。

 しかしこれで、聖遺物の共通点は一応見つけられた。だが、まだあの少女が、なぜ膨大なフォニックゲインをその身に宿しているかが分からない。その点の調査も進めておかないと、本当の意味で彼女を攻略することなどできない。

 リリスはそのメカニズムを明らかにするために、もう一度モニターに向かい合う。しかし、先ほど判明した事実に、物憂げに呟かざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人間を殺戮していくノイズの少女……。彼女は、カストディアンと『リュウ』の因縁に呪われた人類の宿命。その象徴なのかもしれませんね」

 

 

 

 




 カルマ・ノイズを量産できるようになりました(白目)。嘘です。ただイグナイト混じりのガングニールのかけらで、一度に何体か生み出せるようになっただけです。
 それだけでも強すぎとか言わないでください、彼女(メリュデ)にもリスクはあるんですよ。

 ついにリリスによって明らかにされたメリュデの目的。はたして、彼女の言う「リュウ」とは何なのか、それは今後の展開にご期待ください。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次回もよろしくお願い申し上げます。

オリジナルキャラの挿絵などもあった方がよろしいでしょうか?(作者自身が描くが、画力は期待しない方がいいレベル。描くならペイントか手描きの二択)

  • 挿絵はあった方がいい(ペイント)
  • 挿絵はあった方がいい(手描き)
  • 挿絵はない方がいい
  • どちらでもよい
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