狼王戦記 ~黒き白狼天狗の軌跡~   作:カオ宮大好き

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第113話 魔王襲来~始まる闘争~※

「悪いな、さとり」

「いえ、お気になさらず」

 

 地底に存在する旧都、その中心地に位置する地霊殿。

 堕ちた自分との戦いを終え、魂を取り戻した俺はひとまず紅魔館に居た皆を休ませる為に、地霊殿へと赴いていた。

 人間達が避難している仙界に連れて行くわけにもいかないし、かといって人数が人数なので当初はどうしようかと思っていたのだが。

 

「おにーさん、みんなを地霊殿で休ませようよ」

 

 というお空の提案で地霊殿へと向かい、すぐに察してくれたさとりのお陰で休ませてくれる事になった。

 改めてさとりに礼を言ってから、まだ異変が終わっていない地上へと戻ろうと立ち上がろうとして。

 

「セーヤ、動かないで落ちちゃうから」

「旦那様、動かないでください落ちちゃいます」

 

 俺の頭に全身で抱き着いているイリスと。

 俺の腹に顔を埋めながら抱き着いている椛が、それを阻止してきた。

 

 ……さっきからずっとこの調子だ。

 戦いが終わり、瓦礫の山と化した紅魔館の近くに居た椛達と合流した瞬間、2人は泣きながら俺に抱きついてきた。

 心配を掛けてしまったのは申し訳ないと思い、謝りながらされるがままにしていたのだが……未だに離れてくれない。

 

「2人とも、もうそろそろ……」

 

「ヤダ」

「嫌です」

 

「……」

 

 正直、こんな事をしている場合じゃないんだが……強く言えない辺り、俺も同罪だな。

 俺達のやりとりを見てさとりがくすくすと笑っているが、今は無視だ無視。

 

「聖哉さんも休んだ方がいいですよ。お気持ちは判りますが消耗しているのは確かでしょう?」

 

「それはそうなんだけどな……」

 

「でしたら休める時に休むべきです、戦うべき相手が何処に居るのか確定していないのなら尚更ですよ。

 それに……今の“彼女”がどういった状態なのか、はっきりしていないのですから」

 

「……」

 

 さとりが言った彼女とは――フランの事である。

 戦いの際に吹き飛ばされたレミリアとフランは、気絶した状態で見つける事ができた。

 なので他の皆と同じように2人も地霊殿で休んでいるのだが……フランの“狂気”は、おそらく収まっていない。

 

 目が醒めた時、彼女は再び周囲を破壊し尽くすかもしれない。

 そう思うといつでもフランを止められるように彼女の傍に居たいのだが……。

 

「うー……」

「むー……」

 

 離れるなと、言葉ではなく視線で訴えてくる2人を前にすると、何も言えなくなるわけで。

 

「大丈夫ですよ聖哉さん。お燐とお空が常にレミリアさん達を見ていますから」

 

「……恩に着るよ、さとり」

 

「いえ。……それでは私は一度失礼しますね、お邪魔(・・・)でしょうから」

 

「余計な気遣いありがとう」

 

 精一杯の皮肉を込めてそう返すが、そんな事で動じる悟り妖怪ではなく。

 意味深な笑みを見せてから、部屋を後にした。

 

「気を遣われちゃいましたね、旦那様」

 

「そうだな。余計なお世話以外の何者でもないけど」

 

 心を読めなくても判る、今のアイツは間違いなく楽しんでいると。

 

「いいじゃないの。大目に見てあげましょ?」

 

「わかってる。俺だって本気じゃないさ」

 

 さとりは、間違いなく楽しんでいる。

 だが同時に……俺達3人を気遣ってくれている。

 

「……心配を掛けて、悪かった」

 

「いいえ、旦那様が謝る必要なんてどこにもないんですよ」

 

「そうそう。アンタは絶対に元に戻るって信じていたし、アンタはいつだってアタシ達を守ってくれた。

 不謹慎かもしれないけどさ……アンタが弱くなってアタシ達が守る立場になったのは、少し嬉しかったのよ?」

 

「……実を言うと、私もイリスさんと同意見でした。すみません……」

 

「そんな事ない、それこそ2人が謝る必要なんかないさ」

 

 けど、2人のその言葉には少し驚いた。

 俺を守る側の立場になって嬉しいと言ってくれたけど、俺としてはいつだって2人に守られていたと思っていたからだ。

 ……ああ、でも。

 この2人にそんな言葉を掛けられるのは、本当に嬉しい。

 

「2人とも、これからも宜しく頼むな?」

 

「え? ……セーヤ、いきなりどうしたの?」

 

「いや、なんていうか……改めて、言いたくなったんだ」

 

「なんですかそれ。ふふっ……おかしな旦那様」

 

「はは……」

 

 自然と、笑みが零れた。

 なんでもない、取るに足らない穏やかな時間。

 だが俺にとって何よりも尊く、無くしてはならない“幸せ”だ。

 

「……」

 

 だからこそ。

 それを邪魔する奴、奪おうとする奴は。

 誰であっても、許すわけにはいかない。

 

「――旦那様」

「ああ、わかっているさ」

 

 俺の膝から離れ、椛は立ち上がり近くに立て掛けてあった風王を腰に差す。

 一歩遅れて俺も立ち上がり、イリスも俺達2人のただならぬ様子に何かを察したのか、俺から離れ一瞬で武装を完了させた。

 

「……セーヤ、来たのね?」

 

「ああ、それも……団体でな」

 

 “千里眼”を発動、すぐさま“ソレ”を捉える。

 ――旧都に、化け物の群れが押し寄せようとしている。

 枯れ木のように細く所々を歪ませた四肢を無茶苦茶に動かし、旧都へと向かうその姿は醜悪な餓鬼のようだ。

 

 否、事実としてソレ等は餓鬼そのものなのだろう。

 “眼”が良過ぎるのも考えものだ、なにせ視るだけで判ってしまう。

 奴等は“餌”を求めている、一心不乱に、自らの飢えと渇きを癒そうとしている。

 

(……間に合わないな)

 

 旧都が戦場になる前に、敵を迎撃しようと思ったが……視る限りそれは叶わない。

 その事実に舌打ちをしつつ、俺達はすぐさま部屋を出た。

 

「あ、おにーさん」

 

 部屋を出て外に繋がるエントランスホールに辿り着くと、そこでお空と出くわした。

 

「お空、ちょうどよかった。――もうすぐ旧都が戦場になる、だからお空はここで眠ってるみんなを守ってくれないか?」

 

「えっ…………うん、わかったっ」

 

 何故か一瞬の躊躇いがあった後、力強く頷きを返すお空。

 もしかしたら、自分も一緒に戦おうと思ったのかもしれない。

 だが今の地霊殿には怪我人が多く存在している、勿論ここには近づけさせるつもりはないが、万が一にも守りは必要だ。

 

「頼む、さとりにも伝えておいてくれっ」

 

 言って、地霊殿の外へ。

 ――敵の気配は、もうすぐそこまで迫っていた。

 地を蹴る、自然と力が入ったのかほぼ全力の速度で駆け抜ける。

 これならば相手と衝突するまで一分と掛からない、そう思った瞬間。

 

「っ………!?」

 

 真横からの殺気。

 突如として現れたそれに、反応が一瞬遅れてしまった。

 

「おお……っ!?」

 

 空気が震え、同時に耳に入る聞き慣れた声。

 ……殺気の正体は、巨大な戦斧による一撃であった。

 俺の身体を両断する筈のその一手は、すんでの所で間に入った椛の刀が真っ向から弾き返す。

 

「ちっ……!」

 

 立ち止まり、相手と対峙する。

 

「完全に入ったと思ったんだけどなー……いや、ホントに凄いや」

 

 本気の驚愕を込めた呟きを放つのは、幾度となく戦った魔族の少女――セレナ。

 相も変わらず小柄な身体には似つかわしくない巨大な戦斧を操るその姿は、ちくはぐな印象を受けさせた。

 

「……魔法で姿を消していたのか?」

 

「あれ? なんでお前がここに居るんだって訊いてくるかと思ったのに」

 

「お前達の目的を知っている以上、いずれ攻めてくると思っていたさ。――イザナミが、動くのか?」

 

 かつて、月で戦った魔王。

 あの時は、殆ど向こうの温情のようなもので生き残る事ができた。

 今度はそうはいかない、相手に届いたかはわからないが俺だって力を得たのだから。

 

「どうだと思う?」

 

「質問を質問で返すな」

 

「こりゃ失礼。でもさ……のんびり問答してる暇、ある?」

 

 踏み込むセレナ。

 巨人が持つような巨大な戦斧を持ちながらも、踏み込みの速度は疾く速く。

 一息で俺との間合いを詰め、嵐のような連撃を繰り出す。

 

 一撃、二撃、三撃、四撃。

 怒涛と繰り出される戦斧はしかし、ただの一度もこちらには届かない。

 弾き、いなし、防ぎ、押し返す。

 

「っっっ、相も変わらず出鱈目な白狼天狗だねぇっ!!」

 

 苛立ちと驚愕を入り交ぜたような声を上げながら、セレナは猛攻を続けていく。

 その悉くを、両腕に展開した黒いオーラで防ぎ切る。

 

「し―――!」

 

 俺達の攻防の中に、イリスが介入した。

 右手に持つランスによる突きの一撃、不意打ちに近いそれは確実にセレナの脇腹を抉り貫く。

 

「チッ……!」

 

 だが不発、イリスの攻撃に気づいたのかセレナは戦斧を翻し自身を貫こうとするランスを弾いた。

 更に踏み込むイリス、閃光じみた彼女の連撃に攻めあぐね、たまらずセレナは少しずつ後退していく。

 そして、俺と椛から離れた位置までセレナを追いやりながら、イリスは口を開いた。

 

「セーヤ、椛、ここはワタシに任せてっ!!」

 

「イリス……!」

 

「他にも厄介なのが居るんでしょ!? “千里眼”を持ってる2人が自由に動けた方がいいわっ」

 

 提言しながらも、イリスは攻め手を緩めない。

 そうはさせまいとセレナは反撃に移ろうとするが、威力はともかく一撃の速度で勝るイリスの猛撃を前にしてはそれも叶わない。

 

「――イリス、無理はするなよ? 椛、行こう!!」

 

「はい。イリスさん、頼みます!!」

 

 迷いはせず、一目散にその場から飛んだ。

 イリスは自分に任せろと言った、ならば俺達はそれを信じて別の戦場へと赴くだけだ。

 内に芽生える不安を振り払いながら、俺達はすぐさま旧都の中心地へ。

 

 多くの家屋が連なるこのエリアは、常に喧騒に包まれ祭りだと錯覚する程に騒がしい――が。

 いつものそれは完全に消え去り、代わりに刺すような殺気で息をする事すら躊躇われる緊迫感に覆われていた。

 

――その中央には。

 

「――勇儀、大丈夫か?」

 

「ああ、こっちは大丈夫だよ聖哉、椛」

 

 怪物共に威嚇を放ち、これ以上の侵攻を防いでいる勇儀の隣に降り立つ。

 ……数は、見ただけでも百はくだらないか。

 予め“千里眼”で視ていた怪物共は、不気味な鳴き声を放ちつつも勇儀が恐ろしいのか襲い掛かってくる気配は見せない。

 とはいえ衝突は避けられない、が……俺も勇儀も椛も、既に怪物共の事などどうでもよかった。

 

 何故なら、俺達3人の意識は。

 怪物共を率いるように立っている、たった一人の“魔王”に向けられているからだ。

 

「……」

 

 いつかは、こういう日がやってくると判っていた筈だ。

 そう自分に言い聞かせ、乱れそうになる呼吸を抑え込む。

 

 ……俺は今、心底恐怖している。

 かつて月で大敗を喫した相手……いや、違う。

 あれは勝敗を決める戦いですらなかった、相手にとって俺の抵抗など無意味でしかなかったのだから。

 いくつもの幸運の上に助かったに過ぎない、そんな相手と対峙するというのはそれだけで精神が摩耗する。

 

 それに必死に抗いながら――俺は、改めて最大の敵と対峙した。

 

「――――イザナミ」

「ああ。久しいな、聖哉」

 

 元月人、そしてこの世の全てを支配するといった冗談みたいな野望を抱く魔王、イザナミ。

 ヤツは対峙した俺を見て、心底愉しそうに口元を歪ませる。

 っ、やはり目の前の存在は化け物だ……声を掛けられただけで、身体が震えそうになってしまう。

 

「……何をしに来た?」

 

「随分と呑気な問いかけだな。――言わなければ判らぬ貴様ではあるまい?」

 

「…………魔界で、おとなしくしているつもりはないのか?」

 

「愚問よな。――余と戦うのが、恐ろしいか?」

 

「っっっ」

 

 わかっている、こんな問答など無意味だと。

 ヤツとの戦いは絶対に避けられない、だがここでは駄目だ(・・・・・・・)

 

 地霊殿には傷ついたレミリア達が居る、それにフランの“狂気”だって収まったとは思えない。

 そんな状況下で、イザナミのような規格外の化け物と真っ向からぶつかれば……この地底世界は崩壊する。

 

 ……尤も。

 仮にどんな策が浮かぼうとも、ヤツに付け入る隙などないと、とうに判ってしまっているのだが。

 

「聖哉、知り合いかい?」

 

「そんな大層なものじゃないさ」

 

「……成程、なら叩きのめしちまってもいいってわけだ」

 

 そう言って、勇儀は右手に持っていた愛用の盃を口元に持っていき、中に入っていた酒を一気に飲み干す。

 そして無造作な動きで空になった盃を投げ捨て――瞬時に、自身の力を開放した。

 

「っ……」

 

 凄まじい威圧感、直接向けられていないというのに息苦しくなる程の力の奔流だ。

 ……本気を、出すつもりだ。

 四天王と呼ばれ、数多の妖怪でもトップクラスの力を持つ鬼の勇儀が、目の前に立つヤツを脅威に感じている。

 

 だが。

 

「鬼か……生憎と、余はお前と遊ぶつもりはないのだがな」

 

 本気の勇儀を前にしても尚、イザナミは微塵も変わらなかった。

 決してヤツは勇儀を馬鹿にしているわけでも、見下しているわけでもない。

 本気で戦うつもりはないと、ヤツはその言葉と瞳で物語っていた。

 

「……不気味だね。お前さん敵だろ? だっていうのに、こっちに対して微塵も敵意を向けてない、後ろに控えてる奴等の方がよっぽど敵らしいよ」

 

「余の邪魔をするのなら戦う、ただそれだけの話だ。ならば、敵意を向ける必要が何処にある?」

 

「………………参った。とんでもない化け物の癖にまるで無垢な子供を前にした気分だよ」

 

 勇儀の頬に、冷や汗が伝う。

 ――彼女は恐れている、イザナミという存在を。

 あの勇儀がだ、けれど彼女の恐怖は至極尤もである。

 それだけの相手なのだ、そうでなければ“魔王”などと呼ばれない。

 

「だが余に挑もうとするその気概は好ましい、そちらにまだ戦う意志があるのならば……ついてこい」

 

 ゆっくりと浮上し、一見すると隙だらけの姿を晒しながら、ゆっくりとこの場から飛び去っていくイザナミ。

 

「……」

 

 一瞬の躊躇い、けれど口元に隠し切れない歓喜の笑みを浮かべつつ――勇儀はイザナミの後を追い始める。

 

「勇儀……!」

 

「悪いね聖哉、わざわざ機会を与えてくれた相手の顔に泥を塗りたくないもんでね」

 

「っ、いくら勇儀でもお前一人じゃコイツの相手は……」

 

 

「――――お前の相手はこの鬼の後だ聖哉、まあ……お前が追えるのなら話は別だが」

 

 

 空気が一変する。

 イザナミが口から何か得体の知れない言葉を放った、そう理解した瞬間。

 

「ギギギギ……!」

「ギャギャ……ギャアアァァァァッ!!!!」

 

 先程まで人形のようにおとなしかった化け物共が、一斉に活性化を果たし動き始めてしまった。

 

「イザナミ、貴様……!」

 

 顔を上げる、しかし既にイザナミの姿は何処にもなく。

 同時に、勇儀の姿も掻き消えてしまっていた……。

 

〈転移魔法で移動しやがったな……さて、どうするよ?〉

 

(っ、これを放っておくわけにはいかないだろっ!!)

 

 勇儀の事は“眼”を用いればすぐに追える。

 だがいきなり暴れ始めた餓鬼達を放っておけば、旧都の住人に被害が及んでしまう。

 旧都の住人達とて強い妖怪が多い、だが相手の数が数だ、犠牲者が出てしまうのは必至。

 

「椛!!」

 

「はい。一匹たりともここから逃しはしません!!」

 

 ならば今の俺達のすべき事は、目に見える全ての障害を速攻で取り除き、勇儀の元に向かう事。

 俺の意図を察してくれた椛もすぐに刀を抜き、俺も一気に戦闘態勢に入り。

 

「悪いが、すぐに片付けさせてもらうぞ……!」

 

 旧都に生きる者全てを蹂躙しようと動き出す餓鬼達に向かって、地を蹴った……。

 

 

 

 

 

 

「――さて、ここならば存分に暴れられるか?」

 

「……」

 

 旧都から離れた岩山に囲まれた地底世界の一角。

 その中心にて、旧都から移動させられた勇儀はイザナミと対峙する。

 

(……一瞬であたしもろとも旧都から移動したってのかい)

 

 その事実に戦慄しながらも、勇儀はゆっくりと深呼吸を繰り返す。

 ……初めて、勝てると思えない戦いを経験しようとしている。

 弱気になる自分を恥じる事すらできず、小刻みに震える自身の身体を律する事もできない。

 

「――余が、恐ろしいか?」

 

「っ、…………ああ、そうだね。こんな経験は初めてだよ」

 

「さすがは鬼、正直なものだ」

 

「……馬鹿にしないんだね、こんな情けない姿を晒してるあたしを」

 

「馬鹿にする必要が何処にある? 生きている以上恐怖といったものは常に付き纏うもの。

 たとえどれだけの年月を生きた者であってもそれは変わらん、恐怖を恥だと思う輩こそそういった存在ではないか?」

 

「……」

 

 思わず、呆けてしまった。

 永く生きる者の考え方とは思えない、憶病ともとれる発言を放ったのだから勇儀の反応はある意味正しいものだ。

 

「――問答は、ここまでにしよう」

 

「っ」

 

「余がここに来た目的は、あくまで聖哉だ。お前ではない」

 

「随分買ってるんだね、あの子を」

 

「当然だ。あのような存在は希少だぞ? ――さあ、くるがいい鬼。お前の全てを見せてみろ」

 

 両手を広げ、イザナミは静かに勇儀を迎え入れる。

 その姿はあまりにも無防備で、しかし――呑まれそうだという認識を勇儀に与えた。

 

「……」

 

 地面を踏み砕きながら、勇儀は踏み込んだ。

 何も考えず、ただ己が全てをぶつけようと、直感だけで彼女は渾身の一撃を炸裂させ。

 

 

 

――それを弾き、イザナミは右手に持っていた杖を勇儀の身体へと叩き込んだ。

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