狼王戦記 ~黒き白狼天狗の軌跡~   作:カオ宮大好き

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第12話 旧都~怪力乱神~

 落ちていく、どこまでもどこまでも。

 時速にして百キロ強、それだけの速度で落ち始めて既に数分、だというのに未だに底が見えてこない。

 

(随分深い……なんてものじゃないな)

 

 数千メートルは落ちたか、流石は元々地獄だった所に繋がっているだけはある。そんな事を考えつつ……聖哉は全身に力を入れ始める。

 いい加減引っ張られたままというのも鬱陶しい、何よりも聖哉の優れた嗅覚が周囲に漂う獣臭を感知していた。

 大穴の至る所にぽっかりと掘られた穴の中から漂う獣臭、そこを住処にしている者達が聖哉を餌にしようと少しずつ動き始めているようだ。

 

「――ぬぅあぁっ!!」

 

 当然食われるつもりなどない、聖哉は喉の奥から唸り声に似た咆哮を上げながら一気に全身の筋肉を膨張させ、両腕に絡み付いた糸をブチブチという音を鳴らしながら引き千切っていった。

 完全に糸を引き千切り自由を取り戻した聖哉は、周囲に向かって“威嚇”を飛ばす。

 これ以上近づくのならば殺す、鋭い眼光で周囲を睨む眼でそう告げながら妖力を開放すると、彼を中心に突風が一瞬吹き荒れ壁にヒビが入っていく。

 ……聖哉の威嚇を恐れたのか、獣達の気配が穴の奥へと遠ざかっていく。無駄な戦いは避けるという聖哉の思惑は成功……したかに思えたが。

 

「オラぁっ!!」

 

「――――おわあっ!?」

 

 秒にも満たぬ速度で大剣を抜き、振るうと同時に斬撃が実体を持ち飛んでいく。三日月型の“飛ぶ斬撃”である。

 巨大な亀裂を生みながら破壊される壁の一角、そこから聞こえたのは少女の驚愕に満ちた悲鳴であった。土煙の中を咳き込みながら飛び出す金の髪を茶色のリボンで束ねた少女、黒谷ヤマメという名を持つ少女は困惑しながらも聖哉に向かって抗議の声を放つ。

 

「けほっ……いきなり何すんのさ!?」

 

「先に仕掛けたのはそっちだろうが。……しかし“土蜘蛛”とはな、見るのは初めてだ」

 

 病を操り人間にとって危険度の高い妖怪の1人、成る程土蜘蛛の糸ならば容易に引き千切れないのも納得だと思いつつ、大剣を右上段に構えいつでも攻撃を仕掛けられるように聖哉は身構える。

 

「ま、待った待った!! いきなり襲ったのは悪かったと思ってるけど、ガチで戦うつもりなんて……」

 

「地底世界は力がものをいう世界だと聞いている、なら情けを見せれば足元を掬われるんだろう?」

 

「拙いこの子めっちゃ好戦的だ!!」

 

 ひー、と涙目になる土蜘蛛の少女、ヤマメ。彼女としてはちょっとした悪戯程度だった。

 地底に続く入口付近でうろうろしている彼を少し驚かせようと思っただけで、すぐに帰すつもりだったというのに……手を出した事を完全に後悔した。

 そんな彼女の心中などもちろん知らぬ聖哉は、一撃で勝負を決めようと刀身に妖力を込め踏み込もうとしたが、両者の間に割って入ってきた存在がそれを止める。

 

「はいストップ、そこまでにしてやりなよ」

 

「……伊吹様」

 

「す、萃香ちゃ~ん!!」

 

 完全に泣き出し萃香に抱きつくヤマメ、そんな彼女を「よしよし」と慰めつつ萃香は聖哉へ剣を収めるように告げた。どうやらこの土蜘蛛の少女と萃香は友人関係にあるらしい、そういう事ならばと背中に剣を戻し昂ぶっていた“気”を内側へと戻す。

 

「伊吹様の友人だとは知らずに申し訳ありませんでした」

 

「えっ、あ、あはは……いいのいいの、というか悪いのはあたしなんだからさ。こっちこそごめんね?」

 

 ヤマメの声が震えている、浮かべる笑みもなんだか渇いているようだし恐がらせてしまったようだ。

 とはいえ先に襲われたのもまた事実、聖哉としてはこれ以上の謝罪をするつもりはない。

 目を閉じ沈黙する聖哉と、そんな彼を見ていまだに渇いた笑みを浮かべるヤマメ。両者の間に挟まれながら、萃香は僅かに眉を潜めた。

 

(前に会った時となんだか雰囲気が違うな……)

 

 そう思う対象である聖哉は、萃香の中ではもう少し利己的に動く天狗という印象であった。

 仮に理不尽な目に遭ってもまず言葉による説得をする、少なくとも前回自分と対峙した時はその選択を彼は選んでいた。

 だが今回は違う、確かに一度いきなり襲われたが先程の彼はヤマメに対して明確な“殺意”を持って剣を振るっていた。そこまでの問答無用さは持ち合わせていないと思っていたのだが、どうも腑に落ちない。

 

「そんじゃヤマメ、私たち行くから」

 

「えっ、行くって……この子を地底に連れて行くのかい?」

 

 改めて見ると地上で生きる白狼天狗ではないか、地上の妖怪を地底に連れて行くという萃香の言葉にヤマメは驚愕する。

 ……地上の妖怪を地底に連れて行く、それが何を意味するのかわからぬ萃香でもないだろうに。彼女の真意が掴めず困惑するヤマメに萃香は「勇儀が会いたがっているんだよ」と経緯を説明した。

 またも驚くヤマメ、そして聖哉も勇儀という名を聞いて驚きを見せる。

 

「伊吹様、勇儀って……まさか、“星熊勇儀”様の事ですか?」

 

 萃香と同じ鬼であり、かつて“山の四天王”と呼ばれる程の力を持つ女性、星熊勇儀。

 聖哉も直接見た事はないものの、天魔からその逸話とデタラメさはよく聞かされていた。

 そんな彼女が自分に会いたがっている存在だと知り、聖哉はすぐに引き返したくなった。

 

「駄目だよー聖哉、私の顔を立ててくれるんでしょ?」

 

「わかっていますよ……」

 

 腹を括らなければならなそうだ、そもそも危険な地底世界に行くという時点でそれは行なわなければならない事である。

 肩を落とす聖哉を不憫に思い、ヤマメはまだ少し恐がりつつも「元気出してね?」と聖哉に労いの言葉を掛けてあげたのだった。

 

 

◆ 

 

 

(……なんだよ、この状況)

 

 ヤマメと別れ、聖哉は萃香に連れられ更に地下へと潜っていく。

 やがて最深部へと訪れ、そこからは横に続く洞穴を暫く歩み……巨大な空洞に辿り着いたと思うと同時に、眼下に広がる広大な“都”をその視界に捉えた。

 暗闇に包まれている筈の地下世界を眩く照らす灯りは外の世界のネオンの如し、そこだけに目を向ければ地底とは思えぬ美しい町並みだが、周囲に漂う“怨霊”がかつてここが地獄であったという認識を思い出させる。

 

 旧都の中に入ると煩いくらいの喧騒が周囲に飛び交い、出店や活気溢れる雰囲気を醸し出していた。

 名物や土産も期待できそうだ、椛達に何か買って行こうと思いつつ、聖哉は先程から自分に向けられている視線に意識を向ける。

 妖力の質で聖哉が白狼天狗、つまり地上の妖怪というのがわかるのだろう。周りに居る妖怪達からは物珍しく彼を見つめる者やあからさまにニヤついた笑みを浮かべる者が見受けられた。

 

 “それ”に意識を向けていたせいか、いつの間にか萃香が随分先に進んでいる事に気づき、慌てて追いかけるために歩を進めようとして……止めた。

 ――囲まれた、獰猛な野獣を思わせる眼光を持つ妖怪達に、聖哉は進む道も退路すらも塞がれてしまった。

 数は六、単眼の者や複数の腕や足を持つ者、大天狗に匹敵する巨体を持つ者など様々な種類の妖怪達が聖哉を中心に円を囲むように立っている。

 そして話は冒頭へ。内心でため息をつきながらとりあえず聖哉は相手の出方を窺う為に沈黙を貫いていると、妖怪の1人が痺れを切らしたのか口を開いた。

 

「おい犬っころ、なんでテメエみたいな地上の妖怪がこんな場所に居るんだあ?」

 

「もしかして迷子か? 天狗様も迷子になるんだな!!」

 

 途端に笑い出す妖怪達、一方の聖哉は特に気にした様子もなく無言のままだ。

 当たり前だ、この程度の嘲笑など幼少の頃から受けている、今更腹が立つレベルではない。

 そんな事よりも先に行ってしまった萃香の後を追わなくてはならない、なので――聖哉は邪魔なこいつらを追い払おうと力を解放した。

 

「うおぉっ!?」

「うわっ!!」

 

 ニヤついていた妖怪達の表情が、一瞬で驚愕と恐怖の色に染まる。

 聖哉の“威嚇”を受けて、このまま対峙していれば殺されると認識し一瞬で戦意を喪失。中にはへたり込む者も居た。

 

(……なんだ、“こんな程度”なのか……)

 

 単純な妖力の質は、さすが地上で忌み嫌われ恐れられた妖怪なだけあって上質なものだ。

 だがそれだけ、質は良いが白狼天狗である自分の威嚇ですら恐れ萎縮してしまうその姿は、聖哉に落胆を抱かせるには充分過ぎる。

 まったくもって期待外れだ、これでは“喰らう”価値すら見出せない……。

 

(っ、俺は今何を考えた……?)

 

 頭に浮かんだ自らの欲求に、聖哉は困惑する。

 ……けれど確かに自分はこう思った、目の前の相手が強いのなら……()()()()()()()

 肉も骨も全て喰い尽くし、自らの糧にしてやろうと本気で思ってしまった自分に困惑していると、既に喧嘩を売ってきた妖怪達の姿はなく目の前には自分を見上げている萃香が居た。

 

「ごめんねー聖哉、1人で先行っちゃって。絡まれてたみたいだけど大丈夫?」

 

「……はい、大丈夫です」

 

 忘れろ、今考えた事は気の迷いだ。

 自らにそう言い聞かせ、先程の欲求を必死で忘れながら再び歩を進めようとする聖哉の肩を、ぽんっと誰かが軽く叩いた。

 

「人がせっかく良い気分で飲んでたのに、随分楽しげな事をしてるじゃないか」

「っ、うおぁっ!!」

 

 全身が総毛立ち、悲鳴に近い叫びを上げながら聖哉は振り向き様に全力の手刀を相手に叩き込んだ。

 ……バシッ、という軽い音と共に手刀が軽々と片手で止められる。すかさず次の一撃を繰り出そうとする聖哉だったが、相手の容姿を見てその動きを止める。

 

「なかなか元気じゃないか。お前さんが萃香の言っていた聖哉だね?」

 

 水色を基調とした着物をだらしなく着込んだ長身で筋肉質な身体、額に生えている赤い角。

 そして溢れんばかりの覇気、一目で判る強者の佇まい。

 一度後ろに跳んで相手との距離を離してから、聖哉は女性の名を口にした。

 

「……星熊、勇儀」

 

 そう、目の前に居る存在こそ“山の四天王”の1人、星熊(ほしぐま)勇儀(ゆうぎ)である。

 自然と身構えてしまう、そんな行為など何の意味はないと自覚していてもそうせざるをえないと思える程に、彼女から感じる力の質量は絶大なものであった。

 単純な力だけならば萃香や紫、幽香といった大妖怪の誰よりも強い。目を合わせるだけでその重圧に屈してしまいそうになっているというのに……。

 

 

 なのに、何故。

 彼女の力を感じれば感じるほどに、全身が歓喜に溢れ気分が高揚していってしまうのか。

 

 

(おや……?)

 

 鬼の女性、勇儀は対峙している白狼の青年の内にある“異質”に気づき、僅かに眉を潜める。

 かつての山の支配者である鬼だけあって、天狗という種族がどういった存在なのか勇儀は知っている。だから萃香が「面白くて強い白狼天狗を見つけた」と言った時には正直驚いた。

 天狗の中で一番位も力も弱い白狼天狗が鬼である萃香の命の恩人となった、その事実は勇儀にその天狗に会いたいと思わせるには充分な理由となり、こうして出会い……彼女の言葉は決して大袈裟なものではないと理解する。

 

(確かに強い、いや……白狼天狗にしては強すぎる……)

 

 目の前の青年の力は“白狼天狗”という妖怪のカテゴリーを逸脱している、先程の手刀の一撃とて片手で止めたとはいえ決して力を緩めては受け止める事はできなかった。

 何よりも、彼の中には“何か”がある、それは勇儀の目でも見破れぬものだが……強い力である事だけはわかる。

 ……勇儀にとってその正体などどうでもいい、ただ目の前の天狗の力が強いという事実だけで彼女は上機嫌になっていった。

 口元に浮かぶ笑みを抑えられない、手は自然と握り拳となり、今すぐにこの青年と――犬渡聖哉という天狗と喧嘩がしたくて堪らない。

 

――そしてそれは、聖哉も同じであった。

 

「アンタもあたしと戦いたいって顔してるね。――余計な言葉なんざ今は不要だ、思いっきりぶつかり合おうじゃないか!!」

 

「…………ははっ」

 

 鬼に対してなんて無礼な態度だ、頭ではわかっていても聖哉はもう止まる事はできなかった。

 勇儀の言う通り、今の彼を支配するのは抑える事などできない“戦闘欲”。強者である勇儀と戦いこの溢れ出る興奮を発散させる事こそが彼の願いと化していた。

 

「こりゃまずい……おーいみんなー、ちょっと離れてた方がいいよー。巻き込まれたくないならさっ」

 

 周囲に居る者達にそう告げながら、萃香は腰に吊るしてある“伊吹瓢”を手に取り1人で酒盛りを始める。

 本音を言えばこれから始まる喧嘩に混ざりたいが今回は勇儀に譲ってやろうと思い、観戦を決め込む萃香。そして――

 

「――オラぁ!!」

「ぬんりゃあっ!!」

 

 同時に踏み込み、同時に繰り出したお互いの拳がぶつかり合い。

 聖哉と勇儀の“喧嘩”が始まると同時に、周囲の地形が変化してしまった。

 

「うおおおっ!?」

「わあああっ!?」

 

 周囲の妖怪達が悲鳴を上げながら、吹き飛んでいく。

 聖哉と勇儀、お互いの初手である拳による一撃がぶつかると同時に、その破壊力による衝撃が周囲に拡散していったのだ。

 まず地面が砕け、家屋が吹き飛び、耳を貫くほどの爆音が地底世界を揺らがせる。

 萃香の言葉で離れ始めていた妖怪達も木の葉のように吹き飛び、家屋が密集していた区画が今のぶつかり合いだけで更地と化した。

 

「ぐっ」

「おぉ……っ」

 

 そして聖哉と勇儀もまた、お互いの一撃により発生した衝撃により弾き飛ばされ地面を滑る。

 すぐに足を地面に突き刺し衝撃を殺しつつ体勢を整えるが、既に互いの距離は十数メートル以上離れてしまっていた。

 だが聖哉の中で驚きなどなかった、鬼という種族はそれだけ優れた力を持っていると知っているからだ。

 

(……あたしの拳と真っ向からぶつかって、互角か……)

 

 対する勇儀は、僅かに痺れを生じさせている己の右腕に視線を向けつつ、聖哉の力に驚きを隠せなかった。対峙したその時から彼が高い実力を秘めていたのは察していたが、こうしてぶつかり合って改めて認識せざるをえない。

 彼は強い、かつて妖怪達がお互いに争い合っていた時代でも通用するほどの力を有していると判断し、勇儀の口元には先程以上の笑みが刻まれる。

 

「聖哉、次はコイツを受けてみな!!」

 

 そう叫ぶと、勇儀は何故かその場で左の拳を前に突き出す。

 虚空を殴るその一見して無駄な行動はしかし、強力な“拳圧”となって聖哉の左肩を撃ち貫かれたと錯覚させる程の衝撃を与える。

 

「ぐっ……っ!!」

 

「そらそらぁっ!!」

 

 次々と聖哉を襲う“拳圧”の嵐、破壊力はそれほどではないが確実に彼の身体へとダメージを与えていく攻撃だ。

 それを軽々と、妖力を使わずに腕力だけで繰り出す勇儀の力に戦慄すら覚えながらも、聖哉の表情は歓喜に震えていた。

 強者との戦いによる高揚、それは麻薬の如し中毒性となって彼に余計な思考を削り落としていく。

 天狗と鬼の上下関係など既に彼の頭の中には存在せず、今の聖哉にとって勇儀は勝ちたいと願う強者でしかなかった。

 

「っっ、なめんなコラァッ!!」

 

 吼えながら左手だけで迫る“拳圧”を弾くと同時に、背中の大剣を右手で抜刀しながら地を蹴った。

 二秒にも経たぬ短い時間で彼は勇儀との間合いを詰め、右上段から相手の身体を両断する勢いで大剣を振るい落とす。

 

「ぐっ、うぅ……っ」

 

「…………」

 

 聖哉の斬撃が、勇儀の右腕を切り裂き鮮血が舞った。

 あの鬼の肉体を、それも“山の四天王”と呼ばれる程の実力者である彼女の身体を傷つけた、その事実は確かに賞賛に値するものだろう。

 だがその代償として、彼は()()()()()()()()()()自身の大剣を目にして、思考を凍りつかせる。

 

「痛っ……やるねえアンタ、あたしがこれだけの血を流すのは何十年振りかね……」

 

 痛みで顔をしかめながらも、勇儀は笑みを浮かべつつ無事である左腕で拳を作る。

 それに気づいた聖哉だがもう遅い、彼が反応するよりも速く勇儀の拳が放たれ、彼の左脇腹へと突き刺さった。

 

「がは……っ!?」

 

 メキッ、そんな音が自らの骨から鳴っているのを聞きながら、聖哉は弓なりになって遙か後方へと吹き飛んでいった。

 ……数十メートルという距離を飛んでもまだ微塵も速度に衰えを見せないまま、彼の身体は小さな岩山へと叩きつけられ、その中へと沈んでいった。

 大きく息を吐きながら、勇儀は聖哉が叩きつけられ土煙を上げる岩山へと暫し視線を向けるが、一向に出てこない事を確認し構えを解く。

 

「……ちょっと、やり過ぎちゃったかね?」

 

「やり過ぎだよ勇儀、今の一撃……全力だったろ?」

 

「あ、やっぱわかる?」

 

 やや呆れたように自分を見る萃香に、勇儀はばつが悪そうに苦笑する。

 彼女の言う通りやり過ぎた、彼の一撃が予想以上だった事に興が乗ってしまい、ついつい全力で殴り飛ばしてしまった。

 死んではいないだろうがダメージは相当なものだろう、このまま介抱してあげなくては本当に死にかねない。なので勇儀は自身が殴り飛ばしてしまった聖哉の元へと向かおうと歩を進め。

 

 

「――何の騒ぎですか、これは」

 

 

 その声を耳に入れた瞬間、勇儀と萃香は苦々しい表情になった。

 声の持ち主が誰であるかわかるが故の表情であり、本当に嫌そうに声のした方へと振り向くと。

 

「勇儀さん、これは何の騒ぎですか?」

 

 そこに居た存在を見て、2人は改めて表情を嫌そうに歪めるのと同時期に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結構強い妖怪がウヨウヨ居るなー、さて……どいつにしてやろうか」

 

 遙か上の岩山から、旧都全体を覗く存在が、上記の呟きを放ちながら歪みきった笑みを浮かべていた……。

 

 

 

 




【簡潔なキャラ紹介】

・黒谷ヤマメ
地底のアイドル、土蜘蛛という凶悪な妖怪。
陰気な場所でありながら陽気で人当たりの良い子、ただやっぱり地底の妖怪らしく結構過激。

・星熊勇儀
鬼の女性、「山の四天王」の一角。
萃香と同じく酒と喧嘩を好む、彼女以上に鬼らしい鬼で嘘を何よりも嫌う姉御。
決まった支配者の存在しない地底にて“顔役”同然の立場、旧都に用事がある場合はまず彼女を尋ねるべき。
単純な攻撃力だけなら最強、ステータス的に言うとパワーに全振りしている脳筋。
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