狼王戦記 ~黒き白狼天狗の軌跡~   作:カオ宮大好き

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第63話 ヴァンの過去~全てを見通す眼~ ※

「…………」

 

 赤い天井が、視界に広がる。

 豪勢なシャンデリアが部屋の高級感を漂わせ、ここが屋敷の一室だという事を認識させた。

 

「っ、ぐ……」

 

 身じろぎしようとして、全身に激痛が走りおもわず声が漏れる。

 ……ここは、紅魔館の一室か。

 どうしてベッドの中で眠っているのか、痛みに苛まれながらも思い出そうとして。

 

〈よお、起きたか?〉

 

 脳裏に、ヴァンの声が響き渡った。

 

(……)

 

〈おい無視するなよ、お父さん悲しいぜ〉

 

(……)

 

〈やれやれ、嫌われたもんだな……〉

 

 大袈裟にため息を吐きながら、ヴァンはあくまでもいつもの姿勢を崩さない。

 ただ、口調からは判らないが……俺にはどこか、コイツが少なからずショックを受けているようにも思えた。

 ……少し、大人げなかったか。

 

(ヴァン)

 

〈あ?〉

 

(助かった、お前が居なきゃあのまま殺されてたかもしれない。その点は感謝してる)

 

〈あー…………いいって、別に。本体であるお前がやられちゃ困るからな〉

 

 返ってきた口調は軽いものの、言葉の中に明確な驚きの色が混じっていた。

 

(? なんだよその反応、俺が礼を言ったのがそんなに意外だったのか?)

 

 だとしたら、本当に失礼なヤツだ。

 いくら疑っている相手だとしても、助けてもらったのだから礼を言うのは当然だというのに。

 

〈いや、ほらよ……お前、オレを嫌ってるだろ?〉

 

(嫌ってるわけじゃない。ただ何も話してくれないから疑ってるだけだ)

 

〈うっ……返す言葉が見つからねえ〉

 

 さすがにばつが悪いと自覚しているのか、珍しくしおらしい反応を見せるヴァン。

 何だかいつもの調子じゃないからこっちの調子まで狂ってしまいそうだ。

 しかし今はコイツのおかしさを疑問視している場合ではない、漸く意識を失う前の事を思い出した俺は早速ヤツに問いかける事にした。

 

(ヴァン、お前……文のダミードールを始末したのか?)

 

〈ああ。あの時のお前じゃ到底勝てそうになかったからな、ったく……まだまだ甘い〉

 

(……霊夢は?)

 

〈紅白巫女の嬢ちゃんなら無事だぞ、あの瀟洒なメイドちゃんが適切な処置をしたみてえだから、今は寝てんだろ〉

 

 その言葉を聞いて、俺はほっと息を撫で下ろした。

 俺の治療をしてくれたのも咲夜だろう、身体には包帯が巻かれているし後で礼を言わないと。

 

〈…………なぁ〉

 

(なんだ?)

 

〈その、何だ……えっとだな〉

 

 ?

 なんだろう、今日のヴァンは本当におかしい。

 いや、いつもおかしいが今日は特におかしいというか……何を躊躇っているのか。

 

(言いたい事があるならはっきり言ったらどうだ? いつものお前らしくもない)

 

〈……お前が普段オレをどんな目で見てるのか今のでよく判ったよ。あー……だがな、オレにだって言いにくい事の一つや二つはあるんだぞ?〉

 

(そりゃまた、意外過ぎる話だな)

 

 おもいっきり、皮肉を込めて言ってやった。

 ヤツの顔は判らないが、きっと苦虫を噛み潰したような表情を浮かべているだろう。

 ただ、コイツが俺に何か話したいという気持ちに嘘偽りはないと判ったから、それ以上は何も言わずに黙って待つ事に。

 

〈あのよ……やっぱり、まだオレの正体とか気になってるよな?〉

 

(当たり前だ。まあ、どうせ話すつもりもないんだろ? その点は諦めてるよ)

 

〈いやいや、オレだってこれでも反省してるんだぜ? お前に対してもっと誠実に対応するべきだったって〉

 

(そうだな。その点に関しては否定しない、だけど……さっきお前自身が言ったじゃないか、言いにくい事の一つや二つはあるって)

 

 正直、得体の知れないコイツは信用に値しないと思っている。

 しかしだ、俺はコイツのおかげで本来ならば敵わぬ強敵とも戦えてこれたのも、無視できない事実だ。

 だからこそ問い詰めたいと思いながらも、話せぬというのならば待つ事はできる。

 

〈…………本当に変わってやがる。得体の知れないヤツを信用しようと思うなんざ、オレからすればありえない考え方だ〉

 

(俺が自分で決めた事だ、お前に文句を言われる筋合いはない)

 

〈文句なんかねえさ、寧ろ嬉しいと思ってるぜ。こんなオレを少しでも信じようとしてくれてるんだからな……〉

 

 馬鹿なヤツだよ、そう言いながらもヴァンの口調は言葉通り嬉しそうだ。

 ……そういえば、コイツとこんなにゆっくり話すのは初めてだな。

 なんだかんだでそれなりに付き合いが長くなりつつあるし、こういう時間も悪くないかもしれない。

 

〈――ああ、やっぱりオレはどうしようもねえな〉

 

(? 何を言ってるんだ?)

 

〈オレはよ、白状するとお前を見下してた。弱いくせに口ばかり達者でオレがいなきゃまとも戦えねえ雑魚妖怪だと思ってた〉

 

(……否定はできないさ。今までの相手に勝てたのもお前の力があったからこそなのは事実だからな)

 

〈そうかもしれねえ。けどな……お前は弱くなんかなかった、たとえ力なくともその心はオレなんかとは比べものにならない程に強かった。

 力だけのオレとは違う、お前はその心で多くの連中を助け、支え、導き、そして変えてきた。

 そんなお前を内心見下してた自分自身が、とてつもなく情けなくて……ダサいなって、改めて自覚したよ〉

 

(ヴァン……?)

 

 後悔と、俺に対する申し訳なさを前面に出しながら、ヴァンは懺悔するように言葉を続けていく。

 

〈白状ついでにもう一つ、オレはいずれお前の身体を手に入れるつもりだった(・・・)

 オレの望みは現世に受肉し、好き勝手気ままに生き、第二の生を謳歌するつもりだった。つまりだ、お前自身も感づいていただろうが……オレはお前を利用していた〉

 

「……」

 

 その言葉を聞いても、俺の中での驚きは無かった。

 ヴァンの言う通り、感づいていたというのもあるのだろう。

 だけど何よりも俺は……コイツにもうそんな望みは無いと(・・・・・・・・・)判っていたからかもしれない。

 

〈だからオレも“義”を通す。――犬渡聖哉(・・・・)、聞いてくれるか?〉

 

 初めて聞く、ヴァンの真摯な言葉。

 だから俺も自然と姿勢を正し、彼の言葉を聞き入れる体勢を整えた。

 

〈……ありがとよ〉

 

 小さく、けれど最大限の感謝を込めた言葉を呟いた後。

 ヴァンは、静かに自身の事を語り始めた……。

 

 

 

 

 オレはな、人間じゃねえ、かといって妖怪でもねえ。

 じゃあなんだって? 信じられねえとは思うが……遥か昔、神々の時代に生まれた“魔獣”なんだよ。

 

 ……予想通りのリアクションありがとな、でもジト目で睨むのは勘弁してくれ。

 残念ながら事実なんだよ、オレはある神と巨人の間に生まれた魔獣……魔獣ってのは今でいう妖獣のようだと思ってくれればいい。まあ、力の大きさは比べものにならないがな。

 

 肉体を持っていたオレはまさしく獣そのものでな、喰いたい時になんでも喰って、暴れたい時に好きなだけ暴れた。

 畜生にも劣る程の生き方をしていたが、なまじオレを生み出した存在が存在でな、だーれもオレを止める事はできなかった。

 そればかりかオレは臆病風に吹かれた神々を喰らうなんて事もしでかしてな、当然そこまでして黙ってる神様連中じゃなかった。

 

 オレはとあるババア……女神によって捕縛された。

 肉体は引き裂かれ、魂は徹底的に弄られ、幾重もの枷を施され力を完全に封印されただけじゃなく、そればかりかオレ自身が忌み嫌い見下していた下界の生物……要するに現世の生き物の中に封じ込められた。

 何もできず、けれど意識と視界だけははっきりしていたから、そりゃあもう地獄だったぜ。

 

 当然オレは自分をこんな目に遭わせた奴等を憎んだ、いつか復讐してやるとこの屈辱に耐え続けたさ。

 けどよ、その女神の力はそれこそ規格外でな、オレを封じ込めてる生物が死んでも自動的に次の生物に封じ込められるものだから、脱出する事も裏をかく事もできなかったんだ。

 かといってその生物を操る事はおろか話しかける事すらできず、ただひたすらに現世の光景を見せ続けられるっていう拷問を味わったよ。

 

 それから何千、何万、いや何十万だったか……それこそ数え切れない程の年月が経った。

 で、今回のオレの器に決まったのがお前だったわけだ。

 ああ、勘違いしてるようだから言っておくが、あの女神は完全ランダムでオレを封印する生物を決めてるぞ、要するにお前が選ばれたのは偶然だったわけだ。

 ただの人間だった時もあれば妖怪だった時もあったし…………微生物だった時は本当に泣きそうになったな。

 

 まあそれはともかくとしてだ、天狗の混血児なんざ初めてだなーなんて思いながらも、どうせ何もできねえんだろうなーと思ってたんだが……。

 ……察しがいいな、オレの存在に気付いた女妖怪が居やがった、八雲紫だ。

 前にあの女からある丸薬を受け取って服用しただろ? あれはあの女の『境界を操る能力』を込めた特別な薬でな、それをお前に服用させて中に居るオレを呼び起こそうと思ったのさ。

 だがあんな程度の力で破れる程あの女神の封印は弱くはねえ、とはいえまったくも無意味でもなかった。

 

 あの女の能力でオレとお前の境界が操作された結果、お前はオレを認識する事ができ、オレの力の一部を使えるようになった。

 不幸中の幸い……とはちと違うかもしれねえが、オレにとってはこの上ないチャンスだったわけだ。

 お前が強くなりオレの力を使えるようになればなるほどに、お前の身体はオレが扱っても壊れないように作り変えられていく。

 本来ならオレの力をお前が使えばそれだけで壊れる、なのに反動はあれどそれだけで済んでいるのはそういうわけだ。

 

 第一の枷は外れ、第二の枷ももうすぐ解かれる、一時的とはいえオレがお前の身体を操作する事もできるようになった。

 あと少し……あと少しでオレの封印は解かれ、オレはお前の肉体を奪い現世に復活する。

 つまりお前は、ただただオレに利用されてただけの憐れな“贄”だったってわけだよ、犬渡聖哉。

 

 

 

 

「……」

 

 沈黙が流れる。

 話し終えたであろうヴァンは何も言わず、黙って俺の反応を待っていた。

 

 ……正直、ヴァンの出生等は信じられる話ではない。

 何万どころか何十万という遥か昔の存在であり、神々を喰らった事のある魔獣。

 だけどあの力の大きさを考えると、納得できるとも思った。

 あれは生物が持つものではない、それこそ神々の領域に至ったものが持つ……強大で、禍々しい力だ。

 

(ヴァン)

 

〈……なんだ?〉

 

(お前は俺を贄だと言ったな? だけど同時にお前は俺の身体を手に入れるつもりだったとも言った。――今のお前は、何を望んでいるんだ?)

 

 だった、つまりそれは過去形の話という事ではないのだろうか。

 今のヴァンはもう俺の身体を手に入れようとは考えていない、そう思えたからこその問いかけ。

 

〈…………そう、だな。俺の今の望みは……お前の行く末を見守る事だ〉

 

(俺の……?)

 

〈何万年と様々な生物の中に封印されてきたが、お前みたいなヤツは初めて見た。

 人ならざるものでありながら人に憧れ、人を愛し、守ろうとする。それも上辺だけではなく己の全てを懸けてその信念を貫こうとする。

 オレからすれば理解不能の大馬鹿者だが……だからこそ、お前が最後に行き着く先がどんなものなのかを見てみたくなった〉

 

(……第二の生を謳歌したいと思っていたんじゃなかったのか?)

 

〈ああ。だがそれ以上にお前の生き方に興味が湧いた。それと同時にどうしようもなく放っておけなくなった。まあ、信じる信じないはお前の勝手だけどな〉

 

「……」

 

 どうしようもなく放っておけなくなった、か。

 なんとも懐かしい言葉を聞いたと、苦笑したくなった。

 どうやら俺はこんなにもでかい図体のくせに、周りからは「放っておけない」存在らしい。

 

(なあ、ヴァン)

 

〈あん?〉

 

(俺は、まだまだ強くなれるか? みんなを守れるくらい……強く)

 

〈……さあな。そんなのオレが知るかよ、お前次第だろ?〉

 

 なんとも暖かみなど微塵もないお言葉だこと。

 だがコイツらしい、それに言っている事は間違っていない。

 それにヴァンは決して俺がこれ以上強くなれないと言ったわけではない、言葉には出さないが強くなることを信じてくれている気がした。

 

(ありがとなヴァン、お前の事を話してくれて嬉しかった)

 

〈……オレ、割とマジでお前が悪いヤツに騙されないか心配になってきたんだけど〉

 

 やかましい、お前は俺の父ちゃんか。

 父親の顔は知らないけど、おもわずそんなツッコミを入れてしまった。

 

〈さて……まあお互いの信頼関係が強まったのは良いとしてだ、お前にはしっかり“全てを見通す眼”の事を話してやらないとな〉

 

 急に真剣な声でそんな事を言い放つヴァン。

 切り替えの早いヤツだと感心しつつも、大事な事なので俺も耳を傾ける。

 

〈“全てを見通す眼”は眼にあらず、眼ではなく心で視る。その意味が判るか?〉

 

(すまん、まったく判らん)

 

 正直に言ったら、ヴァンが変な声を出した。

 仕方ないだろ、本当に意味が判らないんだから。

 

〈うーむ……オレってば説明が壊滅的に下手だからな、誰かに何か教えるとかした事ねえし……〉

 

(心で視るって、具体的にどうすればいいんだ?)

 

〈えぇーっとだな、うん……その、こう……すわぁーっと視るというか〉

 

(……ごめん、さっきより判らなくなった)

 

 なんだよすわぁーって、初めて聞いたぞそんな擬音。

 

〈う、うるせえなっ。とにかく眼で視ようとしなければ自然と身に付くっての!!〉

 

 怒られた、解せぬ。

 子供みたいな態度のヴァンに呆れつつ、とにかく自分で考える事にした。

 眼で見るのではなく心で視る、か……。

 

「……」

 

 とりあえず、目を閉じた。

 当然ながら何も見えず、視界は暗闇に包まれる。

 視る、視るかあ……。

 そういえば、このまま“千里眼”の力を使ったらどうなるのか――

 

「――――っっっ」

 

 瞬間、神経が焼き切れるような衝撃に襲われた。

 

「ぁ、ぐ、ぅ……」

 

〈ん? おい、お前今……使えたのか?〉

 

「なに、を……」

 

 上手く声が出ない、呼吸はすっかり荒くなっていた。

 

〈無意識に“繋いだ”からそうなる。もっと場所を縮小して視てみろ〉

 

「は、ぁ……」

 

 縮小しろって、どういう意味だよ。

 ただ何も考えずに“千里眼”を使ったらああなったのだ、今度はもっと力を緩めた状態で……。

 

「っ、ぐ……」

 

 頭に電流が走ったような痛みに襲われるが、先程とは違い耐えられる。

 そのまま“千里眼”を展開したままで居ると……脳裏に、ある光景が浮かび上がってきた。

 

「…………紅魔館?」

 

 そう、紅魔館だ。

 まるで上空から見下ろしているかのような視点で、紅魔館の全体図が鮮明に浮かび上がっている。

 それだけではない、外観だけでなく中に居る者達全ての場所がはっきりと理解できる。

 

〈聖哉、メイドの嬢ちゃんは何処で何をしている?〉

 

(……厨房で調理……レミリア達の夕食と、俺への食事を作っている)

 

 そこまで答えて、はっとする。

 確かに咲夜が厨房で料理を作っている姿を確認できる、しかし――何故彼女の心中まで理解できる(・・・・・・・・・・・・・・)

 彼女が何を考えながら調理しているのかが、まるで心を読んだかのように判るのは何故――

 

〈そんじゃ、紅白の巫女は何処に居る?〉

 

(……霊夢は東館の二階にある客室で眠っている、近くには神子の姿も確認できる)

 

〈あの尸解仙は何を考えている?〉

 

(目覚めない霊夢と俺を心配している、それと布都と屠自古の事を考えている)

 

 またも、当たり前のように視えた相手の心中を理解してしまう。

 悟り妖怪のように、否、離れた相手の位置を正確に察知し心を読むなど悟り妖怪以上の読心能力だ。

 

「っ、ぐぁ……っ!!」

 

 先程のような凄まじい痛みが走り、おもわず能力を解いてしまった。

 ズキズキと頭が痛む、まるで鋭利な斧でかち割られたかと勘違いしてしまう程だ。

 だが、それも当然だと納得せざるをえない。

 今の光景、そしてあの能力こそが……“全てを見通す眼”だと理解したから。

 

〈どうだ? 如何にお前が勘違いしていたか理解できたか?〉

 

(……ああ、だがこれが……)

 

〈お前の眼は全てを見通す、前にそう言ったよな?

 それは決して比喩じゃない、お前の眼はお前の望む限りのものを見せてくれる。

 相手の正確な位置やその内情だけじゃない、相手が次に何をするのか、一種の未来予知のような真似事だって可能だ。

 だからこそあの鴉天狗のコピーのスピードなんざこの能力の前じゃ止まってると同じだ、捕まえるのなんざ片手で充分だな〉

 

「……」

 

 ぶるりと、身体が自然と震えてしまった。

 デタラメという表現すら生温い、まさに神々の領域の力だ。

 

〈だが注意しろよ? これは今までの能力よりも更に負担が大きい。

 練度を上げれば上げる程に当然負担も大きくなる、さっき無意識で使ったのでもまだ小さい負担なんだからな?〉

 

(……肝に銘じておく)

 

 断言できる、仮に全開で使ったとすれば……身体ではなく心が先に砕け散ると。

 今のままではこの能力を十全に使いこなす事はできないだろう、使用するとしても安易に使ってはならない。

 

〈お前の場合、『切り札』って感じでなんかかっこいいな!!〉

 

(なんではしゃいでんだお前?)

 

 子供かよ、いやよく考えたらコイツ結構子供っぽい所あったな。

 もう何十万年も生きてるのに、いやだからこそ感性が変わらないのか?

 

「っ」

 

 油断したせいか、痛みが増してきた。

 まいったな、少し使っただけでここまで尾を引くのか……。

 顔をしかめつつ再びベッドに横になる。

 

〈大丈夫か?〉

 

(ああ。……なんか急に優しくなったな、ちょっと不気味だぞ)

 

〈ひでえ。だから今までの事は反省してるって言っただろ……〉

 

(冗談だ。半分は)

 

 半分かよ、というヴァンのツッコミに苦笑しつつ、俺は眼を閉じた。

 ……痛みが消えない、能力を使ったせいもあるが文もどきとのダメージも決して小さいものではないらしい。

 霊夢の事も心配だし、治療してくれた咲夜や部屋を貸してくれてるレミリア達にも礼を言わないとな……。

 

 

 そんな事を考えながら、やがて意識は薄れていき。

 気が付けば痛みも忘れたまま、俺は夢の世界へと旅立っていったのだった……。

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