そら飛べワンチャンダイブマン ~1日1回個性ガチャ~ 作:AFO
OCHACO URARAKA
個性
『無重力』
指先の肉球5つ、全てで触れたものを無重力状態にするぞ!
使いすぎるとゲロ吐くぞ! 自分を浮かせるとゲロ吐くぞ! とにかくゲロ吐くぞ! おかげで中学のあだ名は『ゲログラビティ』。
実は『物を無重力状態にする個性』ではなく、『吐き気を増進させる個性』で無重力は副産物でしかない線が濃厚だ。
今後の戦闘では吐瀉物を無重力状態にしていかに上手く扱うかが勝敗の鍵となる。
頑張れよ『ゲロウラビティ』!
オチャコズニクキュウ
柔らかくてうららからしい。
うららか【麗らか】(形動)
①太陽がのどかに照っているさま。
②晴れ晴れとして明るいさま。朗らかで伸びやかなさま。のどか。
③声が明るく朗らかなさま。
④心にわだかまりのないさま。隠し隔てのないさま。
オチャコズホホ
赤い。試験管とは真逆。
オチャコズヘアー
知り合いのイラストレーターが似たような髪型のキャラクターを扱っていたのだが、『僕のヒーローアカデミア』の連載が始まった途端に描かなくなってしまった。曰く「もう二番煎じになったからお蔵入り。あああああああ!!」。許さんぞ。
オチャコズゼンシン
うららかお茶子らしい。
うららか【麗らか】(形動)
①太陽がのどかに照っているさま。
②晴れ晴れとして明るいさま。朗らかで伸びやかなさま。のどか。
③声が明るく朗らかなさま。
④心にわだかまりのないさま。隠し隔てのないさま。
オチャコズタイツ
吐いている。
オチャコズアシ
タイツを吐いている。
オチャコズオチャコ
[R-18用語です]。『おちゃこ 方言』で検索すると由来がわかる。……だから方言キャラなのか!
オチャコズオチ○コ
ついてないよ。
早朝。緑谷出久が立ち尽くしていたのは、彼の住むマンションの屋上。
見下ろすのはコンクリートの地面。
彼は飛び降りることが──できなかった。
この距離から飛び降りれば間違いなく怪我を負う。もやしからごぼうにスキルアップした緑谷出久もただでは済まない。
最悪、死ぬ。
「……飛べ、飛べよ……っ!」
だが──冷静な思考では、到底飛び出せるものではない。
もし個性が発現しなかったら? もし個性が発現する前に息絶えてしまったら?
──これまでの全てが無駄になる。
飛べるわけがない。今の彼に、この世界へ別れを告げる意志はないのだから。
実技試験の一週間後、緑谷出久のもとに合格通知が届けられた。
それからというもの、かれは個性『日替わり』を活かすための特訓を始めた。
どんな個性だろうと活かすための知識と、知識を活かすための基礎体力の向上。そして──個性『日替わり』を効率よく発動させるための研究。
しかし──緑谷出久は入学までの間、個性を発現させていない。
発現に『落下』が関係しているのは察していた。
だから、まずは50cmの段差から始めた。毛も生えていないもやしでも難なく着地できる高さだ。
検証は10cmずつ増やされていった。安全と判断できる高さは一通り試した。しかし何も起こらなかった。最後はこの屋上からも飛び降りた。最悪の事態に備えてトランポリンを置いて、数えること数回飛び降りた。日を変えて飛び降りた。時間も変えた。早朝だろうと深夜だろうと試した。
しかし、変化なし。
その行為が何を生み出したかと言えば、無駄な時間と労力、そして何度もマンションから飛び降りるワンチャンダイブ亡霊少年の怪談だけだった。
『発動条件』は『飛ぶ』こと。だが──それだけではない。
それを緑谷出久はまだ、掴みあぐねていた。
身体テストも、所詮はただこうするしかないと必死に飛んだ結果だ。戦闘訓練も同様。発現するときは一様に夢中で、発現する瞬間に立ち会えていない。
冷静な頭で、狙って意図的に発現した試しはないのだった。
*
──オールマイトの授業はどんな感じです?
『実戦を交えた素晴らしい授業ですわ』
──『平和の象徴』が教壇に立っているということで、様子などを聞かせて!
『様子!? えー……と筋骨隆々!! です!』
──教師オールマイトについてどう思ってます?
『最高峰の教育機関に自分は在籍しているという事実殊更意識させられますね。威厳や風格はもちろんですが他にもユーモラスな部分等、我々学生は常にその姿を拝見できるわけですから。トップヒーローとは何をもってしてトップヒーローなのかを直に学べるまたとな』
──オールマイト……
『どこから飛べばいい? どうすればワンチャンある? マンションからは駄目だった。ビルならよかったのか? でも一度階段を転げ落ちたのもいけた。校舎から飛び降りたときでもいけた。何が違う? かっちゃんに言われて身投げしないと駄目なのか……? 僕はどうすれば新しい自分……』
──ちょ、今の不味くない!? カメラ止めて! 何、いじめ!? いやこれはむしろスクープ……!
*
オールマイトが教師として就任したことが公に告知され、雄英にはマスコミが押し寄せていた。
今まで平和の象徴が教壇に立つということは伏せられていたし、情報統制、報道規制もされていたのだが、さすがに生徒と関わる以上公にしないわけにもいかず。
(……どおりで知らなかったわけだ)
いくら緑谷出久が身体向上に必死だったとはいえ、オールマイトが教師になると報道されていればいやでも目に付いたはずだ。
朝のホームルーム、担任の相澤消太が持ち出したのは学級委員決めの話題だった。
立候補者大多数ということで全員参加の投票制。
そして多くの票を集めたのが──
──2票、八百万百。2票、緑谷出久。
「あの……辞退させていただけませんか?」
教室の前で、緑谷出久は言いずらそうだったけれども、まぁ言った。
「何言ってんだよ!」
「せっかく選ばれたのに!」
「そうだぜ、自分で入れた以外にも一人、確実にお前に入れたやつがいるんだし──」
「ごめん、ぼ、僕はまだ学級委員なんて器じゃないし……それに、まだ自分の個性をものにできてないから、しばらくはそっちを優先したいんだ。『個性』の知識と、身体づくり! ヒーローになるためには足りないものがたくさんあって──」
そう、緑谷出久はまだまだ自分のことで精一杯。他人をまとめる学級委員になどかまけている時間などないのだ。コミュ障を引きずって、声が小さくなりがちなのもあるが。
「じゃあ緑谷、今日中に代役立てておけ。お前が任せられる、信じても良いやつにな」
相澤消太がいい、ホームルームは終わる。
緑谷出久が辞退する理由は他の生徒たちにも刺さり、俺を学級委員にしろと殺到する者はいなかった。
*
そして飯田くんが非常口マークになった。
*
「学級委員には飯田くんが良いと思います! ……事実、僕は最初飯田くんに投票しましたし」
最初から緑谷出久は学級委員になるつもりはなかった。
そしてわずか数日の付き合いではあるが、飯田天哉が誠実な人間であることは理解していたし、飯田天哉ならば信頼して安心して任せられると思っていた。
そして本日。食堂にて非常口マークに擬態して見せた飯田天哉はまさに喋る非常口マーク。卒業後もこれで食っていけるであろう才能を感じさせ、非常口マークこそが飯田天哉の天職であると考えられた。
食堂の非常口マークだからなおさら、すぐそこで食っていける。
あの光景には緑谷出久もケンタッキーフライドチキンを食べる手を止めたものだ。
それだけ人の心を動かしたのだから、飯田天哉には非常口の天性の才──緊急時に人をまとめる才があると判断したのだ。
「あ! 良いんじゃね!! 非常口飯田なら大丈ー夫!!」
「うん! 大丈ー夫!! いいぞガンバレ非常口!」
「大丈ー夫!! 飯田くんならどんな非常時も非常口になってくれる気がする!」
──こうして、飯田くんが委員長になったっていう話。
その事件のきっかけは、雄英のセキュリティ導入校門が破壊されたことだ。
そこからマスコミが進入して警報が鳴り響き、校内は混乱の嵐となった、という拍子抜けするような話。
笑い話になってしまうような、あっけない顛末。
──この事件は後に起こる大事件の始まりだったんだけど、この時の僕らには知る由もなかったんだ。
*
数日後。多少は親睦を深めた1-A一行は、ヒーロー基礎学にて人命救助訓練をするための移動でバスに乗っていた。
「私思ったことを何でも言っちゃうの緑谷ちゃん」
「あ!! ハイ蛙吹さん!!」
「梅雨ちゃんと呼んで」
隣に座る蛙吹梅雨。個性は『蛙』。彼女曰く蛙っぽいことは大抵できる。個性の影響か、どこか蛙のような雰囲気を持った少女だ。
「あなたの『個性』、スマホアプリのガチャに似てる」
「!!?」
緑谷出久は面食らう。
せっかく発言した自分の個性が、ゲームの要素の一つに揶揄されてしまうのは心外だった。
「そそそそ、そうかな!? で、でも僕は生身の人間だよ!? ま、まさかゲ、ゲームのガチャと一緒なわけな」
「待てよ梅雨ちゃん。ガチャは一日一回じゃねぇぞ。課金すりゃ何回でも引ける。似て非なるアレだぜ」
「似てるのは否定してくれないの!?」
どこか必死に否定する緑谷出久へ、切島鋭児郎が口を挟んだ。
「しかしやっぱすげぇな緑谷。あれ毎日変わる個性を即興で使ってるんだろ? 爆豪との対決は自分の物にしてたじゃねぇか!」
「あれは……。でも結局は僕一人の力じゃない。麗日さんと、それにかっちゃんが僕の意図を見破ったからこそ勝てたんだし……」
「なんだそりゃ。そうだ、今日の個性ってなんなんだ?」
その問いに──突如、緑谷出久の『個性』の悩みが、現実として突きつけられる。
「……今日はまだ、わかんないんだ。ほら、ケンタッキーフライドチキンを早食いする個性だったらケンタッキーフライドチキンを食べるまでわかんないし! ただのフライドチキンじゃ判別できないし!!」
「そうだな……どんな個性か自分でもわかんないんじゃーな……」
「うん。そういう意味じゃやっぱりみんなみたいに『自分』の個性が定まってた方が活かしやすいよ。僕のはその日限りだから個性を成長させることすらできないし──」
本日も飛べなかった緑谷出久は、事実上『無個性』同然。
気を紛らわすように話を逸らし、膨らませ、それからバス内の話題はそれぞれの『個性』に集中する。
「蛙吹さんの個性って今は何ができるの?」
「ケロ。水中の行動と、舌を20メートル、壁に張り付いたり、跳んだり毒を分泌したりかしらあと胃を出して洗ったりできるわ」
「おお! 本当に『蛙』だ! じゃあ大きく鳴いて音の攻撃……いや、蛙が大きく鳴くのは求愛行動でオス特有の行動だったと思うから、蛙吹さんはできないのか……。でも意志疎通ならワンチャン……。
蛙は皮膚呼吸もできるんだっけ? あとは……体色も緑から白ないし灰色くらいまで変えられたような。メラニン色素がどうこうだっけか」
「緑谷ちゃん……詳しいのね、ケロ」
心なしか嬉しそうな蛙吹梅雨。
「蛙は中学の授業でも触れてたからね、受験のときに興味本位で……。でもそういうのも『個性』研究に役立つんだなぁ」
個性とは億兆というほぼ無数の可能性がある。だから、どんなものだってありえるのだ。日常の何気ない雑学が個性を追求していくヒントになる。
全てが無駄にならない。その億兆の可能性を秘めたのが緑谷出久の個性であり、彼の蓄えた知識が全て力に変わるのだ。
ケンタッキーフライドチキンには部位によって名前があり、
手羽が『ウイング』。
胸が『キール』。
肋が『リブ』。
腰が『サイ』。
脚が『ドラム』。
この知識だって『鳥』に関係する個性への備えになるかもしれない。
ケンタッキーの創始者である『カーネル・サンダース』の『カーネル』な名前ではなく名誉による称号というのも忘れちゃいけない。
尊敬すべき偉人の本名は『ハーランド・サンダース』。
きっと、役に立つ。
「いやそれは立たないと思うぜ」
「うるさい!」
閑話休題。
「ところで気になってたんだけど、葉隠さんって『透明人間』の個性? それとも『透明化』の個性?」
「私!? 私は常時発動の異形系だよ!」
「やっぱり! ということは相澤先生にも無効化されないってことだ! なおさら隠密行動に向いてるぞ……ちなみに服は透けないみたいだけど、食べたものは透けてるみたいだね。ということは小物程度なら口に入れて運んだり……問題は熱感知と液体をかけられたときか……足音も消せないし。いやいや見えないのはそれだけで戦闘に生かせる。ただ装備がな……まあ単純に格闘技能をつけて『見えない格闘家』っていうのも普通に強いかもしれない。髪の毛って抜いたら透明化消えるかな? 消えなければ髪の毛の繊維で服を造れば……いや! 大きい布を造ればなんでも透明化……?」
「わぁ、本当にどんな個性でも使い方考えるんだ!」
到着したのはUSJ。スペースヒーロー『13号』がつくった、災害における人命救助訓練施設。
正式名称は『ウソの災害や事故ルーム』。
創設当初から「不謹慎だ」「本当に災害にあった人への冒涜だ」「津波だけでも取り壊せ」「某アミューズメントパークと略称が被っている。これは業務妨害だ」と批判の声が絶えない曰く付きの施設だ。
「えー、始める前にお小言を一つ二つ……三つ……四つ──1000000つ」
(急に桁が変わった……)
13号の小言。
「みなさんご存じだとは思いますが、僕の個性は『ブラックホール』。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます。僕はこれを救助に使っていますが──これは簡単に人を殺せる力です。
皆の中にもそういう『個性』がいるでしょう。この授業では、そんな『個性』をどう活用すれば人命救助に役立てることができるかを学ぶものです。
君たちの力は決して、人を傷つける為のものではない、救けるためのものだと心得て貰います」
(……そうだ)
緑谷出久、彼は無数の可能性のある個性であり、その性質上、使えない個性、応用の利く個性が発現することがあれば、時として危険性のある個性に巡り合わせてしまうこともあるだろう。
もしそのとき、自分の個性が原因で人を傷付けることになってしまえば、取り返しの付かないことになってしまうかもしれない。
ヒーローを目指す自分が、敵になってしまうのかもしれない。
そんな──可能性も、重々にあるのだ。
(そんなときのためにも、僕は備えておかなきゃいけない)
個性を活かし力にするだけでなく、個性を制御し抑制する必要があるということも、忘れてはいけないのだ。
13号の語りに気づかさせられる。
敵を倒すことがヒーローの真髄ではない。人を救うことが、ヒーローの本来の目的。
(やること……いっぱいだ……!!)
緑谷出久が浮かべたのは笑みだった。
そのとき──
「一かたまりになって動くな!!」
──相澤消太が叫んだ。
次の瞬間、何もなかった空間に
「13号!! 生徒を守れ。あれは──敵だ!!!」
個性が人を傷つける為のものではないと、確認した矢先に。
個性で人を傷つける者『敵』は、現実として去来した。
「どこだよ……せっかくこんなに、大衆引き連れてきたのにさ……オールマイト……平和の象徴……いないなんて……」
──そして、起きる。
──覚えているかな? 飯田くんが非常口になった時に書いた──『後に起きる大事件』。
「子どもを殺せば来るのかな?」
THE・補足
○No.4 猛れ『頑張れ!!』って感じのクソナードのオールマイトの台詞「屋外での大規模攻撃が愚策というのはもちろん」
AFOや読者から
「これどゆこと?さっぱりわからんかった」という感想を頂きました。
わかりにくくて本当に申し訳ありません。
もちろん誤字というわけではなく、
かっちゃんがほとんど壊したからもう屋外とかわんないよね、という解釈の違いです。よって講評のとき、八百万さんが屋内の大規模攻撃を指摘するのに「先生仰っていたとおり」という前置きがないのは、仰ってなかったからです。
このコーナーがこれで最終回となるよう、
もっと皆さんにわかりやすく、明朗快活、楽しい漫画になるように鍛えます。あああああああ!!