異世界の片隅で君と   作:琥珀色
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前回の続きだよん
主人公優樹は全裸イベのせいで実家の方に逃げ帰りました。
目に焼き付いたあのボディをかき消そうと躍起になっているうちに神梛祭が始まるのでした。
そして会場へ足を運ぶのだが…


神梛祭開催 -視千切り岩の不穏-

あの後僕はあの光景の記憶を消そうと躍起になっていた。
 「んぐあああ!だめだ…く、くそお」
 どう足掻いても蘇る、感触と身体。
その度に顔を赤らめ悶絶していた。
 「…あ」
 ふとカレンダーに目をやると、今日が神梛祭の日、それも既に始まっている。
 僕が記憶を消そうと躍起になっていてすっかり忘れていた。
 「…行かないと」
 そしてヨタヨタとベットから起き上がり、着替えを始めたのだった。

 「ねぇ、お父さん…今日、優くん…来るかな…」
 あの時、叱られてから優くんにどれだけ迷惑をかけたのか思い知らされて、すっかり自信もなくなってしまった。
 「さあね、それは優樹が決めることだから父さんにはわからないな。」
 「…だよね」
 「ああ。」
 「…じゃあ、私そろそろ行くね」
 「怪我しないようにな」
 「うん」
 いつもなら行ってきますと言って祭りへ走って行ったけど、そんな元気も出なかった。
 そして美静と合流して、会話のない屋台巡りをしていた。
 
 「…バックよし、タオルよし、スマホよし、スマホのバッテリーよし、携帯充電器よし、乾電池よし、財布よし、着替えよし。こんだけあれば大丈夫だよな」
 そして荷物をまとめて家を出て祠を抜けた。
 草原は暗かったけど、祭りの光とかが反射して少しは道が見える。
 あの日はいきなり逃げ出したけど、何か、謝っておかないといけない気がする。
 次第に早足になった。
 空は祭りの光で照らされたような紫色をしている。
 「鳳大さん、あいつはどこに?」
 「美静ちゃんと祭り行くって言ってたよ、あんまり元気がなかったけどな、きつく叱りすぎたのかもしれない。」
 「そうですか…それじゃ僕探してきます」
 「おう」
 早足だった僕の歩みは、次第に駆け足になり、いつしか全力で走っていた。
 早く見つけて謝らないとという、焦燥を孕みながら。
 
 「やっぱり、あの時のこと、優樹くんに謝らないとだよね。」
 と、重い口を開いたのは美静だった。
 「あのこと、ちゃんと謝ろ」
 「うん」
 「流石にやりすぎちゃった、美火にも無理強いさせちゃったところもあるし…美火ごめんね、あたし」
 祭り会場の近くのベンチに腰を下ろしていた私達の空気は暗闇のそのまた影にぽんと投げたされたかように暗く湿ったものになっていた。
 「…ううん、私もあんな堂々と裸見せて、あんなこと…やって。私も悪いんだよ、美静だけの責任じゃない」
 「でも…」
 「でもじゃないよ、ホントのことだもん」
 「…優樹くんきてるかな」
 「きっと来てるよ、一緒に探そ?」
 「…そうだね、行こう」
 そうして、私たちは露天屋台を探すことにした。
 
 祭り会場に向けて走っていた僕は道中気味の悪い石像を目にした。
 楕円を半分に割った様な形をしていて、不気味に、ニタァと笑うような苔むした石像。大きさこそ大きくはないが、膝丈くらいはあった。
 その石像の横を走り抜けた途端少し気分が悪くなり始めたが、構わず走り続けた。
 「…着いた」
 ようやく会場へ到着した。普段ならこんなに息が切れるほどの距離はなかったはずなのに。不思議と息を限界まで切らしていた。
 そこから彼女らと合流するまでに時間はかからなかった。
 
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 「ごめん、あたし…あんなことして」
 「私も、ごめんね」
 酷く落ち込んだ雰囲気で深々と頭を下げてきた二人。
 僕は焦って顔を上げるように言った。
 「僕の方こそ、なんかごめん」
 「優樹くんが謝ることなんてないよ、全部私のせいだから」
 どんどんと空気が悪くなるのを感じた僕はさっき見たものを二人に話した。
 「あのさ、さっきここに向かってる途中で見たんだけど」
 「?」
 「気味の悪い石像、こう、ニタァって気味の悪い笑みを浮かべてる、膝丈くらいの石像」
 「え…それって…」
 「…冗談、だよね?」
 二人はひどく怯えた様子でこちらをのぞき込んでくる。
 「え、え、何?どうしたの?」
 「優樹くんの見たっていう石像、ここら辺で結構前から怪談話とかで語られてる怖い話でね、その石像、優樹くんのこと見てた?」
 「うん、何か通り過ぎた後もこっちの方を見てた気がする、すごく気味悪くて、その後、急に気分が悪くなり始めて」
 二人は顔を見合わせてさらに表情を曇らせた。
 「ねえ、あれ一体なんて言うやつなの?」
 「…うん、それはね、視千切り岩って言われてて、その岩に見られた人をどこまでも追いかけられて、終いには四肢を千切られてしまうっていう、そういう怪談に出てくる岩なの」
 「…ヤ、ヤダナージョウダンキツスギルヨーハハハハ」
 「優くんこれ、嘘じゃないよ。お父さんのところに一緒に行こう?早くしないと危ないよ」
 「う、うん…い、行こうか」
 と、不意に会場に来た方を見た時、心臓が止まりそうになった。
 「…っ!!」
 人混みの隙間から遠く覗いたそれは、たしかにあの石像だった。
 そしてそれは、振り返って僕を見つけたように見えた。
 「…来た…来たっ…!」
 僕は腰を抜かして後ずさった
 「優ちゃんまさか来たって…」
 「…」
 「せ…石、像…が……」
 「優ちゃん早く起き上がって!早くお父さんのところに!」
 「早く!掴まって!」
 素早く二人に掴まって全力で逃げた。
 鳳大さんのいる仕切り所へ走った。他のことは何も考えずに
 
 「そうか…そんな事が」
 「ねえお父さんどうしよう…このままじゃ優くん死んじゃうよぉ!」
 「し、死ぬとか言うなよ…」
 「こればかりは…ほんとに死ぬかもしれない…」
 美静が素で弱気になっている。
 「鳳大さん、何とかならないんですかこれは」
 「何とかならないこともないんだけど、あれをやるのはリスクがあるからな…どうしたものか…」
 「…そのリスクって?」
 「私達の世界の者に、半分ほど成るって手段があるんだ。そうでなければあれは人間の君では持つことは出来ない。」
 「あれ…って?」
 「妖力を持った剣さ、私たちの間でさえ、持つ者を選ぶほどの蛇腹剣」
 蛇腹?聞きなれない単語を耳にし、はたと首を傾げる。
 「蛇腹ってなんですか?」
 「ああ、蛇のようにしなる剣さ」
 「へぇ、そんな剣があるんですか」
 その剣はここの土地の大狗様が厳重保管しているそうで、主に悪いものに侵されそうになったものや、侵されてしまった者を斬るのに使われている。
 非常に強い妖力が憑いているため、時よりその妖力が実体化する、とか持ち主を試すとか噂が立っているらしい。
 現在大狗様は大病を患っており、斬る役を負えないそうだ。
 「僕がやります。僕がその剣使ってあの気持ち悪い石像壊します。」
 「優樹君。この剣は持ち主を選ぶ。認められなければ。失敗すれば死ぬかもしれない。それでもやるか?」
 「どの道やられるんなら抗った方がいいです。やります。」
 「優くん…」
 「…優樹くん…」
 「大丈夫、たぶん。」
 「分かった。大狗様の所に行こう」
 ふと振り向くとさっきの場所からさらに近づいてきていた。
 「また近づいてきてる」
 「私の背中に」
 「へ?」
「背負おう、君を背負う方が早い」
 「分かりました」
 僕は鳳大さんに背負われて物凄い勢いで大狗様がいるという神社へ向かった。
 「あの岩、なにか弱点とかないんですか?」
 「あ、そういえばまだ説明語りてなかった」
 「?」
 「視千切り岩は単に壊せばいいというものじゃなくてな、順を追って破壊していって、札を貼り付けて燃やすんだ」
 「順?あんなただの楕円を半分にしたような岩を?」
 「なぜ千切るって名がついてるかわかるか?あれは、追い詰めた人を千切るために、人の形をとるんだ。そうして四肢を千切っていく」
 「じゃ、その順は?」
 「まず足を壊すんだ。その次は腕だ、そうしたら今度は頭を壊してから残った胴体に札を貼り付け狗火を放って焼くのさ。あれは悪いものだから見た目がどうあれ、材質がどうあれ、何だろうと燃えてしまうんだ。」
 「足、腕、頭を壊して胴に札を貼り付けて燃やす…」
 「狗火でね」
 「わかってますよ」
 そうこうしていると石段が見えてきた、と思ったらその階段を上っている
 「あれ?石段、今さっき結構遠かったのに」
 「妖力を使うと、こういう移動もできたりするんだ。ほら、着いた」
 スタッと背中から降りてみると不思議な雰囲気に包まれた境内が見えた。
 「早くしましょう、早くあれを倒さないと俺がやられる」
 「そのためには君が半妖にならないといけないからね、少し待っててくれるかな」
 言うなり走って本殿の中へ消えていった。
 待つこと数分、数珠やら大幣やらをもってきた。
 「それで半妖に?」
「いいかい?ここからは口を利くんじゃないぞ?目を閉じて意識を保つことに集中するんだ」
 「わかりました」
 「では、ゴホン!」
 ジャラッと数珠を鳴らし、大幣を大きく一つ振り、何やらブツブツと始まった。
 途端に体が重くなり、跪いた。
 「ぐ…」
 苦しさに加えて憎しみのような負の感情に包まれそうになる
 「ぐ…が…ァァアッ…!」
 苦しいなんてもんじゃない、これ。
 身体中、しかも内側から何かがのたうち回るような感覚がひっきりなしに…。
 「…憎い…憎イ…にくイ…にクい…ニくイ…」
 意識を憎悪の塊に乗っ取られそうになる。
 視界が黒いヘドロのようなもので覆われていくのを感じた野とほぼ同時に
 「意識を保て!」
 と、鳳大さんの喝の念が入り何とか正気を取り戻した。
 しばらくして呪文のような言葉は消え、身体中の重苦しさは消えていった。
 「とりあえず終わったよ」
 「カハッ…ハァ、ハァ…俺、僕は…?」
 「半妖になったよ。半分向こう側、半分こちら側の存在になったってことだね」
 「じゃあ例の剣を、早くあれを倒さないと…」
 「そう慌てるな、この社にはここ一帯を統べる土地神を祀ってるから、視千切り岩程度のものなら近づくことも出来ないだろうよ」
 「は、はぁ」
 「とにかく、さっきも話したとおり、あの剣の妖力は大きいんだ。他にも代わりになる武器はあるが少々使い方が難しくてね、失敗しやすい欠点があるんだ。その点、あの剣は使い勝手がいい。相手を縛って叩きつけたり、移動する時なんかにも遠くのものに刺して、縮めれば高速で移動、なんかもできる…かも」
 「欠点は強すぎる妖力…か」
 「そうなんだよなぁ」
 「一度やるって言ったんです、やりますよ」
 声色を変えてはっきりと伝えた。
 「わかった。じゃあ持ってくるから、待っててくれ」
 そう言って本殿へ戻っていった。



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