異世界の片隅で君と   作:琥珀色

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今回はちょっとしたネタギャグ回です


世界巡り-楼郷- 中

近くで見るとそこそこの大きさの寺だった。

 「ほら、ここ。この中よ」

 「見た感じ人いないけど、お化けとか出てこないよな?」

 「何よその年になってまだ幽霊ごときでビビっちゃってるの?まったく、優くんったらお子様ね~」

 と、美火が腰に手を当ててふんぞり返った瞬間だった

 「ァァ…」

 「!?」

 「アアアア…」

 廊下の暗がり、済の方から聞こえてきた。人のうめき声のような音が。

 「な、なぁ…今のってその、幽霊?」

 ガッチガチに硬直したまま首を美火に向けると彼女も同じく硬直したまま涙を流してビビっていた。

 「お前その年でビビるとかおこちゃまみたいなこと言ってた癖に何泣いてんだよコルァア!!」

 「だってだってだってだってほんとにいるなんて思わなかったんだもん助けて優くん!ニギァアアア!!!!また声があああああ!!ああああああ!!!」

 「ちょ、落ち着けって何パにくってん…」

 美火の真横からこちらをのぞき込む顔が見えた。

 「アイエェェェェェエエエ!!顔面!?顔面ナンデェェ!!?」

 刹那首をレロォっとねっとり舐めるような感覚が俺を襲った。

 「アイエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!?!!?!!!!」

 南無三!ここで終わってしまうのか、ニンジャ〇レイヤー

 「いやニンジャス〇イヤーじゃねぇから!!!!」

「ああああえええええとどうすれば…( ゚д゚)ハッ! 迦具土神!!」

 アワアワしながら抜刀してあたりをガンガン殴り回した。

 「美火おおおお逃げるぞおおああああ!!食らえ狗火!!100%ジャァァァァァンプ!!」

 ここを出ることだけ頭に浮かべてとりあえず思いっきり飛び去った。

 「あああああああ高すぎるううううう!!!!!」

 「…」

 「アアアアアアアアア美火オオオオオ!!!!気絶してるううう!!!」

 大パニックを起こしながら美火を抱き寄せてそのまま落下。

 想像してた激痛ほど痛くはなかったが、それでも痛いものは痛かった。

 

 ◇--------------------------------------------------------------------------------◇

 

 

 「…ん…ぅん…ここは…?」

 「やっと目ぇさめたか」

 虚ろな目を瞬かせつつもこちらを見ている美火を撫でながら続けた。

 「いい感じに基地っぽいだろ?あの後頑張って寺ん中入ってさ、狗火放ったし、火事になってないかの確認も兼ねてさ、どーやら邪を祓うもん専用みたいで、火遁(かとん)みたいな感じのじゃないみたいだった。相変わらず怪奇現象がすごくて半べそかきながらなんとかこの布とかを持ってきたってわけさ」

 「へぇ~、それはまた凄いね、頑張ってくれたんだ」

 「そりゃそうさ。めちゃくちゃ怖かったんだから」

 「私のためにわざわざありがとね」

 「そりゃ、お前の為ならな」

 「…もう」

 そう言う美火の顔はほのかに赤くなっていた。

 「さて、そろそろ行くか」

 「もう行くの?」

 美火はもう少し休んでいたいと言いたげな顔をして見上げてくる。

 「そりゃあんなおっかない所の近くでのんびりなんてできるかって」

 「…ま、まぁ、そりゃあ、ね」

 「でしょ。んじゃほれ、走るぞ」

 「うん」

 地図を見ながらただひたすら走る。

 とりあえず休めそうな場所はないか、周囲を時々見回しながら。

 ◇------------------------------------------------------------------------◇

 

結局休めそうなところは見当たらず、楼郷のすぐ側まで来ていた。

 「眠い」

 「右に同じく」

 「寝たい」

 「同じく」

 「ぁ〜…」

 「…zzz」

 「おいこら寝るな」

 「(。-ω-)zzz. . . (。゚ω゚) ハッ!」

 「とりあえず…着いた。山キツい…もう登らんあんな山」

 「やすもうよ…」

 「宿屋探さないと」

 お金は長旅になるということで20万も貰ってしまっている。

 鳳大さんはぶり良すぎて神様杉ワロリンヌ。

 「なあ、あれ宿屋だよな?」

 「ぅー…?あー…そうかもー…zz」

 「コラ寝るな」

 「(。-ω-)zzz. . . (。゚ω゚) ハッ! 眠すぎるんだもん…」

 「…背負ってやるから、ほれ」

 「ありゃとぉ…zzz」

 美火は俺の背中に身を預けるや否や即寝落ちした。

 「ったくコイツは…」

 そして宿屋らしき店の前についた。

 「すみませーん、ここ宿屋ですかー?」

 する遠くから狐の女の人が出てきた。

 「左様でございます、当宿屋は1泊3食で5千円でございます」

 「あら安い。泊まっちゃおうかしら」

 「ふふふ、面白いお方ですね」

 「いやぁ、何しろ昨日の夕方からずっと走ってきたもので、こいつも俺もクタクタを通り越して死にかけてまして…」

 「あらあら、ではご案内いたしますので、着いてきてください。軽食の用意もさせましょう」

 「あぁそれすごく助かります」

 そして案内されたのは2階の端の方の部屋だった。

 そこそこ広くて、大きな窓からは中庭の日本庭園のような庭園が良く見える。端の方なのに気にならない景色だった。

 風呂は露天で、どうやら(ひのき)の風呂らしい。植物とか同じなんだなぁと思ったが、昔はこちらの側とも交流があったと思い出して納得した。

 「取り敢えず布団敷かなきゃだよな」

 「おーい、下ろすぞー」

 人声かけて揺さぶるが起きる気配がないので適当に下ろして布団を敷いた後にたたき起こして移動させた。

 しばらく窓側の椅子に腰掛けて外を眺めていると先ほどとは違う狐が入ってきた。

 「失礼します、軽食のご用意ができましたので運んで参りました」

 「あー、ありがとうございます。今こいつ起こすんで-」

 「ご飯の匂い!!」

 ものすごい勢いで飛び起きてきた。

 「では、失礼致します」

 コトコトと食器が置かれる度に食欲が増す。

 「おぉ、軽食なのに結構数があるんだ」

 「はい、一品の量は少ないですが、その分品数を増やしてより多くの食材を味わって頂きたいということでこのような方式を取らせてもらっております」

 「ほぇー」

 「ねぇねぇ食べていいの!?ねぇねぇ!」

 「うん。じゃ頂くか」

 「いただきます!」

 「いただきます」

 目の前の食べ物をただひたすら黙々と食べ進める。

 数分足らずですべて平らげてシメのお茶を啜る。

 「はぁ~、美味かった!」

 「同じく」

 膳を下げてもらってから再度布団を敷き直す。

 もちろん俺の分も。

 「美味しかったねー」

 「だなー、これで五千円とは思えん」

 「そう?」

 「え」

 「?」

 「俺のところとかだと、こういう品のある食べ物とか宿屋って宿泊費だけで二万くらいか、それ以上取られるんだけど」

 「 」

 美火がぽかんと口を開けて固まってしまった。

 「そんな固まるほどじゃなくないか?」

 「…ぁー…、その、なんて言うか…高いよ凄く」

 「そ、そうか?」

 「ここじゃ一泊二万なんて本当にえらい人じゃないと」

 「そんなにか」

 「うん」

 恐ろしく安いんだな、ここ。

 そう思った。というか不思議にもなってきた。

 なぜここまで安いのか。

 「取り敢えずそういうことにしておこう。うん。」

 まだ日が出てはいるけど眠気と疲れがひどいので体を流して寝ることにした。

 ◇------------------------------------------------------------------------◇

 

 ふと目が覚めて周りを見回した。

 「ああ、そういえば宿屋に泊まってたんだっけか。美火は…いるな、よし。」

戸を開けると涼しい夜風が心地よく流れてくる。

 「いいもんですなぁー、こういうのも」

 一頻り夜風に当たってから俺は再び床に就いた。

 

 朝になると俺がまだ眠いのにも関わらず美火がバシバシと叩き起こそうとしてくる。

 「起~き~て~!」

 地味に痛い。

 たまに鳩尾にヒットするから洒落にならない。

 「痛い…痛いから。起きるから殴るのやめて」

 「とりゃあー!」

 「ゴフッ…」

 一番強烈なのが鳩尾に入った。

 死ぬ。無理死ぬ死んじゃう。

 「…い…た…い……」

 「だって起きないんだもん」

 「起きるからって言ったじゃないか…まあいいや、今日は楼郷を散策しよう」

 そうして美火と共に宿代を払って街に繰り出した。

 割と森モリした所が目立つ。

 森の吹き抜け的な開けたところに家々が並んでたりしてる。

 「結構街って言っても森と共生してるって感じなんだなー、ほらあそこ。すごい大きい巨木にくっつくように家が建ってるし」

 「そだよー、普通に地面に建ってるのはちょっとしたお店とか、あっちの方は割と都会じみてるでしょ?」

 「あー、たしかに。」

 「楼郷全体ではないけど、ああいったところで働く人もいるんだー」

 「お前って割と物知りなのな」

 「そりゃそうだよ、前に来たことあるもん」

 「そうなのか?」

 「うん、結構あの建物増えてて驚いたけどね」

 「へぇー」

 割と物知りな美火だった。

 雑談しながら歩いていると少し先にあまりよろしくないものが見えた。

 「なあ美火、あれやばいんじゃないか?」

 「どれ?…ぁー、やばいね」

 「どうする?あれ。助けた方がいいとかあるのか?」

 指を指しながら話している俺たちに気がついたのかあたりを見てたヤツがこそこそし始めた。

 するとよく見るシチュの《女の子を脅しまくってるやばい男達》はこちらに気が付きこっちへ向かって歩いてきた。

 もちろん女の子の髪を引っ張るという…なんと定番なシーンだろう。

 「おいテメェら何ジロジロ見てんだコラ」

 「いやべつに、なんか定番なことしてる定番のヤツらが定番な反応をしてるなぁと」

 「あ?殺されてぇのかお前」

 「えーっと、その、あー…」

 (変身みたいなことして驚かせて、怯んだ隙に一発蹴って女の子奪還して猛烈に逃げる…よしこれだ!変身とかもうあれだ!うん、あれだ、電〇で行こう!)

 そして覚悟を決めて深く深呼吸。

 「いいかテメェら、俺の変身、見せてやるからよく見とけ」

 主人公ご都合主義的スキルを発揮してベルトとライダーパスを出現させた。

 「変身! 俺、参上!」

 「んなっ!?」

 チンピラっぽいやばい奴らは一様に怯んだ。

 「俺は最初から最後までクライマックスだぜェ!!行くぜ行くぜ行くぜ行くぜぇぇええ!!!」

 剣はもう既に二本持ってるので迦具土神を抜刀して振り回しながら突っ込むと女の子を掴んでいた手を離したのでそこから加速して女の子に一番近いチンピラーズを蹴り飛ばして奪還

 「行くぞ美火!散策は中止!!」

 猛烈な速さでふたりを担いで逃走した。

 何故か追っかけては来なかった。

 「なぁ美火」

 「なにー?」

 俺達はまた宿屋の客間に来ていた。

 「なんであいつら追っかけられなかったんだ?」

 「それはほら、妖術師がどうのこうのって昔言ってたじゃない?そういう事よ」

 「いやわからん」

 「だからね?妖術師って言うのは…んー、前にお父さんが言ってたの覚えてる?」

 「ま、まぁ何となく」

 「その妖術師はなれる人となれない人がいるの私やお父さんはなれる人」

 「俺は?」

 「もちろんなれる人。半妖なのになれる人っていないと思ってた」

 「俺ってレアなケースなんだ」

 「そういうこと」

 「ふーん」

 「あの人たちはなれない人。妖術も使えないの」

 「じゃあ俺の敵じゃないの?」

 「まあ、そういう事かな」

 俺達が呑気に話してると連れてきた女の子が口を開いた。

 「あの!」

 「おおぅ!?」

 突然大きな声を出すもんだからビビったぜ…声裏返ってしまった。

 「さっきは助けてくれてありがとう」

 「いやーふつー助けるでしょー」

 「ううん、みんな見て見ぬふりだった…。私楓っていうの。桜坂楓」

 「おれは優樹」

 「私美火!」

  「…ねぇ、優樹、美火」

 「ん?」

 「どした?」

 「私を貴方達の傍に置かせてほしいの」

「えっ」




なんか疲れましたああああ…
次も時間かかりますけど書きます
面白かったら評価と感想よろしくです

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