かささぎの梯   作:いづな

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お久しぶりです。
長らく更新出来ておらず、申し訳ありませんでした。
ハンターハンターの連載再開と冨樫義博展のお陰でモチベが復活したので、更新再開となります。

12話後半~大幅改定、かつ旧13話は完全に存在しないルートになりました。
もし最新話からお読みいただける場合は、12話から見て頂けますと幸いです。


第十三話 『カサ族の宴』

若い娘達の生命力に富む澄んだ歌声。2種類の打楽器。そして大地踏み鳴らす踊り。

過酷な環境だからこそ、彼らの宴は必ず音楽と共に在る。

 

砂漠を生き抜く困難と覚悟を形にした、夜を見守る月のような歌詞。

そこに合わさる打音。刻みを入れた木片と、駱駝の皮を張った素焼きの陶器。その旋律なき伴奏には反響がない。紡ぐ音色は居留地を抜け、砂漠に染み入り消えていく。

遮るものなき無数の砂は、音すら容赦なく飲み込んでしまう。彼らの音楽を紡げるのは、水満ちて草茂るこのオアシスだけ。

だからこそ彼らは、この歌と楽器、そして踊りに、溢れんばかりの感謝を込めるのだ。

ここだけが自分たちの寄る辺であると。今日を生き延びられた感謝。そして願わくば我らの足音が、大気を目覚めさせ、命つなぐ雨雲となるように、と。

 

「これは……凄いですね」

「そうだろ? 俺も初めて見た時は言葉を失ったよ 」

 

自分たちと異なる価値観。積み重ねた文化が、敬意に値すると魂で理解できる。

彼らの音楽には、確かに何か心を打つものがあった。

 

「この歌も踊りも、すべて彼らの歴史だ。 そこには何か意味がある」

「そう、ですね」

「――つまり、彼らの酒宴も必要なことだぞ。しっかり楽しめよ」

「そう、ですかね? 」

 

え、それ要ります? 僕だけ修行でも全然いいですよ?

そんな言葉が喉から出てくる前に、師弟はそれぞれ手を引かれ人波の中心に運ばれる。

そのまま2人は、歓迎を出汁にした盛大な酒盛りに飲み込まれるのであった。

 

 

 

 

かささぎの梯

第十三話 『カサ族の宴』

 

 

 

 

エルベガ空港でウルザナと合流した後。

2人が乗り込んだピックアップトラックは、スタンドで給油だけ済ませるとすぐに街を後にする。

そして、そのまま揺られる事3時間。

跳ねる車体と一面の砂世界にいい加減飽き始めていた頃、一行はやっと目的地に到着した。

 

辿り着いたのは、まるでその場に似つかわしくない、木々茂り水溢れるオアシスだった。

一面黄色のキャンパスに、ポツンと青緑を垂らしたかのようなミスマッチ。

遠くに広がる砂漠がまるで別世界のように感じられるほど、ここは生命と色に富んでいる。

草木の中央に座すのは、豊富な水量をたたえる綺麗な湖。湖面では深紅に染まった数羽の鳥が羽を広げ、周囲にはバスケットボール大の毛玉が集まって何やらモゾモゾと動いていた。

オアシスの入り口でトラックが止まる。イナギは手荷物を抱えて扉を開ける。

すると目の前には、音を聞きつけて集まってきていたのであろう無数の老若男女。カサ族総出の出迎えである。

 

「え、なんでこんなに人集まってるんですか」

 

奥から降りてきたシュルトが若干引いている。

 

「試験前の宴で仲良くなったからな。そりゃもう人徳の」

「いや、あいつらはイナギが持ってくる酒目当てだ。期待しすぎて全員昨日から全く仕事にならなかった」

 

――そう言われてみれば、確かに視線はイナギではなくその手荷物に集中している。

確かに美味い酒持って行くと言いはしたが、君らどんだけお酒好きなのか。

ただ一つだけ言えるのは……

 

「これ、土産忘れなくてホントに良かったな」

「はい。目が血走っちゃってる人もいますし。忘れた日には暴動でしたかね」

 

少なくとも、修行どころでなくなっていたのは間違いなさそうである。

ほっと胸を撫でおろす先には、受け取ったイナギの手土産を掲げるウルザナと、謎のイナギコールを巻き起こすカサ族。

喜んでくれるのは嬉しいが、せめてこちらを見て欲しい。

 

 

そんなこんなで。

宴の前に、彼らのカサの守り神に奉納する歌と踊りがつつがなく執り行われ。

現在、イナギとシュルトはウルザナの真横に座り、あふれんばかりの料理と酒に舌鼓を打っていた。

供されているのは、今日のためにつぶしたというラクダをメインに、甲殻類らしき揚げ物やパンに汁物など種々限りなく。

味付けは意外と洗練されており、香辛料が効いていて率直に美味い。

 

が、その料理を味わう間もないくらい酒を勧められるのがカサ流である。

先ほどから挨拶に来る人がまったく途切れず、乾杯を受け、返杯を返すという行為を延々と続けている。

隣ではシュルトも酒を勧められ、キッチリと飲み干している。

あれ、お前なんで酒飲んでんの? え、自分の国では16からアルコールOK? そもそもお前12じゃなかったっけ?

 

「うちはちょっと特殊というか家庭の事情で……それに、大体お酒って少し早めに飲み始めません? 」

「うちの国も16からだが、俺が飲み始めたのはキッチリ今年の誕生日からだぞ」

「……4年なんて誤差ですよ誤差」

 

60歳の爺さんが言うならまだ分かるが、お前にとっちゃ人生の1/3だろ。

 

「今日は見逃すが、身体の成長には悪影響だからな。今後俺の弟子である内は禁酒で」

「え゛。ちょっとイナギさん、冗談ですよね。イナギさーん」

 

当然冗談などではなく。

イナギ師訓 第一条:飲酒は成人になってから。が制定された瞬間だった

そんな馬鹿な……と絶望に打ちひしがれる弟子をほっぽり出して、イナギはウルザナの方へ向き直る。

彼は浮かれる一族の様子を温かい目で見ながら、イナギが持ってきた中で一等いい酒をちびちびと楽しんでいた。

 

「イナギ、これは良い酒だな。ロマブにはないが、ロマブの料理によく合う」

「気に入ってくれたなら良かった。また今度来る時に、合いそうなやつ見繕ってくるよ」

 

対して、無言で杯を軽く上げみせるウルザナ。

壮年の風格というか、また一々絵になる奴である。

 

「さて、イナギの弟子に受けさせたいというカサの試練について、酒が回りすぎない内に話しておきたいことがある」

 

確かに前回以上の勢いで宴が盛り上がった場合、中盤以降で言われても覚えてられる自信は全くない。

イナギは座りを直して、ウルザナへ近寄った。

 

「想定よりも雨が早い。6日後だ」

「おぉ、かなり早まったな」

「カサの思し召しだろう。イナギを歓迎しているらしい」

 

ちなみにカサとは、彼らが奉ずる女神の名前らしい。

砂漠の支配者であり、一族に連なるものを助ける守り神。

その名を族名に戴くくらい、遥か昔から根付いた信仰のようだった。

 

「だったら宴が5日間、1日休んで試練ってな具合かな」

「そのことなんだが」

 

話を止め、ウルザナの探るような眼が正面から静かに射抜く。

 

「疑うわけではないが、シュルトといったか。あの弟子は大丈夫なのか? 」

「どういう意味だ? 」

「試練に臨む下地はあるのか、ということだ」

 

カサでも、あの年齢で受ける者は少ないぞ。

そう言う表情は一切変わらないが、どうやら心配してくれているらしかった。

 

――試練。即ち、カサ族成人の儀。

雨と共に移動するロマブ砂漠の固有種「ミズオイムカデ」の行進の、先頭から後尾までを生きて潜り抜けること。

ここで問題なのは、数にして100を優に超える人間大のムカデが、遮るものを強靭な顎で粉砕していく事である。

それは岩であろうと、木であろうと、生物であろうと。当然人とて例外ではない。

更にこのムカデ、水分を感知して襲う習性がある。

雨ならば常ほど鋭敏ではないが、僅かでも負傷し出血したなら群れを成して襲われるだろう。

 

可能な限り気配を消した上で、無数のムカデの間隙を見極め、安全地帯に身を滑り込ませる。少しでも乱れれば、まず死は避けられない。

生半可な者が挑むべきものではないというのは、その通りである。

ではあるのだが。

 

「今回のハンター三次試験は、興奮した獣から隠れつつ、闇夜の森を抜けて目的地を目指す課題だったんだ。その中でシュルトは、獣から一切騒がれることなく1キロは進んだからな」

 

しかも興奮を誘発する果実を持った上で、である。

敗因は、恐らく森という環境に慣れておらずバシャグモの糸を見逃してしまったこと。

そうでなければ自力合格の芽もあったと思える程度には、洗練された隠形だった。

 

「だからこと気配を消す事と、空間把握力については一切心配してないのさ」

「……そうか。ならば止めはしない」

「無理言って悪いな」

 

その言葉だけで信じてくれるウルザナ。本当にありがたい。

自然と下がった頭。気配が頷くのを確認してから、イナギはゆっくり身を起こす。

 

「厄介次いでにもう一つ。シュルトが試練を無事クリアして、()()()が差したら、手伝いも頼むぞ」

「その時は、イナギも我々の同胞に指導してくれるんだろう? それはむしろ、こちらがありがとうだな」

 

ハハハと陽気に笑い合う二人。

そんな二人の頭上では、まるで笑うように。綺麗な小傘がクルクルと踊っているのだった。

 

 

 

 

 

△▼

 

 

 

 

 

やんややんやと宴も進み、日は暮れて初日の夜。

遮る雲のない砂漠の夜は存外明るく、しかし寒さは容赦なく攻め立てる。

その冷えを切り開くように始まる、巨大なたき火。

強まる火勢と同様に、カサ族も止まる所を知らないようであった。

 

「シュルト、楽しんでるか? 」

「あ、イナギさん! はい、もうめちゃくちゃ楽しんでます! 」

 

カサ族最高ー!! と酒杯を掲げてみせると、周りの連中が我先に駆け寄り自分の酒杯とぶつけ合う。

彼らのお酒は度数が高いので若干心配していたのだが、本人の言う通りめっちゃ楽しんでいるようで何よりである。

 

「イナギさんイナギさん、なんかこれから余興が始まるみたいですよ」

 

そうシュルトが指し示す先には、色鮮やかな衣装を纏った妙齢の女性たち。

全員が暖色系統のカラフルな組みひもを左手に付け、反対の手には色とりどりの大きな毛玉を載せていた。

一歩前に出た女性の合図で澄んだ歌声が響き、その後水面のように艶やかな踊りが始まる。

その音色と動きに合わせるように静止していた毛玉が動き始め、腕から肩、胸から指先へと流れるように移動していった。

 

「うわー、昼間の歌と踊りもすごかったですけど、僕はこっちの方が好きですね」

「こっちは華やかだよな」

 

話しながらも、その踊りに目を奪われ続けているシュルト。

周囲を見ると若い男どもは大体そんな感じか、もっとアグレッシブに囃し立てている。

その盛り上がりはヒートアップを続け、余りな喧噪具合にシュルトは目をしかめた。

 

「さすがにうるさ過ぎませんか? 」

「そう言ってやるな。踊ってる女性は、みんな左手に華やかな組み紐付けてるだろ? あれは未婚の証なんだ。 で、騒いでる男性も全員未婚だな」

「あー。これって、ある種のお見合いってことですか? 」

「そうさ。それに女性側をよく見てみろ、特定の方向ばかりを見て踊ってる人も多いだろ。あれは女性側からのアピールだな」

「……なんか、半分くらいの人がこっち見てないですか? 」

 

もしかして! と元気に立ち上がったシュルトは、全力で手を振りながらステージに近づいていく。

が、半分くらい進んだところでピタッと止まると、トボトボと肩を落として戻ってきた。

 

「視線、全くこっちに向きませんでした」

「まぁそりゃ、お前成人の儀を通ってないからな」

 

厳しい環境に生きるからこそ、彼らはその個人が持つ実力を重視する。

将来性を評価されることも勿論あるが、成人の儀すらクリアしていない子供が相手にされる訳がなかった。

 

「え、だとするとあの人たちみんなイナギさん目当て? そんな儀式いつ受けたんですか? 」

「ハンター試験の時に流れでな」

「それでそんなにモテるなら、僕も受けたいんですが! 」

「……そう言うと思って、1週間以内には受けられるよう頼んであるぞ」

 

ホントですか! さすがイナギさん!! と喜んでいるシュルト。

その気にさせる手間が省けたのは良かったが、お前、念への気概はどこへいった。それとこれとは別ですかそうですか。

 

「あと一応言っておくが、儀式後に誘惑されても手は出すなよ。子供が出来たら完全に一族の者と見なされる」

「見なされるとどうなるんですか? 」

「子供が成人するまで砂漠から離れられなくなる」

「そりゃ、責任とらないとですもんね」

「いやそれはそうなんだが、離れられないのは物理的な意味だぞ 」

「まさかの軟禁!? 」

 

まぁ操作系の念能力な訳だが。

カサ族怖い。と呟いているシュルトの頭に、イナギはポンっと手を載せた。

 

「そういう訳だから気をつけろよ。具体的には寝入った後とか、夜這いとかそういうの」

「あの、やっぱりぼく遠慮しとくことに」

「ない。これは修行の一環だ」

「ぼく、なんでここに来ちゃったんだろう」

 

性的な襲撃を警戒せねばならず、しかも大当たりなら砂漠監禁。

ペナルティのデカさに遠い目をするシュルト。砂漠が嫌なら是非頑張ってほしい。

そんなことを話している内に踊りは終わり。

料理とお酒に舌鼓を打っている2人のもとに、カサ族の青年が近寄ってきた。

 

「イナギさん。もし可能であれば、前回お見せいただいた演武を今一度見せて頂けませんか? 」

 

心源流の型のことである。

以前の宴の際に余興として披露したのだが、どうやらそれなりに気に入ってもらえていたらしい。

それは嬉しくあるのだが。

 

「うーん、同じってのも芸がないしな……そうだ、シュルトお前何かやって来いよ」

「めっちゃ雑に振りますね! 」

「ほら、確かお前試験でナイフ使ってただろ。的当てとか出来ないのか? 」

「まぁ、得意ですけど」

 

じゃあやって来い、師匠命令だ! なんて背を押した後、それでいいですかね? と御用聞きの青年に確認する。

一瞬戸惑ったものの、それではお願いします! と笑顔で返事してくれた。

 

「分かりましたよ。じゃあすいませんが、何か的になるような果物とかありませんか? 」

「大きさはどのくらいがいいですか? 」

「どんな大きさでも大丈夫ですが、女性が持てるくらいだと盛り上がると思います」

 

そんな会話の後。

果物を取りに行った青年をよそに宴会の中央に向かっていたシュルトは、その途中にいた一人の女の子に話しかけた。

年のころは9歳くらいだろうか。顔立ちが整っている、快活そうな少女である。

 

「急にごめんね。お願いがあるんだけど、ちょっと協力してくれない? 」

「私? なにをすればいいの? 」

「僕と一緒に前に出て、果物を持って立っていて欲しいんだ」

 

青年が持ってきた小ぶりのメロンを3つ受取り、それを女の子に見せる。

分かったわ! と少女は頷くと元気よく立ち上がり、シュルトと連れ立って歩いていく。

が、衆目が囃し立てる前で両手と頭にメロンを乗せられ、シュルトがナイフを取り出すと目に見えて慌て始めた。

 

「ちょっと待って! 私これからそのナイフを投げられるの? 」

「君にじゃなくて、そのメロンにだよ」

「同じことじゃない! 失敗したら死んじゃうわ、他の人に頼んでちょうだい」

 

怖気付き、メロンを投げ出し逃げ出そうとする少女。

シュルトは素早くその手を取って、軽く抱きしめ耳元でささやいた。

 

「あっ」

「大丈夫、僕を信じて欲しい」

 

初めての経験だったのだろう。

一瞬でリンゴみたいに真っ赤になった少女が、小さくコクリと頷く。

その一連の流れを見せられて盛り上がるカサ族。男の野太い歓声と、女性の黄色い悲鳴がこだまする。

そこに混ざる地響きのような怒声。シュルトと同じくらいの年かさの少年たち。そしてその中心で咆哮する30くらいの男性である。

特に男性の様子は凄まじく、涙を流しながらアイヤナ騙されるな、アイヤナァアアアア!!と叫んでは、傍の女性にフライパンで沈められていた。

 

「名前、アイヤナっていうんだね。アイヤナ、怖かったら目を閉じてて」

 

置物のように動かなくなった女の子の両手と頭に再度メロンを載せ、シュルトは20歩ほど離れる。

腰元から数本ナイフを手に取ると、騒ぐ観客を落ち着かせるように両手を宙に挙げた後、無造作に右手を振り下ろした。

右側の果実ど真ん中に突き刺さるナイフ。更にもう一振り。吸い込まれるように左手のメロンに突き刺さる。

人々の盛り上がりと両手への振動から、少女は最後に残るのが頭のみという状況に気づいたらしい。

健気に開けていた瞳を潤わせて、正面の一人だけを見つめている。

そのすがる様な視線に気づいたシュルトは、にっこりとほほ笑んだ。

 

「――信じてくれてありがとう」

 

直後、水平に打ち振るわれる手。放たれるナイフ。

狙いは過たず、少女の10センチ上方。果実のど真ん中に突き刺さった。

 

成功に立ち上がる観客。湧き上がる喝采。

切れ目なく続く賛辞をよそに、シュルトは少女へと近づいて、掴んだその手を一緒に掲げる。

惜しみない拍手はより大きくなり、しばらく鳴り止まないのであった。

 

 

 

 

 

△▼

 

 

 

 

 

その後カサの男性連中にもみくしゃにされ、飲め! と出される酒を全部平らげたシュルト。

若干の疲れが見えつつも、満面の笑顔でイナギの元へ戻ってきた。

 

「イナギさん、見ててくれました? 僕もやるもんでしょう 」

「10m以上離れてズレなくど真ん中。大したもんだな」

「物心ついたころからずっと続けてますからね! 家の男は全員ナイフの扱いを仕込まれるんですが、僕は投げる方が得意なんです 」

 

得意げに教えてくれるシュルト。

場も盛り上がったし、シュルトの腕も見れたし、それはそれでよかったのだが。

 

「非常に良かったが、ちょっとアピールし過ぎたかもしれないな。……お前、確実にロックオンされたぞ」

 

そう言って、親指でクイッと背後を指し示す。

そこには先ほど協力してくれた少女――アイヤナが、ボーッとした顔でシュルトの方を見つめていた。

 

「――あれ、あの子まだ小さいから組み紐してないですよね。だったら問題ないはずじゃ」

「何言ってんだ、お前も子供枠だし、将来性も加味するって言っただろ」

 

左手に組み紐つけてるくらいの女性であれば、相手されないという意味でむしろ安全だったかもしれない。

が、相手は子どもでシュルトも子ども。

一番可能性がある年ごろの所にピンポイントで行って、思いっきり粉掛けて、しかも超好印象を持たれるなんて想像できるか。

 

「夜寝る時はホント気をつけろよ。同衾でもしようものなら、マジでここから帰してもらえなくなるかもしれないぞ」

「そんなぁ、イナギさん助けてください!! 」

「シュルトー、こっち来て一緒にご飯食べよー」

「イナギさああああん」

 

可愛らしい見た目に似つかわしくない強い力で、ズルズルと引きずられていくシュルト。

弟子の前途を思い、思わず合掌するイナギであった。

 




2話ほど書き貯めているので、次々回までは早めに更新できると思います。
感想、評価頂けると喜びます。
よろしくお願いします!

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