かささぎの梯   作:いづな

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早めに投稿出来ました。
ちなみに本作、ビスケ=ネテロ会長の直弟子説は採用しておりません。

感想、ご評価頂ければ嬉しいです!
よろしくお願いします。

※2022.12.22追記※
無限四刀流の方の名前が判明したので、トガリへと変更しました。


第九話 『闇の中の攻防』

「ほっほっほ、二次試験終了時で27名、今年は試験の難易度が高かったようじゃの」

 

40階建のビル。ハンター協会本部である。その最上階の一室、協会長室には現在二人の男がいた。

一人はこの部屋の主、ハンター協会長のアイザック=ネテロ。もう一人は会長の信任厚い事務方のマーメン=ビーンズである。

ネテロは椅子に腰掛け、ビーンズは執務机の前。部屋の奥窓からは眩しい西日が差し込んでいた。

 

「はい。確かに難易度も高いんですが、それだけではないみたいです。ある受験生が他の受験生20名ほどを惨殺したとミザイストムさんから報告が……その影響もあります」

「受験生同士の争いも試験の一部じゃからの。結果的にじゃが、試験で死んでしまっているようではそこまでだったというだけじゃよ。ハンターになってからも格上の相手とぶつかることばっかりじゃからのう」

 

勿論、悲しい出来事である事には違いないがの、と会長。その顔に悲壮感は全くない。

一方ビーンズは、何かを思い悩むようにゆっくりと口を開いた。

 

「けど、そんな人がハンターになっては……ただでさえパリストンさんが副会長に就任してから行方不明者が異様に増えて、協会上層部への信頼が揺らいでるのに」

「それと試験は関係ないわい。それにその20名を殺害した受験生、二次試験通過したんじゃろ。良しにつけ悪しにつけ、見所がなければミザイストムは合格させんわ」

「それは分かりますけど……だとしても、私はやっぱり心配です」

 

――だって次の試験担当は、正義感が強いあの人ですから。

ビーンズは、今頃三次試験会場で試験準備を整えている試験官を思い出す。

7年目のビーストハンター。その性格は熱血にして正義漢。自らに正直なのは良い所だが、先ほど二次試験終了の連絡を入れた時は、惨殺した受験生――78番に切れまくっていた。

 

「何か問題が起こってもそれを解決するのが試験官の務めじゃよ。出来なければ、それもまた力不足だっただけじゃ」

「そうなんですけど、その時に責任を問われるのが会長だから心配してるんですよ! 」

「ほっほっほ。なるようにしかならんわい」

 

まったくこの人は。ビーンズは諦めたように息を吐いた。出会った頃から何も変わっていない。

これ以上の諫言は無駄だと悟り、ビーンズは次の話題へ移る。

 

「そういえば、この前ダブルハンターのビスケさんから連絡入ってましたが、覚えてらっしゃいますか」

「はて、なんじゃったかの」

 

会長への連絡管理もビーンズの仕事である。

一週間くらい前にビスケから今回のハンター試験を弟子が受けると連絡があり、詳しくはメールで送ったから確認しとくようジジイに言っといて! との伝言をそのまま会長に伝えたのにこの体たらくである。

だから何度もホームコードは確認してくださいと言ってるのに、とビーンズはぼやく。既に慣れきった諦めの境地である。

 

「ビスケさんの弟子が今回のハンター試験受けに来てるとの事です。詳しくはホームコードを確認しといてとのことでしたが……」

「おぉ、そうじゃったの。あやつの弟子が受けに来るのはウイング以来か。しかし奴の時はそんな報告なかったかと思うが、今回の弟子はそんなに不出来なのかの」

 

ネテロは訝しげに呟く。ビスケはダブルの宝石ハンター、その育成力は協会内でも定評があった。しかも才能を宝石に例え、極上のものしか弟子にしないときている。

そんなビスケが態々弟子のハンター試験受験を報告してきた。その真意を測りかねた。

不思議に思いながら、ネテロは自身のホームコード宛のメッセージを確認する。そして驚きの声を上げた。

 

「なんと! 今回の弟子はアラマの直弟子なのか! 」

 

文頭に記されていたのは、弟子の名前。出自。そして自身の弟子ではなく弟弟子である事。

アラマ=ロード。

心源流拳法の師範であり、ネテロの直弟子である。二人の関係は古く、ネテロが修行を終えて直ぐに弟子入りした人間の一人であった。当時はまだまだ若かったが、今ではもう爺さんである。

10年ほど前からはとある国で武術指導をしていたが、そこでのある事件をきっかけに生死不明。ネテロも個人的に調べたのだが、死亡した可能性が高いということ以外は分からなかった。

 

「あやつ、生きていた――訳ではなく、忘れ形見か」

 

メッセージを読み進める。イナギがアラマの弟子になったのは事件前で、ネテロの調べと同じくアラマは死亡した可能性が高いと締めくくられている。

若干の落胆。ぬか喜びであった。

 

「会ってみるか」

 

それはそれとして、ネテロには弟子の姓に聞き覚えがあった。セラード――アラマが食客として晩年いた国の、そして事件で壊滅したはずの統治者一族の姓である。

何か事情がありそうである。そう思いながら、ネテロはぽつりと呟いた。

 

「分かりました、ハンター試験合格後に会えるよう手配しておきますね」

「うむ。後は一次、二次試験の詳報を貰おうかの」

 

面白い男だといいのだが、会うのが楽しみである。

ネテロは背後の窓から眼下を見下ろす。ぽつぽつと街の明かりが灯り始める時間帯。夕闇とのコントラストが綺麗であった。

さて、どうちょっかいかけてやろうかのう。

 

 

 

 

かささぎの梯

第九話 『闇の中の攻防』

 

 

 

 

またもや飛行船での移動である。乗り込んでから2時間後、無事目的地に到着したとアナウンスが入った。

念能力について聞き出そうとし続けたシュルトと共に、タラップを降りる。既に日は落ちていて、目の前には鬱蒼とした山林が広がっていた。

飛行船と月明かり以外の光源はない。緑と黒のグラデーション。夜は狩の時間である。無数の獣の息遣いを強く感じた。

進んで入りたい場所ではない。受験生一同次の試験内容を考えていると、陽気な声が浴びせられた。

 

「待ってたぜ! 俺は三次試験官のトガリ。早速試験内容を説明するぜ」

 

野性味溢れる男であった。上半身は獣の皮のベストのみ。深草色のズボンに黒色の地下足袋。髪は灰色で、肩ぐらいまでの長さがあった。

 

「ここはウッドヴァルトの原生林。他の地域では既に見られなくなった大型動物が多く生息している、密猟者垂涎の自然の宝庫だ。この山の中を駆け抜けて、諸君にはあそこまで辿り着いてもらう!」

 

その言葉に合わせて、距離にして30キロほど先であろうか。山の中腹でパッと光源が生まれた。

 

「制限時間は2時間。それまでに辿り着けなければ失格だ。――おいおい、安心するのは少し早いぜ」

 

確かに闇夜の山中を踏破するのは簡単ではないが、今までの試験に比べれば圧倒的に楽である。何故なら課題は辿り着くこと。如何に大型の動物が生息していても、避けていけばいいだけの話である。

受験生の中に流れていた安心した空気。感じ取って、トガリは待ったをかけた。

 

「そうだよな、ただの夜間マラソンじゃあ試験にならないよな。だから合格者は、今から渡すこいつを傷つけずに持ってこれた者だけだ」

 

そう言って拳大のケースから取り出したのは、何の変哲も無い橙色の果実である。

突如、受験生を途轍もない飢餓感が襲った。本能を揺さぶるような食欲。その対象は、目の前の果物。それを食べなければ一生治まることがないと思えるほどの、果てしない衝動であった。

 

「っと。待て待て、お前ら心強く持てよ。これに耐えられなきゃそもそも三次試験受けられないぜ」

 

今にも跳びかかりそうな受験生を見て、トガリはその果実をケースにしまう。すると暴力的な欲求がピタッと止まった。原因は、試験官の手の中にあるそれ。

 

「この果実の名前はヒトガラシ。精油を万分の1に希釈して最高級の香水なんかに使われてるが、その生育は法律で厳しく制限されている。その理由の一つは、今お前達が味わった通り、ある種麻薬的なその香りだ。この香りは人を含めた大型の哺乳類ほぼ全てに有効であり、嗅いだ者はその果実を食べることしか考えられなくなる」

 

そして香りを嗅いだ生物による奪い合いが起こるのだが、食べた者にこそ本当の不幸が訪れると試験官は続ける。

 

「これが生育制限されている二つ目の理由なんだが、食べた者は死ぬんだ。こいつの種は胃の中に根を張り、宿主の栄養を奪い、最終的には宿主自身を栄養として発芽する寄生樹だ」

 

その繁殖法の危険さから、過去にはその苗木が見つかっただけで山一つが焼かれたこともあるらしい。

そして現在栽培の許可を得るためには、ヒトガラシの樹一本につき建坪500以上の密閉された生育空間、2人以上の有資格者、5000万ジェニー以上の供託金を揃えた上で、使用目的・量の報告義務を負うとのこと。

またこの生育許可、現在は一種の利権と成り果てているため新規参入はほぼ不可能であるらしい。そんな果実をことも無げに用意するプロハンターの凄さたるや、ジャポン人もビックリである。

 

「お前達にはこれから2時間以内に、襲いかかる誘惑と動物からヒトガラシの実を守り、闇夜の山林を踏破し、目的地まで辿り着いてもらう」

 

何か質問はあるか。トガリの声に、一人の受験生が手を挙げた。

 

「守るとは、僅かな傷も許されないという事か」

「勿論だ。何かに一口でも齧られた時点で失格だ。――種を抜いたものを渡すから、安心して食べてくれても大丈夫だぜ」

 

ヒトガラシの種を食べさせる事は、繁殖させる事とイコール。流石に法律に引っかかるからなとトガリは締めた。

果実を食べても死ぬ事はないと知り、ホッとする受験生が数人。既に心で負けている、耐えるのは難しいだろう。

 

「そして最後になるが、78番。二次試験でミザイストム試験官に言われてたと思うが、この三次試験においても犯罪行為をしたら即失格だ」

「はいはい、分かってるよ♠︎ 」

「……ならいい。説明は以上だ。俺が合図をしたから、各自ヒトガラシを一つ受け取って目的地に向かってくれ」

 

ヒソカは飄々とした態度で返す。それに対して、明らかにイラついている試験官。

その年の試験官が「合格」と言えば、悪魔だって合格出来るのがハンター試験だ。逆に言えば、試験官が「合格」と言わなければ悪魔は絶対に合格出来ない。

その苦虫を噛み潰したような顔から、トガリは素直にヒソカの合格を出さなそうな気がした。

何となく、この試験は荒れそうである。イナギは一人気合いを入れ直した。

 

 

 

 

 

▽▲

 

 

 

 

 

三次試験が始まった直後、一悶着あった。

ヒトガラシの誘惑に耐えきれず、実を受け取ったある受験生がその場で食べ出したのだ。それだけでは収まらず、他の受験生用の実も食べようとかなり暴れた。

その受験生より前に受け取っていた者は問題なくスタートを切れた。イナギを含めた数人の受験生はそのゴタゴタに巻き込まれ、数分ではあるが遅れてのスタートになっていた。

 

「それにしてもヒトガラシか。栽培が制限されるはずだよな」

 

呟いたイナギの背後から、熊が飛びかかってきた。躱して一撃叩き込む。吹っ飛んだ熊に巻き込まれ、イナギを追っている動物が転がっていく。

が、それを避けてまた多種多量の動物が襲いかかってくる。

この森に入ってから、大凡この繰り返しであった。

 

「俺も能力がなかったら、衝動の抑え込みにかなり精神力使ってたよなぁ」

 

ヒトガラシの香りに対する一番の対策は、その実を完全に密閉できる容器に入れて保管する事だ。しかしそんな準備をしている受験生はおらず、各自手持ちの袋なりで包んだ上で、布地などで鼻栓をしてその影響を抑えようとしていた。

しかしイナギには念能力がある。イナギは全身鎧を具現化して香りを遮断する事で、自身への影響を抑え込んでいた。ちなみに隠してあるので、非念能力者には鎧は見えない。

 

「それにしても、シュルトがこの香りに抵抗出来ていたのは驚いたなぁ」

 

始めに試験官がヒトガラシを取り出した時。また試験開始後受け取った時。イナギは各受験生の様子をそれとなく窺っていた。

当然ではあるが、殆どの受験生は大なり小なり影響を受けていた。イナギから見て影響を受けていなかったのは、僅か2名。

まずはヒソカ。元々食欲が薄いのか、それともそれ以上に強い欲望を抑え込むことに慣れているのか。特に影響が出ているようには見えなかった。

そしてシュルト。僅かに眉をピクリと歪めただけで、大きく心を動かされた様には見えなかった。息を止めていたとかでもなく、ごく普通に呼吸をしているにも関わらずだ。

 

「あいつにも、何か事情があるのかもな」

 

弱冠5歳で天空闘技場を見に行かせる家庭環境。僅か12歳前後でハンター試験を受けにくる行動力。普通でないことは間違いない。

合格したら、念能力を教える時にはそこら辺も聞き出してみるか。そう決めて、速度を上げようとした所で、微かに悲鳴が聞こえた気がした。

1キロほど先、斜め前方。子供の声であった。丁度今考えていた、シュルトくらいの年齢の。

 

「……行ってみるか」

 

少しだけ考え、進路をずらす。

発生源に近づくと、多量の動物が居た。ヒトガラシの香りに誘われて集まってきたのだろう。イナギの方に向かってきたので、いなして避ける。後ろからイナギを追ってきた大群とぶつかり合ってるが、知ったこっちゃない。

そうして抜け切った先には――大きな大きな蜘蛛がいた。八つ目の八本足、黒々とした毛むくじゃらで、牙からは毒液が滴り落ちる。手には一対の鋏。興奮しているようで、カシャカシャと動かして威嚇している。

――バシャグモ。名前の通り、馬車の様な体躯の蜘蛛。網を張り、捕らえた哺乳類を捕食する、生来の待ち伏せ屋であった。

傍らには体に似合う巨大な蜘蛛の巣。そしてそこに掛かった人間、ミステリーハンター志望のシュルトであった。

 

「よう、生きてるか」

「……はい。なんとか」

 

声をかけると、答える声。まだ毒液で麻痺もしていないらしい。本当に捕らわれたばかりの様だ。

ここで二次試験の借りを返すのもありだろう。そう思いながら、問いかける。

 

「一人で抜けられそうか? 」

「僕の力では、無理そうですね」

 

だったら、と続けようとしたイナギを、シュルトの言葉が遮った。

 

「気にしないで、置いてってください。二次試験の時の見返りで僕が求めたのは、念についての情報です。試験中助けてもらう事じゃない」

「そんな事言ったって、お前。このままいったら蜘蛛の餌だぞ」

「それはお兄さんだって一緒じゃないですか」

 

どうやらコイツ、一丁前にイナギの心配をしているようである。

それにしても、命がかかった状況なのに思ったよりも頑なである。どうしようかと考えていると、シュルトは続けた。

 

「僕だって受験生です。覚悟はしてる。それに試験合格には間に合わないかもしれないですが、何とか抜け出して生き延びます」

 

そんな事出来ない事は分かっているだろうに、こいつはこの状況でニヤリと笑って返して見せた。

――その胆力。この年齢で、あぁ、面白い。

もうあと数十秒で後ろの動物はまた襲って来るだろうし、目の前のバシャグモはいつ飛びかかってきても不思議ではない。

決めた。とりあえず、この場はコイツを助けよう。

具腕を巨大化し、目の前の蜘蛛を全力でぶっ飛ばす。外骨格が割れ、体液が飛び散る。

そのままの勢いで振り返り、背後の大群を具腕で横に薙ぎ払う。これで暫くは大丈夫そうだ。

バシャグモの巣に、囚われてるシュルトにゆっくり近づく。

 

「あの、どうして」

「いいから黙ってろ」

 

懐からサバイバルナイフを取り出して、周をする。バシャグモの糸は粘性があり、硬い。しかし形状変化は得意である。さっくりと、バターの様に糸を切りシュルトを助け出した。

 

「ヒトガラシは無事か。それとも潰れちまったか」

「……いえ、大丈夫です。布で何重にも包んでますし、糸に絡められた時もそこは守ってましたから」

 

ポンとシュルトは上着のポケットを叩く。

潰れたと言われても何もしてやれないが、取り敢えずまだ合格の目はあるらしい。

 

「じゃあ、さっさと三次試験合格するか。走れるか?」

「はい、大丈夫です」

 

元気さをアピールしているのだろう、シュルトはピョンピョンと飛び跳ねてみせる。

絡め取られた時もしっかり受け身は取った様で、確かに身体に異常はなさそうだった。

 

「よし、じゃあ行くぞ」

「はい。あの、その」

「どうした? 」

「いえ、助けてくれてありがとうございます」

「おう、試験終わったら飯でも奢ってくれ」

「……はい! 分かりました! 」

 

うん、少年は元気が1番である。

そうして俺達は夜の山地を踏破し、かなり余裕を持って目的地に辿り着いたのであった。

 

 

 

 

 

▽▲

 

 

 

 

 

光源は山の中のロッジであった。

脇には飛行船の停泊スペースが整備されている。俺たちが辿り着いた時には、ハンター協会の飛行船と、三次試験官のトガリ、二次試験官のミザイストム、そしてヒソカを含めた数名の受験生がいた。

そのヒソカだが、衣服が所々赤く染まっている。多分迫り来る動物は全て殺してきたのだろう、生臭い匂いがひたすら不快だった。

そうして暫く経ち、試験開始から2時間が経過。ロッジ入り口のアナログ時計を確認して、トガリが宣言する。

 

「以上、これで三次試験終了だ! 」

 

この時点でロッジに辿り着いている受験生は僅かに13名。しかもその内の3名は、自らその実を食べてしまっていた。

辿り着いてから諸々理由をつけて抗議していたが、当然認められる筈もなく。今は意気消沈して合格者達を恨めしげな目で見てきている。知ったこっちゃなかった。

 

「これで三次試験も終了か♣︎ 早く移動しちゃおうよ ♦︎ 」

 

もう飽き飽きだね、なんてヒソカは隠そうともしない。

そんなヒソカを、シュルトはイナギの肩越しに警戒していた。何故ならイナギとシュルトが到着してから、ヒソカは暇つぶしの会話相手としてシュルトも認めたらしい。

そっちの子も中々面白そうな素材だね、なんてちょっと熱っぽい目で見つめては絡んでいた。そりゃそーなる。

 

「では次の試験会場に移動と行きたい所だが――78番、お前はダメだ」

「おやおや、どういうことだい? 僕はしっかりとヒトガラシの実を運んできたのに♠︎ 」

 

それに対して、トガリは頭を振る。

 

「お前は確かにヒトガラシの実を運んできた。しかしその道中、向かってくる幾多の動物を惨殺した筈だ。そしてその中には殺してはならない、希少な動物が多く含まれていた」

 

……確かに、そう言われれば試験開始時にこの試験官は言っていた。「ここはウッドヴァルトの原生林。他の地域では既に見られなくなった大型動物が多く生息している、密猟者垂涎の自然の宝庫だ」と。

密猟者垂涎、つまり密猟しなければ手に入らない希少な動物がいるという事だ。そしてヒソカは、犯罪行為をしたら即失格だと念を押されていた。

 

「確かにお前は強いだろう。だが、俺はお前をハンターと認めない。78番、失格だ」

 

奇術師の顔が奇妙に歪んだ。

見ている者に吐き気を催す、得体の知れない笑顔であった。

 

 

 

第三次試験。

合格者――9名


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