先代巫女と行く幻想郷生活   作:篠崎零花

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もうすぐで新年だと言うのに去年にも増して寒い日々が続きますね。

今回は凄く平和な感じになっているかと思います。
二次創作が平気な方はそのままどうぞ。

下から本編になっています。


第13話 現代巫女が考えた参拝客を増やす方法

次の日、朝焼けが綺麗な頃に神社へと戻った私を待っていたのは…霊華だった。

肝試し云々ですっかり忘れてた…。

どうしよ…凄く気まずい…。

 

 

なんて1人どうしようかと考えつつ、境内に向かって歩いていたら、立って周りをキョロキョロと見渡してる霊華がいたのでその方に歩きながら思った。

先に謝った方がいいよね、とかその他色々を。

 

「あ、ああ…その。いきなり消えて悪かったわ」

ね、とすら言う前に霊華がいきなり抱きついてきた。

 

や、やっぱり怒ってる…!?いきなり香霖堂へ行ったことやちょっとしたトラブルのせいで少し神社をあけてしまったこととかそういうのに言ってきそう?

 

 

……。

 

 

…………。

 

 

………………。

 

 

あ、あれ……?しばらく経ってもなんにも言われない?

それどころかなんか抱き締める力が心なしか強いような?

 

 

 

 

 

「……もう。心配したわよ、霊夢。香霖堂で急に倒れたって前に魔理沙から聞いたものだからなにかあったんじゃないかって……!」

 

え、え?

急に倒れたとかどこから聞いて…。いや、それよりも

「大丈夫よ。だからそんな風に焦らなくても平気だと言うのに」

 

そう茶化すとジッと顔を見つめられた。

ああ、うん。茶化す雰囲気じゃなかったね。ごめんよ。

 

「だってあなた…昨日も含めて八日も神社に戻ってこなかったじゃない。どこへ行ってたのよ」

 

「……え?八日も?…二日とかじゃなくて?」

 

おかしいな。一昨日と昨日を含めて二日。

私はそう思ってたんだけどな…。

 

「ええ…それがね、少しの間帰ってこなかったのよ」

 

「昨日のは確かに戻らなかったけども…。なるほど、そんなにあけていたのね」

 

私がそういうとなんか複雑そうな顔になった。

ああ、うん。1日か半日あけたぐらいじゃ、大丈夫かなって思ったんだよ。

まさかそんなに経ってるとは…ねぇ?

 

「昨晩、なにをしていたかは別にいいわ。見た感じ、大したことじゃないようだし。ただ、その前のことはしっかり話を聞かせてもらうわよ」

 

「あら、そっちは見逃してくれるのね。助かるわ。…まぁ、分かったわよ。ちゃんと話すわ。……ところでそろそろ離してくれないかしら。いい加減、あっちの川が見えそうで危ないんだけども」

 

実は若干見えてたり。

心配してもらえるのは凄く嬉しいんだけど、抱きしめる力をどんどん強くされたら困る。それのせいで体が締め付けられてなんかこう。凄い。

さすがスペルカードルールがなかった頃の博麗の巫女をやってないだけある。……いや、冗談言ってる場合じゃない。

 

「……あっ!?わ、悪かったわね。そこまで力をいれてないつもりだったから…」

 

私を離すと霊華は苦笑いを浮かべた。

なんかいよいよもって親みたいな感じだな。こう、心配してきたり色々してくれる様を見ると。

そのうちお母さんって間違えて呼びそう。

 

 

「まあ、いいわよ。それは。…とりあえず、お茶を飲みながら話さない?あんたも立ってて疲れたでしょ」

 

気遣ってそういったら、ため息をつかれた。

その上になんか納得したみたいに首を何度か縦にふった。

ため息って……。

 

「それもそうね。なら、私がお茶を淹れるわ。あなたは先に座って待っててちょうだい」

 

「あら、そう?お茶なら私も淹れられるし、気にしなくてもいいのよ?」

 

 

そう聞くと首を横にふった。

元から気にしてないってこと?

 

 

「別にそういうわけじゃないわ。単純に新しくお茶っ葉を買ったから飲ませたいだけなの。それだけだから、霊夢こそ、気になんてしなくていいのよ」

 

な、なる…ほ……ど?

うーん、なんかこんな感じでいいのか不安になってきたぞ。

とりあえず気になることを聞いておくか。

 

 

「そう。それはいいとして、里に降りてなんともなかったの?特に里の人達の反応とかそういうの」

 

「ああ、いや、まあ。……それが、ね?親子だと思われていたみたいなのよ、私達」

と言いながらかなり気まずそうに私から顔をそらす霊華。

お、お茶っ葉を買いにいっただけだよね…。

 

「まあ、いいわ。別に。ある意味間違ってはいないんだし。…親子とは言えないけども」

 

 

なんて言ってみたらなんかクスッと笑われてしまった。

なんか私、変なことでも言ったかな。

 

「いえ、まさかそんな反応されるとは思わなくってね。一応『巫女さん、前に連れてきた娘さんがいないようなんですけどなにかあったんですか?』って聞かれたことだけ教えておくわね」

 

 

「なるほど、そんな風に言われ………えっ?」

 

縁側に上がろうとした私の足が驚きのあまり止まってしまった。

いや、その、親子って…。

名前呼びじゃないのは仕方ないとして、一度しか一緒に歩いてないのにどうしてそうなった。

 

「あー…やっぱり驚くわよね。でも仕方ないと思うわ。今名乗ってる名が本名と違うと言えど、博麗ってのに変わりはないのだし。それに偶然にせよ、そっくりな部分もあるのだから勘違いされてもおかしくないわ」

 

「……あんたと私ってそんなに顔似てる?服は完璧に違うって分かるんだけども」

 

話ながら縁側に上がり、靴を適当に揃える私。

もちろんまた出る時、履きやすいようにって意味で脱いだときと逆に置いて。

 

 

っていうか霊夢になって以来、ずっと自分の顔を見てない気がする。

最後に自分の顔を見たのはいつだったっけなあ…。

 

「ええ、かなり。あと鏡ならあったはずよ?あなたの部屋に。それか私の手鏡でも使う?部屋に置いてあるから取ってこないといけないけども」

 

 

あったのか…。

っていうか手鏡なんていつの間に買ったの、霊華さん。

なんかあなたもあなたで変化してますよね。主に女性らしく。

前なんかどう見ても仕事はきっちりしますって感じの人だったのに。

…変わったなあ。

 

 

「んなら、あとで確認するわ。自室に戻ったらお札とか書かないとだし」

 

「そう。分かったわ。でも…大丈夫?鏡なんか見て」

 

こりゃまた酷い。

鏡を見ても自分の顔が映るだけなのに。

 

「大丈夫よ、顔が映るぐらい。あんまりおかしなことを言っているとお茶っ葉を()るわよ」

 

「…それ、むしろ嫌がらせにならないわよ?」

 

あらま。そうなの。

もしかしてほうじ茶になるとか知ってたり…?

そんなまさか。

 

 

 

 

 

 

 

 

居間に移動した私と霊華。

そのまま台所へ霊華が行くと少し時間をかけてお茶を淹れてくれた。

今度、少しでいいからお茶っ葉を()ってみようかな。

 

そう考えていると正座で待っている私の前にせんべいを置いてくれた。

正確に言うと背の低めな丸い机の真ん中に置かれたんだけどね。

 

 

「悪いわね」

 

「別にいいのよ。お茶には茶菓子があった方がいいでしょうしね。……それで、どうしたの?」

 

この『それで、どうしたの?』って言うのはいきなり消えてから八日も帰ってこなかったことの話だよね。

一応、ぼかして話すか…。

熱かなんかで倒れましたとかってことにして、さ。

 

「ああ、軽く熱で倒れただけよ。気にしなくていいわ。むしろそろそろお守りを売ってみた方がいいと思うのよ」

 

「そう。ならいいけども。……お守りを?」

 

怪しむように私を見ながら言ってきたけど、流してくれたみたいだ。よかったよかった。

 

「ええ、お守りを。魔除けとして作ったし、売って使ってもらった方がいいと思うのよ」

 

「そんなんでいいのかしらね…」

 

湯呑みを手にして少しお茶を飲んだ霊華は腕を組んで悩むような顔をしてきた。

そりゃそうか。祀ってる神様も分からないのにお守りっていうのもあれなのかな。

 

でも、外の世界じゃ祀ってる神様と別にお守りとか絵馬とか売ってるし、おみくじも置いてあったりするからいけると思うんだけどな。

 

「私はお守りから始めた方がいいと思うわ。神社にお守りの噂を聞いた参拝客が来て、そこから信仰してもらえたら万歳ものだし、お賽銭も増えるかもしれないから一石二鳥だと思うのだけども…。そうすれば収入源が増えて他にも手を回せるようになるかもしれないわよ」

 

「なるほど、ね。それで、どうするわけ?」

 

それはちゃんと考えてあるんだよ。

幻想郷には今までなかったもの、になるけど。

 

「これから説明書もどきを書こうかと思っててね。普通はつけないんだけども、一応つけないとなにか言われたときに困らないから。あと絵も念のために描くから…ちょっと時間がかかりそうね」

 

「へぇ、説明書もどきねぇ。それについては私も協力してあげるけども、もちろん口頭でも言うのよね?」

 

せんべいを手に取り、二~三口食べてから私は頷いた。

 

「そりゃあね。魔除けと言っても降りかかるものから守るってだけで自ら近づかれちゃあ意味がないもの」

 

私がそういうと感心したのか何度も頷く霊華。

な、なんでなんだろうね?

そこまで考えてるから、とかはなさそうだけど。

 

「因みにその知識ってただの一般人が持つようなことかしら?」

 

「そりゃもう。神社に何回か初詣に行ってるから多少はね?よく五円を投げたものだわ」

 

「へぇ、五円なのね。その感じで行くと二十五円とかも投げそうね」

 

「それは様々だから分からないわね。でも、前に見たテレビ……ああ、分かりやすく言えば情報を映像つきで流してくれる物なんだけども、そこで縁起があるって言ってたのよ。そこで私は知ったわ」

 

「字の如く…ってわけかしら。五円はご縁がありますように、とかそんなんでしょうし。お守りって増やしていくつもりなの?」

 

それに対してはすぐに頷いた。

魔除けだけではなく、厄除けとか健康守りとかそういうの考えてたしね。

破魔矢も視野に入れてるからそれなりに行けそうな気もするけど…どうなんだろうな。

 

「ええ、今のところそのつもりだけどもね?問題があるのよ」

 

「無人になってしまった時だと売れなくてお賽銭しか入れていけなくなる……ってことかしら?」

 

 

そう言われた私は何度か頷く。

とりあえず仕方ないけど、簡単な方でやるかな。

 

 

「ええ。だから、解決策がやれるようになるまで有人販売しかしないつもりよ。それでも多少は参拝客が増えてくれれば嬉しいのだけども…」

 

「ふふっ。頑張ればどうにかなると思うわよ」

 

ニコニコと微笑ましそうに私を見ながらそう話した。

そうだといいんだけどさ、私だって考えるんだからね。

それをきっかけに神社に祀られてる神様を信仰してもらえたらいいな、とかそういうの。

 

せんべいを1枚食べ、淹れてもらった分のお茶を(すす)ってから自室へ向かった。

次の時にお守りとかを売れるように。

 

 

 

因みにそのあと、霊華も手伝ってくれた。

明日は魔除けのお守りを売れそうだ。


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