先代巫女と行く幻想郷生活   作:篠崎零花

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サブタイトルでもふざけてみたいと最近思っている私です。

最近モンハンワールドではランスでチキンのようにガードしまくるのが日課です。関係ないって?

……そうですね。
では今回もごゆくりと。


第30話 名前でしか呼ばれない系巫女

さて、ここだね。

 

「小鈴ちゃーん、いるー?」

 

「いらっしゃ……って霊夢さんですか。でも、霊夢さんってそんな明るく入ってきたことありましたっけ?」

 

「そこは突っ込まなくてもいいんじゃないかしら」

 

しかも真顔に近い表情で。

たまにはいいじゃない。こう、ふざけて入るのも。

スルーされるよりはマシっちゃマシなんだけどさ。

 

「いえ、そんな風に入ってくるのは今回が初めてでしたから」

 

(それに霊夢さんがどんな人であれ、良い人だってことはよく分かりましたから。…強いて言えば今日はやけに明るいぐらいですかね)

 

な、なんか微笑ましいものを見るような視線を向けられてるような…。気のせい?

 

「ところで今日、ちょっといいかしら」

 

「どうかしたんですか?」

 

「実は最近、寺子屋のしょうじに落書きがされてるそうなのよ。…見た感じ、完全に悪意があってやってるんじゃないみたいなのよ」

 

(……落書きに悪意があるとかって見て分かるものなんですかね。あ、もしかして霊夢さんだからこそ、分かるのでしょうか)

 

 

あれ、半目で見てきた。

そ、想像で言ったのもしかして…バレた?

 

「ん、んん……とにかく、悪意があるようには思えないのよ。確か小鈴ちゃんって妖魔本、読めるわよね?」

 

「はい、読めますよ。あ、と言っても霊夢さんが一緒にいる時以外は読んでませんよ。なにせあの時に約束しましたしね」

 

(したっけ?って言うような顔ですが、霊夢さんと一緒の方が私1人で解決するより安全にすみそうですもんね。下手に妖怪を刺激したくないですしね)

 

んー…そんな約束したかなぁ。

したと言っても困ったら解決してあげるよ?とかそんな感じだったはず。

おっかしいな…。別にいいんだけど。

 

「そこで、これを読んでほしいのよ。慧音に黙って持ってきたから後が怖いけども」

 

 

「よ、よくそれだけで持ってこれましたね。大丈夫なんですか?」

 

素直に否定した。

それこそ首をブンブン振ったって言われても良いぐらいに。

そりゃ理由もあるし、理解してくれるだろうけどさ?

 

まさか小鈴ちゃんにその子供妖怪が落書きをやめるようにヒントや情報を教えるために借りる……みたいなこと、言えるわけないでしょ?

まがりなりにも私は博麗の巫女だし。

まさか悪意がないし、私には分からないからお願いするとか言えないでしょ?

 

 

…いや、他の人から巫女なんて呼ばれたことはないんだけどさ。

 

………他の人から巫女なんて呼ばれたことはないんだけどさ。

 

大事なことだから二度言ってみた。誰かが聞いてるとかそんなわけじゃないから、別にいいよね!

 

 

 

「でも読めるならあとを頼めないかしら。私は寺子屋の中で見張ってなきゃいけないし」

 

「え、ええ…霊夢さんがあんまり頼んでくるなんて珍しいですが…ええ、大丈夫ですよ。むしろ構いません」

 

……!え、嘘!?もうちょっと疑ってもいいんじゃないの!?

ほら、詳細を話してないうちから受けるなんて危ないとは思わないの!?

確かに私なんかに人を騙すような話術とかそーいうのはないよ?だ、だからって…。

 

 

「……そ、そう?…それは悪いわね。今度お礼として……そうね、小鈴ちゃんのお願いを1つ聞くってのはどうかしら」

 

「はい、大丈夫ですよ」

 

わあ…笑顔…。

 

(霊夢さんが一瞬驚くとは思いませんでした。ですが、霊夢さんがこうやってお願いしてきたんです。きっと霊夢さんにもなにかあるんでしょうね)

 

今度会った時、妖魔本にもそうだけど、詐欺とかに気をつけろって言ってあげよう。あと妖怪。特に下級とか。

そこら辺の妖怪なら頭が良いから早々やらないけど、そのうち騙されそうで怖い。

 

凄く心配だぞ、私。

 

 

 

「ま、また今度ね。んじゃ」

 

「はい。また来てくださいね、霊夢さん!」

 

…違う意味でも監視しよ。

そのうち本当に純粋な小鈴ちゃんが騙されかねないし。

 

 

(……それにしても、後を任せるって…本当に全部、ってことなんでしょうか。霊夢さんではやれないことなんですかね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず寺子屋到着。

道中霊華に出会ってさあ大変ってなるのかと思ったら正格がかなり丸くなっていた。

え、えーと…どうしたんだろ。

なにか変なものでも食べたのかな?ってぐらい凄いし。

まあ、聞いたところ大丈夫らしいし、なにより前みたいにやることは無理そうだとなんか懐かしむような、悲しむような表情だった。

 

……哀愁漂うって言えばいいのかな。前の霊華とは思えないよ。

因みに別れる前にいつもの元気な状態に戻っていた。

ついでに呼ばれ方は相変わらず『博麗の巫女』か『巫女』。

なんで私は名前なん!?

違う意味で吹っ切れてやる!

とか思って少し考えたけど、どう吹っ切れるんだろ…。

 

 

 

「待たせたわね」

 

「けーねせんせー。れいむがなんかポーズしながら入ってきましたー」

 

「……普通には入れんのか」

 

慧音に半目で見られたけど気にしないでおく。

それよりも、ボケたって分かってもらえてない?

 

「出来るわよ。でも、外の世界じゃ有名になりつつあったあの人の物まねを1回ぐらいしたくなっちゃってね。ついよ」

 

あ、慧音に飽きられた。なんでだ。

でも子供たちにうけたし、いいかな。

 

「はあ…。まあ、いい。ちょうどこれから授業をするところだったからな。霊夢、大丈夫か?」

 

「ええ。…さ、あなた達、元の場所に戻りましょうね」

 

「またれいむが敬語使った!?」

「れーむが敬語使ったー!」

 

だからやめい。私だって敬語の1つや2つ、普通に使えるっての。

 

「…戻りましょうね?」

 

「「……は、はい」」

 

 

あれ?なんであなた達の声が震えてるの?

 

 

「お、おい。その笑顔はやめてやれ。目が笑ってないぞ。…本当、そういうところは博麗の巫女だよな」

 

 

うん、原因分かった。

あとそこだけそれっぽい、って聞こえるよ?

わ、私だってやるときはやるんだからね!?まだあんまりしてないけど!

 

 

 

 

 

因みにスムーズに進みましたとさ。っていうか内容はさすが幻想郷だね。

でも、ちょくちょく私を入れるのは何故?しかも、私の口から言わないといけないような内容もなんでするん?下手したら博麗の巫女(見習い)ってなっちゃうんですけど。

 

…まあ、子供たちが楽しそうならいいんだけどさ。

―――せめて、紅白巫女って呼ぶのはやめようか。

 

 

 

 

(さて、今日の分は終わりか。そろそろ暗くなる前にこの子達を帰さないとな)

 

んー、長かった。いや、寺子屋の子供たちといたから短くも感じたけどさ。

っと、いい時間だね。外も暗くなってきたし…。

いや、寒い時期が近くなってるんだから当たり前かな?ホント、こたつが恋しくなってくるよ。

 

「よし、お前達…暗くなる前に帰るんだぞ。今日は「私が見送るわ」」

 

え、ちょっ。そこは驚かなくても…。

よく見たら子供たちもだ。どゆこと?

 

「今日はれいむ平気なのー?」

 

「ええ、大丈夫よ。あとどっかの誰かさんに子離れでもしてもらおうかと思ってね」

 

「「……?」」

 

そりゃ子供たちにゃ、子離れとかすぐに分からないか。

慧音は…ちょっと面白い顔だね。驚いてるんだか不思議がってるんだか分かりにくい。

 

「…因みに誰の子離れか聞いてもいいかな?」

 

「先代の巫女こと博麗霊華よ。もう色々と吹っ切れて大丈夫だと言ったのに未だに妖怪退治すらやらせてくれないのよ?異変は無理やり私がしてるとは言え…。自衛とかそういうのは…もうできるのよね…」

 

あんだけ体力作りと称して体を鍛えてきたのにいざ、となると後ろに下げたがるんだよね。

過保護の母親かってレベルで。

 

―――いや、血縁関係はともかくして、幻想郷における私の母親か。

 

(大変だな、霊夢も。確かに紆余曲折あって幻想郷に帰着したとは言え…。ああ、浮かべる笑顔がぎこちないね。もしかして話すらしてないのか?……ありえそうな話だな)

 

に、苦笑いされた。

いや、仕方ないんだけどさ。

 

「れーむも大変だねー。でも、平気なのー?」

 

「いい加減、慣れてくるわね…。ん?あぁ、帰りのことなら平気よ。ちょっとした妖怪なら襲われてもなんともないわ」

 

「あっ!そういえばれいむ姉ちゃんって博麗の巫女だもんね!でも…」

 

「そういえばってあのねぇ………。ま、いいわ。それとこの件は大丈夫よ。たまには私があんた達を見送るのもよさそうだしね」

 

と、言ってみたら子供たちが凄く反応してきた。

反応って言っても長らく会ってなかった親友にこれから会う人みたいな感じ。

 

…我ながらよく分からない。

 

(ふふ…。前の霊夢は知らないが、これだけは言えるかもしれないな。……今の霊夢の方が楽天家でずいぶんとフレンドリーだと)

 

「んじゃ霊夢。任せてもいいか?」

 

お?いつもの優しげな笑みだ。

さっきまでなにか考えてるようだったのに…。まあ、信頼されたってことでオーケーとしよう!

 

「ええ、分かったわ。任せてちょうだい」

 

「ああ。お前達、霊夢と一緒についていけよ。場所は自分で言うように。悪用だけはしないって言い切れるからな」

 

悪用だけ、って…悪用もなにもしないよ!?冗談でもしないっての!

強いて言えば味が分かりにくくなるよう苦手なものを混ぜて作った料理を食べさせるとかそんな感じのしかするつもりはなかったよ!?

 

―――あ、私は何故か無くなってました。多分、色々とあったからだろうけど。不思議だね。

 

「「「はーい!」」」

 

 

「れーむー、宜しくねー」

 

「はいはい、宜しくね」

 

子供たちが凄い近寄ってくる。

……ある意味凄いな。いや、何回もきてるんだからありえるんだろうけど。

 

 

 

 

因みにその後、ほぼ見送りで時間が過ぎた。…っていうか案外離れてたりするのね。知らなかった。

妖怪に襲われなかったのが凄い。

 

……いや、それが普通らしいんだけどね。下級妖怪はそれを理解しないかしてくれないらしい。

仕方ないといえば仕方ないんだろうけどさ…。あのさ…。

 

 

私を見て同情の目を向けるの、やめような?

どういう意味かはこの際いい。

そうやって見るのやめてね?心当たりがないとは言わないけど、そんな風に見られるほどやわな精神してないつもりだから!

 

それこそいつでも前向きに考える、ってことを信条に生きてきたんだからね!?

むうぅ…。どうしたものか。

 

 

 

 

 

 

「おかえ―――なんか不満そうね、霊夢」

 

「ただいま。いいえ、気のせいよ。下級妖怪にツッコミ入れたくなったとかそんなんじゃないから」

 

あぁ、うん。困ったような、そんな笑みを浮かべるよね。

ほら、答え言ってるようなもんだし。

…でも、さすがに分かるか。ああ言ったし。

 

「あ、そうだわ。最近、あなたの評判が明るくて人懐っこい巫女になっているようだけど、知ってる?」

 

「それでも名前呼び、なんでしょう?」

 

「……そうね、名前呼びよ。でも、そんなことより……」

 

うん?どうかしたのかな?

 

「―――あなた、手にしてるそれはどうしたの?」

 

「………子供たちを家に送り届けただけよ」

 

「そう…家に。…前じゃ考えられない例ね。早々おかしなことなんて起きないから大丈夫だと思うけれど」

 

「霊華の時と違うとは言え、幻想郷は幻想郷よ。楽しくふざけて生きるのなら異変と妖怪とはしっかり付き合わないと」

 

(驚いたわ。ここまでしっかりしてるなんて。……でも、そういえば今更だけども…よく記憶が一部ないというのに落ち着いてられるわね。しかも思い出す前から。………そんな諦めてるようには見えないのだけども)

 

 

お?驚いたかと思ったら真剣な顔になった。

私がなんかした?

 

「あ、そうだわ。貰ったものを置いてくるわね」

 

「え、えぇ…分かったわ」

 

と、いうことで置いて夕食を食べたのち……なんか凄い音と揺れがあった。

なにか出たのかってぐらい。

明日、確認でもしてみよ…。


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