先代巫女と行く幻想郷生活   作:篠崎零花

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たまに本編や番外編の内容を訂正したりリメイクしたりしてみています。

気になる方でそういうのも平気だよって方はもう一度読みなおしてみてはいかがでしょうか。

因みに下からが本編です


第35話 空を飛んで行く船って飛行船じゃないの?

……あの間欠泉でゴタゴタしてからしばらくたった頃。

たまに露天風呂に入ってると空になんか見えるようになったんだよね。

んで、よく見ると船みたいなの。

 

霊華もたまにその露天風呂に入るらしいから聞いてみたんだけど、そこまであんまり見てないって言われたんだよね。どうしたものかなー。

見たのが私だけ、って言うのもなんなんだかなあ。他にも見た人がいりゃいいのに。

 

 

そう思いつつ、今日は残りの分社をある程度綺麗にしつつ空を見上げる。

……今のところ見てないな。

 

「おー、今日もやってるんだな」

 

ん、この声は…

「毎日ずっとってわけではないのよ?魔理沙」

 

「おや、そうだったのか。…ところで霊夢。それとは話が違うんだが、温泉が出来たそうじゃないか」

 

ま、興味は持つよね。でもさ、大体の人…というか妖怪か。

その妖怪の面々は何故か先代の巫女である霊華が入ってることを知ると露天風呂に入るのをためらうんだよね。

 

 

 

―――なんでだろう?

 

 

「……どうしたんだぜ?そんなに悩んで」

 

「あー、いえ。霊華も入ってると知った妖怪達はほとんど露天風呂に入りたがらなくてね。それがとても不思議に感じているだけよ」

 

え、なにその納得したような顔。1人で納得しないでよ!?

 

 

(霊夢にはいまいちピンと来なくてもしょうがないか。こいつ、相手がどんなに強くても対等に話せるぐらいに肝が座ってるからな。……まぁ、相当強い妖怪でも苦手意識を持つもんなんだな。多分あいつ、霊夢だけなんだろうな、あそこまで気兼ねなく話してもらえてる相手は)

 

 

えー…なんかおいてけぼり感がある…。

あ、そうだ。話は違うけど、空を飛ぶ船について聞いてみるかな。

 

 

「ねえ、魔理沙。空を飛ぶ船を知らない?決して飛行船とかそんなもんじゃないはずよ」

 

(いやいや、霊夢。飛行船とか私は知らないからな?…いや、聞きたいことはよく分かったが)

 

「ああ、それが見たことがないんだよな」

 

んー…まあ、無理もないかな。

空を見上げてなきゃ見えないだろうし。

噂でも聞いたらおしえてあげるかな。それかそれっぽい情報。

 

 

「あ、そういや霊夢。私も入っていいか?その温泉に」

 

「え、それなら普通にいいわよ?……っていうかあんたなら無遠慮に入っていくのかと」

 

「だ、だからって引くのは酷くないか?!私だってたまにはそういうの気にするんだからな!」

 

へえ、そうだったんだ。意外。

っていうかいつもは遠慮なくやってきたのに珍しくって。

わざと引いたように見せたけど…うん、この冗談は分かりづらかったかな?

 

「ふふ、悪かったわね。ちょっとからかいたくなっただけよ」

 

「意趣返しってやつか?…ったく、しょうがないな。あ、そういや忘れてたが、(うわさ)は聞いてる」

 

なんか違う気もするけど…別にいいや。

 

「その噂って聞いてもいいかしら?気になるし」

 

(おっ、さすがに興味を持つか。ただの好奇心みたいだけど、今の霊夢だからな。そういうのもしようがないか)

 

え、私だって好奇心とかあるんだからね?

自制はしてるつもりだけどさ…。

 

 

「あれは宝船で、欲深い奴から逃げ回ってるんだとさ。それでずっと回遊してるんだってな」

 

「……宝船?あの七福神の?…うーん、ありえるのかしら」

 

「えっ、興味ないのか!?もしかしたら、金銀財宝があるかもしれないんだぞ!?」

 

いや、確かにその話はロマンだし、あってほしいと思うよ。

でもさ?間欠泉関係のあとで見るとなるとなんか…うん…。

ゴメンね、魔理沙。

 

「まあ、今度調べてみても「あれ、霊夢さん。魔理沙さんと一緒になにを話してるんですか?」」

 

 

!?

ビ、ビックリした。なんだ早苗か。

いつの間に来たんだろう。不思議だね。

 

「空に飛んでる船の話よ」

「宝船の話だな」

 

 

「ああ、そうだったんですか。それなら確かに見ますね。今だって空を飛んでますし」

 

「えっ?」

「そう?」

 

と各々の反応しつつ、早苗の見る方へ視線を向けるとちょうど雲の間に隠れるところだった。

タイミングいいんだか悪いんだかよく分からないネ。

 

 

「……って早苗も見たこと、あったのね」

 

「私も…って霊夢さんは見てたんですか!?なんで動いてないのか不思議なくらいなんですが…」

 

「え、ほら。たまにしか見かけなかったものだから別にいいかなって思ったのよ」

 

それにほら、まだ空を飛び回ってるだけだし。それ以外は…

いや魔理沙。その顔やめようね。

金銀財宝が欲しくないって言うわけじゃないけど、今は少なからず参拝客が来るし。…ほとんど守矢神社の分社に来てるけど、うちの神社にも少数は来てるから。

 

本当だからね!?前よりは博麗神社(こっち)にも少しは来てるんだからね!?お賽銭だって多少は入ってるんだから!

 

…いや、自分の中でこう叫んでも意味はないか。

 

 

(やっぱり前の霊夢と今の霊夢とじゃ違うんだな…。分かってても驚きしかないぜ)

 

「あ、なら霊夢さん。ちょっといいですか?」

 

え、なんで手招きするん?

普通に話せばいいだろうに。

 

 

 

 

「んで、どうしたのよ早苗」

 

「諏訪子様に妖怪退治を行えば幻想郷に馴染めるだろうと言われてまして…。よく妖怪退治をしている霊夢さんと行けば大丈夫かなー、なんて考えてたり…」

 

(この霊夢さんなら、今までのことを考えても信用できますしね。それに先代の巫女の方に一時期鍛えられてたそうですから背中も安心して預けられそうですしね)

 

えーっと、何故に私?

フツーにそのお願いは聞いてあげるけどさ。

連れてくなら宝船とやらに興味のある魔理沙でもいいだろうに。

 

 

「あー、いいわよ?ただ、本当にサポートするだけだからね。そこは覚えててちょうだいよ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「……そういうわけだから魔理沙、あんたは―――ってあら?」

 

あれ、そこにいた魔理沙がいないんだけど。どこに行った?

 

「もしかして、我慢しきれずに行ってしまったとか?」

 

「……それはありえそうね」

 

(魔理沙さんが行ったとなると…どうましょう。行かなくて済んでしまいましたけど…。あ、そうですね、違うことでもしましょう。霊夢さんなら提案を聞いてくれるだけでもしてくれそうですし)

 

 

 

「あ、なら霊夢さん。ちょっと霊華さんを交えて守矢神社でお話しませんか?良い機会だと思うので是非」

 

「まあ、せっかくのお誘いだし…分かったわ。ちょっと呼んでくるわね」

 

絶好のチャンスだろうしね。

さて、先代の巫女をどれだけ今の幻想郷に馴染めさせる…いや、スペルカードルールを覚えさせられるか勝負だ!

あと性格を丸くするのもコミコミで!

 

「分かりました。ならここで待ってますね」

 

「悪いわね、早苗。すぐに呼んでくるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

守矢神社で今後のことを話すってことで霊華を連れてくことに成功したナウ。

早苗が驚いたように見えたのはきっとキノセイ。

 

「あ、私とか早苗のあとをついてくれば普通につくから霊華はなにも気にしなくていいわよ」

 

「元からしてないわよ。それにしてもどうしたのいきなり」

 

「なんでもないわ。ただちょっと今後についてお話するだけよ」

 

 

(…目が笑ってない笑顔を浮かべるなんてなにを考えてるのかしら。大したことじゃなければいいのだけれども…)

 

 

フフフ…妖怪はまだしも、人にはある程度優しくなってもらうからね。覚悟してな…!

 

いや、覚悟もなにもいらないね。うん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく空を飛んでいると守矢神社が見えてきた。

いやぁ、やっぱり楽だね。

 

「私は先に諏訪子様や神奈子様に事情を説明してきますね。お二人は先に話し合っててください」

 

 

とのことで一室をお借り中。

早苗も大変そうだねぇ。

 

 

 

「それで、一体なんの話なのよ」

 

「…それはね、あんたはまず私に過保護すぎるわ!もう私は色々と大丈夫なのよ!少しは離れて見てちょうだいよ!それに妖怪以外にも冷たく接しすぎ!せめて人間とかには普通に接しなさいよ!無理にとは言わないけど、あまりにも突き放しすぎてるのよ、あんたのその態度が!言わないと分からないのかしら!?」

 

 

目を丸くするって、あの顔のことを言うんだな…。

そう思えるぐらいに霊華が目を丸くした。

多分驚かれてるだろうけど、事実なのだから仕方ない。

少しでもいい。里の人達にも私に接するみたいに自然に接することができないのかなって。

きっと霊華をよく知る人は前より減ってるだろうし、いたとしても心当たりがあるのはあの1人だけ。

 

ならもうなにも気にする必要はないはずなのに。

 

 

(まさか説教まがいを受けることになるなんて…。霊夢も大分変わったわね。…一部からは前の霊夢とは思えないほど別人だって思われてるみたいだけど)

 

「……ふふ、もうあなたもそこまで言えるなら大丈夫そうね。でも霊夢?」

 

「な、なによ…」

 

な、なにその笑み。ほんと母親と間違えそうなぐらい落ち着いてる笑顔なんだけど。

もうこの人がお母さんでいいよね?

 

「あなたも、もう少し欲を出していいんじゃないの?」

 

えっ。

 

「わ、私だって欲はあるわよ!……そう、あるはずなんだから!」

 

呆れないで!?

しかもまさかの今の私の発言の時に早苗が諏訪子と神奈子を連れてきたもんだからさあ大変。

 

 

「……やっぱり麓にいる巫女って」

 

「ああ、恐らくそうなんだろうね」

 

ほらーそうなるー。

弁解するの大変なのにー。

 

「私はちゃんと欲持ってるわよ!?人並みにはあるわよ!?」

 

あっ、あの2人…いや、二神?二柱?が生暖かくこちらを見てるような気がするし、どうしてこうなった!

 

「霊夢さんも苦労してるんですね」

 

「そう思うんならなにか助け船を出してくれると嬉しいんだけども!?」

 

あっ、『頑張ってね』みたいな笑みを浮かべてきた。

もう、どーするのこれー!

 

 

 

 

―――その後、欲がないとは言いきれないとなるまでにそれなりの時間を要した。大変だったよ…。


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