先代巫女と行く幻想郷生活   作:篠崎零花

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第44話 運と運命は別だと思うの

その後、しばらくして妖精達がなんか結構遊んでいるのを見た。

もちろん弾幕ごっこなんだろうけど、なにをしていたんだろうね。あれは。

 

まぁ、その前にも少しあったんだけどね。

そう、また文がきた。

外の世界でいうパパラッチみたいだれ、あそこまでいくと。

しかも弾幕と一緒にあのカメラに撮られるとなんか変な感じがしたし。

魂ぬきとる、なんて昔のあれじゃないだろうけど、それを疑っちゃうような、なにか変な感じのもの。

しかも、そうやって撮る烏天狗は1人じゃなかったみたいで、続くようにして、“姫海棠(ひめかいどう)はたて”って名乗る子もきた。

ほんと、なんだったんだろう。

悪巧みしてる様子じゃなかったし…うーん…。

 

 

 

 

…にしても、寒すぎやしませんかね?

一応私も修行はしてるんだけどさ、寒さが耐えがたいものになってきてるんだよね。

あんまり経験してないから慣れないんだよねー…。

 

 

「本当、よくあんたは平気よね……先代の巫女だからかしら?」

 

「あら、そうでもないわよ。案外、私でも冬は寒いもんよ?」

 

 

なら巫女装束の上になにか着たらいいんじゃないかな。

私なんてコタツに入りながら霊華曰く“ちゃんちゃんこ”っていうらしい奴を羽織(はお)ってるほどなのに。

 

「そんな格好で外に出てるからこそ、なのよ?見てて寒そうだわ」

 

「そ、そうかしら……」

 

うんうん。

むしろどうして悩ましそうにするのかちょっと分からないかな。

 

 

 

 

「うぅ…寒い…ってあれ?霊華さん、そんな格好で寒くないんですか?」

 

「ん?…あら、早苗じゃない。そりゃあ寒いわよ?……少し、だけども」

 

 

ずっと見ていたけど、震えてないよね。

 

 

「少し寒いなら、なにか着ればいいんじゃないかしら。…例えば暖まるまで、とか。駄目なのかしら?」

 

「駄目じゃないんだけども、動けば大丈夫なのよね。冬ならなおさら、ね」

 

(ど、どれだけ修行をすればそうなるんですかね…。とんでもないですね、霊華さんは)

 

 

ん、あぁ…そうだ。ちょうどいいから暖かいものでも出そうかな?

 

「早苗、なんだからあがってちょうだい。霊華もそろそろ入らない?」

 

(なるほど、なにか淹れるつもりなのね。…なんだか悪いわね)

 

「あ、なら遠慮なく。……ちなみに分社も掃除はしたんですか?」

 

 

そりゃ、もう

「―――寒いし、早く暖まりたいから全部しっかりやったわよ」

 

(やってくれたのはすごくありがたいのですが、なんか理由がサボりたいからやったと言わんばかりに感じるのは私だけでしょうか。不思議ですね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

茶碗蒸しもどきを作ってみていたのでお茶と一緒に出してみた。

外の世界で食べたような感じにはなってないかな、とは思っている。

 

「それで、早苗。あんたからこっちに来るなんてどうしたのよ」

 

「ああ、そうですよね。実は前に…とその前に一緒に行ってもらった件、覚えていますか?」

 

うん、覚えてるよ。

自信をもって頷けるぐらいには覚えてるよ。

 

(なるほど。通りで前にいなかったことがあったのね。納得がいったわ)

 

 

「覚えているけども…どうかしたの?」

 

「あの後、色々とありまして。紫さんって妖怪が来たんですよ」

 

あぁ、うん。スキマを使って行ったんだろうね。

 

「それで、どうかしたの?来ただけじゃないんでしょ?その紫とやらは」

 

「はい、そうなんですよ。それで、外の世界では等身大の巨大ロボができたって言ってましたね」

 

なんか動かなさそうだなぁ…。

いや、そういうファンにとってはいいのか…。

 

「へぇ…。でもそういうけど、それってブロッケンの妖怪っていうような現象なんじゃないのかしら?」

 

「あれ、霊華(あんた)は知ってるの?」

 

 

しかも、現象って言いきってたもんね。

 

 

「ええ、多少はね。でも、それがどうかしたの?」

 

「どうもこうも、早苗と私はそんな情報が分かるような話なんてしてないわよ?…まさか、勘とか言わないでしょうね」

 

 

(言ったりして…。なんかありえそうです。霊華さんならきっと)

 

 

「ええ、言うわよ。…だから不思議なのよね。なんでそんなのを調べに行ったのかが分からないもんだから」

 

「……普通にブロッケンの妖怪として調べにいくのはつまらないじゃないですか。なら、里を襲おうとする巨大ロボットとかって考えて行った方が楽しいと思ったんですよ。幻想郷ならありえてもいい話ですし」

 

「なるほどね。どおりで霊夢も連れていくわけだわ。うんうん、あなた達のような子が育ってくれて私も嬉しいわねぇ」

 

その言い方をするけど、誰の母親なのかな?霊華?

 

「まるで母親みたいなことをいうのね。…でも、外の世界で出来たとしても外見とかそういうのだけかと思うんだけどもね。あぁ、でもガンプラ?だとかなんとかって言うのは聞いたことがあるわね」

 

「ええっ!?そうなんですか!?」

 

わ、分かったから勢いよく上半身を近づけないでね。

結構ビックリするんだから。

 

「だって、それってガンダムのプラモデルって意味なんですよね!知ってるだなんて、羨ましい限りです…!」

 

「そ、それはちょっと大げさよ…」

 

(まあ、思わず苦笑いをしてしまうほどの勢いだものね。しょうもないかしら。――それよりも、この2人結構仲良いわね。そっちの方が不思議だわ)

 

 

 

 

 

 

「お、おお?いつものメンバーがそろってるなんてなんか異変でも起きるのか?」

 

…ん。…んん?

この声って…

 

「あ、魔理沙さんじゃないですか。…いえ、異変でもなんでもないですよ?私は単純に前に連れ出した時の結末を教えに来ただけですので」

 

「なるほどな。だから冬なのに来てるのか」

 

「そういうあなたも冬なのに来るなんて、そんなに霊夢と仲良くしたいのかしら?」

 

「そ、そんなんじゃねぇよ!?単純に霊夢がなにしてるのか見に来てるだけだからな!?」

 

な、なにが違うんだろう。

疑問だなぁ。

 

「あら、そうなの?だったらどうして来たのかな。私、すっごく気になるわ~」

 

「あ、確かに。見に来たって割には脱いでるものね」

 

手にしてる上着を今さら隠したって遅いよ?

と、いうか見えてるから。隠しきれてないから。

 

「そ、そりゃ私だって霊夢と話ぐらいしたいさ。……そういや、白玉楼に顔を出したか?」

 

「白玉楼?これまた変わったところね。…そんなとこなんて、あったかしら」

 

なにせ聞いたことないからなぁ。

いや、思い出せばいいんだろうけど、いかんせん記憶だからなぁ。私のじゃないし。

 

「私も初耳ですね…。魔理沙さんは行ったことあるんですよね?」

 

「そりゃあな。そん時は春なのに冬が終わらなくて大変だったんだ。…霊夢も行ってるんだが、まあ今のお前とは違うし、分からなくてもおかしくはないな」

 

私からすれば冬が終わらない方が問題です。

っていうかそんなことあったんだ。…いやだね、そんな異変。

害がなくても私だったら気づくなりすぐに解決するレベルで。

 

春っていいんだよ!?昼寝とか夜の寝つきがよくなるんだから!

 

 

 

まぁ、そんなことはさておき

 

「んで、その白玉楼がどうしたのよ。早苗の話の内容とは思いっきり関係ないわよ?」

 

多分途中から来たから、っていうのもあるし、聞いてないんだろうけどさ。

 

「いやな、冬が過ぎたら1回だけ行ってみないか?桜が綺麗でな、博麗神社よりもすごいんだぞ」

 

「その話!もっとくわしくっ!」

 

(コ、コタツの机をバンバン叩くなんて花見がそんなに好きなんでしょうか。食い付きがよすぎですよ…)

 

「わ、分かった分かった。でも早苗の話はもういいのか?」

 

「確かにさっきまで巨大ロボットかなんかの話してたものね。…区切りがちょうどいいと言えばいいんでしょうけど…」

 

「いいのよ。気になるから話してもらえるかしら」

 

「んな焦らなくたってちゃんと話すから。な?」

 

んならいいんだけどね。

さて、魔理沙の分もお茶を用意するかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戻ると早苗がいなかった。

霊華曰く『私が霊夢さんに話したいことは話したので帰りますね』とのこと。

そ、そういうもんなのかなあ。不思議だ。

 

「おう、ありがとな。…んで、白玉楼の話だったよな?」

 

「ええ、そうよ。桜がここより綺麗だって魔理沙(あんた)が言ったばかりじゃないの」

 

 

(すねると(くちびる)をとがらせたりするからすごく分かりやすいわね。…まあ、この霊夢ならでは、なんでしょうけど。……でも、そうやるのはわざとなのかしら?)

 

 

「そんなわざとらしくすねるなよ。そういうのはちゃんと話すって短期間付き合えば分かることだろう?」

 

「んなもん分からないわよ!」

 

時間がなきゃそういうのもほとんど分からないよ!?

わたしゃ、心理学とかにたけてるわけじゃないんだからね!?

 

「おっと、それもそうだったな。悪い悪い。んで、白玉楼についてなんだが、まず簡単に言えばあの世、冥界…だな。幽明結界だかなんだかっていう結界が薄まったままらしいから、いつでも入れるみたいだぜ」

 

「もうそれじゃ知る人は知る桜の名所ね。…この神社もいいとは思うけども、冥界まで行って花見なんてだいぶ度胸がいりそうね」

 

結構あっさり言うんだね、霊華は。

…いや、霊華だから言える…のかな?ありえる話だからちょっと怖いんだけど。

 

「…本当にそんな感じなんでしょうね。んで、魔理沙。それって今度いくって話なのかしら?」

 

「ああ、そうだな。ついでの花見のお誘いだぜ。あぁ、あんまり騒ぐのもあれだからお前達だけでいいかなと思ってる。ただ本題は違うけどな」

 

 

 

ほ、本題…?

ってだいぶ真面目な顔だね、魔理沙。

いつもはあんまりそんな表情しないのに…。

 

「本題ってなによ。まさかとは思うけど、私のことなんかじゃないわよね」

 

「いや、お前のことだよ霊夢。…あの異変からなんも起きてないか?そればかりが心配でな。聞いてもいいんだが、その…なんだ」

 

「単純に照れ恥ずかしいとかっていうんじゃないでしょうね。やっぱりそういうところはあなた達も子供ってところかしらねぇ」

 

う、うん?別に友達同士なら普通だと思うんだけど。

例えライバルだとしても無関心でない限り気にはするでしょ。

 

「う、うるさい!なんだっていいだろう!?…そ、それで大丈夫なのか?なんかとり憑かれそうとかないよな?」

 

「そ、それは心配しすぎよ。もう私もなんともないから…。あぁ、強いて言えば霊夢だって名乗る子から現代で楽しんでるよって夢で言われたわね」

 

「――――!?」

 

 

(い、入れ替わってるってことか?!でも、現代で楽しんでるねぇ…。……こいつら、案外精神力あるんじゃないのか?いや、あの霊夢は元からだったか?)

 

「なるほどね。…よかったじゃない、霊夢。元の人格の子が消えてなかったみたいで」

 

「いや、お前もだろ?霊華。よく1対1で修行してきた時に言ってたじゃないか。“今まで考えてなかったけども、元々いた人格はどうなったのかしら”とかそんなん。…違うか?」

 

 

な、なんか急にイタズラっぽく笑い出したんだけど、どうしたの魔理沙。

 

「そ、それはいいじゃない。私だってそういうのは考えるのよ?」

 

「普通はそんなもん、さとりとかそんなんじゃなければ確認するのも無理なもんだと思うんだけどな。ほら、どうなるか分からないだろ?」

 

 

あー…それもそうだね。

でも

「今回は偶然分かったんだからいいんじゃないかしら?…ただ相手も戻れないとかなんだとかって言っていたわね」

 

「…つまり、お互いがお互い戻れないってわけか。……ちょっとレミリアんとこ行ってみないか?あいつなら分かるかもしれないし。どうだ?」

 

運命を見れるあの吸血鬼のところに?

うーん、可能性が見れると言っても、なぁ…。

 

「そうね。霊夢、一応でもいいから見てもらいましょ。――ついでに私のも見てもらうわ」

 

「凄い悪いんだが、なにを聞くつもりなんだ?」

 

あ、それ私も気になる。

なにを聞くんだろう。

 

「私も知りたいわ。霊華がいいなら教えてくれないかしら?」

 

 

そう聞くと意を決した表情をして――

「…私の来年の健康運を、ね」

 

 

(思わず私と霊夢が同時に霊華のほっぺをつねってしまったが、別に大丈夫だったよな?…いや、むしろツッコミたくなったのは悪くないと思う。うん)

 

健康運なんぞ最近大吉から大凶までしっかり入れたおみくじか守矢神社で見てもらいなよ。

レミリアに見てもらうようなことじゃないし…。

やれやれ。

 

(あ、霊夢が呆れながらどっか行ったな。……なにをするんだ?あいつ。あ、もしかしておみくじか?最近大吉とかも入れたとか言ってたしな。ま、いいか)

 

――その日は特になにもしなかった。強いて言えば雪おろしはした。それぐらいだった。

寝る前にそのことだけを思い出してから私は明日、なにをしようかと考えつつ…寝てしまったようだ。


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