先代巫女と行く幻想郷生活   作:篠崎零花

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第45話 雪がつもったらやることは1つでしょ?

雪が降ってしまったので、おろしていると

「おう、霊夢。朝から大変そうだな」

 

「ん?あぁ、仕方ないわ。おろしておかないと後々面倒になるし、なにより力が不要になったら浮いて少しずつ少しずつおろせば楽だもの。それに……」

 

 

そう区切って私は守矢神社の分社(サイズはお地蔵が1体入る大きさ)の反対側にある空き地に視線をうつしてみた。

分かってくれるかな?

 

 

「それに…なんだ?おろした雪でなにかするのか?」

 

するよ!

っていうかあーたはまたこの神社に泊まってったのか。やれやれ…よく泊まる人だねぇ。

きっと昨日は霊華になんか言われたのかな?

 

ん、今はそっちじゃないね。

 

「ええ、そうよ。…ところであんたはかまくらって知ってる?外の世界じゃ一部地域でよく見かける冬の名物なんだけども」

 

「……紅魔館はいいのか?昨日、霊華と行くとか話してただろ」

 

えー…せっかく雪がふったならそっちでしょ?ついでにゆっくりする前に私なりの修行をしますがな。

でも、霊華曰く“基礎をやっているだけ”らしい。元外来人でなおかつ巫女やってない人間が急にやれるかっての!

今まで妖怪や神様と渡り合っても、平気だったのはスペルカードルールがあるから、だったんですー。

 

(こいつ、急に不満そうになったな。…まさか、最近やるようになった基礎練習ってやつが関係してるのか?うん、ありえそうだな。特にこいつなら)

 

 

「はいはい…。んで、かまくらでゆっくりしてていいのか?」

 

「ええ、いいわよ。基礎を練習して、応用とか出来そうなの片っ端から試してみるだけだもの」

 

「…お前、前に霊力でなんかしてたときも驚いてたもんな。……せめて専門家の前でしたらどうだ?私じゃ助言もなんもできないぞ」

 

霊力はそうだろうけど、あなた努力家でしょ?

文々。新聞にもそれっぽいの出てたよ?いや、口には出さないけど。

それになによりも1つあるしね。

 

 

「できるわよ、あんたでも。だって親友兼ライバルなんだから、ある程度手の内が分かるじゃない?そこからなにに応用できそうなのか教えてほしいのよ。――ほら、どうしても私は弱いじゃない?最低限妖怪を追い払うぐらいはできないと後々大変だから」

 

 

(いや、お前充分追い払えるだろ。スペルカードルール抜きでも油断しなきゃ、な?…まさか自覚なしか?それとも単にそこまで鍛えられたことに気付いてないだけか。……やれやれ。お前も変なところが抜けてるんだな。霊夢同様に)

 

 

「はいはい、分かったよ。ただし霊華のような助言は期待しないでくれよ?」

 

「いいえ、いいのよ。むしろありがとね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…少し遊んだだけじゃないですか。

白い目で見なくたって…。

 

「お前な、試すのもいいけど、お札でハートマーク作るのやめないか?」

 

「……幸せ大入りハートマーク、なんちゃって」

 

(お前なぁ…。いや、気持ちが分からなくもないが、ハートマーク以外にもなんかあるだろ。星辺りしか浮かばない私も私だが)

 

「ちなみにかまくらになんかしたのか?やけに違う気がするんだが」

 

 

ん?あぁ、それはね?

「結界の練習をかねてかまくらに張ってるのよ。だから余計にあったかいでしょ?」

 

「器用なことをするんだな、霊夢。それとも、感覚を覚えるためなのか?」

 

うん、感覚をつかみたくって。

私も自分でやってみなきゃ簡易結界すら張れないから。

え?博麗大結界?……知らない子ですね(目そらし)

 

「なるほどな。…んで、今はなにしてるんだ?」

 

「大体の修行を終えたから第2のかまくらを作ってるのよ」

 

(な、なんでそんな自慢げな表情でこっちを見るんだ…?なんか違う気がするんだが…2つもかまくらなんているのか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あぁ、もしかしてかまくらを向かい合わせにしたのはお互いが見やすくなるようにしたかったからなのか?)

 

「ふぅ…いい汗かいたわ………って、あなた達、そこに白い大きなかまなんて作ってなにしてるのよ。これから紅魔館へ行くのよ?」

 

「これはかまくらよ、か・ま・く・ら。冬の季節に雪がふると見かける地域は見かけるものね。…外の世界ではテレビとかでよく見たんだけども、幻想郷だとしないの?」

 

「そういやあんまり聞かないな…。勝手に入ってくる文々。新聞にもそれっぽいの書いてなかったし」

 

あぁ、私のところにもそういえば来るね。

文々。新聞って新聞紙が。

私はあんまり読んでないんだよね、あれ。

 

「私もあまりそれでは見なかったわね。それ以前も私は見てないわ。そもそも、かまくらとかそんなので遊んでる場合じゃなかったもの」

 

…あぁ、それもそうか。

んなら今なら遊べんでしょ?

 

「んじゃ、今度一緒に遊びましょ?あんた、今はもう先代の巫女なんだから遊び放題よ」

 

「気が向いたらね。とりあえず…いつまでそのかまくらに引きこもるつもり?」

 

うん、手を引っ張って連れていこうとするのやめてね?

ていうか力強いな。さすが先代。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んで、結局連れてこられるのね。

うーん、いくら上に着るものを持ってきてくれたからってこんな寒い日に紅魔館へ行かなくたって…

 

「あら、魔理沙。ついてきたの?」

 

「お前が霊夢をそういう風に引っ張って行かなかったら来なかったさ。ま、そうしなくとも大図書館に用事があったから関係ないけどな」

 

なら、博麗神社じゃなくって紅魔館へすぐに行けばいいと思うの。

そう思うの、私だけかな。

 

(そりゃ半目で呆れたように見てくるか。…いや、思っても口にしてこないだけマシか?)

 

あっ、美鈴が戻ってきた。

 

 

「大丈夫、だそうよ。とりあえずエントランスに咲夜が待ってるって言ってたから入ったら?私は庭に用事があるし、門番もやらないと、だから案内は途中までね」

 

「美鈴、突然だったのにありがとね。元はと言えばどこぞの誰かさんが冗談で運を見てもらいたいって言ったのが始まりだったから気にしなくともよかったんだけども」

 

(そ、そんなことを言いながら霊華をチラチラ見るのはどう見てもその人が言ったって言ってるようなもんだぜ?いいのか?…関係なくともお前の先代の巫女なんだぞ?)

 

「そ、それは言わなくていいのよ。…まあ、気になるのは嘘じゃないけども」

 

――冗談じゃなかったの!?

それなら、せめて冗談も真顔で言うのやめてよね?!

 

「なんか今の霊夢は違う意味で苦労してるね。アハハ、まあ頑張ってね」

 

半ば棒読みで言われても、なあ…!

 

 

 

 

 

 

途中まで案内した美鈴は庭の方へ向かった。

へぇ、少し見えたけど、庭の手入れもしてるんだ。

門番兼庭師なのかな?

 

「あら、いらっしゃい。…魔理沙もいるのね。んま、いいわ。霊夢と霊華がいりゃ抑止力になるでしょうし。……特に先代の巫女だったそこの霊華の方が」

 

(いや、現在進行形で先代の巫女なんだけどな?分かってて行ってるのか?)

 

「それでレミーはどこにいるのかしら?」

 

れ、霊華…それはわざと言っているのかな…?

ちょっと笑いをこらえるの、辛いんだけど…

 

「おい、霊夢。そうやって笑いこらえるのやめてやれよ。可愛そうだろ?」

 

「そういう貴方も笑いをこらえているじゃないの。どっちもどっちだわ。…んん、それでレミリアお嬢様に用があるのでしょう?」

 

(あ、あぁー…!レミーじゃなくてレミリアだったのね。忘れてたわ)

 

その顔、やっぱりレミリアって言うの忘れてたんだ。

前も来たのになんでだろうね?まさか天然?

 

「ええ、そうよ。それで…あなたが案内してくれるのでしょう?咲夜」

 

「はいはい、ちゃんとするわよ。霊夢と魔理沙もちゃんとついてきなさいよ。特に魔理沙は、ね?」

 

「わぁーったよ。ちゃんとついていくさ。ここまで来ちまった以上はな」

 

え、魔理沙って素直なとこあったんだ。

 

「その意外そうな顔はやめろ」

 

「ふふっ、分かったわよ」

 

魔理沙も半目はやめようね…?

 

 

 

 

「だいぶ仲良いわね、後ろの2人」

 

「いいんじゃないかしら。若いうちに色々と経験するというのは。…あなただって、私からすれば子供なのだからね?」

 

「そういえば貴方は先代の巫女、のようだものね。それも当たり前だったかしら」

 

 

…お?なんか前も親しげに話してるね。

なんか霊華って名乗ってた時が懐かしいね。あの時は名前をなんでそう名乗ったのかがよく分からなかったけどね。

 

いや…今は、分かるけどさ。うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ご丁寧に3回もノックするんだね。

むしろトイレの回数でするわけないか。咲夜だし。

 

「霊華達がお嬢様に用があるとのことですが、入れてもよろしいでしょうか?」

 

「ん、別に構わないわ。入れて」

 

「分かりました。では、どうぞ」

 

お、おお…。扉、開けてくれるときなんてあるんだ。

 

 

わ、悪かったって。そんなに睨まなくてもいいじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで?用ってなによ」

 

私達が入るなりそう聞かれた。

霊華に聞いて。私はそんなに気にしてなかったから。

 

「…霊夢のことを見てほしいのよ。どうやら入れ替わりが起きてしまっていたようだし」

 

「あれ、それって人為的なものじゃなかったのか?それに変わったのは霊夢だけじゃなかったのか?」

 

「あー…いえ、それは偶然のようよ。でも普通はそんなに偶然が重ならないわ」

 

(偶然が重なる?…まさか本当はこうならなかったってことか?いや、確かに誰かがそんなこと、言っていたような気がするが…。なんだったけか?)

 

 

「ええと、レミリアとやら?その偶然って結構霊夢と関係あるのでしょう?」

 

「恐らくは、ね。さすがに確定ではないけれど、2つほど疑問点があることに気づかないかしら?」

 

(2つほど、か?……っていうか霊夢寝るなよ)

 

 

 

「おい霊夢。難しい話だからって寝るなよ。ほら、起きろ」

 

「ん、んん……。……!?」

 

お、おう?!寝てた?私。

っていうか小声で言ってくれるなんて優しいなぁ。

 

…いや、それでも今ので分かる、よね?(震え声)

 

 

「霊華と少し話しすぎたわね。まず、霊夢と魔理沙。それと早苗もいたら聞けたのだけども…まあ、仕方ないわね。憑依してる、なんておかしいと思わないかしら?」

 

確かにね。

死んだ記憶はないし、かといって特段おかしなことをした記憶もないし。

消えてるか?って言われても戻ってない部分があるからなんとも言えないし。

 

 

「んー…当事者の私にはさっぱり、ね。呼び出すだのどうだのって前に霊華と誰かが話し合ってたのは覚えてるんだけども…」

 

「確かに話してたな。…でも霊夢曰く“寝て起きたらそうなった”んだろ?おかしなことでもあるのか?」

 

魔理沙が私の顔を見てきたけど、気まずそうな表情なのよね。

いやあの、私の顔を見られてもなんも言えないんだけどなあ…?

 

 

「はあ…。まあ、霊夢はそもそも突然のことだったし、魔理沙なんかは魔法の研究などに没頭しているから分かるはずないわね。霊華は分かるでしょう?」

 

ため息つかなくたっていいでしょ…

(ため息つかなくてもいいだろうに…)

 

 

「ええ、なんとなくになってしまうけどもね。…まず1つ目は呼び出されてしまったのにも関わらず憑依してしまっていること。2つ目は元いた人格も逆に憑依したってこと、よね?」

 

「大体はあっているわ。そう、そこなのよ。いくらなんでも偶然が重なりすぎているのよ。おかしな話だけどもね」

 

むしろその偶然のおかげでお互い消えずにすんだんじゃ?

いやぁ、凄いね。

 

「幸運ってどれだけ凄いんだよ。そういやお前もお前でちゃっかり幸運の恩恵を受けてるしな」

 

「幸運のレベルでいいのか分からないけどもね」

 

いや、そこでレミリアは納得したように頷かないでもらえます?

霊華も「あぁ~、なるほどね。幸運ならそれも避けられるわね」とか1人で納得しないで。

いくら幻想郷でもありえないでしょ?!

 

「む、むうぅ…!」

 

「…な、なんだこいつら」

 

私に聞かないでください。

さすがに分からないから。

 

 

 

 

 

なんかその後は霊華とレミリアが話し合うらしいから大図書館でひまをつぶすことにした。

さすがに私にはそんな専門家みたいな話は聞いても分からないしね。

 

 

 

「…なるほどね。レミィと先代の巫女が貴方達にとって難しい話をするからきた、というわけなのね」

 

2回頷いておく。

回数に意味なんてないけど。

 

「ええ、そうなのよ。そういうわけだから、本、読んでもいいわよね?」

 

 

あ、本を読む手を止めて…こっち見た。

 

「別に、大切に読んでちゃんとした場所に戻してくれるなら勝手にしててちょうだい」

 

「私も読んでいいか?」

 

「…貴方1人はダメよ。盗っていってしまうかもしれないから。そうね、どうしてもと言うなら霊夢が見える範囲で読んでちょうだい。しかも同じのを、ね」

 

「私だけ条件きつくないか!?」

 

…え?借りてるだけじゃないの?

あ、でも魔理沙のこと、最近分かってきたけど、刹那的だよね。気のせいかな。

 

「ならそこの紅白巫女みたいに鈴奈庵じゃなくてもいいから本を借りても返したり、大切に扱ってるってことを証明してちょうだい。――なにせ貴方に“借りられた”本達がたくさんあるものね」

 

「人間の人生は短いんだ。それぐらい待てるだろ?」

 

幻想郷ならでは、だけど…これでそんなに仲が悪くないとかビックリだなあ。

 

 

「仲もよくないわ」

「こいつとなんて良くも悪くもないぜ?」

 

「あら、口に出てた?こりゃ失礼したわ」

 

「思いっきり出てたぜ。そんなに仲が悪くないからビックリだわとかどうとかって」

 

だからっては、半目で見なくても…。

 

「…霊夢、悪いけどしっかり魔理沙のことを見ててちょうだいね。常習犯だから」

 

「あ、そ、そうなのね…」

 

どう反応すればいいのやら。よく分からんね。

 

「も、もういいだろ!?ほら、霊夢。外来本でもなんでもいいから読むぞ。多分お前には魔導書とかなんてどれか分からないし、教えてもちんぷんかんぷんだろうしな」

 

「…魔法は使えなくても苦労しないわ、多分」

 

アイテムは使ってみたいけどね。

…今のところ霊力関係のしか触れてないけど、まあいいか。

 

「違うのには興味ありそうな顔をしてるな。んじゃ、とりあえず読ませてもらうなー」

 

「……はいはい、勝手にしてちょうだい」

 

 

ため息までつかれてるよ、魔理沙。

いいのかね…ってこんな広い場所で勝手に行くんでない。どこへ行くの。

 

やれやれ、なんでこうなったのやら…。

 

 

 

それから、2人の会話が終わるまで大図書館の中をぶらぶらと探して読んでは戻すということを何回か繰り返した。

うん、本がたくさんあって興味の出た本を探すのすら大変だったな。

 

そりゃ小悪魔1人じゃ大変だよ。広いわ、本は勝手に増えるわとやること多いもんね。


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