先代巫女と行く幻想郷生活   作:篠崎零花

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第55話 私は博麗の巫女。現代っ子です

あれから数日…というか何日たったんだろう。日にちが確認できるカレンダーとかないからさっぱり分からない。

ようやく妖怪退治を私もまともにできるようになった。といってもまだ霊華がついてくるから、まともなのかいまいち分からない。

 

なにせ比較対象になりがちな霊華が妖怪退治の専門家だから…。

 

 

 

「あ、霊夢さーん……に霊華さんじゃないですか。2人そろって竹箒持ってなにかしてたんですか?」

 

「ん?あぁ、霊華と境内を掃除してたのよ。あと分社もね」

 

「ついでみたいに言わないでくたさい!?…まあ、してくれてるんで助かりますが」

 

霊華も困ったように笑わなくてもいいんじゃないかな?

 

「そりゃするわよ。…んで、どうかしたの?なんかさっきまでやけにテンション高めだったようだから」

 

「そ、そんなことないですよ?…あぁそれはですね…」

 

下手したら大声で今の私の名を叫んでそうな感じだったしね。

それをなんとか抑えてました、みたいな。…うん、たぶん私の気のせいかな?

 

「確かに霊夢を呼ぶときの声が…」

 

「べ、別にいいじゃないですか!っとそうでした。ロープウェイが近々完成しそうなんですよ。なので、霊夢さん達も来ませんか?屋台も出せるよう、場所も一応とってありますんで」

 

や、屋台?え、なんか店出していいとか平気なのかな。

 

「早苗、それって平気なのかしら?下でちょっとしたことをやるかもしれないのよ?」

 

「ふふ、霊夢さん。いいから呼ぶんです。なにせこの神社においた分社でそれなりの利益…もとい、おこぼれをもらっているので構わないですよ」

 

(なるほどね…。こっちはお賽銭こそ少ないものの、お守りやおみくじで。まあ、前よりは入ってるけども。…元からその分社の方に参拝客が多く来てる……とか、そういうのは言わない方がよさそうね)

 

「そ、そういうものなのかしら…。でも、そうね。幻想郷で作られたロープウェイも見たいし、行くわ。軽食とかお守りとか売れそうだしね。ついでに博麗神社にも…あー…」

 

あ、でも…祀ってる神様の名前とか能力を知らないんだよね。

参ったなあ。

 

 

「それでも前よりはお賽銭が来るって諏訪子様と神奈子様がそこにいる霊華さんと話したこと、聞きましたから。なので大丈夫なんじゃないですか?…前よりは」

 

「同じことを言わなくてもいいわよ…。ま、ありがとね」

 

はい、と言って頷きながら笑む早苗。

うん。仲良くなれてよかったと、すごく思うよ。

 

「…あぁ、もしかして諏訪子から聞いたのね。あの時、神奈子は途中から会話に加わってきたはずだし」

 

「はい、そうなんよ。あ、私はあとは分社にお供えしたら帰りますね」

 

それに分かった、と答えると頷く早苗。

私も私でやることがあるからするんだけどね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊華と別々のことをしだしてかなり時間がたったかな。

ようやく“あれ”を使えるようになった。…なんかもう、私も現実から浮いてるんじゃないかと。

 

 

「―――なるほどね。確かにそれは名前をつけて、遊びとやらをつけないと大変そうだわ。よく使えるようになったわね」

 

「け…結構苦労したけどもね。能力なんて、最初の頃は名前通りのことしかできなかったもの」

 

分かりやすく言えば空を飛ぶ程度の能力があればそのままの意味で空を飛ぶ……とかそんな感じだろうね。

いまいち私にはさっぱりだ。外の世界じゃそもそも飛べないのが当たり前だったし、苦労もかなりしたけど。

 

(元々幻想郷にいた子より苦労したでしょうね。たまに陰から見たら意識した途端、飛べてなかったりしてたようだし。早苗やたまに来る咲夜とかに聞いてたみたいだし。魔理沙にも聞くこともあったようだものね)

 

 

 

「そうだわ。なら、なにか覚えてみないか―――と思ったけども、私からは戦闘用にしか使えない上に殺傷力があるのだからあんまり教えてあげられないのよね」

 

といってため息をつく霊華。

…そ、そんなにえげつないの?それなら確かに変に覚えても逆にダメだろつしね。

むしろためらって危なそう。主に私が。

 

「せんだ……霊華もだいぶ年相応な面が出てきてるものね。母親みたいに振る舞おうとする癖は抜けていないようだけども」

 

「―――っ!?だから急に出てこないでちょうだいってば!」

 

「まあまあ。それが紫なのだし。んでもそうね。むしろ以前と同じようなまま、っていう方が不思議だと思うのだけれども」

 

(ただ年相応ってどういうことなのかしらね。おかしなことをいう妖怪だわ。…後者に関しては分からないこともないでしょうに)

 

「ま、それもそうね。…あぁ、それと森近霖之助や白玉楼には会ったり行ったりしたかしら?ないんだとしたら、そこの霊夢に連れていってもらったらいいんじゃないかしら」

 

あー…そうか。霖之助さんにまだ会わせてなかったっけ?

冥界の方はないって言い切れるけど、そっちは覚えてないんだよね。

あ、そうだ。服の件があったはずだし、それでいくかな。

 

「それもいいかもしれないわね。……でも紫。あんたさ、勝手に人んちのお菓子を食べるのいい加減やめてくれないかしら?」

 

(…口周りにつくような物をわざと選んで、目立つところに置いていたのはそれだったのね。確かケーキかなんかって言ってたはずだし)

 

ふふ、と笑ってもダメなものはダメなんだけど…。

いいや。留守番にちょうどよさそうな妖怪だし、放っていくかな。

 

「ま、あんたぐらいならいいでしょ。霊華、服もあることだし1回香霖堂へ行きましょ?あんたの服も頼んであることだし、向こうも久しぶりに会いたいそうだから」

 

紫がボソッと「犬と猫みたいな関係とかにも見えたら面白そうなのだけど」とか不思議なことを呟いたけど、きこえなかったことにしよう。

よく分からないし。

霊華も頷いてくれたし。

 

「そうね。下手な真似はしないでしょうし。伊達に幻想郷の賢者をしてないはずでしょうから」

といいながら紫を横目で見てるのはなに?

真意があまり分からない。わざとっぽく見えるのはなんとなく理解したんだけどね?

その後、場所が同じかもしれないけどついていく、とのことなので今回は霊華を連れて香霖堂に行くことにした。

と、いうか行かないと巫女服とか霊華の巫女装束が貰えないんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森の入口辺りへ来て、少し歩いたら香霖堂についた。

魔法の森自体に入ってないから空気はそんなんでもない。中は…うん。湿気とか色々とひどいしね。

 

「霖之助さーん、いるー?」

なんて呼びかけながら入ってみた。

 

「ああ、いるよ。…もしかして、服の件で来たのかい?」

 

私が頷きながら返事をすると、霖之助さんが微妙に目を見開いた。

表情が変わった…っていえるほどじゃないけど、驚いてるように見えた。

 

「久しぶりね、霖之助。霊夢が用事もあるって言ってきたものだからついてきたわ。―――話がしたい、んだったわよね?」

 

「…ああ…今の霊夢はやっぱり…先代の巫女と久方ぶりに会えるというのも…」

 

 

 

 

「ね、ねぇ。なんか霖之助さんがぶつぶつ呟いてるんだけども、あの人どうかしたの?」

 

と聞くと私と同じように声を潜めて

「たぶん文々。新聞の影響でしょうね。広めた本人に聞いたのだから間違いないわ」

 

そうこたえて――え?本人に?

文々。新聞、というのを出してるのは射命丸文しかいない。

となると、どうやってその文って烏天狗から聞いたんだろう。

 

 

 

「…っと、君達を置いてけぼりにしていたようだね。とりあえず、霊夢の方から済まそうか」

 

といわれたのでひとまず頷くことにした。

作った服でもとりにいったのかな。

 

…霊華と雑談でもしますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んでまぁ、そういうこともあったのよ」

 

「……な、なんだかあんたが一部妖怪から恐れられる理由が分かった気がするわ」

 

その言い方はなに?といわんばかりに半目で睨んできた。

いや、だって前にたくさんやらかしてるって教えてきたばかりじゃ…。

そりゃ力で(まさ)るような相手にむやみやたらに襲いかかる妖怪ばっかじゃないだろうしね。それが例え、よくいる名のない下級妖怪だとしても。

 

 

「ふむ、なんの話をしていたかは検討もつかないが持ってきたよ。霊華の分もしっかり用意させてもらったよ」

 

霊華が少し驚いたけど、私の方を見て何故か納得したように頷いた。

…私にも分かるように説明してほしいかな。

 

「ありがとね、私の分まで作ってもらってしまって。久々に作るはずでしょうから大変立ったとは思うのだけども」

 

「えっ?霊華もここで作ってもらってたの?私はてっきり里で作ってもらってたのかと思ったわ」

 

(そ、そんなことないんだけどもね…。むしろほとんどの者に恐れと尊敬の念を抱かれていた…というような感じだったし)

 

「そうかい?ああ、でも今の霊夢(きみ)ならなんとも言えないか。ただ道具などを拾ったり、使い方を知ったりするだけじゃないからね?…君に物を売ったり、物々交換するようなものさ。魔理沙ともやっているがね」

 

「そういうもんなのね…」

 

「ああ、そうだよ。それとちょうどいい。霊夢も話に交わるかい?」

という質問に頷かなければよかった、と後悔したのは2時間、3時間したあとのことでした。

 

まさか、そんなに長くなるとは思わなかったよ。

帰るのもだいぶ遅くなったし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社につく頃にはそこそこいい時間になっていた。

たぶん紫もいないかな?

 

「…やれやれ。まさか先代があそこまで森近霖之助と馬があうとは思わなかったわ」

 

いたの…。

 

「あら、私がしっかり守ってあげたというのに心外ね」

 

えっ?声に出てたの?

今のが?

 

「…いえ、紫。悪いけど、今のは霊夢に賛同するわ。あれは強制とか約束ですらないのだから。それなのにあなたがしっかり神社でのんびりしているのは予想外って話よ」

 

「ふふ、意地悪ね。私も貴方達…いえ、霊夢がどうしてそうなったのかって理由をつきとめてあげたのに」

 

そういってから「今は教えてあげれないけど」ともいった。

うん、つきとめたのにまだ秘密って今1番知りたいことなんだけどな!?

 

「それもとても意地悪だと思うんだけども……」

 

(…あぁ、なるほどね。なんとなく想像がついたわ。でも、霊夢の前では黙っておこうかしら。教えたとしても、やっぱり想像に過ぎないし、当たってるとは思えないから)

 

「ま、大丈夫よ。どうやら問題になるようなことではないことだけ分かったから。貴方もそれが分かれば安心はするでしょう?」

 

おお!それは確かに大きい!

問題ないのなら、もうなにも心配しなくていいし。

 

「頷いたし、私はもう帰るわね。――ああ、今度結界について教えてあげるわね」

 

「結界、ね。分かったわ」

 

そう返事をかえすとスキマを開いて帰っていった。

中身は……さすが紫。

 

そのあとに作ってもらったそれぞれの服を片付けているときに妖怪退治ならぬ除霊を頼まれたので、私が行くことに。

…理由は簡単。そっち関連は私の方がどうにかできるから。

適当なのにすごいね?

 

 

 

 

 

ただ、その依頼を受けたあとの里の雰囲気が思いっきり変わってしまった。

なんていうか、とても近寄りがたい。

 

重苦しい。

 

そうとしかいえないほど、里の人達の顔が暗い。全員でなくとも、こんなことなんてあるのかってほどに。

しばらくもしないうちに“ええじゃないか”なんて声が聞こえてくるようにまでなってしまったので、さすがに異変だと思い出ることにした。

 

そう、この幻想郷にいるという八百万の神様や博麗神社にいるあの神様?にでも協力してもらおう。

というか土下座とかお酒などのお供え物も持って交渉しよう。厳しいだろうけど。

 

そんな準備などをしながら、私は空を見上げた。どこから見ても似たような空だけど。

―――いつか、きっと。この青空を見上げながら、今までのことを笑い飛ばせる日が来ることを。そう、願って。




遅くなりましたが、評価してくださってありがとうございます。

まだまだ少ないですが、つけてもらえて嬉しいです。また、気が向けば適当に読んでもらえるとありがたいです。

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