先代巫女と行く幻想郷生活   作:篠崎零花

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今回は今後に繋がるようなものを番外編として書いてみました。

…今度日常の番外編を書くのも面白そうですね?

今回は短めになってます。
では、番外編、どうぞ


番外編 想定外の外来人の扱い方

地霊殿での出来事があって、冬が大分過ぎた頃。

露天風呂があるのはいいんだけど、外がまだ寒いおかげでなかなか入りにくいのなんの。

 

にしても守矢神社も考えたもんだねぇ。…上手く行くかは別にいいとして、ね!

 

 

ま、そんなことよりも…

「……雪をおろす時に空を飛ぶのはそんなにおかしいことかしらね」

 

安全なのになあ、と思う。落ちて怪我しないし、屋根も雪だけに集中できる。

何回やっても慣れないけど。

 

 

 

んで、いつもなら霊華が体をなまらせたくないからと修行を始め、たまに魔理沙や早苗などが来たりするんだけど、今日は来る人が違った。

 

 

―――目の前に見覚えのある制服を着た男の人がいたから。

制服に関してはハッキリ言って覚えてない。忘れたままってのもあるんだけどね?

ふむ、でもこんなことってあんまりないんだけどな。紫はかなり気紛れだし、神隠しなんて最近してなかったし。

 

 

「………な、なんだここ」

 

そう呟いたのは私から見て鳥居の方に突如姿を現した男。

どう見たって外来人。

あ、私は分社からお賽銭箱の前に向かおうとしてたから視界にフツーに入ってるよ。

 

見た目は普通か。黒のショートヘアに学生服。それとカバン。

…え、なに。帰りだったの?

 

「ここは幻想郷よ、学生さん」

 

そう言って守矢神社の分社と賽銭箱の間からその人物に近づいてみる。

うーん…この人、同級生にいたかな。

 

「……はっ?幻想郷?嘘だろう?」

 

あー…うん。これが普通、か。

普通はこうやって驚いて、違うんだと思いたがる。

ま、それはいいんだけど…この人、どうやって幻想郷に?

紫の仕業…と言ってもあんな気紛れが幻想入りさせる?しかも、私の見覚えのある学生服を着た人を選ぶなんて人選はしないタイプだろうし、(あれ)は。

 

「……嘘じゃない、とか言わないよな」

 

ん?っていうかこの人…

 

「外の世界にこんな巫女服を着た巫女がいると思う?」

 

「………そ、そうだな。それはどう見てもコスプレだな。―――ってなんでそれを今聞いた!?」

 

「あぁ、あんたが混乱通り越して発狂しそうだったからついよ、つい」

 

そこまで驚かれるなんて、ちょっと面白いかも。

っと、そうじゃないか。名乗っておこう。

名乗り忘れるかもしれないしね!

 

 

「あ、あー…名乗り遅れたわね。私は博麗霊夢。あんたは?」

 

(うん?博麗霊夢?なんかいつもあいつがもう1人と博麗霊夢がどうとか、パチュリーがどうとか話してなかったっけか?……いや、正確には数ヶ月前、か)

 

ど、どうしたこの人。

いきなり考え込むなんて。目の前に人がまだいるの、見えてますー?

 

 

「ああ、悪い悪い。俺の名前だよな」

 

「ええ、そうね。あ、一応先に教えとくと明日ぐらいには元いた世界に帰れるわよ。―――多分、私の知ってる世界でしょうし」

 

「そ、そうか。それで俺の名前は雨夜夏輝(あまやなつき)だ。んで、知ってる世界ってどういうことだ?」

 

あー、うん。ソウナルヨネ。

 

「……とりあえず、あがってちょうだい。それと私のことは霊夢って呼び捨てにしてもらっていいわ」

 

「お、おう。分かったよ…」

 

さて。どう誤魔化そうか。

霊華は確か今日に限って裏庭で修行してるし。ウワー、マイッチャウナー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(元いた世界を知ってるかもしれないって…普通、分かるものなのか?)

 

ってあげたはいいけど、ずっと疑いの眼差(まなざ)しを向けてくるのですが。いや、そんなに(にら)まんでも…。

 

 

「とりあえずここは幻想郷。忘れ去られた者達が来る場所ってのは知ってるかしら?」

 

「いや、俺はあんまり聞いてないな。むしろ(うわさ)なら聞いたが。…噂だぞ?」

 

首を左右に…ってえ?噂?

 

「その噂について詳しく教えてくれないかしら。出来れば今すぐ!」

 

 

(うおっ、近い近い。そんな上半身乗り出してまで聞くことじゃないだろ)

 

 

 

「あ、ああ…その噂は俺のいる学校だけらしいんだが、最近とある1人の女生徒の様子がおかしいらしい。曰くずっと空を見上げては独り言を呟いている、曰く時おり幻想郷などと呟いては目を細めている、曰く性格が変わったのはなにかしらの事件に巻き込まれたから、とか挙げたらキリがないな」

 

な、なんじゃそりゃ…。

でも確かにおかしいね、それは。

 

「その子って誰と仲良かったのか、あんたは知ってる?」

 

「そ、それがだな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えっ?!最初は1人だけだった!?

それで、ある日突然社交的になったと…。

えー…そんな偶然あるのかな。

 

「まあ、あくまでもその親友に聞いた話な?俺のダチでもあるんだが」

 

「そうなのね…。ああ、教えてもらえただけでもよかったわ。なにせ私でもあんたを帰せそうってことが分かったのだから」

 

「えっ、マジで!?」

 

「ええ、帰れるわよ。……でも、明日ね。準備とかしないといけないし」

 

わあお。すごい目に見えて喜んでる。

帰れるのは早くても明日ダヨー?

 

「あんがとな!なんかあいつ曰くなんかスキマの姉ちゃんに頼まないと帰れないとか言われてたからもう無理だと思ってたんだ。恩にきるよ!」

 

「あいつ……?それって誰よ」

 

おっと、身を乗り出したまんまだったね。戻るとするかな。

 

「ああ、××ってんだ。苗字は忘れたけどな」

 

「そう。……ありがとうね。でも、ところであんた……ここに来てからずっとズボンのファスナーが全開よ?恥ずかしくないのかしら」

 

「―――――っ!?」

 

あっ、今気づいたのか。

そ、それはそれで大丈夫なのかなぁ…。ちゃんと見てれば気づいたり…しないか。でなきゃもう閉めてるもんね。

おーおー、頬なんてほんのり染めちゃって。可愛いねえ。

 

 

 

 

 

「わ、分かってたんならはやく言ってくれよ…」

 

「話せるちょうどいいタイミングがなかったのよ。だから今になったわけ。分かってくれるかしら」

 

「あ、ああ…」

 

戸惑ってるけど、しょうがないね。

あ、そうだ。ここなら大丈夫ってことぐらい教えておくかな。

 

「それと言い忘れてたわ。いくら外来人と言えどここなら襲われないし、私が守れるから今日一日はこの神社にいてもらえないかしら」

 

「えっ、なんでだよ。ちょっとぐらいは平気だろ?」

 

私は静かに首を左右に振った。

 

「残念ながら幻想郷は危険よ。外来人ならなおさら狙われるわ。でもこの神社の中なら私か霊華が助けてあげれるから」

 

もちろん、霊華なんて本名じゃないけどね。

ま、呼びやすいから別にいいんだけど。

 

 

「…ま、無事帰れんならいいか。あいよ」

 

「ええ。…あ、そうだわ。明日の朝食まで食べていくといいわ」

 

(えっ。こいつ…大丈夫なのか?)

 

いやいやいや。なにその顔。

疑われなくてもこっちは大丈夫だからね?

 

 

「ま、いいから。大人しく食べてって。味は悪くないから」

 

と、半ば強引だったけど、頷いてくれた。

因みにその後、霊華の『昼餉』って言葉に驚いていた。

そうなるときっと『湯浴み』も驚くね。

私も最初はなに言ってるのか分からなかったし。特に湯浴みは。

それ以外はなんとなくで分かるようになるし。

 

 

―――あ、翌日まで何事も起きなかったよ。

朝食を食べてから帰したし。

 

……にしても紫が関わってない幻想入りってなんだろうね。

今度気が向いたら調べておくかな。


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